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マンションの管理が崩壊するとき

2018-11-04 17:44:27 | 日記
マンションの管理が崩壊するとき

ドキュメント日本

社会 2018/11/4 17:12

 全国で増加する老朽化マンション。計画の甘さや修繕費、管理費の不足から快適な住環境の維持が困難になる物件がある。空室が生じにくい都心でさえ、こうした問題とは無縁ではない。分譲から年月が過ぎ「管理崩壊」の危機に直面した2つのマンションの実態を取材した。(定方美緒)


天井をつたう排気管からの雨漏りを防ぐためタオルを結びつけるマンションの居室(10月、東京都内)



天井をつたう排気管からの雨漏りを防ぐためタオルを結びつけるマンションの居室(10月、東京都内)

東京都新宿区にある約80戸のマンションの一室。リノベーションされた天井の排気管に雨漏り対策のタオルが結びつけられていた。

住民の女性はリノベできる物件を探し、この部屋を選んだ。しかし、雨予報が出れば水が落ちる場所に皿をセット。大雨の夜には就寝後、1度起きて水を流す暮らしを強いられている。

築40年近く。住民から「雨漏りがする」と声が上がり始めたのは4年前のことだ。2017年秋のアンケートで20戸以上に雨漏りがあることが判明。水で床が緩み壁紙がはがれた部屋もある。

ここまで建物がいたんだのは修繕積立金の不足が原因。7割以上が賃貸に出されており、未収率は1割を超えていた。

緊急の対策が必要と感じたリノベ物件の女性は管理組合の理事長に就任。修繕へ向けて動き出した。女性は「分譲時から一度も値上げしていないことも資金不足につながった」と説明する。

45平方メートルの部屋の修繕積立金は月約3500円。1平方メートルあたりに換算すると76円で、国がガイドラインで示す218円の3分の1の水準だった。

管理組合はマンション管理士に相談しながら5千万円借り入れ、改修することを決めた。

管理会社を変更して管理費を節約。その分で10月から修繕積立金をガイドラインまで引き上げた。現在、防水のために外壁や塗装を修繕する作業が進む。


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豊島区の繁華街にある築37年、世帯数9戸のマンションは管理が完全に崩壊。外壁には深いひびが走り、基部だけ残った塀の周囲にはごみが散乱している。



豊島区のマンションで老朽化の状況を説明する中山さん。外壁に亀裂が目立つ(10月、東京都豊島区)



豊島区のマンションで老朽化の状況を説明する中山さん。外壁に亀裂が目立つ(10月、東京都豊島区)

マンション管理士の中山孝仁さん(65)は「長年積み立ててきたお金が消えていた」と、管理の支援に入った15年当時を振り返る。

金を預かっていた不動産業者から返却された通帳の残高は130万円だった。各戸の積立金は月約1万円。修繕実績はほとんどなく、帳尻が合わない。

エレベーターメーカーからは「部品の生産が終わり、修理ができなくなる」と交換を求められているが、その資金はない。水道設備の破損は応急処置でしのいだ。

もともと外国人の入居者が多く、現在の区分所有者は全員が台湾人。

中山さんは管理不全のマンションを支援する国のモデル事業に応募。住民の責任者を決めて管理の再建にあたる。借り入れはせず、積立金を使って段階的に修繕を進める予定だ。

物件で最後の日本人だった70代の女性は新築時に入居した。

今後の修繕に不安を感じて退去を決め、2年前、部屋を台湾人所有者に買い取ってもらった。

「入居時はきれいでこぢんまりとして、気に入っていたのに」

今は新しいマンションも必ず老いる。国土交通省の調査によると、老朽化対策について議論している管理組合は4割に届かないという。

数十年後、気付いたときには管理不全になっていた――。危うさを内包する物件は多いかもしれない。


◇  ◇


■増加ペース上がる「築40年」超


国土交通省によると、2017年末時点のマンションの総戸数は644万1千戸で、1533万人が居住する。ここ数年の新規分譲は10万戸前後。

ピークだった2007年には22万7千戸が供給された。

分譲戸数が急伸したのは1980年代。今後、築40年を超える物件は大幅に増える。17年末時点で築40年を超えたマンションは72万9千戸で全体の11%程度だった

築40年超のマンションは2027年に184万9千戸、37年には351万9千戸になると予測されている。

国交省が5年に1度実施しているマンション総合調査(13年度)によると、回答を得た2324件の管理組合のうち、老朽化対策について議論している管理組合は35.9%にとどまり、8%は長期修繕計画を作成していなかった。


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