Financial and Social System of Information Security

インターネットに代表されるIT社会の影の部分に光をあて、金融詐欺・サイバー犯罪予防等に関する海外の最新情報を提供

「ドイツ連邦議会のスパイェアによる通信傍受合法化法の可決と連邦憲法裁判所の動き」(その3完)

2017-08-16 16:22:34 | 人権問題

2.連邦議会は、刑事訴訟法上で予告なしに容疑者間の電子通信内容のスパイウェアによる傍受やデバイスのメモリーの捜査を可能とする法案を可決

(1) 連邦議会の公式文書”Bundestag gibt Strafermittlern neue Instrumente in die Hand”を以下、仮訳する。なお、この議会サイトでは動画での質疑応答が閲覧可である。自信がある読者はチャレンジされたい。 (注6) 

○ 連邦議会が可決した犯罪捜査の新しいツールは、容疑者間の暗号化した電子通信内容を傍受するとともに予告通知なしに容疑者のコンピュータのメモリー内の情報を捜査できるとするものである。2017年6月22日、法案委員会は議会の「左翼派(Linke)」と「同盟90緑の党(Bündnis 90/Die Grünen)」の反対にもかかわらず、これらの法案を採択した。連立与党は、スパイ・ソフトウェア使用法案の承認を決定するために、2つの法案可決につき連邦政府の助言を使用した。 

 この2つの法案とは、 「捜査実務面の効率化と刑事訴訟手続の効率化の実現に関する法案(18/11277)「刑法、少年裁判所法、刑事訴訟法およびその他の関連法律の改正に関する法案(18/11272)である。 法律委員会(議会総会の決議案が採択した決議に続き18/ 12785 )は、前者で第二のような法案の条項を挿入し、いわゆる「合法的傍聴による通信監視(Quellen-TKÜ)」と「オンライン捜査 (Online-Durchsuchung)」の法的根拠としてこの法則を拡張した。 

○暗号化の克服

 アカウントへのスパイウェアのための使用許可と犯罪者が増え暗号化されたメッセンジャーサービスを介して通信していることを確認するために手段が取られるべきである。 データが暗号化する前にソースでTKU対象メッセージは、すでに送信者のコンピュータにとりこまれている。オンライン捜査(Online -Durchsuchung)は、犯罪の手がかりのために容疑者のコンピュータをリモートで見過ごさずに調査することができた。 

○ 野党は、立法過程を批判

 両野党とも、法律で「Quellen-TKÜ」と「オンライン捜査」を挿入することに関する議論で連立与党の大規模な行動を厳しく批判した。改正案が6月20日の法務委員会で審議、急がれたされたのち、ハンズ・クリスチャン・ストローブル(Hans-Christian Ströbele (MdB Bündnis90/Die Grünen: 同盟90/緑の党)は6月22日の採決に同意した。このようなラッシュ審議は許されない、このような「基本的権利への運用上の介入」問題は、詳細に検討する必要があると述べている。 

  ヨルン・ブンダーリッヒ(Jörn Wunderlich (Die Linke)(左翼党)は、これらの対策に比べて第一読会の主題となったものは「経口避妊薬(Pille-Palle)」であると記している。このような 選択した方法や措置は、また連邦参議院で可決されよう。 

○ 最も侵襲的監視法の一つであるという批判

  引き続き、ヴンダーリッヒはこの法案は近年で最も侵襲的な監視法の一つであり、テロ対策への例外措置としても「標準的な警察の行動手順」で十分であると述べた。

 また、前記Hans-Christian Ströbele は、連邦憲法裁判所所の判決と互換性がなく、個人データのプライバシーへの実質的な干渉であり、刑法とクロスする法案はQuellen-TKÜ と Online-Durchsuchungの対象として、70件の犯罪を設定していると主張した。 

○与党連合は、合憲性を強調

 連立政党のスピーカーであるベッティーナ・ベア・ロッサ(Bettina Bähr-Losse (SPD)は、この法案は、「連邦憲法裁判所の認める要件を満たす」と述べた 裁判官による措置の承認のための要件は、「厳密に私的施設管理の監視に適用される措置に基づいている点であり、傍受は唯一「特に重大な犯罪」のために使用されるべきであると述べた。 

 SPDのヨハネス・フェヒナー(Dr. Johannes Fechner)は、法案により実際に課される措置はなんら「新しいもの」ではないと述べた。もし、携帯電話が犯罪現場で発見されたとき、捜査担当者はもちろんその内容を読むであろう。これは、 オンライン捜査である。Quellen-TKÜは通信の新しい手段に適応したもので、従来認められた通信の監視以外の何ものでもない。 

○ ギャングに対する行動情報の捜査が目的

 エリーザベース・ヴィンクルマイヤー・ベッカー(Eliabeth Winkelmeier-Becker)(CDU / CSU)は、法案に賛成の立場から効果的な刑事訴訟法の執行のための新たな資金が必要不可欠と呼んだ。 それは「捜査当局の可能性は犯罪者とギャングが今日どのように動作するかに合わせていないだけでナンセンス」である。つまり、従来の通信傍受のみでは、ギャングはただただ、頻繁にピザを注文した人で終わろう。 

 また、ヴィンクルマイヤー・ベッカーはこれらの新たな措置の使用は厳しい条件の対象となると強調した。適用されるのは犯罪者や関係者という容疑者が重大な犯罪にかかるであることを疑うに足りる理由がある場合であり、したがって、Quellen-TKÜ や Online-Durchsuchungは標準的な捜査手段ではない。 

 以下は、スパイウェアとは関係ない法改正部分なので訳は略す。

************************************************************

(注6) 筆者のPCや回線環境のせいか不明であるが、動画(Video)は途切れる。したがって、下図のとおり”Video herunterladen”でAudioを選択するとスムーズにヒアリングできる。

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Copyright © 2006-2016 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.You may reproduce materials available at this site for your own personal use and for non-commercial distribution.

 

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「ドイツ連邦議会のスパウェアによる通信傍受合法化法の可決と連邦憲法裁判所の動き」(その2)

2017-08-16 16:00:58 | 人権問題

Last Updated: March 29,2021

⑥ ドイツ法執行当局が市民のコンピュータをトロイの木馬で偵察するのは合法か? 

 ドイツの法律は、警察はスパイウェアを疑いのある犯罪者にスヌーピング(注4)することを認められているが、厳格なガイドラインのもとでのみ行いうる。たとえば、当局は、暗号化される前にSkypeの会話を録音するために電話盗聴(phone wiretap)に相当するものについては法的承認を求めなければならない。 

  ドイツ連邦憲法裁判所は、判決等において捜査官のスパイソフトウェアで何を行いうるかを制限するとされる厳しい法的ガイドラインを設けている。たとえば、Skypeの会話を録音することは許可されているが、そのスパイウェアは被疑者のコンピュータ上のコードを変更してはならず、トロイの木馬が追加機能を含むようにするために保護装置を設置する必要がある。 

 ⑦ R2D2トロイの木馬はSkypeの会話内容を覗いているのか? 

  Skypeの会話を記録するだけでなく、MSN MessengerやYahoo Messengerチャットクライアントのようなものも盗聴し、Firefox、Opera、Internet Explorer、SeaMonkeyなどのブラウザでのキーストロークを記録することもできる。 

 さらに、トロイの木馬は、ユーザーの画面の内容を取得し、アップデートをダウンロードし、リモートWebサイトと通信することができる。

⑧ トロイの木馬はどのウェブサイトと通信しているのか? 

 このトロイの木馬は、デュッセルドルフまたはノルトライン=ヴェストファーレン州ノイスにあるIPアドレス83.236.140.90に接続しているようである。  

⑨ LKA Nordrhein-Westfalenはどこにあるのか? 

 デュッセルドルフである。  

 ⑩ スパイウェアであるトロイの木馬を使用しているLKAについてさらに何を知っているか? 

 2008年初め、WikiLeaksは、LKAとDigiTaskと呼ばれるソフトウェア会社の間で秘密のメモがあるとリークした。このWikiLeaksによって漏洩された詳細は、CCCによって発見されたR2D2トロイの木馬の動作と一致するように見える。もちろん、DigiTaskがマルウェアを書き込んでいない可能性もあるが、機能は一致している。

 DigiTaskはこれまで、Skypeの会話を監視するための監視ソフトウェアを発表したりプレゼンテーションを行ってきている。 

⑪ R2D2トロイの木馬がLKAによって使用されたことを証明できるか? 

 ドイツ警察当局が関与を確認しない限り、マルウェアを誰が作成したかを証明することは実際には不可能である。しかし、それは彼らが関与していない可能性が高いように見え始めている。

⑫ R2D2トロイの木馬はどのようにコンピュータに感染するか? 

 このマルウェアはWindowsコンピュータをターゲットとしている。 通常、添付ファイルを含む電子メール、またはコンピュータに感染するWebへのリンクすることで起きる。 (注5)  

(3)  2011.10.11 Deutsche Welle(DW)記事

 ドイツの大手メデイアDWが政府スパイウェアの背後にあるドイツの会社DigiTaskがバイエルン州へのスパイウェアの販売の事実を認めたとする記事を載せている。

 前記(1)で述べた内容とかなり重複するのでここでは引用しないが、より詳しい事実関係の説明があるので、併読されたい。 

(4)  いわゆる「合法的とされる通信傍受(Quellen-TKÜ)源」と「オンライン捜査」に関する法的考察

 限られた時間のため、法学者ウルフ・ブルマイヤー(Ulf Buermeyer)氏(注6)のレポート「Quellen-TKÜ – ein kleines Einmaleins (nicht nur) für Ermittlungsrichter」をあえて参照し,仮訳した。なお、筆者はドイツ法の専門でもないし、また憲法裁判所の判決内容についての研究者でもない。その意味で神戸大学(当時)高橋和広「IT基本権に関する一考察(Eine Uberlegung vom IT-Grundrech)」神戸大学六甲台論集法学政治学篇,61(12):39-89 等を適宜参照した。 

Ulf Buermeyer 氏

① 検証:その法的根拠は? 

 「いわゆる合法的とされる通信傍受(Quellen-TKÜ)源」は、「古典的な」電気通信監視手段の特別なケースとして提示されることが多い。ただし、技術的な観点からは、これは「オンライン検索」と同じ手順である。Quellen-TKÜと更に進めた捜査手段の両方について、監視ソフトウェア(「トロイの木馬」)がターゲット・システム上で実行されるため、厳密性・完全性には違反する。 

 合法、違法の違いは、気づかないであろうが、唯一Quellen-TKÜで収集できるデータの性質のみによる。ターゲットシステムに侵入すると、単に電話を傍受するだけの捜査は、モジュールを再起動するという単なる問題に過ぎない。CCCは「国家によるトロイの木馬」の分析でこのことを印象づけている。 

 これは、トロイの木馬によるQuellen-TKÜの法的根拠の可能性を問ううえで、次の2つの思考を証明するステップにつながり、Quellen-TKÜとオンライン捜査の両方とも既に容認できなくなる可能性がある。 

(AQuellen-TKÜにつき特定の許可基準とは何か? 

 ソース通信システムの場合、電気通信のモニタリングが関係しているので、刑事訴訟法§100a条の義務ならびに§100bStPOの手続き上の法的基準が明らかである。 しかし、これらの基準は、情報通信システムの完全性と機密性には影響しない(基本法第10条第1項)。これは、連邦憲法裁判所のオンライン上の決定 検索、・・・・・・ 

 しかし、連邦憲法裁判所はさらに同じ判決で、Quellen-TKÜのみが存在し、オンライン検索が全くないと述べている。 

 監視が進行中の電気通信プロセスのデータに限定されている場合、これは技術的な規定と法的要件によって保証されなければならない。 

 連邦憲法裁判所(BVerfG)によって策定された法的要件の要求は、法科学においてほとんど全会一致に導かれている(例えば、JurPCのAlbrecht、Buermeyer / Baker HRRS 2009、p.433、Becker / Meinicke StV 2011,50参照) 証拠)これらの法的要件を正確に含む具体的かつ法的な規制が必要である。 

 ドイツ刑事訴訟法第100aおよび刑事訴訟法第100b条は、 Quellen-TKÜ の特別な特徴について言及しておらず、特に「技術的予防措置」による電気通信の制限を確実にするための保護措置を規制していないため、 これらの基準の拒否は、最初の検査段階である。 個々の裁判官がこれを違う方法で見れば、司法機関の自己エンパワメントがあり、それはすでにNetzpolitik.org とのインタビューで非常に疑わしいと批判されている。 

B「附属品の権能」

 ドイツにおいて非常に影響力のある裁判官(Lutz Meyer-Goßnerは、Quellen-TKÜの具体的な法的根拠は必要ないと主張する。ターゲットコンピュータにトロイの木馬を潜入させる許可は、それほど重要ではありません 電気通信の監視の付属品は、刑事訴訟法§100a,§100bに基づいても可能である。そうでない場合はプロバイダーのみが通信傍受(TKÜ)手段の使用が許可される。 

 ここでのキーワードは「附属品としての権能(Annex-Kompetenz)」である。この基準の裁判官が通信傍受(TKÜ)を手配することができれば、トロイの木馬使用につきTKÜを小さな付録として与えることは簡単であろう。 

 この見解が疑わしいほど、CCCは、データ主体のプライバシーのためのトロイの木馬の使用の劇的な結果を明らかにしただけでなく、ターゲットシステムのデータセキュリティ問題を明らかにした。 通常のTKÜと発信元TKÜは、関係者の権利における介入の重大度と比較されるべきではなく、常にトロイの木馬に関連するリスクがあるためである。ほぼ預言的であるが、連邦憲法裁判所が2008年にすでに「オンライン捜査」に関する決定を行っている。 

 「複雑な情報技術システムが電気通信監視のために技術的に浸透している場合(「情報通信監視」)、システム全体を偵察するためには侵入に大きな障害がある。現在の電気通信の単なる監視に接続されており、特に、パーソナルコンピュータに記憶されたデータは、システムの電気通信使用に関係しないことに留意されたい。 

 さらに、聴聞会で有能な専門家から提供された情報によれば、たとえこれが意図ではないとしても、現在の電気通信に言及することなく、浸透後にデータを収集することができる。その結果、従来のネットワークベースの電気通信監視とは異なり、関係者は電気通信の内容や状況を超えて追加の個人情報が収集されるリスクが常にあることになる。 

 これは実際には追加するものではない。 TKÜへの憲法上無関係な併合措置へのターゲットシステムの非常に繊細な浸潤をどのように描写するかは、私にとってはあまり驚くことではない。 

(C)結論

① ここに記載された見解によれば、これはすでにトロイの木馬(Trojans)によるQuellen-TKÜの認可に適した法的基盤が欠けている。 

②比例性についての検証

 通信傍受につき刑事訴訟法の§100a§100bの適用を希望する者は、裁判官または検察官として、電気通信監視の比例性を検証しなければならない。 この検証には、テクニカルリソースの選択、特に通信傍受(TKÜ)に利用可能な他の制限の少ない可能性の検討も含まれる。 

 この場合、警察は、「通常の」通信傍受TKÜ命令によって、例えばDeutsche Telekomに実装されているのと同様に、「通常の」通信傍受TKÜ決定に基づいて通信事業者に連絡することができる。。Skypeから特定の ポートまたはユーザー名を得る可能性が存在するかどうかは、100%確実ではない(Skypeは公式に意見を述べていない)。一方、「スカイプの合法傍受」に関するGoogle検索の結果では、この可能性を示唆する多数の目標が明らかになっている。Thomas Stadlerはこの可能性についても言及している。この可能性は、Skypeのプライバシー利用条件で明示的に言及されている。 オーストリア警察当局はこのオプションを望んでいる。 すでにドイツメデイア”Heise.de”にもこの可能性について報告している。 

 しかし、スカイプはEUのルクセンブルクに拠点を置く企業でもあり、容易にアクセスできる。 裁判官または検察官の観点から見ると、これは、比例関係の文脈では、当初、Quellen-TKÜに対抗し、Skypeなどのプロバイダーと古典的傍受を実装するためのマイルドな方法であることを意味する。これは、一方では、ドイツ刑事訴訟法第100b条(3)号によって規定されている道でもある。 一方、これはトロイの木馬が拒否したターゲットシステムへのかなりの干渉のためです - 穏やかな介入の憲法的見地からもそうである。 Skypeが通信傍受(TKÜ)の司法上の許可を実施していないなどの事実も明らかになった場合にのみ、さらなるステップを検討することができる。 

 実際には、これは、Quellen-TKÜを開始するための「主な」要求が、検察官と調査官によって却下されるべきであることを意味する。 むしろ、前提条件がそれ以外の場合は、それぞれのVoice over IP事業者に対して「通常の」TKÜが適用されるか、注文されることになる。この対策が成功した場合にのみ、さらに拡大段階をコンピュータに浸透させなければならない可能性がある。 

③ 技術面からの検証

 実際に利用可能な他の技術的解決策がないことが明らかであり、刑事訴訟法の§100a§100bが法的根拠とされるというさらなる仮定がある場合はBVerfGの判決文にあるとおり、電気通信サービスの制限について憲法裁判所上の問題するのが実際的である 

 一方、ドイツ基本法第10条(1)項(信書の秘密並びに郵便及び電信電話の秘密は、これを侵してはならない)は、モニタリングが進行中の電気通信プロセスのデータのみに限定されている場合、「ソース電気通信監視」の認可の評価に関する唯一の基本的な法的基準である。これは、技術的な規定と法的要件によって保証されなければならない。 

 しかし、これは問題のない形式ではない。Quellen-TKÜ.の全体の構成はこの制限に依存する。制限が満たされなかった場合は、代わりに不正なオンライン検索が行われ、自営の情報システム(「コンピュータ基本権(Computer-Grundrecht)」)の完全性と機密性に対する基本的権利が侵害される。 したがって、裁判官と検察官は、これを効果的に管理するためにすべてのことを行う必要がある。 特に、当局自身がソフトウェアの各メーカーによって完全かつ正確に情報が提供されているかどうかは不明であるため、警察だけの保証を信頼することはできない。 CCCによって分析された事件は、少なくとも司法機関(おそらく警察)でさえ、彼らが実際にハードディスク上で告発するため得られた「デジタル・バグ」(FAZ)を知らないことさえ示唆している。 したがって、ターゲットシステムの耐性状態の浸潤に対して、以下の最小要件を定式化することができる。 

◾それぞれ使用されているソフトウェアは、独立した場所のソーステキストと実行可能ファイル(「バイナリ(Binaries))を使用して分析されていなければならない。

◾このチェックはケースバイケースで行われなければならず、使用されるソフトウェアが法的要件を満たしていることを確かめられねばならない。 

 このためには、個々のケースではコントロールセンターから専門家の意見を得なければならず、意思決定プロセスにおいて裁判官が利用可能でなければならないため、すべての前提条件が満たされているかどうかを「ポイントごとに」チェックしうる。 

【結論】 

 いずれにしても、基本法の憲法上、州においては、Quellen-TKÜは一番困難な憲法上でのみ実施される。すべての裁判官、検察官は、上記の最低限の法的要件および技術的要件が「戦闘の熱意のなさ」ではないことを確実にするための積極的な措置を講じる責任がある。 

 残念ながら、犯罪は遍在しているが、私たちは起訴に尽力している。 しかし、法執行当局の法的違反は決して取られないかもしれないし、あるいは促進されるかもしれない。 さもなければ、私たちは保護しようとしている司法国家を改めて洞察する必要があろう。

 以下は、本論とは直接関係ないなので訳は略す。 

************************************************************

(注4) ”snooping”とは、通信・ネットワークの分野では、通信機器やコンピュータが、回線やネットワークを流れるデータのうち、自分宛でないものをこっそり取り込んで中身を見る仕組みや機能のことをいう。 

(注5) Sophosは自社の専門的視点から次の補足説明を行っている。

*ソフォスはR2D2トロイの木馬を検出しますか? 

はい。 ソフォス製品は、 Troj / BckR2D2-Aとして検出します。  

* Sophos製品を使用していない場合は、アンチウィルスベンダーに連絡して保護が追加されているかどうかを確認してください。 

 * 法執行機関と協力して意図的にマルウェアを検出してはいけませんか? 

 作者が誰であろうと、当社は知っているすべてのマルウェアを検出する。そのため、ソフォスラボでは、州主催であるかどうかにかかわらず、お客様のコンピュータに対する攻撃から保護する。  

*あなたがそれについて考えるなら、賢明な選択肢はありません。 サイバー犯罪者が法執行機関のトロイの木馬を召喚し、それを無実の当事者に対して使用させるのを止めるにはどうすればよいですか?  

お客様の保護が最優先です。 当局がマルウェアを検出しないようにしたいのであれば、私たちがソフトウェアを傷つけるのではなく、検出できないものを書き込もうとしている。 

(注6) Ulf_Buermeyer氏の略歴を紹介する。法学者で、ベルリンに住んでいる。戦略的に実施された法的手続きを通じて基本的および人権を擁護する非営利団体であるGesellschaftfürFreiheitsrechteeV(GFF)の会長兼法務部長である。彼は現在、ベルリン地方裁判所の裁判官としての地位を離れている。

の学術研究は、憲法(特に、コミュニケーションの自由、情報の自己決定、情報の自由)と、刑事手続や判決の執行を含む刑法に焦点を当てている。 彼はフランクフルト/マインのヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学から、情報の自己決定と刑事制度における効果的な法的保護に関する論文で博士号を取得した。 2013/2014年、彼はニューヨーク市のコロンビア大学ロースクールでLL.Mプログラムの特別研究期間(Sabbaticals)でアメリカ法を学んだ。 2017年から2019年まで、彼はベルリン州憲法裁判所の研究助手であった。 2018年以来、彼は上院司法省、消費者保護およびベルリン州の差別禁止のために、ベルリン州の無線セルクエリ透明性システム(FTS)を開発しており、その一部は上院政権への代表団として現在も務めている。彼はホームページ(https://buermeyer.de/ulf/)を持っており、CCC(Chaos Computer Club)(1981年にハンブルクでバウ・ホラント氏(Wau Holland)を中心に電子技術マニア、ハッカー、技術フリークが集まり設立された団体)と社団法人Digitale Gesellschafte Vのメンバーである。

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フィンランド行政最高裁判所が反検閲運動ウェブサイトの国家警察(NBI)による検閲は合法である旨最終判示

2013-09-06 11:05:12 | 人権問題



 さる8月26日、フィンランド行政最高裁判所は世界的に有名な反検閲運動ウェブサイトが国家警察(National Bureau of Investigation:NBI)の検閲リストに追加されたときにNBIの法律違反はなかったと判示した。この裁判は2011年5月2日に下されたヘルシンキ行政裁判所判決に対する上告裁判であるが、(1)この裁判の事実関係を含め最新情報を踏まえたわが国の解説はWikipediaも含め皆無である点、(2)フィンランドの行政裁判制度や「2006年児童ポルノ防止対策普及法」に関する正確な解説や訳文もないこと等から、あらためて本ブログで、その解説を試みることにした。

 いうまでもないが、この種の問題はフィンランドだけでない。例えば、2011年11月、英国の人権擁護NPOである”Internet Watch Foundation”の性的な自動虐待の内容を持つサイトへのアクセスを無効化(ISPへの通知)を目的とする自主規制機関ブラックリスト(URL list)の対象に載せられたため、英国でもっとも多く利用されているフアィル・ホステイング・サービス”Fileserve”
(注1)が何日間も使用不可となるという問題が生じた。このような問題に対応するため英国のISP等はIWFから通知を受けたときは行動をとるべく準備を行っている。またIWFと同様のデジタル時代の人権擁護NPOである”Open Rights Group”はブラックリストへの掲示によりごく一部の問題が原因で広く利用不可となることから、慎重な対応を取るべき点を指摘している。
 また、ニュージーランド内務省(DIA)が運営する「Internet and website filter システム」も児童ポルノに対するインターネットとウェブサイトのフィルタリングシステムとして、ISPを取り込んだ自発的なかたちでの子供の性的虐待イメージをホスティングするウェブサイトを阻止するDigital Child Exploitation Filtering System(DCEFS)も注目されている。DCEFSは、明確に、児童の性的虐待に関する好ましくない画像(ニュージーランド人はだれでもアクセスする重大な犯罪である)を提供するウェブサイトのみに焦点を合わせるものである。


 これらの国々やEU加盟国の個別フィルタリング強化の問題と2011年12月13日にEU議会および欧州連合理事会で採択された「2004年枠組み決定(2004/68/JHA))の撤回と性的虐待(sexual abuse)、性的搾取(sexual exploitation)および児童ポルノと戦うためのEU指令(DIRECTIVE 2011/92/EU OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 13 December 2011 on combating the sexual abuse and sexual exploitation of children and child pornography, and replacing Council Framework Decision 2004/68/JHA)」とは緊密に関係する。同指令第25条は「児童ポルノを有し、又は発信する国内ウェブサイトに対してこれを直ちに削除させ、国外におけるものに対しては削除させるよう努力する。当該国内ウェブページへのインターネットアクセスは制限することができるが、透明な手続と適切な保護の規定が設けられなければならない。」と定めているからである。(わが国の課題に関しては
(注2)参照)

このように見てくると、わが国において立法者や研究者等も、より本格的に児童や未成年者の人権保護問題とデバイス利用の急速な範囲拡大問題につき論ずべき時期にあると考える。本ブログがその参考になれば幸いである。


1.事実関係の要約

(1)フィンランドの2006年の立法措置
 フィンランドは、児童ポルノ(child pornography)を配信するウェブサイトをターゲットとする検閲法(「2006年児童ポルノ配布防止対策普及法(Laki lapsipornografian levittämisen estotoimista: Act on Measures for Preventing the Distribution of Child Pornography (1068/2006))」)を2006年12月1日に成立、2012年1月1日に施行した。
 同法は全7条からなる短い法律である。ここで、仮訳しておく。
第1条 目的:本法は児童ポルノの内容を含む特定の海外サイトのアクセスをブロックすることにより子供の基本的権利の保護強化手段を強化することを目的とする。

第2条 定義:本法において、
1)児童ポルノ(barnpornografi)とは、インターネット経由で子供のわいせつな画像を取扱う行為、かつ
2)電気通信会社(Teleföretagens)とは、電気通信市場法第2条第17項ネットワーク・オペレーター事業または第19条にいう同法第4条の免許を受けた会社または同法第13条の電気通信通知を行う事業者をいう。

第3条 電気通信会社のサービス内容を決定する権利
電気通信オペレーター会社は、児童ポルノサイトへのアクセスを持たずに自身のサービスを提供する権利を持つ。

第4条 児童ポルノ・サイトのマッピング:警察(NBI)は、児童ポルノ・サイトのリストを作成、維持、アップデートすることができる。
警察は、この立法目的に即して非政府機関、私人、通信オペレーターおよび公的機関に対し必要な情報を提供を要請しかつ受領することが出来る。

第5条 警察の情報提供義務
 警察は、本法に関する理由にもとづきブロックするサイトに対し、通知する義務を負う。データシートの記載に関しては警察は電気通信会社と共同して行いうる。ブロックするサイト名はいつでも閲覧可能でなければならない。
 閲覧可能情報は次の情報を含まなければならない。
1)このサイトへのアクセスはブロックされる。
2)激増(proliferation)したと判断するときのアクセス規制基準
3)必要な場合の接続する情報資源に関する情報
4)第3項の契約において引用する事業体名

第6条 守秘義務と情報開示
 第4条の活動において、警察は規制機関としての守秘義務にもとづきリストを記載する。
 電気通信会社およびそのオペレーションにおいて「1999年 政府活動開示法(Act on the Openness of Government Activities 21.5.1999/621 (as amended up to Act No. 1060/2002))」第23条(筆者追記Section 23 — Non-disclosure and prohibition of use )および第35条(筆者追記Section 35ーPenal provisions )に定める慎重さを実践する。
 政府活動公開法に加え、警察は電気通信会社に第4条リストに関する情報の提供する権利を持つ。

第7条 施行時期
 本法は、2007年1月1日に施行する。本法の施行前においても法執行手段を行いうるものとする。

(2)フィンランドの検閲制度の批判活動家マッティ・ニッキ(Matti Nikki)が主催する批判サイト”Lapsiporno.info”(フィンランド語で「児童ポルノ」の意)が警察の秘密リストに掲載された問題の経緯

 2012年末、フィンランドで児童ポルノサイトへのブロッキングが実施されたが、翌1月に Nikki氏の運営する”Lapsiporno.info”というサイトがブロッキングの内容を解読する「リバースエンジニアリング」を行い、ブロックされたサイトのDNS名とIPアドレスのリストの一部を公開した。ところがその後、このサーバー自体が児童ポルノサイトとしてブロッキングされるようになったため、「児童ポルノを含まない検閲批判サイトまで恣意的にブロックしている」として起訴し裁判問題になった。 フィンランド国内の団体がこのリストに含まれる1047のサイトを精査したところ、9つのサイトが児童ポルノを掲載していたほか、9つのサイトが年齢不詳のポルノを掲載していた。28のサイトは違法か合法か判断が難しく、46のサイトは創作性の認められる児童をモデルとした作品で、残り879サイトに関しては合法なコンテンツしか存在しなかった。国内外の論議を呼ぶこととなった。

子供の諸権利保護にかかるフィンランド憲法や関係法 CRIN(子供の人権国際ネットワーク:Child Rights International Network:CRIN))のヨーロッパ部門であるENOC(European Network of Ombudspersons for Children) が詳しく解説している。個別法の内容についてはわが国で詳しく論じたものはない。筆者なりに各法律の原本にあたり調べた結果で記しておく。

A.「フィンランド憲法(Suomen perustuslaki)」(憲法の原文(英訳)を参照されたい)。特に、次の4条が子供の人権保護にかかわる規定にあたる。要旨のみ仮訳する。(なお、CRINの憲法英訳文は誤字等もあり必ずしも正確でない。筆者の判断で訳す際に前記finlex資料にもとづき修正した)

*第5条 出生および親子関係を通じたフィンランド市民権の取得(s. 5 addresses the acquisition of Finnish citizenship through birth and parentage)

*第6条 子供は平等かつ個人として扱われ、またわれかつ個人として彼らはそれらの発達のレベルに非常に対応しながら自分たちに関係する問題に影響を及ぼすことができるものとする(s. 6 provides that “children shall be treated equally and as individuals and they shall be allowed to influence matters pertaining to themselves to a degree corresponding to their level of development)

*第12条 児童の保護の必要な画像プログラムに関する制限規定は本法に定める。
(s.12provisions on restrictions relating to pictorial programmes that are necessary for the protection of children may be laid down by an Act)

*第19条 公権力は社会保障を通じ、子供に備えるのに責任がある家族と他の者を養う義務があり、彼らは子供の福祉と個人的な発達を確実にする能力がある。(s. 19 creates a right to social security, making specific reference to children and the families of those with children)

B.子供の保護に関係する法律
The Child Welfare Act (2007/417) amended 2010 :この法律の目的は、安全な生育環境とバランスのとれてた幅広い能力開発とおよび特別な保護への子供の権利を保護することである。

The Youth Act (2006/72) amended 2011:この法律の目的は、1) 若年層の成長と独立を支持して、若年層の積極的社会参加と権限委譲を促進して、若年層の成長と生活水準を改良することであり、2) 目的の実現は共通性、連帯感、公平さ、平等、多文化主義、インターナショナリズム、健康な生活スタイル、生命の敬意、および環境保護に基づいている。

*The Act on Measures for Preventing the Distribution of Child Pornography (1068/2006)

Act on the Ombudsman for Children (1221/2004):この法律は、子供の利益の実現と権利を促進するためには活動の分野の機関と同様に他の当局と他の行為者と提携したChildrenのためのOmbudsmanの義務を定める。

Young Workers' Act (998/1993) amended 2004 :この法律、個人部門または公共の部門における雇用関係で18歳(若い労働者)未満の者によって行われる仕事の従事に適用される。
*The Basic Education Act (628/1998) amended 2010
*The Child Daycare Act (1973/36) amended 2006(注3)
The Health Care Act (1326/2010)
*The Decree on maternity and child health services, schools and student health care and preventative oral health care for children and young people (380/2009) amended 2011

2.「Lapsiporno.info裁判」の経緯

 2011年6月1日の”Digital Civil Rights in Europe”が、それまでの経緯を含め詳しく報じている。ここでは、その概要を紹介する。

 フィンランド国家警察は前述した外国の児童ポルノウェブサイトへのアクセスをブロックするため完全に秘密裏にブラックリストを作成し、国内で適用できるようISPに配布していた。ISPがこのブラックリストを使用するのは任意であるが、2008年通信大臣であったスヴィ・リンデン(Suvi Linden)は、ISPがリストの使用を開始しないときは、義務化させると述べた。最初のころの規制の波が去った後、ブラックリストは使用されない時期に入った。

 ニッキは口頭でブラックリストにつき批判していたが、リンクしようと見つけたウェブサイトをロードしようとして偶然NBIのブラックリストを発見した。ニッキはこのブラックリストをウェブサイト上で発表したことから(彼のサイトのコンテンツとしては児童ポルノに関するものは皆無であった)、警察はニッキを児童ポルノを配信したとしてニッキを起訴し、その結果”Lapsiporno.info”サイトはブラックリストに載った。

 ニッキはヘルシンキ行政裁判所にNBIに対する訴えを起こしたが、2009年5月20日、同裁判所はブラックリストはフィンランド国外でホステイングされたサイトのみ阻止するものであり、ニッキの運営サイトを包含したことは違法であると判示した。

 被告(BNI)は行政最高裁判所に上告した。

 これに対し、最高裁判所は、2013年8月26日に次のとおり判示し、被告の勝訴とした。
「ウェブサイト”Lapsiporno.info”が違法なサイトにリンクしたりホステイングしていなくとも、本件において児童の危害からの保護は言論の自由に優先する」
また、もしlapsiporno.infoを合法的な材料をホステイングしているがゆえに合法であると判示したならば、他のサイトが非児童ポルノの材料を追加することで、ブロックを回避できてしまう。
 また、同法は外国サイトだけに適用され、外国サイトのドメインを記載するので、lapsiporno.infoサイトのブロッキング行為については、同法でカバーされていないという原告の主張を支持できない。」

 この最高裁判決は、”lapsiporno.info”がフィンランドのほとんどのISPによって阻止されたままであることを意味する。しかしながら、皮肉にもlapsiporno.infoは、フィンランドのサーバでホステイングされるその他の国々からはアクセス可能である。

3.フィンランドのレコード業界団体の取り組み

 国際レコード業界連合会(IFPI)のフィンランドレコード協会(Finnish National Group of IFPI)(以下、「IFPIフィンランド」という) )(注4)はスウェーデンの著作権反対運動ウェブサイトである「Pirate Bay」に対し、2013年4月に裁判闘争を開始した。
 IFPIフィンランドによると、「Pirate Bay」ウェブサイトは著作権で保護された音楽レコーディングにつき著作権者が何等の補償なしに違法なダウンロードを可能にした。
 このため、IFPIフィンランドはヘルシンキ地方裁判所に対し、フィンランドの大手通信会社Elisaの電話オペレータに対し、「Pirate Bay」の顧客からのアクセスを阻止するよう命じる裁判所命令を下すよう求めた。この要求は「著作権情報および反著作権センター(Copyright Information and Anti-Piracy Centre:CIAPC)」(注5)が行った。

 この告訴は電話オペレータ個人をターゲットとしているが、IFPIフィンランドは引き続きの裁判において他のISPに対し同じ要求を行うかもしれない。すなわち、IFPIフィンランドの代表者であるラウリ・レチャルド(Lau ri Rechardt)は「Pirate Bay」のようなウェブサイトが機能し続ける限り、フィンランドで合法的ダウンロード市場の発展は望めないと述べた。

 この裁判でフィンランドの大手通信会社Elisa のプロデュース部長であるパヌ・レヒティ(Panu Lehti)ははこの裁判は当社の1人の電話オペレータを被告とするきわめて例外的なものでElisaは「Prate bay」の活動に関し、いずれか一方の側につかない。われわれはヘルシンキ地方裁判所の判決を待つ。
レヒティは、Elisaは著作権で保護されたコンテンツに関し、反検閲活動や違法な配布には反対の立場を取ると述べている。

 なお、2012年2月1日、スェーデン最高裁判所(Högsta domstolen)は「Piracy Bay」の創設者のうち3人(フレデリック・ネイエ:Fredrik Neij、ピエート・シュンダ:Peter Sunde、カール・ルンドストローム:Carl Lundstrom)に対する1年の実刑判決と損害賠償金約360万ドル(約5億5,600万円)の支払いにつき被告の控訴審に対する上告を却下し、確定した。(注6)

 
4.英国における民間自主規制によるブラックリスト問題

 英国の人権擁護団体である”Internet Watch Foundation”(IWF)は違法な犯罪となる子供の性的虐待にかかるインターネット・コンテンツの循環を除去すべくブラックリストのISPへの提供とインタ-ネット・ホットラインを準備し、全英ベースでの「通知と違法サイトを分解」させる団体として活動している。
 英国内でほとんど根絶された任務でもってその他の犯罪内容の源を根絶することを最大の目的としている。
 また、同時に英国の法律の範囲内でかつ国内の法執行機関と協力した捜査や調査が行えるよう、各英国以外のウェブサイトの詳細につきパートナー国のホットラインを通じて児童の性的虐待の画像等が流布されることの阻止のため国際的な活動を行っている。
 その違法なコンテンツの除去ステップの間、英国ISP業界は自発的にIWFが提供するリスト(URL List)を活用して違法サイトへのアクセスのブロックに合意した。

 ここでは、IWFの”URL List”に関する主要解説項目について概観しておく。詳しくは付記したURLで原文を参照されたい。

(1)IWF URL LiIst Polocy and Procedures 
 児童の性的虐待にかかるURLの評価や本リストに関し遵守されるべきポリシーと手順につき解説している。

(2)IWF URL List Recipients 
 具体的な協力ISP名やグループ名が列記される。

(3) Frequency asked questions 
本制度にかかる詳細な解説をQ&Aでまとめている。

Blocking Good Practice
効果的ブロッキングのための良き実践例

5.オーストラリア連邦警察やACM による児童ポルノブロックのリストの実施状況

(1)2011年6月28日のCyberLaw Blogは次のような解説記事を載せた。

「オーストラリアの連邦警察当局(Australian Federal Police :AFP)はオンライン児童虐待をする材料となることを狙う任意のインターネット・フィルタイング計画の下で、初めてのISP検閲通知システムの準備を開始した。
 この初めての任意のフィルタリング・プログラムは”Telstra”が2010年7月に連邦政府が慎重であったため対応に揺れ動いており困難を極める模様であった。
しかしながら、6月27日、Telstraはこの計画が国際刑事警察機構(Interpol)により維持されかつAFPが入念に検査したブロック・リストの材料が狭い範囲限定されるという計画に関するとする公約を確認した。
 また、大手キャリアーである”Optus”(オーストラリア 第2の通信会社で、シンガポール最大の通信会社シンガポール・テレコムに所有されている)も”Interpol List”にもとづく計画に従うが、7月下旬まではサイト・ブロックは開始しないことを確認した。

 さらに、オーストラリアのインターネット産業連合会(Internet Industry Association:IIA)はInterpol Listにもとづく産業界全体の計画の枠組みを明らかにした。
当時IIAの代表であったペーター・コロネオス(Peter Coroneos)はこの計画は今日、テロや重大犯罪の捜査を目的とする規定であった「1997年電気通信法(Telecommunications Act)」の関連規定(313条)を適用する初めてのケースになると述べた。

 AFPのハイテク犯罪活動班の部長であったグランド・エドワーズ(Grand Edwards)は、AFPは任意の遵守の下でブロックを求める児童の虐待内容を含むサイトのリストをISPする準備を進めていたと述べた。さらにエドワーズは
1997年電気通信法313条の下でISPに発行する番号を手続き中であると述べた。

 さらに、”Optus”はブロックリストの取り組みは尊敬に値すると述べた。そのスポークスウーマンは「このシステムは安全で、信頼に足りかつ他の国々で十分な試験を行ってきたアプローチである」と述べた。

 一方、ISPである”iiNet”、 ”Internode””Primus”を含む中小ISPはこの計画に関してはコメントを差し控えたままであった。

 なお、人権擁護団体”Civil Liberties Australia”は児童ポルノをブロックしようとする政府の姿勢は支持するものの、オーストラリアの主要ISP 2社が採用を予定するインターネットフィルタリングプログラムが7月にオンライン児童虐待問題を包み隠す点ならびに、直接法執行にあたる政府機関が無視されることの懸念を述べた。

 また、児童の保護支援団体である”Child Wise”の代表であるバナーデット・マックメナミン(Bernadette McMenamin)は、フィルタリングシステムの欠点の問題が計画を批判する理由とはなり得ないし、普通のオーストラリア人は、フィルター環境を回避できるほどのエリートハッカーではない、と述べた。

(2)2013年2月AFPは児童の保護オペレーションにつき次のようなリリースを行った。また、ACMA(注7)との間でオンライン性犯罪取締まり強化にかかる合意文書 (Agreement signed to target online child sex crime)を締結した。

 AFPには、どんな環境に彼らがいても子供と若年層が確実に安全になるようにする際に行動する重要な役割がある。 この役割を実現させる際に、AFPはすべてのオーストラリアの警察機関、多くの国際的な政府機関、政府の各省、産業および非営利団体との強いパートナーシップを作り上げた。

 ”REPORT ONLINE CHILD SEX EXPLOITATION” につき、 AFPは特にオンラインで若年層を安全に保つことと関連して多くの防犯と認識の引き上げイニシアチブにかかわる。
  以下のリンクか私たちのオンライン調査フォームでこれらのイニシアチブと関連した調査をすることができる。

 AFPはHigh Tech Crime Operationsユニットを通してオンライン子供との性交開発と子どもとの性交観光に関連している犯罪の調査に責任がある。 重要な刑罰規定はこれらの犯罪行為に適用される。

6.ニュージーランドのDigital Child Exploitation Filtering Systemの実態

 2012年2月7日、ニュージーランドの人権擁護団体(注8)の代表であるジョシュア・グレインジャー(Joshua Grainger)は、連邦内務省に対し、公的情報公開法に基づき標記システムにつき開示請求を行った。
 これに対し、内務省の回答が公開されている。本ブログでは詳しくは解説しないが、このような支援団体があること自体が研究材料といえよう。

 関係するサイトのURLを記す。
① http://www.dia.govt.nz/Censorship-DCEFS
ニュージーランド内務省のフィルタリングサイト
②7 http://www.dia.govt.nz/Censorship
ニュージーランド内務省の検閲に関する専門サイト


7.EUの「2004年枠組み決定(2004/68/JHA))の撤回と性的虐待(sexual abuse)、性的搾取(sexual exploitation)および児童ポルノと戦うためのEU指令」の検討経緯

 概要のみまとめておく。
(1)2009年3月29日、欧州委員会は標記指令草案を採択した旨リリースした。同時に「指令草案に関するQ&A 」を公表した。
(2)2011年12月13日にEUは「The European Union (EU) adopts legislation aimed at combating sexual offences committed against children. The Directive covers different aspects such as sanctions, prevention, and assistance for victims. Specific provisions are provided concerning child pornography on the Internet and sexual tourism」を公表し、欧州議会および欧州連合理事会において指令案を可決した旨明らかにした。
 同指令の要旨は、わが国では国会図書館 植月 献二「外国の立法:【EU】 児童の性的搾取・児童ポルノ等の対策強化指令」が整理しまとめている。

8.わが国で検討すべき課題につき若干の考察

 時間の関係でここでは詳しく論じないが、前述したとおり、ブラックリストによる安易なアクセス規制は、一般論としては情報規制を伴うし、各種ITサービス全体の機能低下をもたらすといえる。
 ここではフィンランドや英国等の論議をふまえ、わが国として検討すべき課題のみ整理しておく。
①ブラックリストの作成につきフィンランド等方式を取るかあるいは英国等のように自主規制機関方式を採用するか。
②システムの透明性をどのように担保するか。
③日本国外のURLのみリスト化の対象とすべきか。

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(注1)オンラインストレージとは、各種データを保存するためのディスクの空き領域をインターネットを通じて貸し出すサービス。有料のものと無料のものがあり、後者では利用時に広告を表示したり、利用できる容量に制限があったりする。自宅・職場・外出先で同じファイルを利用できるほか、複数の利用者によるデータの共有も可能。「ネットストレージ」、「オンラインストレージサービス」、「ストレージサービス」、「ファイルホスティングサービス」ともいう。(kotobank.jp から引用)

(注2)わが国では1999年に「 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成11年5月26日法律第52号)」が成立、施行されている。その第7条がフィンランド立法(2006年児童ポルノ配布防止対策普及法)に該当する規制法といえる。
(児童ポルノ提供等)
第七条  児童ポルノを提供した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
2  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
3  前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第一項と同様とする。
4  児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
5  前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
6  第四項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。

 なお、第169回国会衆議院議員提案:において、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案要綱の改正案が示されている点に留意すべきである。

(インターネットの利用に係る事業者の努力)
第十四条の二 インターネットを利用した不特定の者に対する情報の発信又はその情報の閲覧等のために必要な電気通信役務(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第三号に規定する電気通信役務をいう。)を提供する事業者は、児童ポルノの所持、提供等の行為による被害がインターネットを通じて容易に拡大し、これによりいったん国内外に児童ポルノが拡散した場合においてはその廃棄、削除等による児童の権利回復は著しく困難になることにかんがみ、捜査機関への協力、当該事業者が有する管理権限に基づき児童ポルノに係る情報の送信を防止する措置その他インターネットを利用したこれらの行為の防止に資するための措置を講ずるよう努めるものとする。

(注3) 「 The Child Daycare Act (1973/36) amended 2006」に関し、わが国では研究報告 伊藤喬治「現代のフィンランドにおける〈保育〉制度と保育者養成」が詳しく解説しているので、そのURL(http://ir.nul.nagoya-u.ac.jp/jspui/bitstream/2237/7658/1/25-33.pdf)のみ記しておく。

(注4) IFPIフィンランド(フィンランドのMusiikkituottajatのIFPI www.ifpi.orgのフィンランドのNational Group)は、フィンランドのレコード会社23社を代表する国家レベルの業界団体。 メンバーは主要な国際的なレコード会社(EMI、ソニー、Universalおよびワーナー)から小さい独立系レコード・プロデューサーまで及ぶ。IFPIフィンランドはメンバーによって融資された民間非営利組織である。フィンランドの総音楽市場販売の約95%のシェアを占める。

(注5) ”CIAPC”は、フィンランド教育・文化省( Opetus- ja kulttuuriministeriö:http://www.minedu.fi/ )とともにメンバー協会によって資金支援される非営利団体である。その目的と任務は、著作権の侵害に不利に働くことについて、メンバー協会の一般的な利益をモニターして、その改良措置を実行することにある。

(注6) 同裁判につきわが国でも翻訳解説記事がある。なお、フィンランドと同様、スェーデンの児童ポルノに対する裁判所の姿勢は厳しく、2012年5月16日の 記事で最高裁が児童ポルノのマンガ本の翻訳者(manga translator)(シモン・ルンドストロ-ム:Simon Lundstrom)が39のマンガ画像を保持していたことに対する有罪判決が確定した旨報じられている。
 この裁判で、被告弁護側証人であるガルブ大学の研究者ヨハン・ホリエル(Johan Hojer)は「この画像に表示されている人は現実にいる人でない。検察の起訴はこれらの画像はカムフラージュされた写真であるとみなす傾向があるが、これらはあくまでアニメの幻想である」と証言した。
 一方、検察官ヘビッヒ・トロスト(Hedvig Trost)は審理の間、「画像は子供に性行為の実行を強要しうるし、描かれたものは本当の子供であるかもしれず、また描く際に本当の子供の写真が使用されたかも知れない。外部からオリジナルの写真があったかどうかは知りえない」と述べた。 本裁判第一審であるウプサラ(Uppsala)地方裁判所は2010年6月に被告のPC内にあった画像51枚につき有罪とし、罰金25,000クローナ(約37万1,250円)を命じた。スヴィア(Svea)控訴裁判所は有罪判決を支持したが、違法な画像数を39として罰金額を5,600 クローナ(約83,000円)に引き下げた。

 被告は、最近10年間でドイツのハンブルクに本社を持つ漫画や児童書の出版社で 現在ドイツにおける3大漫画出版社のひとつであるボニエ・カールセン(Bonnier Carlsen)の2つのシリーズにおける80本以上の翻訳を引き受けていたが、第一審判決後、カールセンは被告との契約を破棄した。

(注7)オーストラリアでは、ACMAの禁止コンテンツに関する非公開のブラックリストの内容を公開しているサイトがある。2010年3月29日 Libertus .net記事「About the ACMA's Blacklist of "Prohibited Content"」が報じたもので2007~2009年の間のデータをベースに解説している。

(注8) FYIは、ニュージーランド人が公的にオンラインで「1982年公的情報公開法(Official Information Act :OIA)」および「1987年地方政府の公的情報および会合情報公開法(Local Government Official Information and Meetings Act:LGOIMA)」の公開要求行為の支援団体のウェブサイトである。

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英国メディアやメンタルヘルス擁護財団等のレポートに見る精神の病による汚名と社会的差別問題

2012-10-21 10:52:29 | 人権問題



 筆者の手元に、英国の代表的メディアである「インディペンデント紙」の10月18日付け記事が届いた。また、従来から読者登録している英国のメンタルヘルス問題に詳しいNPO財団「メンタルヘルス・ファンデーション(Mental Health Foundation)」のこの問題に関する解説を読んだ。

 わが国でも、やっとこの問題の社会的影響の大きさや企業、学校や家庭における問題の根の深さ、さらには医療機関における取組みの遅れ等がメディアや行政機関等で取り上げ始められてきた。

 筆者はこの精神医療分野の専門家ではないが、同記事の内容を概観するとともに、英国社会の取り組みの現状、さらにこの問題の根の深さを改めて考えるきっかけといたしたくまとめてみた(記事の原文にない注書やリンクは本ブログの内容の正確さを向上させるため、筆者の責任で行った。また、誤訳や解釈等に問題があれば関係者からのコメントを期待する)。

 なお、インディペンデント紙の同記事に対する読者の反応(コメントやTweet数)は極めて多いことを付言しておく。


1.インディペンデント紙の記事概要(仮訳)

○この問題について、研究者は西洋社会の唯一かつ最大の身体障害の原因であり、多くの苦しむ人々が、それに付随してうける汚名(stigma)は病気そのものより悪いと語る。

 自身の精神疾患につき、はっきりと明言する有名人は英雄として歓迎されるが、他方で一般市民の場合は遠ざけられ、ののしられかつ虐待される。
 35カ国の1,000人以上を対象とする国際的な研究において、4分の3の人が職場や友人関係において村八分になるなどの迫害にあっていることが明らかとなった。このような「いわれなき差別(discrimination)」は、彼らの状態をますます悪化させる措置の遅れの原因となっている。

 鬱病等の精神疾患は、薬や心理療法精神療法により60~80%が助けられうる。しかし、実際はその半分のみが治療措置を受け、また、たった10%の人が正しい薬の投与、十分長期かつ正しい効果的な心理療法を受けている。英国外科学会が発刊する著名な医学雑誌「ランセット(The Lancet)」がまとめた国際的な調査結果では、差別化(discrimination)のレベルは3年前に行われた同様の調査で明らかになった統合失調症(psychotherapy) (注1)に対するものと変わらないレベルであることが明らかになった。

 また、欧州で最大規模の英国「精神医学研究所(Institute of Psychiatry King's College)」(注2)の「公共医療および人口調査部」の責任者であるグラハム・ソーニクロフト(Graham Thornicroft)教授 (注3)は、「我々は、ここに重大な問題―非公開とする問題は疾患者にとって必要以上なバリアーとなる。すなわち人々が医療措置を求めず、その結果、専門家の手助けを受けられないことを意味する」と述べた。

 他方、テニス・チャンピオンのセレナ・ウィリアムズ(Serena Williams)、米国女優のキルスティン・ダンスト(Kirsten Dunst) (注4)、トークショーの司会者スチーブン・フライ(Stephen Fry) (注5)等が広く大衆の面前で自身の精神疾患の告発を行う有名人が増える一方で、この病でひどく苦しむ人々も広がった。

○前ノルウェイの首相であるクェル・マニェ・ボンデヴィック(Kjell Magne Bondevik) (注6)は、1998年に鬱(うつ)のエピソードから回復する段階で、3週間公務責任を放棄したとき、世界中から承認や支持を得て、次の選挙では再任された。

 これと対照的な問題として、ソーニクロフト教授は次のような事例を紹介している。「隣人がある女性を避けるため犬の糞をドアから投げ込んだリ、ある男性がかつて精神病院に入院していたことを知った警察が、泥棒に入られたときに元気がないことからその面談を中止してしまった」という例を挙げている。我々の調査結果では、いわれなき差別が広範囲であり、その差別がほぼ確実に活動的な社会生活や仕事を得たり維持する上で障害となっていることを示す。
 
 2008年に英国政府が精神的な病がある人々にとって差別の減少を目的とし立ち上げ、現在も続いている“Time to Change”キャンペーン (注7)は控え目ではあるが重要な意義を持つことは明らかである」と述べている。

 別々の研究では、研究者は2008年の経済崩壊は女性ではなく、男性のメンタルヘルスの劣化(deterioration)を招いた。この崩壊後、3年間は不安神経症(anxiety)や鬱病の男性は明らかに増加したが、女性は無傷であった。

○研究者は失業率の増加と収入の減少はそのせいではなく、仕事の不安定さが原因であると分析している。

○英国のオンライン専門医学雑誌“BMJ Open”が発表した内容によると、メンタルヘルスの疾患は男性の場合2008年の13.7%から2010年に15.5%に定価したものの2009年には16.4%に増えている。男性は彼らの仕事から社会的地位の多くを得ており、またほとんどの家族では大黒柱である。そのことは、不況時に彼らが仕事を失うことへの恐怖感のせいで精神的に不安定になっている。

○グラスゴー大学にある「社会・公衆衛生科学ユニット(Social and Public Health Science Unit)」の著者は、女性のメンタルヘルスにつき同期間でほとんど変化がないように見えたが公的部門での人員削減で悪化していると述べている。

2. メンタルヘルス・ファンデーション(Mental Health Foundation)」の汚名と差別問題サイトの概要

 このサイトの解説内容も、前述したインディペンデント紙の内容とかなり共通する。より具体的な内容であるので、概要部分を仮訳する。

,○精神的な病は極めて一般的である。英国の人々にとって友人、家族、仕事仲間や社会全般にわたり数千人の人々に影響する。
・4人に1人は彼らの生活の中で何らかの点でメンタルヘルスの問題を経験する。
・子供の約10人に1人はメンタルヘルス問題を経験する。
・鬱は全人口の12分の1の割合で影響を与えている。
・英国の自傷の割合は人口10万人あたり400人で、欧州で最も高い。(注8)
・世界中の4億5,000万人にメンタルヘルス問題がある。

○メンタルヘルス問題をかかえる人々の約10人に1人は、汚名と差別は彼らの人生でマイナスの影響を受けていると述べる。

○我々は、メンタルヘルスの問題を抱えるグループの人々が長期の健康問題や障害により最も起こりうる問題を以下のようにまとめた。
・仕事を見つける。
・安定かつ長期の関係を維持する。
・きちんとした住宅に住む。
・社会的に見た主流社会に含まれる。

○これは一般的に見て、社会が精神疾患ならびにそれが人々にどのような影響を与えるかにつき枠にはめることによる。多くの人々は精神的な病を持つ人は乱暴で勝つ危険であると信じている。実際は彼らは危害を加える以上に、他の人々から危害を加えられたり攻撃されるリスクが高い。

○汚名と差別は社会的隔離、粗末な住宅、失業および貧困は精神的な病とリンクする。したがって、汚名や差別は病気のサイクルの中に人々を陥れることが出来る。

○このような状況はメディアによりさらに悪化させられる。しばしばメディアはメンタルヘルス問題について暴力や貧しさ、危険性、犯罪、悪事(evil)、正常な満足のある生活が出来ない人々と結びつけた報告をする。
 しかし、これらは真実からほど遠い(far from the fact)。多くの研究成果は、これらの固定概念(stereotype)に挑戦する最善の方法はメンタルヘルス問題の経験のある人々とじかに接触することにある。

○多くの国家的や地方主導のキャンペーンがメンタルな病に対する姿勢を変えようとしている。この中には英国の国家的キャンペーン“Time to Change”が含まれる。
 
○英国の「2010年平等法(Equality Act 2010)」(注9)は公共サービスにおけるメンタルヘルス問題、その機能、前提となる根拠へのアクセス、仕事、教育、つきあい(association)および輸送等に関し直接、間接の差別を違法とする。

***************************************************************************************************************

(注1) 日本精神神経学会が2002年6月30日に、schizophreniaの訳語を差別や偏見を招きやすい「精神分裂病」という訳語から「統合失調症」に改めた。

(注2) ロンドン大学キングス・カレッジの精神医学研究所(Institute of Psychiatry: IoP)である。わが国のこの分野の研究者の多くが留学している。

(注3) IoPのグラハム・ソーニクロフト(Graham Thornicroft)教授は、精神障害者差別問題等に関する多くの著書を著しており、わが国でも多くの訳本が出版されている。「精神障害者差別とは何か:原書名:Discrimination Against People With Mental Illness」、「精神保健サービス実践ガイド:原書名:Better Mental Health Care」があげられる。
 なお、同研究所の各部毎の詳細な研究体制や内容についても詳しく確認できる。たとえば、依存症(Addictions)、生物統計学(Biostatistics)、児童青年精神医学(Child and Adolescent Psychiatry)、臨床神経科学(Clinical Neuroscience)、フォレンジックと神経発達科学(Forensic and Neurodevelopmental Science)、公共医療および人口調査(Health Service and Population Research)、神経画像検査(Neuroimaging)、神経科学(Neuroscience)、老年神経学(Old Age Psychiatry)、精神神経学(Psychological Medicine)、心理学(Psychology)、精神病研究(Psychosis Studies)、社会・遺伝・発達神経センター(MRC Social, Genetic & Developmental Psychiatry Centre)別に一覧できる。

(注4) キルスティン・ダンストは、2008年前半にうつ病でウタ州の Cirque Lodge treatment center に入院した。この件に関する米国メディアの記事例は2008年2月7日のPeopleで読むことが出来る。

(注5) “Cyclothymia”は気分循環症、循環気質のことであり、軽度のうつと躁が交互に現れる慢性の病気。躁鬱病とは区別されている。

(注6)フライは、自身の精神病の体験から2006年テレビドキュメンタリー番組「双極性障害(bipolar disorder)と秘密の生活( The Secret Life of the Manic Depressive)」等いくつかのテレビ番組や著書を著し、同番組は2007年にエミー賞を得ている。(Wikipedia から一部引用)
 なお、双極性障害とは、複数の躁病エピソード(manic episode)と、通例いくつかの大鬱病エピソード(major depressive episode)を伴う双極性I型障害(bipolar I disorder)と、通例、軽そうエピソード(hypomanic episode)と、少なくとも1回の大鬱病エピソードを伴う双極性II型障害(bipolar II disorder)に分類される。かつて躁鬱病(manic depression)と呼ばれていた。(SPACE ALCの説明から引用)

(注7) 英国“Time to Change”キャンペーンのサイトのAbout us部分を引用する。
―“Time to Change”は、メンタル・ヘルス問題を抱える人々に「社会的な汚名」や「いわれなき差別」を終わらせる目的の過去例にないイングランド最大の試みである。それは、人々の態度およびふるまいを変えるキャンペーンである。ある年でみたとき、我々の4人に1人はメンタル・ヘルス問題に直面した経験を持つであろう。まさにそのとき、我々は他人からの汚名と差別問題に直面するのである―

(注8) 「自傷問題」に関し、筆者は国内の参考文献や海外の情報も引用しているブログ「自傷行為と理解」等を参照した。

(注9) 「2010年平等法(Equality Act 2010)」の詳しい解説は次のレポートが参考になる。
川島 聡「英国平等法における障害差別禁止と日本への示唆」

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ドイツやフランス政府は聖金曜日の暴徒等の混乱を回避すべくイスラム世界にある外交施設や学校等を閉鎖

2012-09-29 08:51:59 | 人権問題



 9月20日付けのドイツのメディア「シュピーゲル」や19日付けのフランスのメディア「France24」はほぼ同時に両国内の風刺雑誌から発せられた記事がイスラム諸国の暴徒やテロ行為に繋がる懸念等から大使館等の閉鎖を外務省等が指示した旨を報じた。

 他方、9月21日、米国のカリフォルニア州ロスアンゼルス郡高等裁判所(ルイス・ラビン判事)は、女優シンディ・リー・ガルシア(Cindy Lee Garcia)がビデオ製作者やYoutubeの親会社であるGoogleに対し、Youtubeから反イスラム・ビデオを一時排除する命令を求めた訴えを棄却した。
(注1)
 また、「イスラム教徒の無実(The Innocence of Muslims)」問題につき国連特別報告者(U.N.Special Rapporteur)
(注2)であるマイナ・キアイ(Maina Kiai)は同動画がリリースされた後に爆発した一連の最近時の暴力行為を強く非難した。すなわち抗議や集会は国際的な人権法により保護されたもので平和的でなければならず、中東諸国にデモの責任者をこれら暴力行為に対する起訴を行うよう迫った。

 さらに、9月14日、国連人権高等弁務官(UN High Commissioner for Human Rights)ナヴィ・ピレイ(Navi Pillay)は、次のような関係国の宗教や政治リーダーに向けコメントを行った。
「動画フィルムは悪意に満ち、故意に挑発的なものであり、人々が平和的に強く抗議するのは彼らの権利である。しかしながら、私はベンガジの米国大使や外交官の殺害行為やフィルムに対する破壊的な反応を徹底的に非難するとともに政治や宗教のリーダーが平穏を回復すべき努力を強く求める。」

 一方、米国の自由人権NPO団体であるEFF(Electronic Frontier Foundation)は、この問題の人権保護面からいくかの懸念材料を指摘している。

 このようなイスラム圏(エジプト、イエメン、チュニジア、モロッコ、スーダン、イラン、イラク、イスラエル、パレシチナ等)で多くの宗派的暴力的抗議運動を引き起こした“Nakoula Basseley Nakoula”(裁判所では本人は自身“Mark Basseley”と呼んでいる)は9月15日に逮捕され、9月27日に2010年に下された銀行詐欺有罪判決における執行猶予違反等を理由に執行猶予なしの拘留が治安判事(US Central District Chief Magistrate Judge) スザンヌ・シガール(Suzanne Segal)により決定した(被告の1万ドルの保釈金に関して弁護士は被告の生命の安全性確保のため反対した)。
(注3)

 今回のブログはドイツやフランスの大使館閉鎖等問題に発展した「イスラム教徒の無実」に源を発する宗教紛争につき、米国の言論の自由規制裁判の歴史的経緯や人権擁護団体等から指摘される懸念問題を中心に論じる。


1.ドイツやフランスの大使館閉鎖に関するメディア記事
(1)ドイツのシュピーゲル(2012年9月20日付け)
 ドイツ外務省は金曜日(イスラム教の聖なる日)にイスラム世界の国々での外交任務を終えることを発表した。また抗議の更なる増加に備えドイツの外交施設につき一層の安全策を取ることを検討している。
 これらの背景には、論議を呼んだ反イスラム映像「イスラム教徒の無実」に対すル継続的反動に加え、フランスの反イスラム教の週刊風刺雑誌「Charlie Hebdo」が19日にムハマド漫画の公開による混乱で火に油が注がれた。9月14火にはスーダンの首都ハルツームのドイツ大使館は荒れ狂う暴徒により攻撃され放火されたため非常事態措置として閉鎖されている。
 また、9月20日、ドイツの風刺雑誌「Titanic」は9月下旬にムハンマド特集号を発刊すると予告したため、更なる不安定を招くこととなった。

(2)フランスのフランス24(2012年9月20日付け)記事
 「Charlie Hebdo」が裸のムハンマドの漫画を発表した後、フランス外務省はイスラム世界全体に設置する20の大使館を閉鎖すると9月19日に発表した。その漫画は裏ページに印刷されたものであるが、イスラム世界の人々にショックを与えるに十二分であった。フランスのローラン・ファビウス(Laurent Fabius)外相は「このような挑発は意味がない。フランス政府は漫画の出版を決して奨励しないし最終的な勝者たりうる理由を求める」と述べている。

2.米国ロスアンゼルス郡高等裁判所は、女優がビデオ製作者やYoutubeの親会社であるGoogleに対し、Youtubeに関する反イスラム・ビデオを一時排除命令を求めた請求を棄却

 カリフォルニア州ロスアンゼルス郡高等裁判所(ルイス・ラビン判事:Luis Lanvin)は女優シンディ・リー・ガルシア(Cindy Lee Garcia)のビデオ製作者やYoutubeの親会社であるGoogleに対し、Youtubeに関する対し反イスラム・ビデオを一時排除命令を求めた請求を棄却した。
 ガルシアが起こした訴訟は、オンラインにフィルムを保管すると、彼女の肖像権が侵害され、自身のプライバシー権利が侵入されて、フィルム化後の対話内容が偽の光の中に彼女を割り当てたるべく変更された主張した。「我々は、より多くの問題を引き起こし続けるので、そのフィルムを取り去る必要であると思う。」と、彼女は述べた。

3.米国の自由人権NPO団体であるEFF(Electronic Frontier Foundation)の人権保護面からいくつかの懸念材料
(1)事実関係の整理
 ピッツバーグ大学ロースクールが編集する“Paper Chase Newsburst”9月20日号は次のようにまとめている。
「エジプト系米国人が作成し、後にエジプトのテレビで放映され一連の暴動を引き起こしたた『イスラム教徒の無実』に対する先週の反応は極めて広範囲に広がった。いくつかの政府はすべてYoutube(予告編の閲覧は引き続き可能である)を禁止した。Youtubeはエジプトやリビアでのビデオへのアクセスを禁止すべく自らの意思で決定した。その他の国はビデオへのアクセスをブロックするためYoutubeに対し法的要請を行い同社はこれに応じた。

 ビデオはイスラム教徒を怒らせるという唯一の目的で持って製作されたようであるという事実は、米国においてそれが「言論の自由試験(First Amendment Free Speech Test)」(注4)にパスしていたかという疑問を呼び起こす一方で、他の者はビデオは保護された言論であると述べた。

 また、9月18日付けのロスアンゼルス・タイムズは、次のようにこの問題を正面から取り上げている。連邦最高裁所のオリバー・ウェンデル・ホームズ(Oliver Wendell Homes)判事 を裁判長とした裁判史上最も有名な裁判1919年「シェンク対合衆国事件(Schenck v.United States)」で合衆国の言論の自由が無制限でないことを全員一致で明らかにした。すなわち、その言論の性格と状況にかかる場合、当該言論は法的に保護されないとし、以降、1925年の「Gitlow v.New York」裁判で厳しく解せられている。

 しかし、現行のさらに厳しい基準の下でも「イスラム教徒の無実(ビデオの予告編)」と間接的に見た米国大使クリストファー・スチーブンスJr.の死亡とは、間違いなく合衆国憲法やその価値は法制化されていると見れる。
 初期のメディアの調査によると、最もひどいカット場面ははじめにショットされて後にユーザー名“Sam Bacile”により本年7月にYoutubeに投稿された。
 AP通信は、Bacileに関し、携帯番号からエジプト人のコプト教徒を由来とするカリフォルニア州在の“Nakoula Basseley Nakoula”にたどりついた。Nakoulaはフィルムの流通(logistics)の調整時に自身の身分を証明したが、”Bacile”ではないと否定した。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、同ビデオが多くの関心を寄せるのに失敗したとき、反イスラム教であるコプト人のキリスト教信者は9月6日に米国、エジプトやその他の国のレポーターにリンクを張ったという。

 そのメッセージは、反イスラム教の牧師テリー・ジョーンズ(Terry Jones)で9.11事件をあおるとともに予告編へのリンクを含んでいた。

 米国における制限が課される言論の自由または暴力を引き起こした場合に関する基準は、1969年の「Brandenburg 対オハイオ州」判決で広げられた。このより狭いガイドラインでは、言論は意図(intent)および差し迫っている暴力や法違反にかかる言論に限定された。(以下、略す)

(2)EFFの懸念指摘事項
 EFFが指摘した内容は次のとおりである。

①ホワイトハウスが報告しているように、Youtubeに対し、同社がサービス利用規約に遵守していることを保証するようビデオ内容を見直すよう依頼したという事実である。EFFのエヴァ・カルペリン(Eva Calperin)はホワイトハウスの要請はそれだけに過ぎないことはないと思われるが、少なくともホワイトハウスが見直すよう呼びかけ、求めたことは萎縮効果はあったといえる、と述べている。

 事実から明らかとなった第2の懸念材料は、Youtubeはエジプトやリビア内での検閲決定に関し地域の市民自由グループと協議しなかった点である。後に行われたインド、インドネシア、マレーシア、サウジアラビアや公開されるまでその他の国では各国の地方の裁判所で動画閉鎖の決定が行われのに対し、エジプトやリビアではおそらく地方の専門家を参加させることなく米国内の会社のみで決定したと思われる。2011年の反乱の間、エジプト人やリビア人が彼らの命を欠けて自由を勝ち取ったことに比べ、西側企業が決定者としてオンラインで見ることが出来ないことは極めて残念な点である。

 Youtubeの取った行動は、我々が新たな公的領域と呼ぶインターネットは公的ではない点に関する留意点である。バークマンセンターのインターネットと市民のためのメディア法プロジェクト (Berkman Center for Internet & Society’s Citizen Media Law Project)のアンドリュー・F.セラーズ(Andrew F.Sellars)は、9月17日のブログで、我々は言論の自由が、次のとおり個人的な当事者が判断するいくつかの重要な結果があることを認めざるを得ない。

①リーダー的な米国のインターネット会社は言論の自由のために合衆国憲法修正第1のバーをより低く設定している事実。
②我々は民間団体を裁定者の地位に正式な救済方法なしに置くことは、その行う決定は不公正であると信じる。
③これらの会社が警告なしに言論の自由を変更すべき何ものもないし、彼らに一貫性を要求する何ものもない。
 言い換えると、今回のケースが特別であったかも知れないが、Youtubeが将来類似した決定を行うことを防ぐ手立てはない。

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(注1) ラビン判事が原告の主張を否定理由は、ガルシアが告訴状のコピーに伝えられるフィルムの製作を組織化した男性とされる、Nakoula Basseley Nakoula に対する訴訟のコピーを提出できなかったという一部事実のためである。
また、裁判官は、同法廷のファイリングに基づき成功の見込みがあるとするガルシアの申請を支持することを否定した。それは、ガルシアが再提訴することを排除しないが、彼女の現在の出されている申請を放棄したことを意味する。同判事の行動は、児童虐待に賛成する恋愛遊戯者としてムハンマドについて表現する「イスラム教徒の無実(Innocence of Muslims)」に関する14分間の予告編(trailer)がオンラインのままで残ることを意味する。また、同判事は彼らが内容を制御する責任から第三者を隔離する連邦法を引用した。
なお、Google(ユーチューブを所有)はリビア、エジプト、サウジアラビア、インドおよびインドネシアで予告編のリリースを妨げたが、合衆国ではオンラインのままで残っている。また、ユーチューブはフィルムをオンライン上で排除すべきというガルシアの要求を拒否した。(以下、略す)

 なお、9月21日の朝日新聞の記事によると「イスラム教の預言者ムハマドを侮辱する動画に出演した女優が19日にロスアンゼルスの地裁に対し、製作者とされる男性の行為は詐欺や名誉毀損に当たるとして、動画の削除と懲罰的損害賠償を求めて提訴した。動画を掲載したグーグル傘下のユーチューブにも削除を命じるよう求めた」とある。再度、筆者は本裁判の告訴内容につきメディアの内容を調べたが、この記事の正確性には問題がある。
 CNNの記事で見る限り、本訴訟では原告はプライバシー侵害、詐欺、過失および精神的苦痛を意図的な与えたことによるNakoula に対する補償的損害賠償および懲罰的損害賠償を求めている。

(注2) “Special Rapporteur” とは国連事務総長の代理として独立した権限で人権問題につき専門かつ独立した形で「特別手続(Special Procedures )」メカニズムの範囲の中で国連人権理事会(特定国の命令かテーマが強制された場合のいずれか)から特定の命令を受けて国連を代表して働く個人を言う。通常、世界の各領域からの1人の計5人のメンバーで構成されたワーキンググループを含む。(Wikipedeiaから一部引用)

 なお、国連の人権理事会(HRC: Human Rights Council)は、2006年、それまで存在していた人権委員会(UN Commission on Human Rights、 CHR)に代わって設立された。人権理事会は日本を含む国連加盟国の人権状況を監視し、改善を促す役割を担う常設の国連機関である。人権理事会設立後に導入された手続に普遍的定期的審査(UPR)があり、すべての国連加盟国の人権状況を定期的に審査している。さらに、人権理事会のメカニズムとして、特別手続(Special procedures)が存在する。(日弁連サイト解説に筆者の責任で国連機関にリンクを張った。

(注3) “Nakoula Basseley Nakoula”の逮捕、保釈なしの拘留決定の経緯等に関してはCNNBBC 等多くのメディアが詳しく取り上げ、また多くのコメントが寄せられている。

(注4) 米国の「言論の自由試験(First Amendment Free Speech Test)」に関しては、次のサイトで詳しく歴史的な裁判経緯を含め説明されている。ここではその詳細は略す。
http://www.answers.com/topic/first-amendment-speech-tests-1


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