よしーの世界

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愛と暴力と戦後とその後   赤坂真理

2022-04-21 07:17:26 | 
世界の中の日本を考えていくと最終的にモヤモヤ~っとしたところに行きつくが、それは太平洋戦争の

片を私たちがキチンと付けていないという事に思い当たる。最近読んでいる本には、その指摘が多く見

られる。本書も正しくそうで、いずれ読もうと思っていた「東京プリズン」を書いた赤坂真理氏の著作

だ。


冒頭の「人が電気で死ぬところを見たことがある」という書き出しにもショックを受けたが、例えば「

憲法」について、憲って何?という問い(私は考えたこともない)を著者は20人に聞いているが、最後

に答えてくれた仏文学者が「『憲』は、おきてという意味だから、憲も法も同じようなことを言ってい

ることになりますね」と答えてくれている。私たちが何となく、こういうものかと認識している言葉を

著者が明らかにしてくれた。


本文中の「大日本帝国軍は大局的な作戦を立てず、希望的な観測に基づき戦略を立て(同盟国のナチス

・ドイツが勝つことを前提として、とか)陸海軍統合作戦本部を持たず、嘘の大本営発表を報道し、国

際法を現場に徹底させず、多くの戦線で戦死者より餓死者と病死者を多く出し、命令で自爆攻撃を行わ

せた、世界で唯一の正規軍なのである」という記述は物凄いし、著者は「それは、正規軍と言える質だ

ったのだろうか?」と問うている。


学生時代に日本史では太平洋戦争を詳しく勉強していないし、卒業し調べようとすると曖昧な表現が多

いと感じていた。しかし最近の本では作戦の首謀者の名前もしっかり出ており、何が間違っていたのか

検証に耐えうるものが増えている気がする。


本書では太平洋戦争だけを取り上げているわけではない、日本語の曖昧表現、安保闘争、オウム、著者

が参加した地域会議等々、「総括されないものは繰り返される」と著者は指摘する。そして日本人は総

括が大の苦手だ。著者が英語と日本語の間で葛藤し、悩み苦しんだ過程を私たちも知らなければ、いく

つかの問題について、しっかり議論出来ない。沢山の人に読んでほしい本だ。


   愛と暴力と戦後とその後   赤坂真理       講談社現代新書


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