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韓国、「大統領府」元学生運動家に牛耳られ突飛な政策連発

2017-08-03 17:39:51 | 日記

勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。

2017-08-03 05:00:00

韓国、「大統領府」元学生運動家に牛耳られ突飛な政策連発

「86世代」が支配の青瓦台

ソウル大学廃校狙う黒い集団

 文在寅(ムン・ジェイン)政権は、「86世代」と言われる学生運動の活動家上がりの人々に囲まれている。

この一群が大統領府に集まって奇策を連発しているのだ。

「86世代」とは、1960年代生まれで80年代に学生生活を送り、民衆蜂起の「光州事件」(1980年)に何らかの関わりがあるという共通条件を持っている。それ故、「反米・親中朝」の意識が強い。

 ここから示唆される点は、「86世代」が反資本主義者であることだ。

反市場主義=反企業主義を鮮明にしている。

企業と聞けば財閥を先頭にして民衆から利益を収奪する「反倫理的集団」と決めつけている。

極めて単純な思考の持ち主である。

 なにやら、毛沢東思想を連想させるが、「86世代」は大統領府に席を占めた以上、これまでの夢を実現したいと願っているはずだ。

光州事件では火炎瓶を投げつけながら、社会改造計画を熱く語り合ったであろう。

あの事件から37年目を迎える。20歳の学生も57歳になった。人生の夢を大統領府で語り合い、実現に向けて結束しているのだ。

 「86世代」が支配の青瓦台

『朝鮮日報』(7月30日付)は、「衝撃的な実験の日々が続く大韓民国」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙の主筆である楊相勲(ヤン・サンフン)氏だ。

 朝鮮日報主筆とは、論説の最高責任者である。韓国言論界の時局認識を示しているであろう。

その意味で、このコラムは文在寅政権への「評価」の一つと言える。

 国家の基本に関わる重大事項の決定が、大統領府(青瓦台)の「86世代」だけで決められていることは異常と言うほかない。

日本であれば、しかるべき専門家を集めた審議会で議論されるのが普通だ。

文政権では、それが完全に省かれている。一握りの「元学生運動家上がり」が、適当に話合って「布告」する独裁である。

後で取り上げる原発建設中止は、たった20分の閣議で決められたという。

まさに、「衝撃の事実」だ。これでは、国会も官庁スタッフも不必要である。

文在寅政権に、朴槿恵(パク・クネ)前政権の独断ぶりを批判する資格はない。

(1)「一度の大統領選挙を終え、これだけさまざまな大規模実験を短期間にされるのは初めてではないか。

『非正社員ゼロ』は公共機関から始まり、民間企業へと圧力が広まっている。

非正社員が存在せざるを得ない原因は放置したままで、その結果だけをなくせという政策理論はない。

持ちこたえられない企業が数カ月で耐えられるようになるだろうか。

非正社員を子会社の正社員にするというが、その子会社はどうやってその負担に耐えるというのか」

 時給の最低賃金は、2000年までに1万ウォン(約1000円)に引き上げるという。

その時点で日本の時給と逆転する。

ちなみに、日本の今年の平均最賃は848円(3%アップ=25円)である。

韓国政府は来年から最賃を16.4%引き上げ750円にする。

韓国の零細企業には、それを支払える能力がないのだ。そこで、財政から3000億円を補給して、時給引き上げを後押しする。

 問題は、財政支援の最低賃金引き上げが、あたかも「善政」という意識で行なわれていることだ。

恵まれない人々の低賃金を政府の暖かい支援で引き上げる。

この「善政」の影で、経営的に行き詰まる零細企業が続出する懸念もある。こうなると、「善政」は「悪政」へと成り下がるのだ。

 これまで、低賃金であった裏には、そうさせた理由があるはずだ。

生産性の低さ、製品納入先の買い叩きなどの要因がある。

そこを改善しないで、財政資金をつぎ込んでも無駄になろう。

政府のやるべきことは制度改革の優先である。「大衆迎合政治」の文政権は、即効性による「ウケ」を狙っている。スタンドプレーが強すぎる政権だ。

(2)「最低賃金を一気に時給1万ウォンに上げることも過去にはない実験だ。

これでは数多くの自営業者、限界企業は持ちこたえられないはずだ。

新政権は国民の税金で民間企業の従業員の月給を支払うから賃金を上げろという。

そんな発想ができるというのは驚きだ。弱い企業から廃業したり、国を離れたりするだろう。

今は経済政策の基本的枠組みを覆さなければならないのだという。

経済成長で所得を増やすのではなく、税金で所得を増やし、経済を成長させるのだという。

一部の階層に税金を分配し、富の分配を改善するというのは聞いたことがある。

しかし、それで経済成長まで図るというのだからまるでマジシャンだ。成功すれば文在寅(ムン・ジェイン)政権は団体でノーベル経済学賞を受賞するだろう」

経済成長の基本は、企業活動を活発化させて生産性を引き上げ、それが賃上げに結びつくものだ。

文政権は、前段部分は「企業性悪論」で否定している。

よって、賃上げをすれば家計所得が増えて個人消費も上昇するという面だけを取り上げている。

中国の最賃引上が何をもたらしたか。生産性を上回る賃上げが、企業収益を悪化させて設備投資意欲を阻害している。

「反米・親中朝」は、経済政策面に現れている。

反米=反市場主義、親中朝=賃金先行引き上げという、妙な符節を合わせているのだ。「86世代」の「反米・親中朝」は、韓国の経済や安保の政策に深い傷を残すと見られる。

 (3)「数年前、国際労働機関(ILO)に所属する左派の学者が『賃金主導の成長』を主張した。

それを韓国で翻訳して紹介した人物が現在、大統領府(青瓦台)の経済担当首席秘書官だ。

文大統領がその虜になり、セミナーも開いたという。

彼らは自分たちが信奉する理論を全国民に対して実験する機会を得た。

米国、日本、欧州でも部分的にこうした実験的アイデアを政策化した例はあるという。

しかし、全面的、全方位的に適用するのは韓国が世界で初めてだ。

とはいえ、韓国よりも経験豊富で優れた先進国がこれだけ容易で人気がある『所得主導の成長』をなぜ全面的に導入しないのかという常識的な疑問が残る。

今後も教育実験、税金実験、安全保障実験などが続くはずだ」

文在寅氏は、性格的に鳩山由紀夫氏と似ていると思う。

簡単に他人の意見に影響される軽いタイプと見られるからだ。

鳩山氏が沖縄基地問題で混乱したのは、一人の反米安保主義者の意見に引きずられたことだ。

文氏は、「賃金主導成長論」を翻訳した韓国人学者の意見に心酔しているという。

その学説が、実際に導入されて成功した国はあるのか。そういう例も調べずにOKを出す。韓国経済を実験の舞台に乗せるリスクに気づかないのだ。

 文氏は、多くの学者を側近に採用している。

多分、若いときに学者志望であったが経済的な理由で叶わなかった。

その満たされなかった夢が、「学者内閣」を組織させている理由でなかろうか。

とすると、この「学者病」は簡単には直らないであろう。5年間の大統領任期中、学者の夢に引きずられ何らの成果も上げずに終わるであろう。

(4)「世界で最も模範的に運用している原子力発電所を突然怪物扱いし、『止める』という実験も「まさか」と思ったが、本当に実行してしまった。

『原発事故の確率はゼロではない』というが、そんなことを言っていれば、人は家の外に出られないはずだ。

判断基準となるべき合理的なラインというものがある。

韓国は、地震などで福島のような原発事故が起きる可能性が『ゼロ』でないから、原発は廃止しなければならないと言うのなら、世界中の原発は全てなくさなければならない。

原発を気に掛ける人はどうしてもいるわけだが、そうした人を説得するのが政府の仕事なのに、むしろ政府が先頭に立っている。前例がない実験的状況だ」

 韓国の原発問題は、簡単に結論を出せる話でない。

現に、福島原発の事故後に補強工事も行なって安全性に一段の注意を払ってきたからだ。

それを、たった20分の閣議で建設工事中止とは、「86世代」の奢りとしか言えない。

今後は、市民審判団という技術的に素人を集めて議論=決定するという。

政府は一切、関わりを持たずに決めさせるとは、余りにも無責任な行政である。

国策である原発の存否を民間の素人集団の決定にゆだねる。

明らかに、将来起こる問題の責任を回避しようとする遠謀だ。

これが、学生運動上がりの集団が行なう理念先行行政の実態である。最終責任を取らない。ただ破壊だけが目的の「火焔瓶型」政治手法であろう。

 (5)「太陽光、風力発電など再生可能エネルギーが、原発の代わりになるというのは実験以前の問題だ。

実験とは『そうなる』という蓋然性を前提として行われるものだ。

韓国の自然条件が太陽光や風を大規模なエネルギー源として使う上で適さないという点は不幸なことに現実であり事実だ。

1%にもならない再生可能エネルギーの割合を少しずつ高めていく必要はある。

しかし、国の電力の30%を担う原発に代えることはできない。韓国が再生可能エネルギーを研究しなければならないのは、原発の代わりではなく、(原発が)自然条件が適した国に輸出するためだ」

 原発を中止した後のエネルギー政策はどうなるのか。

文政権は自然エネルギーで補うとしている。

だが、韓国では地勢上、大規模な太陽光や風力の発電に向かないとされている。

このことは、すでに周知のこととされていた。文政権は、こうした根本的な欠陥を抱える自然エネルギー供給問題を最初から無視してきた。

ただ、大衆受けだけを狙って、「脱原発」ありきで進んでいる。

仮に、この「脱原発」が上手くいけば、その成果は文政権がとる。

失敗すれば、原発廃止を決めた民間審判団に転嫁させるであろう。極めて狡いことをやろうとしているのだ。

 「86世代」は、以上に見てきたように老獪そのものの振る舞いをしている。では、その具体的なメンバーを紹介したい。

 ソウル大学廃校狙う黒い集団

『朝鮮日報』(7月31日付)は、「学生運動主導者が牛耳る韓国大統領府」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙論説委員の李河遠(イハウォン)しである。

 このコラムを読むと、寒気がするほどのショックを受けるだろう。

大統領府が学生運動活動家に「占拠」された形であるからだ。

この人事を承認したのは、むろん文在寅氏だ。

これだけ、昔の学生運動家上がりを集めたところに、儒教社会特有の「群れる」習性がいかに強いかを物語っている。

 もう一つの注目点は、彼らの最終学歴である。

エリート大学とされる、ソウル大・高麗大学・延世大の出身者がいないことだ。

文在寅氏もソウル大学を受験して失敗、1年浪人後、慶熙大に入学した。私は、彼らの出身大学について品定めしようという目的ではない。

なぜ、こういう話をするかと言えば、大統領府では後述の通り、ソウル大学を廃校させるという仰天するような話を進めているからだ。

仮に、大統領府の実力者にソウル大卒業生がいれば、絶対に表面化しないであろう。

それが公然と出ている。ソウル大へのジェラシーが原因と思われるのだ。

この「86世代」は、多分に感情論で政策を議論している気配が濃厚だ。

学生時代に入学できなかったソウル大学への妬みが今、廃校という形で噴出させている。これほど隠微な話があるだろうか。

 (6)「大統領府が主導する争点のキーワードは、米国と反核だ。

この二つの措置は、一体どんな背景から出てきたものなのか。

両者の間に関連性はないのだろうか。

この状況を理解するのに一助となる運動圏(左翼系の学生運動グループ)の歌が『反戦反核歌』だ。

1980年代に学生運動の主軸である全国大学生代表者協議会(全大協)で何度なく歌われた歌だ。

集会の主導者が『反戦、反核、ヤンキー・ゴー・ホーム』と叫び、これに呼応するかのように『大合唱』した光景が、今でも目に焼き付いている。

米国は、南北統一を妨げる侵略者と見立て、戦術核兵器を追い出そうといった趣旨の歌だ。その頃でさえも話にならないといった主張は多かった」

 大統領府に陣取る「86世代」は、「反戦、反核、ヤンキー・ゴー・ホーム」と集会後にシュプレヒコールで叫んでいたという。

「反米・親中朝」マインドは、学生時代かから培われた強烈なものである。

 (7)「『共に民主党』が大統領選挙で勝利して以降、80年代の集会でこの歌を先唱した全大協の幹部たちが一人、また一人と大統領府に採用されていった。

この事実こそ注目する必要がある。

秘書官クラス以上の大統領府秘書室の要職に、全大協所属の総学生会長、総女子学生会長として活躍した運動圏の10人が任命された。

全大協で昔議長を務めたイム・ジョンソク秘書室長以外に、文大統領が毎日顔を合わせる3人の側近といえば、国政状況室長、第1、第2付属秘書官だ。

これらの人物は、国民大、釜山大、梨花女子大の総学生会長としてイム室長と同じ時期に全大協で活動したメンバーだ。

政務企画、政務秘書官も、全北大、円光大の『総学生会長』経験者だ。

春秋館長は国民大の総学生会長を、市民社会秘書官は全北大の総女子学生会長をそれぞれ務めた。全大協連帯事業局長、文化局長を務めた人物は、それぞれ民政秘書官と演説秘書官を担当することになった」

 1980年代、学生運動の主軸である全国大学生代表者協議会(全大協)の幹部達が、大統領府で採用されているという。

秘書官クラス以上の大統領府秘書室の要職に、全大協所属の総学生会長、総女子学生会長として活躍した学生運動上がりの10人が任命されている。

これを見ただけで、今後の韓国政治が向かう方向がはっきりしている。反企業=反市場=反米国であろう。私は、この路線は必ず行き詰まると見る。

 彼らの出身大学は、国民大、釜山大、梨花女子大、全北大、円光大等である。

前記のエリート大学ではない。

それだけにソウル大への「敵意」は相当なものであろう。

社会へ出てからも差別をうけたに違いない。

その恨みが、「ソウル大廃止論」という歪んだ形で出ているのだろう。

 (8)「イム室長が指揮する26人の秘書官のうち実に9人(34%)が全大協で活動した経験を持つ人物なのだ。

これら以外にも大統領府の至る所で全大協上がりの人物たちが行政官として布陣し、政策を指揮している。

『全大協は文在寅政権のキッチンキャビネット(非公式の実勢グループ)ではないか』『大統領府は全大協に乗っ取られたようだ』などという言葉が決して大げさではないことがよく分かる」

 イム・ジョンソク秘書室長が指揮する26人の秘書官のうち、実に9人(34%)が全大協で活動した経験を持つ人物だという。

これでは、毎日が同窓会気分であろう。緊張感のある行政が行なわれるか疑問である。

馴れ合いが多発しても不思議はない。

 (9)「民主労働党のチュ・デファン元政策委員会議長は、大統領選挙の前から、文大統領が80年代の論理のとりことなっている運動圏の勢力にまんまと丸め込まれている、と批判してきた。

事実上重要な政策決定は運動圏上がりが下し、文大統領は単なる『顔だけの人』というわけだ。

こうした脈絡から、大統領府がTTHAAD配置の延期を決断した背景には、過去『米国のやつら』と口走ってきた反米運動圏グループが見え隠れする」

 文在寅大統領は、「86世代」に取り囲まれている。

口八丁手八丁の学生運動家上がりに囲まれて、単なる「イエスマン」になる危険性はないだろうか。

大統領府の布陣を見ると、絶望的な気持ちになる。

 最後に、「ソウル大廃止論」の根拠を取り上げたい。

 『韓国経済新聞』(7月28日付)は、「『ソウル大学廃止論』は生きている」と題するコラムを掲載した。

筆者は、同紙のアン・ヒョンシル/論説・専門委員である。

(10)「2004年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府で初めてソウル大学廃止論が出てきた時と今とは異なる。

盧武鉉元大統領はソウル大学廃止論に反対した〔金秉準(キム・ビョンジュン)当時青瓦台(チョンワデ、大統領府)政策室長の伝言〕だが、文在寅(ムン・ジェイン)大統領もそうする保障はない。

大統領選挙の公約から外れたと安心するには早い。

金相坤(キム・サンゴン)副首相兼教育部長官の就任の辞はこの政府が「序列化」「競争」「不平等」を同じ仲間と認識していることを見せている。

学費半額、ブラインド面接、国立大学統合論などの流れが結局『大学平準化』に合流するというシグナルだ」

 ソウル大は、戦前の日本が創立した京城帝国大学(1924年)である。

大阪帝国大学(1931年)や名古屋帝国大学(1939年)よりも創立が古い。

この歴史から言えば、韓国では文句なしの最高峰であろう。

それ故に、韓国特有の学歴社会の歪みを生む「元凶」とされる理由も分かる。

だが、一国の文化のバロメーターは、創立が古く実績のある大学や研究所をもっていることにある。まさに、文化遺産であるのだ。

 そのソウル大学を、こともあろうに「大学平準化」という流行の公平論で潰してしまえという議論は、余りにも乱暴で「嫉妬」の塊に見えるのだ。

韓国社会特有の現象であろう。問題は、ソウル大学の研究実績を上げるように支援することだろう。4

もしも、ソウル大学を潰すことがあれば、韓国の文化・研究・教育もこれで終わりというシグナルになる。 

(2017年8月3日)