天気は悪くないが、風が強い。
海に浮かべた2台の台船の上から打ち上げるので、
風には弱いのだ。少し心配がよぎるが、この予感があとで当たることになる。
この会場が身動きできないほどの人でうずめつくされるなんて
このときは、とても想像できなかった。一番奥が本部テントだ。
入り口から100Mくらいある。その中間地点にステージがあり、両袖に露天が並んでいる。
ぎりぎりまで変更のあった配置図どおりに並んでいる。露天商も整然と並んだ。
ビーチダンスなどが進行するうち、突風が雨交じりで進行を中断させる。
沖に白い三角波が立つ。設定した舞台の大型スピーカーに雨がかかる。
だんだんあやしげな雰囲気になってきた。花火やるか、やめるかの問い合わせ
が殺到していると、事務所が悲鳴をあげてくる。待つしかない。博多港から牽引されてきた台船が沖合いに見えてきたとき、台船の乗組員から船の揺れがひどいから、沖合いで待機すると言ってきた。船長が津屋崎港に一晩係留する段取りをはじめているという。このときは志賀島の神にちょっと!なんとかしてよ。と祈る気持ちだった。雨がやんでビーチイベントを再開して、決心を迫られる14時が過ぎていく。どうするか・・その時、確かに浪が静まった。ような気がした。船を少し寄せてみるという作業を始めたが、なんと、そのとき『子供がおぼれている!』という声が聞こえた。『なんてこった!』浜に走りこむと小さな頭が見え隠れしている。(どうする、110番か、保安庁か)そうだ、台船を迎えて警戒しているジェットスキーだ。『了解!すぐ向かいます』と携帯で連絡が取れた。(あとは消防レスキューか?)と思う目の先にもうジェットスキーが全速であらわれた。ぐるぐるさがす。3台が到着して回る、(駄目か・・)と、そのうちの一台が子供を引き上げるのが見えた!『やった!』子供は少し水を飲んでいたが無事だった。ほっとする目線の先に台船が大きくあらわれた。来たのだ。これで花火も上げられる。
キマグレンは、というとだんだん集まってくる人々の中でリハーサルなどやっている、が雨にぬれた音響機器は悲しいほどに音が出ない。このままできるかどうか、協議が続く。結局時間が取れずに一つのミュージシャンは中止となった。申し訳ないことだが、天気のなせるわざとて、仕方がない。 キマグレンのステージが始まると、もう会場内を横切ることができなくなった。警察が通路を確保しろと言ってくる。(くそ!どうやって)浜を迂回させるようボランテイア警備に指示するが、これは無茶だ。ファンと舞台の間の警護をしているのだから、無理(ハハ・・)理事数人に誘導を頼み、ふと見渡せば、浜は人で、はるか向こうまで埋まっているのが見えた。(すごい!)と思う間もなく、定刻の8時となる。花火の大将を本部から連れ出して、舞台袖に引き寄せる。カウントダウンの用意なのだ。『さあみんなで、5からー』とたんに(ぽーん!)と、え?なんとフライングしてしまった!(なんてこった!)会場がざわめく、FMのプロデユーサーが、もう続けて上げてください、という。(ここが正念場だ!なにくそ)『もう一回カウントダウンだ!』と言えば、キマグレンももういっかいやるよーと建て直しに懸命に協力してくれる。5、4、3、2、1どーん!こんどは成功なのだ。(ああ、いやだ、なにこれ田舎芝居みたい)次々に上がる花火。ほとんど頭の真上で炸裂する尺玉は一日のごちゃごちゃを吹き飛ばしてくれるような気がした。
疲れた頭はもう巡らない。あしたは朝6時から不発弾さがしとゴミひろいなのだ、と思いながら、寝たのは午前1時過ぎ。なに?この多忙な還暦後の生活は?はは・・