少し前の東京新聞、作家の吉川トリコさんの「許せない『ぶつかりおじさん』」と題したコラムを読んだ。
2018年、新宿駅構内で次々に女性にぶつかって歩いている男の姿が、録画されSNSで拡散され、
弱そうな人間を狙ってぶつかってくるおじさんがこの世には存在するということが、可視化された。
それまで、いきなりぶつかって謝りもしないで何気なく通り過ぎていく人の事を、偶然なのか故意なのかわからなかったのが、その動画によってやはり「意図的」だとわかったのだ。
それもターゲットになるのは、やり返してこなそうな相手ということだ。
トリコさん自身、派手な服を着て目つきも鋭かった若いときより、中年になって、ゆるゆるの服を着た今の方が、ぶつかりおじさんに会う確率が増えたという。でも髪をピンクのグラディーションにしたときは、ピタリと被害がやんだというから、わかりやすすぎ。
いきおい、女性がターゲットになるが、小柄な男性や、妊婦やベビーカーを押した女性も標的になる。トリコさんの友人は、ベビーカーを蹴り飛ばされたことがあるという。
鬱憤晴らしでやっているらしいが、こんなことが鬱憤晴らしとなる社会が心底、恐ろしいし、許されるわけがないとトリコさんは書かれていた。
たしかに気持ち悪いし、何より赤ちゃん連れにとっては恐ろしく危険だ。
そういえば、私も、ん十年も前だが、東京に暮らしはじめた世間知らずだった、うんと若い頃に、ぶつかってくる男はいた。いつの時代もいるんですね、変な人。でも、電車の痴漢と違って一瞬だから、その時は嫌な思いをしても、すぐに消えてしまうので故意だったとは、やられた方もわかりにくい。
でも、私がぼんやりしているからと思っても、女性にぶつかられた経験はない。
あるときは、すれ違いざまに、いきなりグーでお腹にパンチされたことがある。
これはもうはっきりと意図的である。「え?」と一瞬何が起こったかわからないうちに、くだんの男は何事もなかったかのように、さっさと通り過ぎて行ってしまった。
そしてそのあと、運良くおまわりさんが、向こうからやってきたので、勢いその警察官に、すでに100メートルは向こうに行ってしまった男を指さして、「あの人に、いきなり殴られました」と訴えた。
おまわりさんは、はいはい、とうなずいていたけど、走って追いかけることはしてくれず、頼りになる気もせず、不満は大いに残ったが。
でもね、あのグーが、ナイフだったら、いきなりお腹を刺されてしまっていたかもしれないのだからね。
当時、両親が安心するような、セミロングヘアに、白いブラウスにスカーフ、ボックスプリーツの膝丈スカート、やや低めのヒールの靴を履いて外出するのは、痴漢の餌食になると、経験的によくわかったので、以来、ジーパンにスニーカー、ショートカットの髪にキャップ帽をかぶって男の子みたいな格好が私の定番となった。痴漢にも遭わなくなった。
実家に帰るたびに、「なんだその格好は」と言われたが、仕方なかった。
セクハラという言葉すらなかったあの時代、電車に乗れば痴漢がいるし、すれ違いざまに、知らない人にいきなり変な言葉をかけられたり、殴られたり、女性にとっては、知らない人から受ける嫌な思いの一度や二度はあるのではないか。
年を取った今は、大勢の人の行き交う場所は疲れるので、意識的に離れているのだけど、今も昔もそんなに変わっていないのか。。
東京で暮らすのは、刺激的で、アートでも芝居でも音楽でもいろいろ文化を感じられる、楽しいことは多かったけれど、人生の中では一過性でいい。住むところじゃないとつくづく思う。
(あくまでも個人の見解です。居心地良く長く暮らしてらっしゃる方々にとっては、良い町であることでしょう)
毒を持った人たちの毒を受けながら、暮らしていくのはしんどい。東京だけに限ったことではないかもしれないけど。
人が多いと、出会う確率も多くなるのでしょう。
日本では、先進国の中で、女性議員の比率が格段に低いという。
これでは、女性の不都合が、社会に反映されにくいと思う。
私は立憲民主党の辻元清美議員が大好きなのに、自民党ネットサポータースが垂れ流す、彼女への根拠ない批判、デマが後を絶たず、それこそ印象操作されたイメージがネットの中では、ある時期定着してしまった。
影響を受けた大阪のおじさんが、彼女の演説中に殴りかかるという事件もあった。
彼女が髪を短くして、いつもシンプルなパンツスーツ姿でいるのも、わかる気がする。
地方議会でも、女性議員へのおじさんたちの嫌がらせ、セクハラ、パワハラがあるようだ。
トリコさんではないけど、日本の社会は、おじさん中心社会である限り、恐ろしさは消えない。
「ぶつかりおじさん」で検索かけたら、つい最近のヤフーニュースにも出ていた。
本当にベビーカーが狙われているのですね。