総理大臣の諮問機関[教育再生実行会議]の提言と文部科学大臣の諮問機関[中央教育審議会]への諮問について、開かれた学校の視点から解説します。
パソコン版
平成27年3月4日に安倍総理大臣の諮問機関[教育再生実行会議]から提言が出されました。旗印は《地方創生》。このまま無策で時間が過ぎると、地方の人口減少は社会を維持することができなくなります。すでに地方の山村漁村の中には、空き家ばかりで人の住んでいないところもあります。都市であっても例外ではありません。少子化と集中する人口で一気に高齢化して老人社会に突入します。
このような日本の直面する課題に対応するには、子どもを産みやすい育てやすい社会とすることと、ここで育てたい、ここで生きていきたいという夢の描ける社会にすることが必要です。それぞれの地方が特色を活かして取り組まなければなりません。この実現なくして、日本の将来は考えられないのです。
その実現への方策がこの提言です。今学校の教育目標[生きる力の育成]は個々の日本人に必要な資質です。これに加えて[地域を担う子供の育成]は地域社会を維持発展させる上で是非とも必要なものとして提言されました。これは、その土地や人を愛し互いの人々がつながりあって生きていく社会を再構築するための方策です。
これを受けて、平成27年4月14日下村文部科学大臣は中央教育審議会に、このことを審議してほしいと諮問しました。その内容が次の2つです。
その一つが、学校のコミュニティ・スクール化です。
《コミュニティ・スクールとは後で紹介しますが、簡単に言うと、地域住民の学校経営運営への参画です。地域の皆さんが参加する学校運営協議会を組織して、校長の学校経営の方針や運営について承認や意見を述べることができます。》
地域を担う子供の育成は、学校任せではいけません。その土地その土地の学校教育は地域の皆さんと学校が連携協力して行う、つまり"地域の子どもは地域で育てる"を学校で実現します。「ここに育つ子どもたちは○○○○に育てたい。」ということを共有して協議します。この事によって、[生きる力の育成]+[地域を担う子供の育成]を目指します。
二つ目が、コーディネーターの配置です。
コーディネーターとは"学校"と"地域住民"をつなぐ人材です。学校が「教育活動のこんなところに地域の方に来てもらって手伝ってもらいたい」と言うと適当な人を探して連れてくるのです。具体的にいうと、家庭科の授業に裁縫<ナップサックづくり>があります。この授業を先生一人ですると、まず道具の準備、針の使い方、ナップサックの作り方を図や黒板、映像で説明します。「さあ、やってみましょう」と言うと一斉に取りかかります。早速、一人の児童が「先生!」と声をかけます。そこへ行って指導すると、また「先生!」「先生!」と声があがります。だんだん先生は対応できなくなります。この結果、児童の作品が時間内に目的のところまで出来上がらないことになります。もし、そこに何人かの地域の皆さんがいると先生に代わって対応してくれます。先生は学習をリードすることに専念できます。このように学校の学習内容には先生だけでは難しいことや先生が教えるよりも地域の専門家が教える方がよい場合がたくさんあります。
学校へ地域の皆さんに来てもらうことは"学校が助かる"だけではありません。"地域の皆さんと児童生徒が触れ合いつながりを持つ"きっかけになります。また、地域の皆さんにとっても"自分の持っている力が役立つ""地域のために奉仕する"など有用感を満たすことができ、生き甲斐になります。更に地域にとっても、学校に集うことで、"新しい出会いがあり、新しいつながりを持つ"ことができます。この人のネットワークは住民自治を再構築する基盤となるものです。
こんな学校で育つ子どもたちは、地域の皆さんを知り、その皆さんを通じて地域を知る子どもたちが育ちます。更に地域文化をの継承に努めてくれるかもしれません。まさに[地域を担う子供]が育つということです。
コーディネーターの配置だけが述べられていますが、これだけでは永続的な仕組みではありません。コーディネーターの運営や課題解決を行う組織があって初めてその機能が発揮されます。その組織を一般に"学校応援団"と呼んでいます。
コミュニティ・スクールと学校応援団の仕組みは、"車の両輪"とか"エンジンとタイヤ"などと表現されます。共に学校を支援する仕組みですが役割が違います。コミュニティ・スクールは学校経営や課題解決に知恵を絞ってもらいます。学校応援団は教育活動の場面で手助けをしてもらいます。つまり、汗をかいてもらいます。"知恵"と"汗"の違いと思ってください。
[コミュニティ・スクールと学校応援団の融合した学校を支援する仕組みはどうあれば良いか]ということを中央教育審議会で議論されています。どのような答申が出されるか楽しみです。
コミュニティ・スクールや学校応援団についてよくわからないという人のために、説明するプリントを用意しました。ご覧ください。
諮問の第一に掲げている[コミュニティ・スクール]について説明します。
これからコミュニティ・スクールのことをCSと記入します。
CSは地方教育行政の組織及び運営に関する法律第47条の5項に規定された制度です。学校運営協議会制度とも呼びます。この法律にしたがってつくられます。
CSは教育委員会が指定して、その学校に学校運営協議会を設置します。教育委員会は、地域住民や保護者などから運営協議会の委員を任命します。
学校運営協議会の役割は次の3つです。
(1) 校長は、学校運営や教育課程の編成等の基本方針を作成して、学校運営協議会の承認を得なければならない。
(2) 学校運営協議会は、学校運営に関する事項について、教育委員会又は校長に対して意見を述べることができる。
(3) 学校運営協議会は、当該学校の職員の採用その他の任用に関する事項について、任命権者に対して意見を述べることができる。
学校運営協議会の役割を通して、地域の皆さんが学校経営に参画して意見が反映されることを制度として保障します。法に規定された権限ですから意見は尊重されます。
権限と同様に学校経営の責任も担わなければなりません。しかし、最終的な責任はこれまで通り校長にあります。詳しくは文部科学省のホームページをご覧ください。
[文科省]コミュニティ・スクール
諮問の第二に掲げている[コーディネーター]について説明します。
[コーディネーター]を初めて聞く人も多いと思います。学校が地域の人材を必要とするとき、学校は探さなければなりません。しかし、忙しい中容易なことではありません。そこで、学校に代わって人材を探すのが[コーディネーター]です。コーディネーターに適した人は、地域に広いネットワークを持っている、人と会うことを喜びと感じる人です。このような方はなかなかいませんが、根気強く探します。
コーディネーターの仕事は大変なです。トラブルもいっぱい生じます。これを一人に任せてはすぐ息詰まってしまいます。これを永続的な仕組みとするには、コーディネーターの運営や課題を協議する会議体が必要です。それを"学校応援団協議会"と仮定します。例えば、コーディネーターが交代する時期には次のコーディネーターを探しておく必要があります。学校が必要とするとき人材がコーディネーターだけでは集まらない場合、コーディネーターに代わって探さなければなりません。それが学校応援団協議会の役割です。この学校応援団協議会とコーディネーター、学校を支援する地域人材のボランティアの皆さんを含めて[学校応援団]と言います。
学校と地域住民が連携協力して行う教育は、学校の校長の姿勢でするかしないか左右されそうですが、この地域の皆さんでつくられた学校応援団があれば、今年あったことは来年もあるという風に、永続する働きとなります。
平成27年3月4日に安倍総理大臣の諮問機関[教育再生実行会議]から提言が出されました。旗印は《地方創生》。このまま無策で時間が過ぎると、地方の人口減少は社会を維持することができなくなります。すでに地方の山村漁村の中には、空き家ばかりで人の住んでいないところもあります。都市であっても例外ではありません。少子化と集中する人口で一気に高齢化して老人社会に突入します。
このような日本の直面する課題に対応するには、子どもを産みやすい育てやすい社会とすることと、ここで育てたい、ここで生きていきたいという夢の描ける社会にすることが必要です。それぞれの地方が特色を活かして取り組まなければなりません。この実現なくして、日本の将来は考えられないのです。
その実現への方策がこの提言です。今学校の教育目標[生きる力の育成]は個々の日本人に必要な資質です。これに加えて[地域を担う子供の育成]は地域社会を維持発展させる上で是非とも必要なものとして提言されました。これは、その土地や人を愛し互いの人々がつながりあって生きていく社会を再構築するための方策です。
これを受けて、平成27年4月14日下村文部科学大臣は中央教育審議会に、このことを審議してほしいと諮問しました。その内容が次の2つです。
その一つが、学校のコミュニティ・スクール化です。
《コミュニティ・スクールとは後で紹介しますが、簡単に言うと、地域住民の学校経営運営への参画です。地域の皆さんが参加する学校運営協議会を組織して、校長の学校経営の方針や運営について承認や意見を述べることができます。》
地域を担う子供の育成は、学校任せではいけません。その土地その土地の学校教育は地域の皆さんと学校が連携協力して行う、つまり"地域の子どもは地域で育てる"を学校で実現します。「ここに育つ子どもたちは○○○○に育てたい。」ということを共有して協議します。この事によって、[生きる力の育成]+[地域を担う子供の育成]を目指します。
二つ目が、コーディネーターの配置です。
コーディネーターとは"学校"と"地域住民"をつなぐ人材です。学校が「教育活動のこんなところに地域の方に来てもらって手伝ってもらいたい」と言うと適当な人を探して連れてくるのです。具体的にいうと、家庭科の授業に裁縫<ナップサックづくり>があります。この授業を先生一人ですると、まず道具の準備、針の使い方、ナップサックの作り方を図や黒板、映像で説明します。「さあ、やってみましょう」と言うと一斉に取りかかります。早速、一人の児童が「先生!」と声をかけます。そこへ行って指導すると、また「先生!」「先生!」と声があがります。だんだん先生は対応できなくなります。この結果、児童の作品が時間内に目的のところまで出来上がらないことになります。もし、そこに何人かの地域の皆さんがいると先生に代わって対応してくれます。先生は学習をリードすることに専念できます。このように学校の学習内容には先生だけでは難しいことや先生が教えるよりも地域の専門家が教える方がよい場合がたくさんあります。
学校へ地域の皆さんに来てもらうことは"学校が助かる"だけではありません。"地域の皆さんと児童生徒が触れ合いつながりを持つ"きっかけになります。また、地域の皆さんにとっても"自分の持っている力が役立つ""地域のために奉仕する"など有用感を満たすことができ、生き甲斐になります。更に地域にとっても、学校に集うことで、"新しい出会いがあり、新しいつながりを持つ"ことができます。この人のネットワークは住民自治を再構築する基盤となるものです。
こんな学校で育つ子どもたちは、地域の皆さんを知り、その皆さんを通じて地域を知る子どもたちが育ちます。更に地域文化をの継承に努めてくれるかもしれません。まさに[地域を担う子供]が育つということです。
コーディネーターの配置だけが述べられていますが、これだけでは永続的な仕組みではありません。コーディネーターの運営や課題解決を行う組織があって初めてその機能が発揮されます。その組織を一般に"学校応援団"と呼んでいます。
コミュニティ・スクールと学校応援団の仕組みは、"車の両輪"とか"エンジンとタイヤ"などと表現されます。共に学校を支援する仕組みですが役割が違います。コミュニティ・スクールは学校経営や課題解決に知恵を絞ってもらいます。学校応援団は教育活動の場面で手助けをしてもらいます。つまり、汗をかいてもらいます。"知恵"と"汗"の違いと思ってください。
[コミュニティ・スクールと学校応援団の融合した学校を支援する仕組みはどうあれば良いか]ということを中央教育審議会で議論されています。どのような答申が出されるか楽しみです。
コミュニティ・スクールや学校応援団についてよくわからないという人のために、説明するプリントを用意しました。ご覧ください。
諮問の第一に掲げている[コミュニティ・スクール]について説明します。
これからコミュニティ・スクールのことをCSと記入します。
CSは地方教育行政の組織及び運営に関する法律第47条の5項に規定された制度です。学校運営協議会制度とも呼びます。この法律にしたがってつくられます。
CSは教育委員会が指定して、その学校に学校運営協議会を設置します。教育委員会は、地域住民や保護者などから運営協議会の委員を任命します。
学校運営協議会の役割は次の3つです。
(1) 校長は、学校運営や教育課程の編成等の基本方針を作成して、学校運営協議会の承認を得なければならない。
(2) 学校運営協議会は、学校運営に関する事項について、教育委員会又は校長に対して意見を述べることができる。
(3) 学校運営協議会は、当該学校の職員の採用その他の任用に関する事項について、任命権者に対して意見を述べることができる。
学校運営協議会の役割を通して、地域の皆さんが学校経営に参画して意見が反映されることを制度として保障します。法に規定された権限ですから意見は尊重されます。
権限と同様に学校経営の責任も担わなければなりません。しかし、最終的な責任はこれまで通り校長にあります。詳しくは文部科学省のホームページをご覧ください。
[文科省]コミュニティ・スクール
諮問の第二に掲げている[コーディネーター]について説明します。
[コーディネーター]を初めて聞く人も多いと思います。学校が地域の人材を必要とするとき、学校は探さなければなりません。しかし、忙しい中容易なことではありません。そこで、学校に代わって人材を探すのが[コーディネーター]です。コーディネーターに適した人は、地域に広いネットワークを持っている、人と会うことを喜びと感じる人です。このような方はなかなかいませんが、根気強く探します。
コーディネーターの仕事は大変なです。トラブルもいっぱい生じます。これを一人に任せてはすぐ息詰まってしまいます。これを永続的な仕組みとするには、コーディネーターの運営や課題を協議する会議体が必要です。それを"学校応援団協議会"と仮定します。例えば、コーディネーターが交代する時期には次のコーディネーターを探しておく必要があります。学校が必要とするとき人材がコーディネーターだけでは集まらない場合、コーディネーターに代わって探さなければなりません。それが学校応援団協議会の役割です。この学校応援団協議会とコーディネーター、学校を支援する地域人材のボランティアの皆さんを含めて[学校応援団]と言います。
学校と地域住民が連携協力して行う教育は、学校の校長の姿勢でするかしないか左右されそうですが、この地域の皆さんでつくられた学校応援団があれば、今年あったことは来年もあるという風に、永続する働きとなります。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます