2005年12月13日にサイバーセキュリティ産業同盟(Cyber Security Industry Alliance:CSIA)(注)は次のような意見書を公表した。
「CSIAは、1年前にブッシュ大統領のサイバー・セキュリティのぜい弱面に関する国家戦略について12の重要勧告を行った。その勧告は3つの分野についての勧告である。①サイバーセキュリティの特性の明確化、②情報・脅威・偶然性の分析の強化、③教育・研究開発の達成である。
今般公表したCSIAの「2006年情報セキュリティに関する13の課題」は前記勧告の履行状況を踏まえ、消費者、産業界および政府に対して次のような個別の行動を要求している。 以下、その内容を具体的に紹介する。
各省別では、国防総省と国務省が「F」ランク、国土安全保障省が「D」ランクと判定された。国土安全保障省は2005年の「F」ランクよりも改善が見られたものの、依然として厳しい評価となった。
課題の1つとして、CSIAは2005年に政府の情報セキュリティについての限られた進展について報告するとともに国家の重要なインフラに対する国家としての機密性が欠如しているとの観点から「デジタル分野の機密性指標(Digital Confidence Index)」を公表している。
CSIAの専務理事であるポール・カーツ(Paul Kurtz)は、2004年に政府は米国の情報セキュリティの改善に向けた限定的な手段、すなわち、①スパイウェアーやなりすまし詐欺問題に関する議会のリーダーシップ強化、②国土安全保障省(DHS)にサイバー犯罪や電気通信分野担当の副長官を新たに置いたのみであった。
カーツ氏はこのような限られた手段では不十分であり、また情報セキュリティの分野での戦略的またはリーダーシップを持った指示などが見当たらないと述べている。我々としては、情報インフラの弾力性ならびに保全を確実にするとともに、市民のプライバシーの保護を政府にとって最優先課題に挙げる必要があると考える。」
前記CSIAの報告では12の勧告の内容について、連邦政府・機関の進捗度合いについて等級付けを行ったが、その結果は7項目が「D」、4項目が「C」評価であった。唯一明るい結果はサイバー犯罪に関する欧州理事会のサイバー犯罪条約を上院が批准したことであったと記されている。
このCSIA報告に対し、民主党のベニー G. トンプソン(Bebbi G. Thompson)下院議員(国家安全保障問題の有力メンバー)も連邦政府がサイバーセキュリティについての責任を取ることに引続き失敗している旨の懸念を表明している。同議員は議会、民間部門、研究部門、公的機関においてすべて米国は相互につながったネットワークすなわち、家庭、職場、パイプライン、配電網(electric grid)、ダムなどに依存しており、DHSや行政機関はこの点を理解し直ちに行動に移すべきであると述べている。
また、独立系プライバシー・セキュリティに関するコンサルタントであるリチャード・スミス(Richard Smith)は今回のCSIA報告の見方として2つの点を挙げている。①米国の重要インフラについていかにぜい弱性が存在するか、②実際、米国のインフラにどのような攻撃が行われているかである。わが国のインフラは非常に多くの被害を現実に受けており、デスクトップパソコンを利用する際、そこにはITに関する多くの問題あるにもかかわらず、単なる効率性を持った機器としか見ていないのである。スミス氏はこれらのインフラ攻撃は実は情報システムの破壊を目的とするのではなく、ぜい弱性を狙って金銭を得ようとする「悪者」からなのであると述べている。
(なお、CSIAは2007年4月に再度米国政府連邦機関の等級を発表している。連邦政府のサイバーセキュリティ対策を「C-」ランク(A~Fの6段階)と判定した)。
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CSIAの「National Agenda for Information Security in 2006」の分析結果とわが国政府が押し進めている基幹インフラ保護政策の内容との比較は専門家には極めて参考になろう。
(注)CSIAは、2004年4月に公共政策、技術、教育および認識を通じてプライバシー、信頼性、その保全を確実なものにすることを目的とする唯一の支援団体である。世界の主要セキュリティプロバイダーの最高経営責任者により先導されている。
また、”TechAmerica”は、米国の技術業界団体で、2009年にAeA(旧称America Electronics Association)、Cyber Security Industry Alliance(CSIA)、Government Electronics&Information Technology Association(GEIA)、およびInformation Technology Association of America(ITAA)が合併して設立された。。この組織は、「ハイテク業界をリードする貿易協会」であると主張している。”TechAmerica” は、経済の公共および商業部門内の1,200社を代表している。 TechAmericaが表明した目標は、メンバーに「草の根からグローバルへ」の表現を提供することであり、 この目的のために、同組織は、米国の50の州都すべて、ワシントンDC、およびいくつかの国際的な場所で擁護プログラムを維持している。 2014年5月、ITプロフェッショナルにサービスを提供する非営利の業界団体であるCompTIAは、公共部門での存在感を拡大するためにTechAmericaを買収したと発表した。
〔参考URL〕
・2010年10月22日現在、CSIAサイトでは「National Agenda for Information Security in 2006」の内容を読むことは出来ない。
・2005年12月14日付けのTech News Worldの記事が詳しく解説している。
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(今回のブログは2005年12月18日登録分の改訂版である)
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