Sさんの猫は、やはり食べるのが大好きな、ころんとしていて可愛い太目のオスである。
ところが、ある時、突然、姿が見えなくなった。
外に出しているわけでもないし、開いている窓もない。
一体どうしたのかと押し入れ、トイレ、風呂場など家中を必死に調べまくったら、何と猫は冷蔵庫の中に入っていたらしい。
「うちのも大食らいだけど、それはまだやったことはないわねぇ」
その話を聞いてKさんは大笑いをしていた。
その矢先、飼っている猫が体調を崩したのである。
まず食べ物に執着が無くなり、時折、吐いたり、草だけしか口にしない日も多くなった。
「歳をとっているし、お腹の調子が悪いこともあるのかな」と気にはなっていたが食が細くなったこと以外は日常生活に変わりはない。
日が一番よくあたるソファの上で、ぐだーっと気持ちよさそうに寝ている。
そういう姿を見ると、とても体調が悪いとは思えず、彼女は一週間、様子を見ていた。
別に痛がるわけでも苦しがるわけでもない。
が、物を食べないのには変わりがなく彼女は、かかりつけの獣医さんに猫を連れて行った。
血液検査をしてもらったら異常が見つかり、そこよりも大きな病院で入院させて輸血をしてもらうことになった。
血液の状態が普通ではないと言われたこともあり、彼女はとても心配して「もしものことがあったら、どうしよう」
とうちに電話をかけてきては、毎日泣いていた。
うちのトラは自由に家に出入りしていたこともあって、外で亡くなることを選んだようだった。
死ぬ前に挨拶にきたものの、トラの亡骸を私は見ていない。
だから今ひとつ、死んだという感覚がない。
今でも、もしかしたら、どこかで生きているんじゃないかと思ったりすることもあったのだ。
つづく
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