同じムーンストーンの中に、「ペリステライト」版がある。
今売られているブルームーンストーンは大概これだという説もある。真偽は定かでない。
これは前にも載せた、ペリステライトとおぼしき原石。詳細な鑑定はしていないとのこと。
全体はいかにも長石らしい感じ。ちょこっとだけ、青いシラーが見られる。
で、これは「ペリステライト・ムーンストーン」のカボッション。夕星庵さんより。
お店の説明では、レアものとある。ペリステライト版ムーンストーンが多量に流布しているという説に従うと、「これほど透明度の高いものはレア」ということなのでしょうね。
確かに透明で、青いゆらゆらの光が出る。青白くはない。美しい。
見た限り、カリ長石(オーソクレース、サニディン)の正統ムーンストーンと変わりはないように思える。
これなら、「ムーンストーン」でいいか、という感じ。
ただ、ペリステライトのシラーのことを「ペリステリズム」と呼ぶらしい。カリ長石版のものはアデュラレッセンス。どちらも現象的には同じで、石の分類名が違うだけ、ということになる。ちょっと変な感じ。
しかし、ラブラドライトが正式鉱物名ではないのと同様、ペリステライトも、正式鉱物名ではない。組成はアルバイト(曹長石、NaAlSi3O8)とオリゴクレース(灰曹長石、Ab90-70An10-30)の中間と言われている。アルバイト(ナトリウム長石)が90%以上で、微量のアノーサイト、つまりカルシウムを含むということになる。
そんな微細な成分比率をいちいち確かめるわけにもいかない。最初に出た石を詳しく分析したらそうだったので、その後もその地域で採れる同じ姿のものはそうだということにしているのでしょう。かね。
今はタンザニア産のものが多く出回っているようですけど、スリランカ産もあるらしく、混乱のもとになっているようです。
「ホシノカケラ」の著者さんによれば、
《そもそもスリランカで稀に産出した美しい青色シラーが見られる透明度の高い長石をムーンストーンと呼んで、その後インドなどで産出したムーンストーンと区別するために「ロイヤル」の名前を冠したわけですが、ビーズで質の良いものをロイヤルとか付けたもんだからさぁ大変。
成分分析をするとそれらは実はペリシ[ス]テライトという違う長石だったところから、よくスリランカ産は(ペリシテライトだから)違うみたいなことが書かれていますが、それは違うヨ。》(ムーンストーン)
つまり、
・スリランカ産の青発光カリ長石→ムーンストーン
・インド産の青発光斜長石→ムーンストーン
・スリランカ産の青発光カリ長石→ロイヤルブルームーンストーン
・スリランカ産の青発光斜長石→ロイヤルブルームーンストーン(不適切拡大)
・インド産の透明ラブラドライト→レインボー・ムーンストーン
・インド・タンザニア産の青発光ペリステライト→ムーンストーン
・産地・成分に関係なく透明で青発光の長石→ロイヤルブルームーンストーン
というようなごちゃごちゃな経緯があるものと思われます。
今さらこれをどうにかしろと言っても、まあどうにもなりませんわな。
* * *
さて、青ないし青白い発光がムーンストーンの本分だとしたら、それ以外の色のものはどうなるのか。
前に出した「クロスキャッツアイ・ムーンストーン」。
これ、黄金色のシラーで、青みは全然ない。これは果たしてムーンストーンなのか。
あるいはこれ。「グリーンムーンストーン」。やはり夕星庵さんより。ちょっとレアみたい。
アデュラレッセンスが緑なのではなく、石が緑。光はほぼ白。光色の面白みはないけれど、揺れる光と石の色は美しい。
まあ、これらも少し異種ながらムーンストーンなのでしょう。
* * *
ところで、ムーンストーンというのは、つまるところ、長石です。
長石というのは、ものすごく広範に存在し、深成岩にも含まれる。
ムーンストーンはその深成岩の中に、脈状に生成されるみたいです。どういうプロセスなのだろう。シラーを作り出す薄い層構造も、どうやってできるのだろう。
不思議ですねえ。地中深くのマグマの真っただ中で、一番凡庸な石、地殻の基本のような石から、こんなに澄み切っていて幻想的な石が生まれる。深い深い闇を貫く一条の光。
そう思うと、ますますこの青い幻光がいとおしくなります。
いいですねえ、ムーンストーン。