振込詐欺で被害に遭ったもう一件は
「息子さんが赴任先で交通事故を起こしたので、示談金が必要になった。
私は事故の処理を任された代理人だ」と日本人の男から電話がかかってきた。
息子一家は海外に住んでいて、
男の話す赴任先の国名も住んでいる都市も一致していたので、
電話を受けた母親は全く疑わなかった。
彼はすぐに金を振り込ませず、
「金額については相手と交渉するが、
被害者は現地の人なので、スムーズに話は進まないかもしれない。また、連絡する」と言った。
そして何度かやりとりがあったひと月後、
母親は合意したという示談金の250万円を振り込んだ。
その二日後、何も知らない息子から電話がかかってきて騙されたのが判明したのだった。
急がせてすぐに金銭を奪うのではなく、
時間をかけ信用させて振り込ませる。
犯人が海外の赴任先を知っていたり、
家庭の事情を下調べしている可能性があるのも、不気味だ。
敵はますます巧妙な手口で金をだまし取ろうとしている。
母親たちの「大変だ」「恥ずかしい」
といった気持ちにつけ込むなんて本当に腹立たしい。
犯人に対して憤るのは勿論だが、
それと同時に不謹慎かもしれないが、
私は被害に遭った彼女達が、言われた金額をすぐに調達できることに
「みんな、そんなに持っているんだ」
と正直、そこに驚いてしまうのであった。
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