韓国経済にウォン大幅下落の難題、文政権は「反日」で乗り越えられるか
8/13(火) 6:01配信
(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
● アジアの通貨市場で 韓国ウォンの下落が目立つ
7月上旬以降、アジアの通貨市場で韓国ウォンの下落が目立つ。
この間、ドルに対する為替レートの変化率を見るとウォンは5%近くも下落した。
8月に入りドル高・人民元安が注目を集めているが、ウォンの売られ方はそれよりも大きい。
その上、日本の対韓輸出手続きの見直しは、韓国経済にかなりの影響を与える可能性がある。
1980年代後半以降、韓国は日米半導体協定に乗じる形で、日本などから半導体の生産に必要な技術を吸収した。
それをもとに、韓国は、日本から高純度のフッ化水素や精度の高い半導体製造装置などを輸入し、サムスン電子を筆頭とする財閥企業などがICチップを大規模に生産できる体制を整えたともいえる。
特定3品目の対韓輸出手続きの見直し(リスト規制)に加え、わが国が韓国を“ホワイト国”から除外したことは、韓国経済のファンダメンタルズ悪化に直結する問題だ。
調達に従来以上の時間とコストがかかるようになれば、韓国企業がスムーズに生産を行うことは難しくなるだろう。
加えて、足元、世界的に半導体の生産能力は余剰気味だ。韓国の生産落ち込みを台湾勢などが取り込むことは可能だろう。韓国経済はかなり深刻な状況を迎えつつあるようにみえる。
● 限界を迎える 韓国の中国依存
ウォン安には、中国に依存した経済運営が限界を迎えるとの懸念も影響している。
韓国にとって中国は最大の輸出先だ。輸出の25%は中国向けであり、香港を加えると30%を超える。
中国経済は成長の限界に直面している。
当面、習近平国家主席はインフラ投資や補助金の積み増しによって景気を支えようとするだろう。
ただ、景気刺激策がどの程度の効果を発揮するかは不透明だ。
なぜなら、中国国内では耐久消費財や社会インフラの需要が飽和し、投資効率が低下しているからだ。
韓国が中国の経済成長を当てにして自国の経済運営を続けていくことは難しくなっている。
それに加え、米中摩擦には、米国と中国の“覇権国争い”という側面がある。これは、長期的な世界経済の変化だ。
韓国経済にとって、米中摩擦は、無視できないリスク要因だ。摩擦の激化とともに、韓国は、米国と中国の“板挟み”になる可能性がある。
今後、米国は自国だけでなく同盟国の企業にも、ファーウェイなどとの取引を制限するよう、再度、圧力をかける可能性がある。
それが現実のものとなれば、韓国経済にはさらなる下押し圧力がかかるだろう。
サムスン電子にとって、ファーウェイは最大の顧客だ。
取引が困難になることの影響は計り知れない。
加えて、中国が韓国に報復する展開も考えられる。2017年、中国は、在韓米軍へのTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)の配備に対抗し、韓国向け団体旅行の制限などの報復を行った。
これによって、韓国経済にかなりの下押し圧力がかかったことは記憶に新しい。
また、中国の科学技術分野での進歩は目覚ましい早さで進んでいる。日本に依存して半導体を生産してきた韓国に、自力でゼロから新しいモノを生み出す力があるか否かはかなり不確かだ。
一方、ファーウェイの半導体製造能力やIT、通信関連機器の開発力にはすさまじいスピードがある。
中国の科学技術力は韓国を上回っていると考えられる。
米中摩擦という世界経済の大きな変化の中で、韓国は動力源を失った小舟が大海を漂流するかのような状況に直面する恐れがある。
● 先行き懸念高まる 韓国経済
韓国ウォンの下落には、日本の輸出手続きの見直し以外にも、世界的な半導体需要の落ち込み、中国経済の減速、米中摩擦などさまざまな要因が絡み合っていることがわかる。
当面、韓国からは資金の流出が続く可能性がある。なぜなら、経済を支えてきた財閥企業の経営悪化に加え、労働争議、政治不安など、懸念材料が多いからだ。
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