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日常・民話など

田沢の辰子

2021-01-07 10:16:17 | 昔っこ・民話

            辰子像と 駒ヶ岳 ⇩

           

        昔っこ  ―田沢の辰子― (長いのでスル-どうぞ。興味ある方は読んでね)

むかし、むかし院内というところに、辰子と言う娘こ 居だもの。辰子は母さんと二人暮らしだった。

大きくなるにつれて、まことにきれぇな娘こになった。村人たちは きれいで働き者の辰子をみるたんび

「なんときれぇな娘こだ」と褒めていた。 辰子の評判は遠い町や 村さも届いていたため

一目見たいと、遠くの町から 院内まで見に来る人もおったと。

ある時辰子は、家の前を流れる川をのぞいたら 雪みてぇに色白の きれいな顔が水に 映って

「これが おらだべが。こんたにきれぇだったベが」辰子は 自分の姿にびっくりした。

草の上さ座って いつまでも いつまでも見ていたど。

そのばんげ(晩)辰子は眠れないで、昼間の自分の姿を思い浮かべた。

「ああ、いつまでも このきれいな姿のままでいたいもんだ。今だばきれいだども だんだん年いけば

 顔さシワになるし 髪は白髪になるべし、腰は曲がってしまうべな。ああやだ年取りたくないなぁ」

辰子は、胸を締め付けられるように、苦しくなって いやだ 嫌だと思った。

「んだ。観音さんにお願いするべ、いつまでも今のままの きれぇな辰子でいるように」

辰子は そう思ったら矢もたてもたまらず、その晩げ こっそり家を抜け出した。

暗い山道もおっかなくなかった。辰子は、ずんずん院内嶽 目指して歩いた。しばらくして観音さまの前に着いた。

「観音さん、観音さん。なんとか辰子どこ いつまでも 今のままにしておいて どうか、年をとらないようにしてたもれ」

と、一心に願をかけた。 それから辰子は毎晩、毎晩、雨が降っても、雪降っても、風吹いても、

遠くの院内嶽まで通って お祈りした。

やがて、100日目が来た。その晩げも 辰子はお堂の前さ 膝ついて 一心に観音さんに お願いしていた。

したら、お堂の中から声があって 「これ、辰子よ、そなたの願いはわかった。お前がそんなに望むなら

この山を北へ、北へと進んでゆくがよい。 そこには、きれいな泉がある。その水を飲むがよい。

するとお前は、いつまでも今の美しさを 保つことが出来るだろう。」

辰子は夢でないかと 踊って喜び 「観音さん、おらの願いを聞いてけで えがったし。本当にえがったし」

と、お礼を言って帰った。そうしてるうちに雪が消えて春がきた。草が生え、さくらが咲いた。

村には、ももの花が咲き、ふじの花も咲き、山さも、野原さも ワラビこ生えてきた。

それで、辰子は近所の娘たちと ワラビ採りに行った。山さいったら、いっぱいワラビこあって、

ポキン、ポキンと 一生懸命採っているうちに 辰子はひとりになってしまった。

辰子は、娘たちの名を呼んで、足が棒になるまで探したども、いながった。辰子はくたびれて立ち止まった。

すると、木と木の間から 大きな泉がみえたど。「あっ!泉だ」

辰子は、これこそ観音さんのお告げの 泉だと思って駆けよった。泉からもくもく湧き出る水は

川になって、ざー、ざー流れていた。辰子が川をのぞいたら 大きなざっこが、ぞよ、ぞよと泳いでいた。

辰子は、水に手を入れ、雑魚をとろうとしたら、なんぼでもつかめた。1匹、2匹、3匹 4匹・・・

それから辰子は、そばの木を折って串を作り、ざっこを刺してあぶった。ざっこが焼けて「うーん・なんとうめごど」

あまりにも ええにおいで、辰子は串から抜いて いっぱい食った。するとすぐ喉が渇いて 泉の水を

手ですくって飲んだ。飲んでも、飲んでも喉が渇く。辰子は泉に口をつけて ごっくん、ごっくんと飲んだ。

泉の水が無くなるまで飲んだ。そしたら辰子の体は ずん、ずん、ずんと伸び始め、体には蛇のこけらがはえた。

顔には、大っきな角がにょき にょきと生えて あのきれぇな目は大っきぐなって、ぎらり、ぎらりと光った。

口は耳まで、ザックリ裂けて2本の牙がにゅーっと生え、辰子はおっかねぇ竜になった。

したば、今までええ天気だった空さ、黒い雲がむくむくと出て 急に暗くなったと思ったら、

大粒の雨 ぷっつん、ぷっつんと降りだした。ぴかーっと稲妻が光り ゴロゴロと雷が鳴りだし、

降った、降った、滝みたいに大雨が降りだした。

川という川は大水になり、あっちの山崩れ、こっちの山崩れ、沢は埋まり、そこさ、大っきな潟が出来た。

辰子は、その潟の主になって,潟の底に沈んでしまった。さあ、辰子の母さん、暗くなっても 戻って来ない

なんぼ待っても、戻って来ない辰子を 囲炉裏から、木の尻(燃えさしの薪)を持って、探しに出た。

「辰子よ、辰子ー」辰子の母さんは、気も狂わんばかりに、大きな声を出して、暗い山から沢に。沢から山にと

捜したども、見つからない。くたびれた足を引きずって歩いたら だんだん明るくなって夜が明けた 東の

方を見たら、目の前さ 水をいっぱいたたえた潟が見える。辰子の母さんは、思わずあっと息をのんで、立ち止まった。

今まで見た事もない潟に、びっくりした。「あっ・辰子はこの潟に落ちて 死んだのでねえべが」

「辰子よー・辰子ーー。辰子よー・辰子ーー」何回も叫び続けた。

そしたら、潟の底から、白い泡がぽこん、ぽこんと立って、ざざっ、ざざっと、水しぶきあげて、竜になった

辰子が姿を現した。「あっ、おめぇ辰子なのか、なんでこんな おっかねぇ姿になった。

さぁ村さもどれ。母さんを捨てないでおくれ」と、涙流して頼んだ。

「かあさん、かあさん、ごめんしてけれ。おら、いつまでも綺麗でいたいと思って、大きな願を観音さんに

 かけたら、おっかねぇ竜になってしまった。ごめんしてけれ。おら一生この潟の主になって 住む事になったもの」

と、泣いて謝った。「ああ、なして こんな姿に。辰子よ、元のあのきれぇな辰子に 戻ってけれ」

辰子の母さんは、泣き続けたもの。 「母さん、あと泣かないでけれ。これでお別れするから」

と、いったかと思ったら、辰子の竜は潟の底に沈んでいった。

「辰子ー。辰子。待ってけれ辰子ーー。」辰子の母さんが、なんぼ叫んでも 夢のように潟はしんとして

白い砂を噛む波の音ばかりだった。母さんは「ああ情けなや、辰子よ」と叫んで 手に持っていた

木の尻(木の燃えさし)を 潟に投げ込んだ。不思議なことに、見ている間にマスになって、辰子の後を

追うように、潟の底に泳いで行ってしまった。(この鱒は 木のしり鱒と呼ばれるようになった)

泣きくたびれた母さんは、潟を振り返り、ふりかえり、ようやく家にたどり着いた。次の日から、流れを

引き込んだ水やに、大きなざっこが、だぼん、だぼんと流れて来て、ざっこは、1年中切れることがなかった。

辰子の母さんは、ざっこを売って、一生楽に暮らしたと。

                   とっぴんぱらりのぷう

*木のしりますとは、クニマスのことです。

田沢湖の国鱒は 1940年に国策で 酸性の玉川から水を引き入れたことにより 絶滅しました。

が、昔 西湖にクニマスの卵を 放流したそうで 深い所でひっそり 生きていたのです。

網にかかって 見た事無い魚と言う事で、さかなくんへ。 さかなくんが、クニマスと判明したのでした。

さかなくんは すごいですね~ 上皇様にもクニマスの事で お声掛け頂いてましたね。

長々と お付き合い頂き ありがとうございました。

暴風雪警報の当地 鉄道も運転見合わせなど この時間帯はまだ穏やかです…

追記:午後からけっこうな勢いで 降ってきました。この分ですと積もりそうです。様子見て雪かきを。

西日本の地にも 雪が降る様ですから 雪に慣れていない皆さま お気を付け下さいね。

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