Financial and Social System of Information Security

インターネットに代表されるIT社会の影の部分に光をあて、金融詐欺・サイバー犯罪予防等に関する海外の最新情報を提供

米国CFTCがオハイオ州の男性とその所有企業をデジタル資産取引スキームにおける1200万ドル(約16億214万円)以上の不正勧誘と不正流用を理由に民事起訴

2022-08-21 08:10:12 | 米国の金融監督機関

 

 米国の商品先物取引委員会(CFTC)は8月12日、オハイオ州ニューオルバニー市住のラスナキショア・ギリ(Rathnakishore Giri)と彼が所有するオハイオ州に本拠を置くNBD Eidetic Capital, LLCおよびSR Private Equity, LLCに対して、オハイオ州南部地区連邦地方裁判所に民事法執行訴訟を起こしたと発表した。

 同訴状は、ギリと彼の会社が150人以上の顧客から1200万ドル以上と少なくとも10ビットコインを不正に勧誘し、またギリと彼の会社がデジタル資産取引を目的とした顧客資金を不正に流用したと主張している。

 さらに訴状は、ギリの両親であるギリ・スブラマニ(Giri Subramani)とロカ・パヴァニ・ギリ(Loka Pavani Giri)を、正当な利害関係のない資金を所有している救済被告(注1)として起訴している。

 今回のブログは、(1)本起訴の詳細、(2)CFTC/SECの投資家アラート:ビットコイン先物における資金取引の注意喚起の概要について概観する。

1.起訴の内容

 CFTCは、その継続的な訴訟において、詐欺被害にあった顧客への補償(restitution)、不正に得た利益の返還(disgorgement of ill-gotten gains)、民事上の金銭的罰則(civil monetary penalties)、恒久的な取引および登録禁止(permanent trading and registration bans)、および「商品取引法(Commodity Exchange Act :CEA)」および「CFTC規則(CFTC regulations)」のさらなる違反に対する永久的差止命令(permanent injunction)を求めている。

2.本事件の背景

 訴状は、2019年3月頃から現在まで、被告が運営しているとされるさまざまなデジタル資産投資ファンドに投資するために、少なくとも150人の顧客から1200万ドル以上と10ビットコイン以上を勧誘し、受け入れた詐欺的なスキームに関与したと訴えている。同訴状によると、被告は顧客への勧誘において、利益の保証やギリのデジタル資産トレーダーとしての成功話など、多数の虚偽で誤解を招くような声明を出した。

 また被告は、顧客には、いつでも初期投資と利益を撤回しうる能力があると顧客に述べたが、これは虚偽であった。さらに訴状は、顧客への勧誘において、被告がねずみ講:ポンジスキーム(Ponzi scheme)に似た方法で他の顧客に利益を支払うために顧客の資金を不正に流用し、ヨットのレンタル、豪華な休暇、豪華な買い物を含むギリの贅沢なライフスタイルを支払うために顧客の資金を不正に流用するなど、重要な事実・手続を省略したと主張している。また訴状は、被告が顧客資金をギリおよび救済被告の個人銀行およびデジタル資産取引口座に送金したときに、被告が顧客資金をギリおよび救済被告(Relief Defendants )の資金を混同したと主張している。

3.CFTCやSECにおけるデジタル資産取引の顧客保護活動

 CFTC は、仮想通貨または最近開始されたビットコイン先物およびオプションへの投資または投機に関連する潜在的なリスクを一般に知らせるために、証券取引委員会との 1 つを含め、詐欺の警告サインを提供するいくつかの顧客保護詐欺勧告および解説サイトを立ち上げた。 [CFTC/SEC 投資家アラートを参照: ビットコイン先物で取引されるファンド] 参照。

 またCFTCは、資金をコミットする前にCFTCへの当該会社の登録を確認するよう消費者に強く促す。登録されていない場合、顧客はそのエンティティに資金を提供することに注意する必要があり、会社の登録ステータスは、全米先物協会NFA BASICを使用して確認できる。

 顧客およびその他の個人は、フリーダイヤルホットライン866-FON-CFTC(866-366-2382)を介して、商品取引法違反の可能性などの疑わしい活動や情報を執行部に報告するか、オンラインでヒントや苦情(ハイパーリンクが必要)を提出するか、CFTC内部告発局(CFTC Whistleblower Office)に連絡することができる。内部告発者は、CEAの違反者によってCFTCに支払われた金銭的制裁を通じて資金を調達されたCFTC顧客保護基金から支払われた金銭的制裁の10〜30%を受け取る資格がある。

4.CFTC/SECの投資家アラート::ビットコイン先物における資金取引の注意喚起の内容

CFTC/SEC Investor Alert: Funds Trading in Bitcoin Futures

 CFTCサイトの解説を抜粋、仮訳する。

 証券取引委員会(SEC)の投資家教育・支援局(OIEA)、

Lori J. Schock :Director, Office of Investor Education and Advocacy

商品先物取引委員会(CFTC)の顧客教育・支援局(OCEO)は、ビットコイン先物市場へのリスクにさらされる度合い(exposure)を持つファンドを検討している投資家に対し、投資の潜在的なリスクと利益を慎重に検討するよう促します。とりわけ、投資家は、ビットコイン先物市場を通じて投資家などが〕リスクにさらされる度合い(exposure)を得ることを含むビットコインは、非常に投機的な投資であることを理解する必要がある。そのため、投資家は、ビットコインとビットコイン先物市場の不安定性(volatility)、ならびに規制の欠如と、基礎となるビットコイン市場における詐欺や操作の可能性を考慮する必要がある。

〇ビットコイン: ビットコインはデジタル資産、またはブロックチェーン技術に依存する資産です。ビットコインは「仮想通貨(virtual currency)」または「暗号通貨(cryptocurrency)」とも呼ばれている。

〇ビットコイン先物: ビットコイン先物契約は、将来の特定の日付に特定の数量のビットコインを指定された価格で売買するという標準化された契約である。 米国では、ビットコインは商品であり、商品先物取引はCFTCによって規制および監督される先物取引所で行われることが義務付けられている。

 「1940年投資会社法(Investment Company Act of 1940)」およびその規則に基づいて規制されているファンド(「ファンド」)は、重要な投資家保護を提供するために必要である。 例えば、ファンドはファンド資産の評価と保管に関する法的要件を遵守しなければならず、投資信託とETF(注2)は流動性要件を遵守しなければならない。これらの保護は、ビットコイン先物契約の保有を含む、ファンドのすべての保有に適用される。 一部のファンドは、ビットコインへのリスクにさらされる度合いを獲得する 1 つの方法として、ビットコイン先物契約の取引に関与する場合がある。 また投資家は、ビットコインおよびビットコイン先物契約のポジションが非常に投機的であることを理解する必要がある。

 先物を売買するファンドへの投資を検討している投資家は、以下のとおりビットコイン慎重に検討する必要がある。

投資家のリスク許容度:投資家は、自分が取りやすいリスクのレベルと比較して、取っているリスクのレベルに焦点を当てるべきである。詳細については、「リスク許容度の評価」を参照されたい。

ファンドのリスクの開示:ファンドは、目論見書にファンドへの投資の主なリスクを開示する必要がある。詳細については、ミューチュアルファンドの目論見書の読み方(パート1/3:投資目的、戦略、リスクを参照されたい。

投資の潜在的な損失: ファンドへのすべての投資には、財務上の損失のリスクが伴う。このリスクは、ビットコイン先物およびビットコイン先物の不安定性が高いため(価格が大きく変動する可能性があることを意味する)、ビットコイン先物契約のポジションで増加する可能性がある。また、基礎となる現金や「スポット」ビットコイン市場における詐欺や操作の可能性もある。

④投資成果の違い: ビットコイン価格の上昇は、ビットコイン先物契約のポジションを保有するファンドの価値の同様の上昇をもたらさない可能性がある。これは、商品先物取引契約を行うファンドが、契約の原資産に直接さらされていない可能性があるためである。先物契約価格は、配送月によって異なり、原商品のスポット価格とは異なる場合がある。先物契約も定期的に期限切れになり、期限切れの先物ポジションが通常新しい契約に引き継がれるため、ポートフォリオのリスクにさらされる危険性が変動する。特定のファンドの価値は、先物契約リスクにさらされる度合いの維持によって影響を受ける可能性がある。商品先物を取引するファンドまたは取引所で取引される商品の詳細については、「商品ETPまたはファンドに投資する前のリスクについて学ぶ」を参照されたい。

 ビットコイン先物を売買するファンドは、他ビットコインファンドに比べて独自の特徴があり、リスクが高い可能性がある。投資する前に、投資が全体的な投資計画にどのように適合するかを検討することが重要である。

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(注1) 「救済被告」とは、他の起訴状で指名された被告の違法行為の結果として、不正な資金または資産を受け取った個人または団体をいう。原告が求められた資金または資産を保護し、事件の最終的な回復にそれらを適用するために差し止めによる救済を求めるため、救済被告は通常その名前が公表される。 救済被告は名目上の被告と呼ばれることもある。(USLegal「Relief Defendant Law and Legal Definition」から抜粋、仮訳)、筆者ブログの(注2)参照。

(注2) ETFとは、“Exchange Traded Funds”の略で、「上場投資信託」と呼ばれている。特定の指数、例えば日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)等の動きに連動する運用成果をめざし、東京証券取引所などの金融商品取引所に上場している投資信託である。連動する指数は株式だけでなく、債券、REIT(リート)、通貨、コモディティ(商品)の指数もあり、投資先も日本から海外に広がり、投資しにくい国と地域と資産に手軽に投資ができるようになっている。

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米国連邦預金保険公社(FDIC)が預金保険に関する暗号資産関連の虚偽または誤解を招く表現を行ったとして5社に対し停止[中止]通告書を発布

2022-08-20 15:43:03 | 米国の金融監督機関

 Last update:August 25,2022

 8月19日、米国の金融監督機関である連邦預金保険公社(Federal Deposit Insurance Corporation FDIC)は、暗号資産取扱5社とその役員、取締役および従業員に対し、FDIC預金保険に関する虚偽で誤解を招くような陳述を停止/中止し、これらの虚偽または誤解を招くような陳述に対処するため即時の是正措置を取るよう要求する書簡を発布した旨リリース(FDIC: PR-60-2022)した。

 本ブログは、(1)わが国では類似の制度がない「停止/中止通告書」の法的意義について概要を解説し、次に(2)FDICの通告書の内容を紹介する。特にわが国では、この問題につき預金保険機構や国民生活センターの預金者向け解説は皆無といってよい。(注1)その背景は、わが国の詐欺師グループは預金保険を利用する知恵がまだないというのが本音であろう。(注2)

 なお、本件に関し、2022.8.23 Ballard Spahr LLP弁護士:Brian A. Turetsky(ブライアン・トゥレツキー)氏が 「FDICは暗号資産関連商品取り扱い業者5社の預金保険に関する虚偽または誤解を招く表現を主張する手紙等を中止し、停止通告を発布」をまとめており、併せて読まれたい。

Brian A. Turetsky氏

1.停止/中止通告書の法的意義

 Cornell Law School の解説を仮訳する。

 米国における「停止/ 中止通知書(cease and desist letter)」とは、疑わしい不正行為について説明し、申し立てられた不正行為を停止するよう要求する、不正行為者とされる人物・法人等に送られる通告書である。停止通知書は、問題の行為が継続する場合、法的措置が取られる可能性があり、実際に法的措置が取られることを通知する。“cease”が違反行為の即時停止を、“desist”が将来にわたって違反行為を再開しないことを意味している。

 このような手紙は通常、弁護士によって書かれ、著作権(copyrights)、商標権(trademarks)、特許権(patents)などの知的財産権の侵害の申し立てまたは実際の侵害を阻止するために送付されることがよくある。停止通知書は、契約違反と同様に、嫌がらせ(harassment)、口頭の名誉毀・誹謗中傷(slander)、  文書の名誉毀損(libel)に対して不正行為者に警告するためにも使用できる。停止/ 中止通知書は拘束力のない書簡であり、法的効力はないが、主に不正行為者に送付されるため、不正行為の疑いがある場合に、当該行為を停止させられないが、その不正行為者に対する訴訟において証拠として使用することができる。

2.FDICのファクトシート(概要説明):FDIC預金保険と暗号資産会社について米国民が知っておくべきこと(最終更新日:2022年7月28日)

 過去数ヶ月にわたり、一部の暗号資産会社は引き出しを一時停止したり、運用を停止したりしている。場合によっては、これらの企業は自社製品がFDIC預金保険の適用対象であることを顧客に意図的に表明しており、これらの企業の顧客が誤って自分のお金や投資が安全であると信じるように導く可能性がある。FDICは、暗号資産交換所 (crypto custodians)(注3)、暗号資産取引所(exchanges)、ブローカー(brokers)、ウォレット・プロバイダー(wallet providers) (注4)、ネオバンク(neobanks) (注5)などの暗号会社の一部の顧客が、FDIC預金保険の対象となるかどうか、そしてもしそうならどのようにカバーされるかについて混乱する可能性があることを懸念している。このファクトシートは、預金保険の補償範囲と、預金保険が顧客がこれらの暗号会社に提供する資金に適用されるかどうかについて、いくつかの一般的な誤解に対処することを目的としている。FDICは、最近の市場活動やメディア報道に照らして、FDIC預金保険の適用範囲を一般の人々が理解するのを助けるために、以下の情報を提供している。

(1)FDIC預金保険の適用範囲

(A)連邦法では、FDICは、被保険銀行および貯蓄協会(総称して「被保険者銀行」という)に保有されている預金にのみ保険をかけ、被保険者銀行の破綻の万が一の場合にのみ保証する。FDICは、暗号資産会社などのノンバンク・エンティティによって発行された資産に保険をかけない。

(B)FDICが1934年に預金の保険をかけ始めて以来、被保険銀行の破綻の結果としてFDIC被保険者資金の1ペニーでも失った預金者はいない。

(C)預金保険は、当座預金口座、普通預金口座、被保険銀行に保有されている預金証書などの商品に適用される。(https://www.fdic.gov/resources/deposit-insurance/financial-products-insured/index.html)

(D)FDICは、被保険銀行が破綻した後にのみ預金保険を支払う。この補償は、破綻時に被保険銀行に保管されている預金に対してのみ利用可能である。

(2)預金保険に加入していない商品とリスク内容

FDIC預金保険は、株式(stocks)、債券(bonds)、マネーマーケット・ミューチュアルファンド(money market mutual funds)(注6)、その他の種類の証券、商品(commodities)、暗号資産(crypto assets)などの金融商品には適用されない。

 FDIC預金保険は、他の法律で対処されている盗難や詐欺による損失から保護するものではない。

 要するに、FDIC保険は、暗号資産交換所 (crypto custodians)、暗号資産取引所(exchanges)、ブローカー(brokers)、ウォレット・プロバイダー(wallet providers)、ネオバンク(neobanks)を含むノンバンクエンティティのデフォルト、破産、または破産から消費者を保護するものではない。

(3)関連資料

(A)FDICのウェブサイトでは、消費者が預金保険の適用範囲を理解するのに役立つ詳細情報を提供している。

(B) FDICの「BankFind」ツールを使用して、エンティティが被保険者銀行であるかどうかを判断できる。

(C) FDICは、預金保険に関する虚偽表示の疑いに関する苦情を提出するためのポータルを維持している。

(D) 預金保険の適用範囲を管理するFDICの規制は、12 C.F.R. Part 330に記載されている。

(E) 預金保険および暗号会社との取引に関するFDIC被保険機関へのFDICの忠告は、暗号資産会社を含むノンバンク・金融エンティティによるFDIC預金保険に関する虚偽表示に関するリスク管理およびガバナンスの考慮事項に対処しており、https://www.fdic.gov/news/financial-institution-letters/2022/fil22035.html で見出すことができる。

3.FDICの暗号資産取扱業者5社に対する停止[中止]通告書の内容

 FDICによって収集された証拠に基づいて、これらの企業のそれぞれは、ウェブサイトやソーシャルメディアアカウントを含め、(1)特定の暗号資産関連商品がFDICの被保険商品である、または(2)証券口座に保有されている株式がFDIC被保険商品であると述べるか、または示唆する虚偽の表明した。あるケースでは、いわゆる暗号資産を提供する企業は、FDICとの提携または承認を示唆するドメイン名も登録した。これらの表現は明らかに虚偽であり、誤解を招くものである。

 連邦預金保険法(Federal Deposit Insurance Act :以下「FDI Act」)は、無保険の商品がFDIC被保険者であることを表明または暗示すること、または預金保険の範囲と方法を故意に虚偽表示することを禁じている。さらにFDI法は、企業が会社名、広告、またはその他の文書に「FDIC」を使用して、自社製品がFDIC被保険者であると示唆することを禁じている。さらにFDICは、FDI法により、この禁止をいかなる者に対しても執行する権限を与えられている。

 一般的にFDIC預金保険は、FDIC被保険銀行の破綻万が一の際に顧客を保護する。当該機関がFDIC被保険者であるかどうかを判断するには、当該機関の代表者に尋ねるか、当該機関のFDICサインを探すか、FDICのBankFindツールを使用する。FDIC預金保険に関する一般的な情報については、以下のFAQs(よくある質問)を読まれたい。また、FDIC保険および暗号会社の詳細については、次のファクトシートを読まれたい。

FDICの Cryptonews.comへの手紙を参照。

FDICの Cryptosec.infoへの手紙を参照。

FDICが SmartAsset.comに宛てた手紙を参照。

FDICのFTX米国(FTX US)への手紙を参照。

FDICの FDICCrypto.com への手紙を参照。

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(注1)金 融 庁&消 費 者 庁&警 察 庁平 成 2 9 年 9 月 2 9 日 公 表(令和3年4月7日最終更新)「暗号資産に関するトラブルにご注意ください!」を参照されたい。

(注2)  本ブログを読むにあたり基本知識として「暗号資産のしくみと相談対応に必要なポイント」等を参照されたい。

(注3) 暗号資産交換所 (crypto custodians))参照。

(注4) カスペルスキー社「仮想通貨ウォレットの選び方」参照。

(注5) 「チャレンジャー バンク」と呼ばれることもあるネオバンクは、モバイルバンキングやオンライン バンキングを効率化するためのアプリ、ソフトウェア、その他のテクノロジーを提供するフィンテック企業である。これらのフィンテックは、通常、当座預金口座や普通預金口座などの特定の金融商品を専門としている。また、彼らの多くは金融商品に保険を掛けるためにそのような機関と提携しているにもかかわらず、メガバンクのカウンターパートよりも機敏で透明性が高い傾向がある。米国では、これらのフィンテックはより一般的にネオバンクと呼ばれている。(Forbes Advisor “What Is A Neobank?”から抜粋、仮訳)

(注6) MMF(MMMF) Money Market Mutual Fund: 米国で1971年に創設されたオープンエンド型の投資信託。高利回りの短期証券(CD、CP、TB、BAなど)で運用するもの。換金が自由なほか、小切手の振り出しも可能なことから、銀行預金の強力な対抗商品として急成長した。(金融用語辞典から抜粋)

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ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)は暗号資産取引ユニットである“Robinhood Crypto, LLC”に対し、同意命令(Consent Order)と3,000万ドルの罰金を課す旨発表

2022-08-07 11:54:36 | 金融犯罪と阻止策

 8月3日、筆者の手元にSquire Patton Boggs 法律事務所の所属弁護士である シェイ・M.リーチ(Shea M.Leitch)とジセル・トミンビン(Gicel Tomimbang)の共著レポートが届いた。

Shea M.Leitch氏

Gicel Tomimbang氏

  8月1日、ニューヨーク州金融サービス局(「NYDFS」または「DFS」)は、Robinhood Financial LLCによる人気のある投資アプリの完全所有の暗号資産取引ユニットである「Robinhood Crypto, LLC(以下、「RHC」という)」に対し、同意命令(Consent Order)(注1)と3,000万ドル(約39億9900万円)の罰金を課す旨発表したとある。

 同命令の中で、NYDFSは、RHCが「連邦銀行等に対する機密性が高くまたは不審な現金払いおよび海外との金融取引等に関する報告義務法(federal Bank Secrecy Act:「機密取引報告義務法」という)」(注2)、州および連邦のマネーロンダリング防止規則(「BSA/AML」)およびNYDFSのサイバーセキュリティ規則に関するNYDFS規則を遵守しなかったと主張した。

 さらにDFSが発行したプレスリリースによると、この調査では、RHCのBSA/AMLコンプライアンスプログラムの「重大な欠缺(significant deficiencies)」と、同社のサイバーセキュリティ・プログラムの「重大な違反(critical failures)」が明らかとなった。

 今回のブログは、初めに(1)OCC のBank Secrecy Act (BSA) & Related Regulations の仮訳、解説を行い、次に(2)両弁護士の解説blog内容を補足しながら仮訳する。

Ⅰ.OCC のBank Secrecy Act (BSA) & Related Regulations解説

 機密取引報告義務法(BSA)(31 USC 5311 et seq)は、以下のとおり国法銀行、連邦貯蓄機関、連邦支店および外国銀行の代理機関に対するプログラム、記録管理および報告要件を確立している。

(1) 機密取引報告義務法/マネーロンダリング防止:取引主体の顧客に対する顧客のデューデリジェンスと受益所有権の要件の概要と審査手続き

(2) 機密取引報告義務法/マネーロンダリング防止:改訂されたFFIEC BSA/AML 審査マニュアル

(3)連邦財務省、国家マネーロンダリングとテロ資金供与のリスク評価の発表

 OCCの実施規則は、12 CFR 21.11および12 CFR 21.21に定める。BSAは、すべての銀行がBSAコンプライアンスプログラムの一環として顧客識別プログラムを採用することを義務付ける米国テロ阻止愛国者法の規定を組み込むために改正された。

1.BSAおよび関連法令

 連邦銀行等に対する機密性が高くまたは不審な現金払いおよび海外との金融取引等に関する報告義務法(Bank Secrecy Act:BSA) - 31 USC 5311 – 5330 

外国資産管理規則 (Foreign Assets Control Regulations (OFAC)) 31 CFR 500 

通貨および外国取引の財務記録の保持と報告に関する規則 (Financial Record Keeping and Reporting of Currency and Foreign Transactions)- 31 CFR 1010.310 

テロ行為阻止のための適切な手段の提供よる米国民の団結強化に関する法律(USA PATRIOT Act:「米国テロ阻止愛国者法」  筆者ブログ の(筆者注4)参照。

2.BSAコンプライアンスを監視するための手順 - 12 CFR 21.21

  この規制は、すべての国法銀行および貯蓄貸付組合(savings association)が、BSAの遵守を保証および監視するために合理的に設計された書面による取締役会承認したプログラムを持つことを義務付けている。このプログラムは、少なくとも次のことを行う必要がある。

(1)継続的なコンプライアンスを保証するための内部統制システムを提供する。

(2)コンプライアンスのための独立したテストを提供する。

(3)日々のコンプライアンスの調整と監視を担当する個人を指定する。

(4)適切な人員のためのトレーニングを提供する。さらに、米国テロ阻止愛国者法第326条の実施規則では、すべての銀行がBSAコンプライアンスプログラムの一環として顧客識別プログラムを採用することを要求している。

3.連邦法違反または疑わしい取引・活動の報告 - 12 CFR 21.11 および 12 CFR 163.180

 この規則により、すべての国法銀行は、マネーロンダリング活動またはBSA違反に関連する連邦法違反または疑わしい取引の特定の既知または疑いを検出した場合、疑わしい活動報告書(SAR)を提出する必要がある。SARの提出は、次のとおり潜在的な犯罪のために必要とされる。

(1)金額に関係なくインサイダー取引の濫用を伴う。

(2)特定可能な容疑者がいて、取引に5,000ドル以上が含まれる場合。

(3)識別可能な容疑者がいないが、取引に25,000ドル以上が含まれる場合。潜在的なマネーロンダリングまたはBSA違反を示す疑わしい活動の場合にもSAR提出が必要であり、取引には$ 5,000以上が含まれる。

4.一次ロンダリングに関する懸念の機関(Institutions of Primary Laundering Concerns)

 米国テロ阻止愛国者法第311条によって追加された機密取引報告義務法第5318A条は、財務長官が外国の管轄権、機関、取引クラス、または口座の種類を「マネーロンダリングの主な懸念事項」として指定し、5つの「特別措置」のうちの1つ以上を課す権限を与えている。

5.BSAの報告要件(BSA Reporting Requirements)

 国法銀行および貯蓄金融機関のBSA関連の報告要件は、米国財務省の金融犯罪執行ネットワーク(FinCEN)によって管理されている。金融機関は、BSA Eファイリングシステム(注3)を通じて電子的に報告書を提出する必要がある。

■通貨取引レポート (CTR)

Currency Transaction Report (CTR)

■通貨又は貨幣商品の国際輸送に関する報告書(CMIR)

Report of International Transportation of Currency or Monetary Instruments (CMIR)

■外国銀行及び金融口座の報告書(FBAR)

Report of Foreign Bank and Financial Accounts (FBAR)

■疑わしいアクティビティ レポート (SAR)

Suspicious Activity Report (SAR)

BSA E-Filing Systemの免除者の指定

Designation of Exempt Person Form

Ⅱ.ニューヨーク州金融サービス局(「NYDFS」または「DFS」)は、「Robinhood Crypto, LLC(以下、「RHC」という)」に対し、同意命令(Consent Order)と3,000万ドルの罰金を課す旨発表

1.NYDFSのBSA/AML 違反の立証内容

 同意命令の中で、NYDFSはRHCのBSA/AMLプログラムの調査で多くの欠陥が明らかになったと主張している。NYDFSおよび連邦BSA/AML規制の下では、企業、組織等は疑わしい活動を検出して報告し、米国連邦財務省の金融資産管理規則局によって禁止されている取引をブロックするためのポリシーと手順を実装および維持する必要がある。

しかし、DFSはRHCがこれらの要件を満たすための適切なポリシーと手順を実装していないと主張した。特にDFSは、RHCが「ライセンシーのリスクプロファイルに見合った」BSA/AMLプログラムを維持できなかったと主張し、RHCが2019年9月30日時点で1日あたり合計530万ドルの平均106,000件の取引を処理したにもかかわらず、RHCが手動の内部報告システムに依拠し続けたと指摘している。手作業による報告システムと不十分な人員配置の結果、NYDFSは「[RHCの]AMLスタッフが単にトランザクション・アラートに追いつくことができず、アラート処理の[a]重大なバックログ」をもたらしたと主張した。RHCは、2019年12月にBSA/AMLプログラムを見直すために第三者のコンサルタント(以下「コンサルタント」)を雇ったため、BSA/AMLの方針と手順が不十分であることを認識していたようである。コンサルタント契約中、コンサルタントはRHCにBSA/AML手順が「最小限の価値」であったと報告した。それでも、RHCの最高コンプライアンス責任者は、2019暦年のニューヨーク取引監視規則の遵守を認定した。

3.RHCのサイバーセキュリティ遵守義務の欠陥の指摘(Cybersecurity Deficiencies)

 NYDFSはまた、RHCサイバーセキュリティ・プログラムの重大な不備を特定した。他の不備の中でも、DFSはRHCが親会社のポリシーと手順に過度に依存しており、RHCの運用、リスク、報告ライン、またはサイバーセキュリティ規則の完全な要件に完全には対応していなかったとRHCを非難した。他の欠缺に関し、DFSの調査は、RHCが(i)サイバーセキュリティリスクを管理し、サイバーセキュリティ規則に規定されたコア機能を実行するために、不十分なサイバーセキュリティ要員を採用したと判断した。(ii) データガバナンスと分類、IT資産管理、ビジネス継続性と災害復旧計画、システム運用、システムとネットワークの監視、システムとアプリケーションの開発、リスク評価、インシデント対応活動を導くための詳細なポリシーと手順が不十分であった。(iii)サイバーセキュリティ規則の要件を満たすリスク評価を実施しなかった。

  特定されたコンプライアンスの欠缺に加えて、NYDFSはRHCのDFS監督協定に違反して、RHCが連邦および州の規制当局による調査を開示しなかったと指摘し、調査におけるRHCの協力と率直さに異議を唱えた。

4.同意命令の要件

 同意命令に基づき、RHCはDFSに3,000万ドルの民事罰金を支払わなければらない。特に、この命令は、RHCが保険証券、補償、または税額控除を通じて罰金の費用を回収することを禁じている。またRHC は、既存のコンサルタントを再雇用して、BSA/AML およびサイバーセキュリティ規則の要件に対する RHC の現在のコンプライアンス・プログラムの包括的なレビューを実施し、RHC の改善を支援する必要がある。新しい契約の下では、コンサルタントはRHCの規則の遵守についてDFSに定期的な報告を提供する義務を負う。

【金融企業、組織における本事案における主な重要ポイント】

(1)以上述べたとおり、米国金融サービス業界は長年にわたり厳しい法規制の対象となっており、スタートアップはこれらの義務を免除されていない。非伝統的産業の革新的な組織は、しばしば独自のコンプライアンスの課題に直面している(たとえば、詐欺、マネーロンダリング、暗号通貨分野での違法行為のリスクの高まりと、従来の金融機関が直面する同様のサイバーセキュリティの課題)。指数関数的な成長はすべての組織の夢であるが、急速な拡大は多くの場合、コンプライアンスの負担の増加(そして潜在的に規制の精査)も伴う。したがって、組織は思慮深いコンプライアンス評価と、特定されたギャップの迅速な修復に取り組み、適用される法的、規制的、および契約上の要件を満たしていることを確認する必要がある。

このような評価を実施する場合、金融組織、機関は、可能な限り、評価結果が特権で保護され、裁判所または規制調査での後の生産を防ぐために、弁護士を介してコンサルタントや他のベンダーを関与させることを検討する必要がある。このような評価は、法律上およびコンプライアンス上および情報技術上の目的に役立ち、弁護士の監督下でそのような評価を実施することにより、弁護士は、適用される法律および規制の遵守に関する法的助言を組織に提供することができるといえる。

(2)特定のサイバーセキュリティ制御と評価を義務付ける既存の法律に加えて、多くの金融組織はまもなく、今後のカリフォルニア州、コロラド州、コネチカット州、バージニア州のプライバシー法の下でプライバシー影響評価を実施することが義務付けられる。したがって、複数の管轄区域で金融事業を展開する企業は、適用される法律や規制(これらの法律に含まれる比例性、データの最小化、保持義務など)に基づいて確立された要件を満たしていることを確認するために、プライバシーおよびセキュリティ評価プログラムを確立する必要がある。

さらに、企業は、適用される業界固有の義務(金融サービス業界のAMLなど)に留意し、それらのニーズを満たすようにコンプライアンスプログラムを調整する必要がある。チームSPBは、「2023年州プライバシー法コンプライアンスガイド(2023 State Privacy Law Compliance Guide)」を作成した。この無料で読むことができるリソースは、現在施行されている各州のプライバシー法の要件に関する情報と、新しい2023年の州プライバシー法の計画と準備でコンプライアンスチームを支援するための効率向上のために定められた一連の作業や優先事項サンプル(sample workstreams)を提供する。

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(注1) 同意命令(同意審決とも呼ばれる)は、すべての当事者の同意を得て裁判官によって行われた命令または審決である。厳密には判決ではなく、裁判所が承認した「和解合意」である。合意は、当事者が和解に達した後に書面で裁判所に提出され、裁判官によって承認されると、合意は両当事者に拘束力があり、執行可能となる。同意命令は、一方の当事者の詐欺、または両当事者の側の誤りのために裁判所によって脇に置かれることを除いて、上訴することはできない。(コーネル大学ロースクールの解説を仮訳)。

(注2) わが国では「Bank Secrecy Act」を「銀行秘密法」と直訳されるケースが未だに多い。

 これでは何が秘密なのか、誰の秘密なのかが分からない。同法は、現在では「愛国者法」に基づく改正も行われており、テロ資金防止法(BSA/AML)と引用されることが多いが、1970年に制定された当時は脱税のための資金洗浄阻止も重要な目的であったようであり、企業に対する同法の報告義務に関し、連邦財務省内国歳入庁(IRS)が多く関与している。分かりやすく言うと「銀行等に対する機密性が高くまたは不審な現金払いおよび海外との金融取引等に関する報告義務法」である。つまり、報告義務を課されるのは、狭義の金融機関(規制内容や罰則は金融機関の場合が厳しいが)だけでなく、現在は外国の銀行に金融資産を有する企業、さらに貴金属・宝石取扱業者もFinCENへの報告義務が課されるなど範囲が広がっている。IRSのサイトでは企業向けにBSAについて報告義務の内容や罰則規定についてQ&A等で詳しく説明している。(2009.4.3 筆者ブログの(筆者注4)参照)

(注3) BSA Eファイリングシステムは、FinCENセキュアネットワークを介した機密取引報告義務法(BSA)フォームの電子ファイリング(個別またはバッチ)をサポートしている。BSA Eファイリングは、BSAフォームを提出するためのより速く、より便利で、より安全で、より費用対効果の高い方法を提供します。BSA Eファイリングの詳細については、こちらを参照されたい。連邦財務省の解説を仮訳。

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