勝又壽良の経済時評
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2017-08-01
韓国、「呆れた!」長期延滞80万人以上の借金棒引き策が登場
繰り返される「徳政令」
選挙中示した「文構想」
韓国人も中国人と同じである。
口では大変に立派なことを言うものの、借りた金を返さないという「契約精神」が欠如している。
儒教社会特有の現象だ。先進国のような市民社会の経験がないから、「契約概念」を知らない民族である。
一方では、学歴重視の社会ゆえ、口だけは達者で辟易する。言うこととやることが真逆である。
韓国政府は国家予算を使って、長期延滞中で返済能力がない約80万人の負債を全額減免することにしたと報じられた。
負債の一部でない。債務全額を減免する政策が出てきたのは今回が初めて。
長期延滞者が正常な経済活動ができるよう支援するためだと韓国政府は言っている。
繰り返される「徳政令」
『中央日報』(7月27日付)は、「長期延滞80万人に政府予算投入、負債減免を推進」と題して、次のように伝えた。
韓国では、これまで2回借金棒引きという「徳政令」が行なわれてきた。今回は3回目になる。
借金する側は、政権が変われば人気取りで「徳政令」をやるものと見込んでいる。だから、借金返済をしないで延滞しておくのだ。
こういうモラルハザードが常態化している。日韓慰安婦合意見直しの動きもこの類いの一環である。
韓国新政府は、15年12月の日韓政府間の合意を無視した行動に出ている。
すなわち、「日本政府提供の資金受領のほかに、日本政府へ個人賠償請求の道が残されている」と平然と発言している。
元慰安婦に対して、日本から貰えるカネなら何でも貰えという浅ましい姿勢を見せているのだ。
このように、韓国政府自身がモラルハザードに陥っている。ここまで来ると、ルーズな金銭感覚は、韓国の民族特性である。
(1)「崔鍾球(チェ・ジョング)金融委員長は7月26日、就任後初めて記者懇談会を開き、『長期少額延滞者のうち償還が難しい階層に対しては積極的に債務整理を支援する』とし、『具体的な案は8月初めに出す』と述べた。
これは文在寅(ムン・ジェイン)大統領が公約した国民幸福基金の長期少額延滞債権(10年以上、1000万ウォン以下)消却案を民間に拡大したものだ。
貸付業者が保有する長期延滞債権を政府予算で買い取った後に消却する方式だ」
「 国民幸福基金」は、朴槿恵・前大統領時代につくられた制度だ。
消費者金融の高い利子に苦しむ庶民や、連帯保証人になったため負債を肩代わりせざるを得なくなった庶民を助ける目的であった。
政府が、個人の債務返済額を最大半額に減額するとともに、低利で融資し最長10年かけて返済できるようにするもの。
長期延滞で苦しむ人の自活意欲を高め、経済の好循環を生み出すのが目標とされた。
この「国民幸福基金」の崇高な目標は、庶民のルーズな金銭感覚によって踏みにじられた。
民間金融機関でも、新たなモラルハザードだけを生んでいる。
長期少額延滞債権(10年以上、1000万ウォン=約100万円以下)消却案を提案せざるを得なくさせたのだ。
(2)「崔委員長は、『予算の確保によって変わるだろうが、少なくとも民間部門で(債権消却対象が)40万人以上になるだろう』と説明した。
従来の国民幸福基金保有債権のうち消却対象の長期少額延滞者は40万人。
したがって全体の『負債減免』対象者数は80万人を超えると予想される。
ただ、償還能力がない人に限り減免する。崔委員長は「モラルハザードの可能性を考慮し、償還能力を徹底的に審査する」と説明した。
法定最高金利も引き下げる。崔委員長は『施行令を改正して貸付業法の最高金利を24%に引き下げ、来年1月から施行する考え』と述べた」
どの程度の人数が「文徳政令」で救済されるのか。
① 民間部門で(債権消却対象が)40万人以上
② 従来の「国民幸福基金」保有債権のうち消却対象の長期少額延滞者は40万人。
以上の80万人以上が「文徳政令」の救済対象になるという。
このほか、貸金業法の改正で最高金利を24%に引き下げる方針という。
韓国貸付金融協会が16年1年間、司法当局と消費者から依頼された計310件の不法消費者金融取引の内訳を分析した結果、平均利子率は2279%にも達していた。
この目もくらむ暴利を許しておくこと自体が政府の怠慢である。これでは借金返済は不可能だ。
国民幸福基金に申請した人は2013年10月末までに24万人。このうち21万人が対象となった。
国民幸福基金のほかにも似たような制度が7つあり、合わせて66万人の返済額が減額されたという。
66万人が、「債務返済額を最大半額に減額するとともに、低利で融資し最長10年かけて返済できるようにする」という恩恵を受けた。
日本では「サラ金」の貸出金利の上限引き下げを行い、過去の金利過剰支払いは業者に返済させる措置を講じた。
この措置では、業者に経営のしわ寄せが行ったものの、借り入れ側は救済されて、「モラルハザード」は起こらなかった。
韓国では、政府自らが財政資金を投じて、借り入れ者の救済をするというもの。
韓国の徳政令は3度目である。
不心得者は、「次もあるのでないか」と期待するのは当然だ。
現に、今回の「文徳政令」を招いている。
日本の室町幕府8代将軍足利義政が、徳政令を13回もやっている。
まさに、「モラルハザード」の最適例であろう。
韓国経済の将来を考えると、こうした徳政令の繰り返しが大きな禍根を残すはずだ。5年後の2022年には、さらに大がかりな徳政令を打ち出すに違いない。
ここで、文在寅氏が大統領選挙中にどのような「徳政令」構想を持っていたかを振り返っておきたい。
選挙中示した「文構想」
『朝鮮日報』(3月17日付)は、「韓国大統領選、文氏、貸出金利上限20%、家計債務制限構想」と題して、次のように報じた。
韓国政治を見て気づくことは、何ごとも後追いである。
問題が起こってから、「さあ、どうしよう」というタイプである。
いわゆる高金利のヤミ金融問題は、韓国で深刻化していたが、規制を加えるわけでもなかった。
日本が上限金利を20%と決めており、それ以上の金利を禁止したのと比べ、借入側の法的保護が疎かになっていた。
(3)「韓国大統領選で野党共に民主党の有力候補である文在寅(ムン・ジェイン)氏は、『韓国の家計債務は昨年末現在で1344兆ウォン(約135兆円)に達し、不良債権化のリスクが非常に高い。
モラルハザードが発生する可能性がある部分への補完策が見えない』と述べた。
文氏はまず、『家計債務総量規制』を導入し、可処分所得に占める家計債務の割合を150%に抑制するとの目標を設定した上で、それに沿って家計債務が無限に膨らまないような政策を取ると表明した。
特に庶民層の金利負担を軽減するため、現在最高27.9%となっている貸金業者の金利をまず一般銀行の貸出金利上限である25%まで引き下げ、任期中に銀行とそれ以外の金融機関の貸出金利上限を20%にそろえる構想を明らかにした」
文氏は、「家計債務総量規制」を導入し、可処分所得に占める家計債務の割合を150%に抑制すると言う。
確かに、一定の貸出枠を設けることは必要としても、現在最高27.9%となっている貸金業者の金利をまず一般銀行の貸出金利上限である25%まで引き下げることだ。
それにしても、法制化が遅すぎた。
実は2年前、家計債務が急増し始めたころ、銀行貸出から締め出された人々が、高い金利の貸金業者へ殺到していた
。私のブログでもこの問題を取り上げたほどである。
ただ、日本の貸金業者が、かなり韓国へ進出している。日本で儲からなくなったので韓国へ進出した事情もあるのだろう。
こうなると、日本の金融業者もかなり荒稼ぎしていたことになる。
(4)「(共に民主党の)非常経済対策団の李庸燮(イ・ヨンソプ)団長は、本紙の電話取材に対し、『貸金業者が受ける衝撃もあるため、任期中に段階的に引き下げるという意味だ』とした上で、『日本は既に金利上限を20%に設定している』と指摘した。
これに先立ち、庶民金融振興院による既存の10%中金利庶民融資を活性化させるとした。生計費、起業費用など用途別に融資を細分化し、庶民による貸金業者の利用を抑える狙いだ」
韓国政治には、「泥棒を捕まえて縄を綯う」という無計画な側面が多い。
過去、「徳政令」を出してきた国であるだけに、庶民金融には格別の注意を払うべきなのだ。
日本がサラ金対策をしている事情を見ながら、これまで何らの対策を打たなかった。
こういう韓国政治の怠慢を厳しく問わなければならない。
身近な経済問題には無関心でも、「反日」となると生き生きと目を輝かせる。まさに、「感情8割、理性2割」の国民を証明している。
(5)「文氏は22兆6000億ウォン(約2兆3000億円)規模の不良債権を整理する方針も示した。
回収可能性がないのに、債務者の正常な経済活動を妨げていることが理由だ。
文氏サイドは203万人が恩恵を受けると試算している。
ただ、誠実に債務を返済する人との間で不公平が生じる『モラルハザード』の問題も生じる。
それについて、文氏は『債務減免は年齢、所得、財産、支出情報を細かく審査して実施するものとし、債務減免後に未申告の財産や所得が見つかった場合には、債務減免を無効とし、直ちに債権を回収する』と説明した」
すでに、回収不能な家計不良債権が、22兆6000億ウォン(約2兆3000億円)もあるというのだ。
約203万人が債務支払不能者である。
1人当たりでは113万円になる。
低所得層に対して、これだけの貸付をした金融業者の責任も追及されるべきだろう。借りる側も貸す側も、ともに無責任極まりない。返済できる範囲内で、借入や貸付のルールを設けることは不可欠である。
(6)「政府(国民幸福基金)が保有する債権のうち103万人、11兆6000億ウォン(約1兆2000億円)規模の『回収不能債権』を償却するとした。
李団長は『金融機関で回収不能と判断した債権を引き継いだものであり、償却費用がかかるわけではない』としながらも『モラルハザードを防ぐため、国税庁、保健福祉部(省に相当)、法務部などの政府機関を動員し、所得・支出動向を調べた上で、正常な経済現場に復帰させるようにする』と条件を付けた」
徳政令を出す場合、ただ債務棒引きで済む話ではない。
地方自治体と協力して、今後の生活が成り立つような支援こそ必要であろう。
債務を払えなかった理由が、病気か失業かを見極めて、それに応じた対策をとることだ。
ここまできめの細かい対策をとらないと、また徳政令発動の事態を招くであろう。
2003年も「クレジットカード」で救済措置を講じている。
この問題の経緯を見ると、韓国政府の安直な消費刺激策が浮かび上がってくるのだ。
韓国政府は民間消費を刺激するため2001年、クレジットカードの利用促進方策を導入した。
クレジットカード使用金額が、年間給与所得の10%を超える場合、超過額の10%が課税所得から控除(上限は30万円)されることになった。
これに伴い、カード発行競争の過熱からくる違法勧誘、個人の返済遅滞および破産の増加。
それに関連した犯罪の発生など、カード利用促進策の歪みが表面化した。
この問題解決策として、返済遅延者に対する金利の減免や、返済期間の延長など「個人ワークアウト制度」が導入された。
以上で見てきた通り、韓国経済の問題点の一つは、ルーズな家計債務の処理にある。
家計債務が秩序だって返済されず、最後は「延滞債権」として国家経済を揺るがす問題に発展している。
その繰り返しである。一度も抜本的な解決策がとられず、「徳政令」という対症療法に終わって、根本的な問題を先送りしてきた。
この民族が優秀であるとは言いがたい。
同じ失敗を二度、三度も繰り返す。その恥を知るべきなのだ。
(2017年8月1日)
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2017-08-01
韓国、「呆れた!」長期延滞80万人以上の借金棒引き策が登場
繰り返される「徳政令」
選挙中示した「文構想」
韓国人も中国人と同じである。
口では大変に立派なことを言うものの、借りた金を返さないという「契約精神」が欠如している。
儒教社会特有の現象だ。先進国のような市民社会の経験がないから、「契約概念」を知らない民族である。
一方では、学歴重視の社会ゆえ、口だけは達者で辟易する。言うこととやることが真逆である。
韓国政府は国家予算を使って、長期延滞中で返済能力がない約80万人の負債を全額減免することにしたと報じられた。
負債の一部でない。債務全額を減免する政策が出てきたのは今回が初めて。
長期延滞者が正常な経済活動ができるよう支援するためだと韓国政府は言っている。
繰り返される「徳政令」
『中央日報』(7月27日付)は、「長期延滞80万人に政府予算投入、負債減免を推進」と題して、次のように伝えた。
韓国では、これまで2回借金棒引きという「徳政令」が行なわれてきた。今回は3回目になる。
借金する側は、政権が変われば人気取りで「徳政令」をやるものと見込んでいる。だから、借金返済をしないで延滞しておくのだ。
こういうモラルハザードが常態化している。日韓慰安婦合意見直しの動きもこの類いの一環である。
韓国新政府は、15年12月の日韓政府間の合意を無視した行動に出ている。
すなわち、「日本政府提供の資金受領のほかに、日本政府へ個人賠償請求の道が残されている」と平然と発言している。
元慰安婦に対して、日本から貰えるカネなら何でも貰えという浅ましい姿勢を見せているのだ。
このように、韓国政府自身がモラルハザードに陥っている。ここまで来ると、ルーズな金銭感覚は、韓国の民族特性である。
(1)「崔鍾球(チェ・ジョング)金融委員長は7月26日、就任後初めて記者懇談会を開き、『長期少額延滞者のうち償還が難しい階層に対しては積極的に債務整理を支援する』とし、『具体的な案は8月初めに出す』と述べた。
これは文在寅(ムン・ジェイン)大統領が公約した国民幸福基金の長期少額延滞債権(10年以上、1000万ウォン以下)消却案を民間に拡大したものだ。
貸付業者が保有する長期延滞債権を政府予算で買い取った後に消却する方式だ」
「 国民幸福基金」は、朴槿恵・前大統領時代につくられた制度だ。
消費者金融の高い利子に苦しむ庶民や、連帯保証人になったため負債を肩代わりせざるを得なくなった庶民を助ける目的であった。
政府が、個人の債務返済額を最大半額に減額するとともに、低利で融資し最長10年かけて返済できるようにするもの。
長期延滞で苦しむ人の自活意欲を高め、経済の好循環を生み出すのが目標とされた。
この「国民幸福基金」の崇高な目標は、庶民のルーズな金銭感覚によって踏みにじられた。
民間金融機関でも、新たなモラルハザードだけを生んでいる。
長期少額延滞債権(10年以上、1000万ウォン=約100万円以下)消却案を提案せざるを得なくさせたのだ。
(2)「崔委員長は、『予算の確保によって変わるだろうが、少なくとも民間部門で(債権消却対象が)40万人以上になるだろう』と説明した。
従来の国民幸福基金保有債権のうち消却対象の長期少額延滞者は40万人。
したがって全体の『負債減免』対象者数は80万人を超えると予想される。
ただ、償還能力がない人に限り減免する。崔委員長は「モラルハザードの可能性を考慮し、償還能力を徹底的に審査する」と説明した。
法定最高金利も引き下げる。崔委員長は『施行令を改正して貸付業法の最高金利を24%に引き下げ、来年1月から施行する考え』と述べた」
どの程度の人数が「文徳政令」で救済されるのか。
① 民間部門で(債権消却対象が)40万人以上
② 従来の「国民幸福基金」保有債権のうち消却対象の長期少額延滞者は40万人。
以上の80万人以上が「文徳政令」の救済対象になるという。
このほか、貸金業法の改正で最高金利を24%に引き下げる方針という。
韓国貸付金融協会が16年1年間、司法当局と消費者から依頼された計310件の不法消費者金融取引の内訳を分析した結果、平均利子率は2279%にも達していた。
この目もくらむ暴利を許しておくこと自体が政府の怠慢である。これでは借金返済は不可能だ。
国民幸福基金に申請した人は2013年10月末までに24万人。このうち21万人が対象となった。
国民幸福基金のほかにも似たような制度が7つあり、合わせて66万人の返済額が減額されたという。
66万人が、「債務返済額を最大半額に減額するとともに、低利で融資し最長10年かけて返済できるようにする」という恩恵を受けた。
日本では「サラ金」の貸出金利の上限引き下げを行い、過去の金利過剰支払いは業者に返済させる措置を講じた。
この措置では、業者に経営のしわ寄せが行ったものの、借り入れ側は救済されて、「モラルハザード」は起こらなかった。
韓国では、政府自らが財政資金を投じて、借り入れ者の救済をするというもの。
韓国の徳政令は3度目である。
不心得者は、「次もあるのでないか」と期待するのは当然だ。
現に、今回の「文徳政令」を招いている。
日本の室町幕府8代将軍足利義政が、徳政令を13回もやっている。
まさに、「モラルハザード」の最適例であろう。
韓国経済の将来を考えると、こうした徳政令の繰り返しが大きな禍根を残すはずだ。5年後の2022年には、さらに大がかりな徳政令を打ち出すに違いない。
ここで、文在寅氏が大統領選挙中にどのような「徳政令」構想を持っていたかを振り返っておきたい。
選挙中示した「文構想」
『朝鮮日報』(3月17日付)は、「韓国大統領選、文氏、貸出金利上限20%、家計債務制限構想」と題して、次のように報じた。
韓国政治を見て気づくことは、何ごとも後追いである。
問題が起こってから、「さあ、どうしよう」というタイプである。
いわゆる高金利のヤミ金融問題は、韓国で深刻化していたが、規制を加えるわけでもなかった。
日本が上限金利を20%と決めており、それ以上の金利を禁止したのと比べ、借入側の法的保護が疎かになっていた。
(3)「韓国大統領選で野党共に民主党の有力候補である文在寅(ムン・ジェイン)氏は、『韓国の家計債務は昨年末現在で1344兆ウォン(約135兆円)に達し、不良債権化のリスクが非常に高い。
モラルハザードが発生する可能性がある部分への補完策が見えない』と述べた。
文氏はまず、『家計債務総量規制』を導入し、可処分所得に占める家計債務の割合を150%に抑制するとの目標を設定した上で、それに沿って家計債務が無限に膨らまないような政策を取ると表明した。
特に庶民層の金利負担を軽減するため、現在最高27.9%となっている貸金業者の金利をまず一般銀行の貸出金利上限である25%まで引き下げ、任期中に銀行とそれ以外の金融機関の貸出金利上限を20%にそろえる構想を明らかにした」
文氏は、「家計債務総量規制」を導入し、可処分所得に占める家計債務の割合を150%に抑制すると言う。
確かに、一定の貸出枠を設けることは必要としても、現在最高27.9%となっている貸金業者の金利をまず一般銀行の貸出金利上限である25%まで引き下げることだ。
それにしても、法制化が遅すぎた。
実は2年前、家計債務が急増し始めたころ、銀行貸出から締め出された人々が、高い金利の貸金業者へ殺到していた
。私のブログでもこの問題を取り上げたほどである。
ただ、日本の貸金業者が、かなり韓国へ進出している。日本で儲からなくなったので韓国へ進出した事情もあるのだろう。
こうなると、日本の金融業者もかなり荒稼ぎしていたことになる。
(4)「(共に民主党の)非常経済対策団の李庸燮(イ・ヨンソプ)団長は、本紙の電話取材に対し、『貸金業者が受ける衝撃もあるため、任期中に段階的に引き下げるという意味だ』とした上で、『日本は既に金利上限を20%に設定している』と指摘した。
これに先立ち、庶民金融振興院による既存の10%中金利庶民融資を活性化させるとした。生計費、起業費用など用途別に融資を細分化し、庶民による貸金業者の利用を抑える狙いだ」
韓国政治には、「泥棒を捕まえて縄を綯う」という無計画な側面が多い。
過去、「徳政令」を出してきた国であるだけに、庶民金融には格別の注意を払うべきなのだ。
日本がサラ金対策をしている事情を見ながら、これまで何らの対策を打たなかった。
こういう韓国政治の怠慢を厳しく問わなければならない。
身近な経済問題には無関心でも、「反日」となると生き生きと目を輝かせる。まさに、「感情8割、理性2割」の国民を証明している。
(5)「文氏は22兆6000億ウォン(約2兆3000億円)規模の不良債権を整理する方針も示した。
回収可能性がないのに、債務者の正常な経済活動を妨げていることが理由だ。
文氏サイドは203万人が恩恵を受けると試算している。
ただ、誠実に債務を返済する人との間で不公平が生じる『モラルハザード』の問題も生じる。
それについて、文氏は『債務減免は年齢、所得、財産、支出情報を細かく審査して実施するものとし、債務減免後に未申告の財産や所得が見つかった場合には、債務減免を無効とし、直ちに債権を回収する』と説明した」
すでに、回収不能な家計不良債権が、22兆6000億ウォン(約2兆3000億円)もあるというのだ。
約203万人が債務支払不能者である。
1人当たりでは113万円になる。
低所得層に対して、これだけの貸付をした金融業者の責任も追及されるべきだろう。借りる側も貸す側も、ともに無責任極まりない。返済できる範囲内で、借入や貸付のルールを設けることは不可欠である。
(6)「政府(国民幸福基金)が保有する債権のうち103万人、11兆6000億ウォン(約1兆2000億円)規模の『回収不能債権』を償却するとした。
李団長は『金融機関で回収不能と判断した債権を引き継いだものであり、償却費用がかかるわけではない』としながらも『モラルハザードを防ぐため、国税庁、保健福祉部(省に相当)、法務部などの政府機関を動員し、所得・支出動向を調べた上で、正常な経済現場に復帰させるようにする』と条件を付けた」
徳政令を出す場合、ただ債務棒引きで済む話ではない。
地方自治体と協力して、今後の生活が成り立つような支援こそ必要であろう。
債務を払えなかった理由が、病気か失業かを見極めて、それに応じた対策をとることだ。
ここまできめの細かい対策をとらないと、また徳政令発動の事態を招くであろう。
2003年も「クレジットカード」で救済措置を講じている。
この問題の経緯を見ると、韓国政府の安直な消費刺激策が浮かび上がってくるのだ。
韓国政府は民間消費を刺激するため2001年、クレジットカードの利用促進方策を導入した。
クレジットカード使用金額が、年間給与所得の10%を超える場合、超過額の10%が課税所得から控除(上限は30万円)されることになった。
これに伴い、カード発行競争の過熱からくる違法勧誘、個人の返済遅滞および破産の増加。
それに関連した犯罪の発生など、カード利用促進策の歪みが表面化した。
この問題解決策として、返済遅延者に対する金利の減免や、返済期間の延長など「個人ワークアウト制度」が導入された。
以上で見てきた通り、韓国経済の問題点の一つは、ルーズな家計債務の処理にある。
家計債務が秩序だって返済されず、最後は「延滞債権」として国家経済を揺るがす問題に発展している。
その繰り返しである。一度も抜本的な解決策がとられず、「徳政令」という対症療法に終わって、根本的な問題を先送りしてきた。
この民族が優秀であるとは言いがたい。
同じ失敗を二度、三度も繰り返す。その恥を知るべきなのだ。
(2017年8月1日)