最近、石橋湛山の名前をあちこちで目にする。やはり現在の政治家たちに対する失望が大きいから
だろうか。本書では石橋湛山の父の紹介から始まり、湛山の幼少期、学生時代、新聞記者、軍隊入
隊、そして戦時下にも東洋経済新報に歯に衣着せぬ記事を書き、ついに総理大臣になるところが描
かれている。残念ながら病に倒れ、総理として活動が出来なかったが、彼の功績は大きい。
私利私欲に走る現代政治家たちには、日本の先を見越した政策など全く期待できない。湛山は日本
国民が敗戦により呆然自失し、自暴自棄に陥る者まで出現する事態に、国民の動揺を鎮めるために
講演会を開き、大西洋憲章やポツダム宣言による連合国の対日方針を説明し、日本経済の将来の見
通しを述べ、アメリカ軍が来ても心配せず、仕事に励むように教えている。この話は次々に伝わり
大変な効果があったという。
本書にある湛山の言葉を紹介したい、著者が付けたタイトルが「選挙について」で「もちろん、制
度はひとによって運用されるのだから、いかに良い憲法であっても、これに対する国民の自覚が足
りなければ、また、いかなる弊害をかもし出さないとも限らない。今後の日本の政治家の最大の任
務は、右の自覚を国民と共に高め、憲法の箇条を生かし、民主主義政治を確立するところである。
選挙は、単に投票をかき集めることではなく、この自覚高揚運動を展開する機会としてもちいられ
なければならぬ。旧憲法時代の泥試合的政争をもって政治と心得る旧式政治家が、もし存在するな
らば、彼らは政治社会から葬らなければならぬ」
石橋湛山 志村秀太郎著 東明社
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