工場で作業していると 入口付近で、若い女性の声がする・・・
笑い声が混じり 何だか騒がしい様子。十数年前、私の作った標識の写真を撮っているみたいだ。
私:「ねえーこの標識 そんなに珍しい?」
女性「ハイ!何か、かわいい・・・」
私 「・・・」
(はて?私が作ったイメージキャラクターに関心を寄せるならまだしも、この何の変哲も無いUターン禁止
のキャラクターに興味を示すとは、いかに・・・何がその様におもしろいのであろう?それに、かわいいとな?)
実はこの標識、長男坊のシルエットを描き 小さい子供が居るから ここでUターンしてくれるな ここは
私有地だぞと警告をした看板なのだ。実際、どこぞのヤンキー兄ちゃんが車で突っ込んできたので
掴み合いになり 謝罪させた経験があったのだ。こちらも 大事な子供を守るためには鬼にならねば
ならぬので その様な事が今後、無きようにとの思いを込めた看板だった。
連休等が続くと、若い人達が 写真を撮りに来る・・・
いやはや 何とも、他人様の感性とは ミステリアスであり、うーんと考えてしまうのだ。
そう言えば昔、中学生の時だったが ギターで簡単な3コードを使い作詞作曲した歌を、何度も何度も
歌ってくれとリクエストしたクラスメイトが居たが、「内容が幼稚なんで、他にも良い歌があるんやけど」
と言うと 怒り出し この曲が良いのだと言う・・・歌の内容は「昔の思い出に還りたい」みたいな内容
だったが 彼には共感するものがあったのだろう 残念なことに彼は早死にしてしまった。
思い出とか友情とか言う言葉に敏感な奴で、クラスの仲間も彼を忘れることは無いだろう。
彼にとって、潜在意識の琴線に触れた曲だったんだろうなと・・・
物を創作する人間として 特に、機械で作ったものには こんなエピソードは少ないが 手書きとか
手作りで作った作品には、たまによくある話。作った本人は「うーん」と思っていても お客さんが異常に
気に入って下さったりする。自分だけが良いと思っても 評価するのは他人様なのだから
独りよがりの作品には、共感という魅力は住まないのかも知れない。
世で言うヒット作なんて 狙って込めた念では、なかなか上手くいかない。これを意図的にヒットさせる人は
世間の法則を熟知した本物の巨匠なのだろう。だが その様な人は、ほんの一握り 居るか居ないか・・・
大半は無意識の様に見えて 狙ったわけでは無いのに強い念が何かの力で、偶然を装い込められて
人の気持ちを呼び寄せるのかも知れない・・・
本人が然程良いと思わない理由は、作品が作った人間の為ではなく それを良いと思ってくれる人の物に
なったからだ。実際、この標識が注目されだしたのは 息子・娘が大きくなり 心配がなくなってからなのだ。
ひょっとしたら この標識に惹かれる人って 子を思う親の想いに敏感な人達なのかも・・・
ちょっと 湿っぽくなったかな・・・