相続は、しばしば遺族の間にも大きな争いを生じさせてしまいます。 このような争いを避けるために、遺産を残すことになる方は遺言書を作成しておいた方がよいでしょう。
遺言の主な目的は、被相続人自身が自分の残す財産の帰属や身分関係を決め、相続を巡る争いを防ぐことにあります。
遺言書が法律上の遺言としての効力を生じるためには、民法で定める方式に従って作成されなければなりません。
また、遺言できる事項は法律で限定されています。
遺言には平常時に一般的な形で残す普通方式の遺言と事故や緊急時で死期が迫っている場合など特殊な状況下で残す例外的な特別方式の遺言があります。
普通方式の遺言には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類ありますが、一般的によく使われるのは自筆証書遺言と公正証書遺言です。
【自筆証書遺言(民法968条)】
遺言者が遺言書の全文・日付及び氏名を自筆し、これに押印することによって成立する遺言です。 代書や日付の記入がないものは無効となります。
☆メリット
・手軽でいつでもどこでも書ける
・費用がかからない
・遺言書の存在や内容を秘密にできる
★デメリット
・書き方によっては法的に無効になるおそれがある
・保管中に偽造・変造・隠匿のおそれがある
・家庭裁判所での検認手続きが必要で、すぐに執行できない
【公正証書遺言(民法969条)】
公証役場で2人以上の証人の前で遺言者が公証人に遺言の内容を述べ、その口述に基づいて公証人が作成する遺言書です。
公証人が作成した遺言書に、遺言者・証人・公証人が署名押印すれば、公正証書として認められます。
☆メリット
・公証人が作成するので、法律面でのチェックができる
・原本は公証役場に保管されるため、紛失や変造の心配がない
・家庭裁判所での検認手続きが不要なので、死後すぐに遺言の内容を実行できる
★デメリット
・原則として公証役場に行く必要がある
・証人が2人以上必要
・費用がかかる
・証人から内容が漏れるおそれがある
公正証書遺言を作成する方は年々増加しており、2009(平成21)年度は7万8000件だった作成件数が、2014(平成26)年度は10万4490件に増えています。