閉塞と無力感が漂う現代の日本。今や超のつく格差社会に変貌し、コロナ禍もあり、自殺者も増え続け
ている。確かに大企業は利益が上がり、内部留保は過去最高、株価も好調のように見える。しかし一般
国民は賃金の上昇が物価高に追いつかず、相次ぐ増税に中流と言われた層は激減した。さらに生活苦に
あえぐ人々は急増している。厳しい生活環境に身を置く人々は相当数に上るだろう。
その元凶にいると言われた竹中平蔵氏が日本政府と関わりだしたのは、小渕政権まで遡る。そして小泉
内閣では経済財政政策担当大臣と金融担当大臣として剛腕を振るう。当時の小泉総理がブッシュ元米大
統領と緊密な関係にあったことは周知のとおりだが、そのことが日本で総理大臣を長く続ける秘訣だと
彼は分かっていたし、竹中氏も大いに利用した。
日本のマスコミもアメリカが主導することには逆らうことが出来ない。小泉総理のワンワードに踊らさ
れ、改革の連呼に大手メディアは国民をミスリードした。郵政民営化のために「B層を狙え」というテ
レビキャンペーンがあったが、殆ど批判されることもなかった。果たして郵政民営化が本当に必要だっ
たのか疑問が残る。
日本の政治を「今だけ、カネだけ、自分だけ」という言葉が象徴するようになった。小泉内閣時代に製
造業にも派遣労働が認められるようになり、大量の派遣切りによって2008年暮れには日比谷公園に
「年越し派遣村」も出現している。国民が貧しくなっていく一方で、自民党議員のスキャンダルは後を
絶たないが、テレビも新聞も報道に及び腰だ。本書は沢山の人に読んで、改めて政治を考える機会にし
てほしい。
竹中平蔵 市場と権力 佐々木実 講談社文庫
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