真夜中に足がつって「痛い!」と言いながら飛び起きたことがある人は多いはず。
家庭医学専門誌『American Family Physician』に掲載された2012年の調査結果も、
筋けいれんの経験者が成人の6割に及ぶことを示している。
それにしても、寝ている間に足がつるのは一体どうして?
今回は、その一般的な要因と治し方を見ていこう。
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※この記事は、アメリカ版『Prevention』から翻訳されました。
足の筋けいれんとは?
筋けいれんは、数秒から数分にわたり筋肉が勢いよく収縮すること。
ふくらはぎや足だけでなく、ハムストリングスにも生じやすい。
また、突然足がつることは誰にでもあるけれど、
プライマリーケアの学術誌『BMC Primary Care』2017年の論文によれば、
50歳以上の成人により多く見られるそう。
筋けいれんに関する論文を何本も発表しているアルバータ大学(カナダ)
家庭医学助教授のスコット・ギャリソン医学博士によると、
「これには諸説ありますが、夜中に足がつる正確な理由を知る人は1人もいません」
ここからは、その諸説を見ていきたい。
夜中に足がつる理由
深夜の足の筋けいれんは、その人の体の特性と以下の
(単一または複数の)理由が組み合わさって起こることが考えられる。
1.ストレッチ不足
一部の研究者に言わせると、筋けいれんの原因は現代の生活習慣にある。
私たちの先祖は長い時間をスクワット(脚の腱と筋肉を伸ばす姿勢)で
過ごす必要があったけれど、現代の私たちにはテーブルと椅子がある。
パソコンやテレビの前に座ってばかりの生活を送っていると、
腱と筋肉が柔軟性を失って短くなることは科学的に証明されており、
そのせいで足がつることは十分に考えられる。
2.変な姿勢で寝ている
うつぶせで寝ると、足が“底屈”した
(つま先が下がってふくらはぎの筋肉が縮む)状態になる。
この状態が長く続くと、足をちょっと動かしただけで筋けいれんが生じることも。
筋けいれんを防ぎたいなら、横向きで足をベッドの外に出すなどして、
つま先をニュートラルな(下を向かない)状態に保てる姿勢で寝たほうがいい。
3.季節の変わり目
ギャリソン博士の研究により、深夜の筋けいれんは
冬よりも夏に起こりやすいことが分かった。
個人差はあるけれど、筋けいれんの頻度は7月中旬にピークに達して、
1月中旬に急激に低下する。 ギャリソン博士によると、
筋けいれんは筋障害ではなく神経の問題。
筋電図検査の結果も見ても、筋けいれんを引き起こすのは、
脊椎からふくらはぎにかけて走る神経。 なぜ夏に多いのか?
「夏は体内のビタミンDが増える分、
神経の成長と修復が活発になるのかもしれません」
とギャリソン博士。日光を浴びた体内ではビタミンDが産生される。
夏になり、このビタミンDの量がピークに達すると、
体が神経の修復をスピードアップさせて、
筋けいれんを引き起こす可能性もあるのだとか。
4.体が水分不足
体の中が乾いていると、寝ている間に足がつりやすいというエビデンスがある。
「筋けいれんの頻度は季節によって明らかに違います。
一般的に夏は多くて、冬は少ないですね」と話すのは、
独ゲーテ大学スポーツ科学教授のマイケル・ベリンガー医学博士。
「この事実は、体の熱と水分バランスが筋けいれんの発現に影響することを示しています」。
体が水分不足に陥り、血中の電解質バランスが崩れたせいで、足がつることもある。
5.超ハードなワークアウトをした
ハードなワークアウトは、長年にわたり筋けいれんの要因とされてきた。
スポーツ医学専門誌『Current Sport Medicine Reports』掲載の論文によれば、
骨格筋が過負荷になって疲れると、働きすぎた筋線維で局所的なけいれんが生じることも。
筋けいれんは、高度なトレーニングを受けたプロのアスリートにも起こり得る。
水分補給とストレッチは役に立つかもしれないけれど、
使いすぎによる筋けいれんを確実に防ぐ策はない。
6.1日中立っている
立って過ごす時間が長い人は、座りがちな人よりも
足がつりやすいという研究結果も存在する。
立ったまま動かずにいると、血液と水分が下半身に溜まってしまい、
体液バランスが不安定に。この状態では筋肉と腱も短くなるので、
筋けいれんが生じてもおかしくない。
7.薬
ギャリソン博士の研究では、利尿作用のある薬(一部の高血圧の薬など)や
ぜんそくの薬(長時間作用性β2刺激薬ー略称LABA)が
夜間の筋けいれんのリスクを大幅に高めることも分かった。
これらの薬が運動ニューロンと受容体を刺激して、
筋けいれんが生じやすくなる可能性もあるのだとか。
足の筋けいれんの治療法と予防法
ギャリソン博士いわく筋けいれんの治療には、
長年にわたりキニーネという飲み薬が用いられていたけれど、
それなりの効果がある一方で深刻な副作用
(不整脈など)を引き起こすことが問題となっていた。
いまでは米国食品医薬品局も、
足の筋けいれんにキニーネを使用しないよう呼び掛けている。
夜間の足の筋けいれんには明確な原因も確実な治療法もないので、
いろいろ試してみるしかない。3人の医師に聞けば、
それぞれ違う答えが返ってくるかもしれないけれど、
少なくとも以下の3つは試すだけの価値がありそう。
1.寝る前にストレッチをする
ストレッチに関する研究は一進一退を繰り返しているけれど、
2012年の小規模な研究では、寝る直前に
ハムストリングスとふくらはぎのストレッチをすると、
筋けいれんの頻度が大幅に低下することが分かった。
それでも足がつったときは、「その筋肉を伸ばしてあげると、
けいれんが和らぎます」とギャリソン博士。
けいれんしているのが下腿や足の場合は、
立ち上がってふくらはぎを伸ばすといい。
上腿の場合にはハムストリングスを伸ばしてみよう。
2.栄養バランスの良い食事をする
食事からマグネシウムを十分に摂取するのも忘れずに。
豆類、ナッツ、全粒穀物、葉物野菜はマグネシウムの素晴らしい供給源
(でも、この方法で筋けいれんが治るとは限らないので、
食事内容を変える前に必ず医師に相談を)。
ある小規模の研究では、ビタミンBのサプリメントが役に立つ可能性も指摘された。
それだけで新しいサプリメントを飲み始めるのは正直言って気が早い。
でも、魚や全粒穀物、野菜の摂取量を増やして損をすることはない。
3.体が乾かないようにする
汗をかいた日や運動をした日は特に、日中に飲む水の量を増やすこと。
口腔の乾燥、頭痛、疲労感、皮膚の乾燥は、
どれも水分の摂取量が足りないサイン。
一番参考になるのは、たぶん尿の色。淡い黄色~透明の場合はOK。
濃い黄色~琥珀色の場合には、もっとたくさん水を飲んで。