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四面楚歌の韓国、さらに続く「大統領不在」

2017-03-17 20:41:40 | 日記
四面楚歌の韓国、さらに続く「大統領不在」

日経

一部省略

2017/3/10 14:10

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が10日、憲法裁判所の罷免決定により失職した。

国会の弾劾訴追を受けた職務停止から3カ月、韓国は輸出産業の不振や内需伸び悩みで景気が低迷するなか重要な政策決定など政府の機能はほぼ止まり、

一方で北朝鮮の核・ミサイルによる挑発が激化している。

内政・外交とも四面楚歌(そか)の韓国は次期大統領選まで、さらに2カ月間の「大統領不在」を強いられることになった。

「4月危機説」「97年のアジア通貨危機、08年のリーマン・ショックに続く10年周期の経済危機説」――。

今年に入って、韓国の金融市場でこんな噂が相次いでささやかれた。

 実際、今までの成長をけん引した輸出産業が総じて振るわない状況で、民間消費をはじめ内需の冷え込みは深刻さを増している。

 若年層の失業率が過去最高になるなど雇用拡大は期待できず、家計負債の総額は1300兆ウォンを超え、実質所得と消費支出はともに減少に転じた。

16年9月に施行した金品授受や不正な口利きを厳しく規制する法律も、外食産業や贈答品の需要減退に追い打ちをかけた。

■大手財閥への捜査「サムスン以外」にも


 こうした状況を受けて、韓国銀行(中央銀行)は17年の実質国内総生産(GDP)成長率見通しを2.8%から2.5%に下方修正した。

輸出の増加でなく内需不振による「不況型の経常黒字」が継続。

これが通貨ウォン高による輸出環境の悪化を招く悪循環に陥っている。

外貨準備高は約3700億ドル超と高水準を維持しているものの、外国人投資家の資金流出などへの不安をぬぐえずにいる。

 それだけではない。弾劾訴追の主因となった

朴槿恵氏の友人、崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入事件に絡んで、

最大の財閥、サムスン電子の事実上のトップ、李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が逮捕され、

サムスンはグループの司令塔である「未来戦略室」を廃止した。

 今後、検察当局は罷免された朴槿恵氏本人の拘束も念頭に、一連の疑惑に関する捜査を続行する構え。

サムスンに加えて、SKやロッテなど大手財閥グループのトップを含む捜査を強化する見通しだ。

韓国内には「政府と財閥企業の癒着を断つ契機になる」など財閥企業の透明性向上を期待する意見もあるが、

当面は大手財閥企業の強みだった迅速な意思決定や大胆な投資戦略の障害となるのは確実だ。

 一方、「指揮官不在」の影響は、外交分野で一段と大きい。

南北朝鮮の対話は途絶して久しいが、北朝鮮は2月12日の新型の弾道ミサイル「北極星2型」を発射したのに続き、

3月6日には移動式の「スカッドER」とみられる弾道ミサイルを4発同時に発射した。

3月1日に始まった米韓合同軍事演習に猛反発する北朝鮮は、さらなる挑発をちらつかせており偶発的な衝突への懸念が強まる。

北朝鮮はマレーシアで2月に発生した金正男(キム・ジョンナム)氏殺害事件でも、北朝鮮は「韓国の謀略」と主張する。

 くわえて、周辺国との懸案も山積している。

日韓関係は、旧日本軍の従軍慰安婦を巡る少女像の撤去問題を巡り、駐韓大使の一時帰国が2カ月を超えた。

大統領選出馬をめざす候補の多くは、日本政府が求める「撤去」に否定的で、15年末の日韓合意を白紙に戻すとの主張も目立つ。

 韓国の最大の貿易相手国である中国とは、在韓米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)新設に反発する中国との関係が急速に悪化。

中国は、韓国ロッテの一部店舗の営業停止や韓国旅行取り扱いの中断など、次々に「報復」とみられる措置を繰り出すが、韓国政府は対策を取れずにいる。

■強まる北朝鮮の挑発、日米中とも難題山積

 さらに、米トランプ政権の発足に伴い、米韓自由貿易協定(FTA)は再交渉を迫られ、英国の欧州連合(EU)離脱交渉が本格化すれば、韓国とEUのFTAにも影響するのは必至。

輸出依存度の高い韓国にとって、不安要素は拡大する一方だ。

 これら主要国との外交環境の変化に伴い、緊急時に通貨を融通し合う通貨交換(スワップ)協定にもほころびが生じている。

少女像問題で日韓間の協議が止まり、10月に期限を迎える中国との延長協議も見通しが立たない。

10年に契約が終了した米国とのスワップ協定も再開交渉にいたっていない。

 朴槿恵氏の罷免を受け、次期大統領選は5月9日までに投票されると決まった。同時に、今後2カ月間は「大統領不在」が続くことも確定した。

通常の大統領選は当選から就任まで約3カ月間の「準備期間」があるが、今回は当選と同時に職務を始めなければならない。

 その間、北朝鮮は故金日成主席の生誕105年(4月15日)や朝鮮人民軍創建85年(4月25日)などを控える。

金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は節目に合わせて軍事力を誇示してきたが、今回も6回目の核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の「KN08」発射に踏み切るのではとの観測もある。

 韓国紙、中央日報(8日付電子版)は「朴槿恵氏より、もっと哀れな次期大統領」というコラムで、

次期政権が直面するだろう諸懸案を解決する難しさを嘆いた。

韓国の次期政権が内政・外交でつまずけば、

対北朝鮮政策を巡る日米韓の連携や、最近増えつつある第三国における日韓企業の協調にも深刻な影響をもたらすのは間違いない。


(電子版アジア編集長 山口真典)


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