心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

約束の行方・・・vol.45

2013-04-09 10:20:37 | 約束の行方


“そうやわ・・・それがええかもしれへんわ” 


叔母の言葉に弾かれたように、私はその後辞表を書き3月末で退職することにした。


行動に移したのが急すぎて、周りはずい分驚いていた


「野村、どうした?仕事をやめて何をするんだい?何か嫌なことがあったのかい?」


いろいろ聞かれたが


「辞めてから考えたいんです、嫌な事があった訳ではありませんのでご心配には及びません


お世話になりました。引き継ぎはきちんとやりますので・・・」


何事も中途半端は嫌だったので、後輩への引き継ぎは丁寧にこなした







桜がきれいに咲く季節 私は、京都へと戻った


叔父や叔母には長い間とても世話になった。 


子供がいなった叔母夫婦は、私のことを本当の娘のように優しく見守ってくれた。 


実家にいるより過ごしやすかったのは、私を信用して放任してくれたおかげというものである


叔父は、娘を嫁にでもやるような顔で「絵里ちゃんまた絶対に顔を見せに来てくれよ」 と寂しそうだった


叔母は、優しくうなずいて見送ってくれた。





実家へ戻ることを話そうかどうしようかと思う人が一人いたが、


今すぐ話す必要もないかと判断し黙って帰ってきた。


しばらく何をするということもないので、実家の店の手伝いをすることにした。


“もしかしたら?このまま何も見つからないかもしれないけど、しばらくお世話になります” 


と言った私を 母親は嬉しそうに迎えてくれた


父は年をとったせいもあり、昔ほどうるさいことを言わないと聞いていたが


“嫁のもらい手は、ないんか?”と


そこだけは相変わらずで、私は適当にはぐらかし“いつまでも、迷惑はかけへんから心配せんといて”


とだけ、答えておいた。


店は、父がやっていた時とは違い 若い世代の人・・・・


昔とは違ったお客さんが多く来るようになっていた。


兄のやり方に初め難癖をつけていたらしい父も、その頃は店には一切口出しせず


御隠居さんとして、のんびり過ごしているようで 


同じく隠居生活を楽しんでいる 姉の嫁ぎ先の竹田のおじさんや


その他何人かの料理屋仲間と“歩こう会”などという会を作って


週に何度か京都市内をウォーキングしたり、噂の店を巡ったりして楽しんでいるようだった。


夕方になると甥っこである勇太くんとその弟である陽平くんが店にやって来た


よその子は大きくなるのが早いもので、あの小さかった勇太ちゃんは、今年から小学生になり


弟の陽平くんも幼稚園へ行っているらしく、元気いっぱい


初めて会う私が珍しい様で、嬉しそうにくるくると私のそばで遊び回るのだった


それを見ていると こちらの目が回りそうだったが、兄のひと言でしゃきっと二人並んで敬礼し


「はいっ! すみませんでした!!」 と言うと、二階へと上がって行った。


「さすがやね~お兄ちゃんも怖いおとーちゃんやねんなぁ」 と私が茶化すと


「店で子供が騒ぐのだけはアカンって、厳しく言うてるんや


よそで格好の悪いことしたら、自分らが恥かくねんしな


小さい時からそこだけは、きっちりさしておきたいんや」 と、厳しい父の目だった


私もきちんと手伝いせなアカンな・・・・と改めて店に愛情を持つ兄の気持ちを考えた