「寝屋川 平和と市民自治の会」のブログ

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PAN7月号2ページ

2020-07-16 17:45:43 | 寝屋川 平和と市民自治の会の会報

7月号2ページ

“黒人の命も大切だ”に思うこと   2020年6月20日 寝屋川市Hさん

 6月19日はなんの日? 1862年のリンカーンの奴隷解放宣言後も残存していた奴隷が、1865年6月19日にテキサスの地で、最終的に

解放された日だ。この日は“ジューンティーンス”とよばれてアメリカの黒人が奴隷解放を祝う。

 オクラホマ州にタルサという町がある。100年前の1921年、第一次大戦の失業者の多い時代、オクラホマ州は人種隔離政策をとっていた。

そんな環境にもかかわらず“黒人のウォール街”と呼ばれる繁栄する黒人地域があった。ささいな出来事が白人至上主義の社会環境のなか

で人種対立に発展。結果、黒人の商店や家は焼き討ちされ、多くの黒人が虐殺された。約1万人の黒人が家を失ったといわれる“タルサの

人種虐殺”の現場だ。

 6月19日に、このタルサで、トランプが支持者の集会を計画した。今、全米に拡大し、国外にも拡大する黒人差別反対の運動を極左集団によるものとして軍隊による鎮圧を主張した人物である。まさに黒人差別反対に真っ向から対立する企画である。政権内部からも批判を受け、ついに6月20日に日程を変更した。それでも黒人差別に抗議する人々との衝突が危惧される。注目すべきは、トランプはアメリカ社会から浮き上がった存在ではないということだ。共和党員からさえ批判される行動にもかかわらず、その支持率は40%近くを維持している。少なく見積もってもアメリカ人の3人に1人はトランプの岩盤支持層だ。

 5月25日に起きた白人警官によるジョージ=フロイド虐殺事件から始まった“黒人の命も大切だ”を標語とする黒人差別反対運動は、全米を覆う大きなうねりとなった。その中で6月12日、またも白人警官による黒人レイジャード=ブルック射殺事件が起こった。黒人差別反対運動を一部の極左の破壊活動とみなす大統領、それを支持する多くの多ランプ支持者。黒人とみれば犯罪者とみなす白人警官。そこには黒人を奴隷、すなわち富を生む家畜として扱ってきた白人の負の歴史が反映している。

 (ミネソタ州ミネアポリスで黒人男性のジョージフロイドさんが警察官に押さえつけられ死亡した事件)

 第一次大戦中に貧しい黒人として生まれ、白人至上主義が荒れ狂った時代を生き抜いたビリーホリデイという黒人歌手がいた。彼女が持ち歌とした歌がある。“奇妙な果実”である。一部を省いたその歌詞を紹介する。

“南部の木には奇妙な実がなっている。葉には血が、根にも血がしたたる。黒い死体が南部の風に吹かれて揺れる。―飛び出した眼球、ゆがんだ口。―カラスにつつかれ、雨に打たれ、風に弄ばれ、朽ちて落ちる果実―”

リンチによって木の枝に吊るされた血だらけの黒人の死体が腐敗し朽ちて木から落ちていく様を歌ったもの。

 リンカーンの奴隷解放令によって解放されたはずの黒人が、その後も差別を受け続ける。特に南部では、このような白人至上主義者の残忍なリンチ殺人は、珍しいことではなかった。当時、工業で発展する北部とは対照的に、南部は黒人労働力による農業が経済の基礎であった。南部経済を支える有力な白人農園主にとって、労働力確保のためには、黒人が白人と平等であっては、困るのだ。そのため南部諸州には、人種隔離を保証するジムクロウ法が制定され、黒人は準奴隷として扱われた。これらの黒人差別法はマーチン=ルーサー=キングで知られる公民権運動を経て、1964年リンドン=ジョンソンの公民権法により完全に撤廃された。

 (1963年8月のワシントン大行進。リンカーン記念堂の前で有名な“I Have a Dream”『私には夢がある』を含む演説を行うキング牧師)

ジョンソン政権がトンキン湾事件を口実に本格的にベトナム戦争に介入する直前だった。(ベトナム戦争が本格化するにつれて、公民権運動の波は、ベトナム戦争反対運動に合流してゆき、結局ジョンソン政権を退場させる。)

 だがこの醜悪な歴史は警察官による法執行という名で、合法的に黒人を迫害し、時には殺す形態にとって変わった。今や黒人にとって警察官に如何に対処するかが警察官から命を守る為の必須の心得になっている。

 今、世界の耳目を集めるアメリカの人種差別反対の大きなうねりに対して、警察官のみならず軍隊まで動員して、平和的なデモをも弾圧する意思を明確にしたトランプ。21世紀になっても、このトランプの支持者が、アメリカ社会には10人中4人もいるのだ。多発する警察官による黒人虐殺事件の背景には、いまだ根強い白人至上主義が存在するアメリカ社会の現実がある。

 ただ、デモを見て従来と大きく異なる風景がある。それは白人が非常に多いことである。“黒人の命も大切だ”というスローガンのもと、沢山の白人が参加している。そこに長年にわたって忍耐強く黒人差別反対運動が社会を変えてきたことが見てとれる。この人種の壁を超えて広がる差別に抗議する運動の波は、国境を超えて全世界に広がりつつある。国境だけではない。黒人差別を超え、あらゆる人種差別反対へ。また人種差別を超え、性的少数者差別反対運動へ。

 これはベトナム戦争反対運動が全世界に広まったことを想起させる歴史的な社会現象だ。格差という言葉に象徴されるグローバル資本が支配する社会は、差別をなくすどころか、拡大する。人々は気づき始めている。この社会はかえなければならないと。人々は社会を変えようとしている。すべての人が差別されない平等な人間として、かけがえのない個人として尊重される社会を実現したいと願いながら。



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