Financial and Social System of Information Security

インターネットに代表されるIT社会の影の部分に光をあて、金融詐欺・サイバー犯罪予防等に関する海外の最新情報を提供

米ノースカロライナ州アッシュビルの被告男性(70歳)、2,200万ドルのポンジ・スキーム(いわゆる「ねずみ講」)等を画策、実施した罪で17.5年の拘禁刑や1,700万ドル以上の賠償金判決

2020-07-19 09:55:18 | 金融犯罪と阻止策

 7月10日付けで米連邦司法省・ノースカロライナ西部地区連邦検事局のリリースが筆者の手元に届いた。

 その内容は「ノースカロライナ州アッシュビル住の被告男性(Hal H. Brown Jr., 70歳)は、2,200万ドル(約23億5,400万円)のポンジ・スキーム(Ponzi scheme :いわゆる「ねずみ講」)等を画策、実施した罪で17.5年の拘禁刑1,700万ドル(約18億1,900万円)以上の賠償金の判決を受けた。被告は定年またはそれに近い人を含む60人以上の犠牲者から金をだまし取ったとする裁判結果」というものである。

被告 Hal H. Brown Jr.

 筆者は同裁判の被害額の大きさだけでなく、1)この裁判は本年1月21日に被告が有罪を認め判決が出ているのにかかわらず、今時点で再度判決が出された利用は如何、さらに、2)Ponzi schemeや取引マネー・ローンダリング(Transactional Money Laundering)の適用条文や量刑の根拠は如何という点についても同時に調査した。

 特に不正資金の洗浄運び屋犯罪(Money Mules)の種類(注1)の相違点につき詳細などを検証した。

 さらに裁判官の連邦量刑ガイドラインや具体的犯罪の適用条文等の判断根拠などについても必要な範囲で専門レポートも参照した。

 これらについて詳細に解析したものは、米国のローファームの専門記事でも意外と少なく、連邦検事局のリリース自体も言及していなかった。

 他方、わが国のねずみ講の規制・取締法は如何、「ネズミ講」と「マルチ商法」の差は如何についてもその根拠法も含め簡単に論じる。いうまでもないが、ネズミ講の手口構成は金融犯罪に欠くべからざるものである。高齢者を狙うのは振込詐欺だけでなく、詐欺師たちは組織的にかつ合法的な似非ビジネスを模倣して、投資をはじめ儲け話しや貴金属ビジネスなどあらゆる違法な手口を用いている。(注2)

 取締強化の観点からも、わが国の法執行機関のさらなる研究と具体的取り組みを期待したい。なお、筆者は9年前の2011.8.16に 「⽶国スタンフォード⼤学と⾦融取引業規制機構 (FINRA)が「⾦融詐欺」阻⽌の共同専門調査セン ターを設⽴」を取り上げている。今回のブログ執筆にあたりその内容も見直し更新した。併せて、御覧いただきたい。

1.2020年1月21日判決にかかるノースカロライナ西部地区連邦検事局のリリース仮訳

(1)犯罪手口にかかる筆者の補足説明と判決要旨

証券詐欺罪(securities fraud)(注3)には最高20年の拘禁刑と500万ドル(約6億3,500万円)の罰金が科せられる。また、トランザクション・マネーロンダリング罪(transactional money laundering charge)」には、最高10年の刑期と取引における犯罪的に派生した財産の2倍以上の罰金または25万ドル(約2,675万円)が選ばれる。なお、ブラウン被告の判決言い渡し日が設定されていない。

 検事局のリリースではこの2つの有罪の法律の根拠に関し詳しく説明されていないので、筆者なりにFBI7/11(22)等の資料にもとづき補足する。(2)から検事局のリリース文に戻る。

A.証券詐欺の手口の例示(筆者の補足解説)

「証券詐欺」という用語は、さまざまな違法行為を網羅しており、そのすべてが投資家の欺瞞や金融市場の操作を伴うものである。以下で、SECの詐欺対策専門サイトから引用、仮訳する。(注3-2)

High Yield Investment Fraud(Program)

 インターネットは、いわゆる「高利回り投資プログラム」または「HYIP」であふれている。これらは、通常、無認可の個人によって実行される未登録の投資であり、しばしば詐欺である。HYIP詐欺の特徴は、投資家にほとんどまたは100%リスクを負わせる一方で信じられないほどの運用益(return)を約束する。HYIPのウェブサイトは、年間(または毎月、毎週、または毎日)のリターンを30%または40%以上と約束するかもしれない。これらの詐欺のいくつかは、「プライム・バンク(prime bank)」プログラム(注4)という用語を使用する可能性がある。あなたがこれらの1つに投資するためにオンラインでアプローチされた場合は、細心の注意を払う必要があり、それは詐欺である可能性が高い。

Ponzi SchemesPyramid Schemes

 ポンジ・スキームには以下のような特徴がある場合が多い。

 投資機会の詐欺の仕掛け人たるプロモーターが投資家から1,000ドルを受取る。同時に、そのプロモーターは事前に設定された期間(例えば、90日後)に10%の利子をつけて、払い戻すことを約束する。 このプロモーターは90日が来る前に追加で2人の投資家を見つけることができた。そうしたら、2番目、そして3番目の投資家から集めた2,000ドルから、約束どおり元利で1,100ドルを最初の投資家に支払う。そして、プロモーターは最初の投資家にもう一度1,000ドルを投資することを勧める。

 あたらしい投資家から資金を集めることで、詐欺師は早期投資家に約束したリターンを支払うことができ、その投資家に再投資をして、さらに多くの人を集めるように促す。

 このシステムが成長するにつれて、プロモーターはより多くのスキームに参加する新しい投資家を探す必要がある。探すことができなければ、プロモーターは約束したリターンを支払うことができなくなり、最終的には、ポンジ・スキームは不安定になっていき、プロモーターは破綻し、逮捕されるか、もしくは手に入れた資金と一緒に逃げ去り、消えてしまう。

 また、ピラミッド・スキーム(ねずみ講)はそのスキームに参加するメンバーに対して報酬や支払いを約束するだけでなく、そのメンバーが新しいメンバーを誘うことに対しても報酬や支払いを約束するビジネス形態でもある。

 例えば、不正なプロモーターがAliceとBobにそれぞれ1,000ドルである企業の販売権を購入できる機会を提供する。これによって、AliceとBobには保有している販売権を売却する権利と勧誘した全ての追加メンバーからの配当を受ける権利を持つことになる。彼らが販売した販売権からの売り上げの1,000ドルはプロモーターと1:1で配分する。

 上記のシナリオでは、AliceとBobは販売権を販売する毎に500ドルを手に入れることができるので、元を取るためには販売権を2人に販売する必要がある。初期投資分を確保するために販売権を2人に販売しないといけないという負担は彼らが販売した顧客に渡される。

 このプロセスを継続するには、どんどん新しいメンバーが必要になるため、このピラミッド・スキームは最終的には崩壊する。このスキームが長期に持続不可能であることが、ピラミッド・スキームが違法となっている理由である。

 ポンジ・スキームはたいていの場合、投資管理サービスと名乗っていて、利回りは合法な投資の結果によるものと信じさせる。詐欺師は基本的に新しい投資家からの資金を使って、昔からの投資家に支払いを行う。

 一方、ピラミッド・スキームはネットワーク・マーケティングに基づいており、参加者はお金を稼ぐためには新しいメンバーを勧誘する必要がある。それゆえ、それぞれの参加者はピラミッドの頂点に資金を渡す前に自分の分け前として手数料を取る。  

Advanced Fee Schemes(前払い料金詐欺:ナイジェリアの手紙詐欺ナイジェリアの手紙詐欺)

 あえて、説明は略す。

Foreign Currency Fraud架空外国為替証拠金取引(FX取引)詐欺

 FX取引とは、証拠金(保証金)を業者に差し入れ、差し入れた証拠金の何倍もの額(日本では証拠金の25倍が上限)の外国通貨の取引を行うものです。取引終了の際は、取引開始時と反対の取引(例えば、円をドルに換えた場合にはドルを円に換える)を行い、その差額を損益として清算します(差金決済)。 例えば100万円の証拠金を差し入れ、10倍の倍率を設定した場合、1,000万円分の外国通貨を買うことができます。このとき1ドル100円なら、10万ドルを購入でき、1ドル105円の時に取引を終了すると50万円の利益になりますが、1ドル95円の時に取引を終了すると50万円の損失が発生します。 このようにFX取引では、元手となる証拠金よりも大きな金額の取引ができますが、為替相場の変動等によっては預けた証拠金以上の多額の損失が短期間のうちに出てしまう可能性があります。

FX取引を取り扱う業者は金融商品取引法に基づいて金融商品取引業の登録をする必要があります。海外の業者が日本の居住者と取引をする場合も登録が必要です。また登録業者には、顧客から依頼がない限り勧誘を行ってはならないなどの厳しい規制が設けられています。(金融広報中央委員会:知るぽると「架空FX取引詐欺」から一部抜粋)

Broker Embezzlement(ブローカーの横領詐欺)

 証券会社などの従業員による盗難とも呼ばれる横領(embezzlement)は、誰かが自分のケアに委ねられたが、他の誰かが所有している資金を不当に割り当てる行為である。最も一般的な横領は従業員ですが、受託者の責任を持つ他の人も横領罪で起訴することができる。

 横領は、特定の種類の詐欺であり、「真実の虚偽表示または重大事実の隠蔽を知って、他人に自分の損害に対して行動するよう誘導すること」と定義されている。

 横領は、刑事詐欺や民事詐欺として起訴することができる。民事詐欺の場合、雇用者は従/業員に対して訴訟を起こすことができる。(より詳しくはFind Lawの解説 参照)

Hedge Fund Related Fraud 

金融庁「いわゆるファンド形態での販売・勧誘等業務について」証券会社の解説例を参照されたい。

 ⑦Late Day Trading (レイト・デイ・トレーディング)

Criminal Lawyers Group:Late Day Tradingを抜粋し、仮訳する。

1)「レイトデイ・トレーディング」とは、時間外に取引を実行し、その日の市場取引の終了前に実行されたかのように記録する方法をいう。レイトデイ・トレーディングでは、他の市場参加者がトレーディング時間中に利用できなかった可能性のある市場情報をトレーダーが使用できる。

 深夜の取引に従事することは重罪であり、そうすることは証券詐欺の民事上および刑事上の告発につながる可能性がある。

 この取引慣行は違法であるが、投資信託のマネージャーがこれらの取引をあたかも記録するように許可しているため、一部のヘッジファンド・マネージャーおよび特定の有利な投資家は、注文が数時間後に受け取られたとしても、通常の取引時間中に発生したものとして、前の取引日の価格を取得することが許可されている。

 連邦法執行機関はこれらの個人を標的としており、深夜の取引に従事している人はだれでも厳しく取り締まっている。

 2)SECのサイトから抜粋、仮訳する。

レイト・トレーディングとは、通常午後4時に取引が終了した時点で、ミューチュアル・ファンドがその純資産価値(NAV)を計算した時点以降に、ミューチュアル・ファンドの株式を購入または償還する注文を出すことを指す。基準は東部標準時であるが、その日の時点ですでに決定されている以前のNAVに基づく価格を受け取ることができる。

 レイト・トレーディングは、ミューチュアル・ファンドの株式を購入または償還しなければならない価格に関する連邦証券法に違反するとともに、他の投資家には利用できない利点をレイト・トレーダーに与えることにより、これらのミューチュアル・ファンドの無実の投資家を詐欺したことになる。特に、この場合トレーダーは、市場の動きに関する情報を知り、市場の動きに関する情報が公開される前に設定された価格で投資信託の株式を購入または償還できることから、ミューチュアル・ファンドの無実の他の株主を犠牲にしてアドバンテージを獲得できる点で違法性が高い。

レイト・トレーディングを含む最近のSECの法執行活動を検索するには、SECサイトをクリックされたい。

B.証券詐欺に関する罰則法規定の詳細の仮訳

a) 証券詐欺の罰則規定

 証券詐欺の罰則は、18 USC § 1348(Securities and commodities fraud)(法律名:Sarbanes-Oxley Act of 2002 (注5))の下で犯罪を構成する行為または不作為の性質に応じて異なる制裁により異なる。

・証券詐欺の各事例につき最長5年の拘禁刑

・有価証券の価値に応じた罰金の支払い

・詐欺金額の返還(賠償)

・虚偽であると知る必要がある報告書を証明する者は、500万ドル以下の罰金または20年以下の拘禁刑またはこれらを併科した責任を負う。

b) 連邦現行法律集第18編§ 1348 の連邦証券詐欺の有罪判決に基づく罰則規定

18 U.S.C.§1348の下での連邦証券詐欺の有罪判決は、最長25年連邦刑務所での拘禁刑と罰金の刑罰を受け、これらの併科もある。

 ただし、実際の判決は、米国の連邦量刑ガイドライン・マニュアル(注釈付き)の適用、および重要な量刑裁量権を有する裁判官によって考慮されるその他の関連要因によって常に異なることを留意すべきである。

 証券詐欺などすべての連邦金融詐欺犯罪では、総損失額を計算することは大多数のケースで科された実際の刑に大きな影響を与える。

 また、量刑ガイドラインは、実際の損失ではなく、意図したとおりに損失を定義することに留意すべきであるが、このアプローチを使用することの公平性について懸念を表明している連邦裁判所の裁判官もることに留意すべきである。

c) 連邦証券詐欺罪の具体例

わが国でも詳しい解説は少ない。JUSTIAサイトの解説仮訳する。 

①Insider Trading:インサイダー取引は、公開されている情報へのアクセス権を持つ人による上場企業の株式または有価証券の取引を含むもの。この情報にアクセスできない投資家にとっては不公平という事実があるため、違法である。

②Churning:過剰売買(チャーニング)は、クライアントの利益を犠牲にしてブローカーに手数料を発生させるために、過剰な株式を売買するスキームをいう。ブローカーは、顧客のアカウントの投資決定を制御する必要があります。

③虚偽(不実)表示(Misrepresentation)

 不実表示は、誰かがセキュリティに関する価値観を操作することを意図して、セキュリティに関する誤った説明や表現を他の人に意図的に行い、その不実表示の効果から利益を得る場合に発生する。

④ポンプ・アンド・ダンプ(Pump and Dump)

 これは通常、コールド・コール(一般的に電話、電子メール、またはソーシャルネットワーク上の接続を介して、そのような相互作用を期待していない、将来の顧客またはクライアントに接近するセールスプロセス。通話を受信している人が通話を期待していないか、販売担当者が連絡を取るよう特に要求していないため、「コールド」という言葉が使用される。コールドコールは通常、一般にテレマーケティングとして知られている販売プロセスの始まりである)のテレマーケティング担当者が高圧の販売手法で疑わしい株を購入するように人々を説得できるときに発生する。このタイプの活動は、株価を「押し上げる」のに十分な需要を生み出す可能性があるが、株式が望ましい価格に達した後、相当の利益を確保するために売却または「ダンプ」され、投資家には損失だけが残る。

会計不正・粉飾決算詐欺(Accounting Fraud)

 会計帳簿詐欺は、会計士が上場企業の財務記録を操作または改ざんして、資産と負債を偽って表現することを目的としている。

⑥ 部外者の違法侵入詐欺(Outsider trading)

 金融システムデータベースをハッキング後のデータ侵害により、部外者取引詐欺はSECによって起訴される。言い換えれば、主な標的は、企業に不法にハッキングして、一般に公開されていない情報を入手する人々が犯人である。

裁判実務上の米国弁護士のアドバイス

 上記のとおり、証券詐欺は厳しい罰則を伴い、連邦法の下でクラスC重罪(Class C felony)として知られている。これは、個人が多額の罰金と実刑判決を受けるという意味である。これら2つのペナルティは、組み合わせることができるか、または別々に科すことができる。最長20年の実刑判決が出される可能性があるが、通常、これは証券詐欺の各犯罪ごとに5年の実刑判決が下される。

 *罰金と賠償

 最大500万ドルまでの相当な罰金を命ぜられる。場合によっては、保護観察を受ける可能性がある。もちろん、これは事案の個々の事実に依存し、金銭的損失がないときに下される。

 また、証券詐欺の被害者の損失の応じた額を補償する賠償も可能である。

(2)犯罪手口の解析

この部分に関し、7月16日の連邦検事局のリリース文の事実関係は1月21日のリリース文とほぼ同一であり、以下では異なる部分のみ引用し、仮訳する。

 起訴に関し提出された裁判所文書および7月10日の裁判官が量刑に関する当事者の主張を聴取する量刑聴聞(Sentencing Hearing)によると、少なくとも2007年から2019年9月までの間、被告ブラウンは自身の会社である「Oodles Inc.」およびそのさまざまな関連会社(これらを総称して「OODLES」という)を通じて巧妙なポンジー計画に従事することにより、少なくとも60名の犠牲者から、2,250万ドルを不正に入手した。

 裁判所の記録によると、ブラウンは建築家であり、唯一ではないにしても、詐欺の主な運営者であり、彼の宗教的評判と地元コミュニティでの尊敬される地位を利用して、投資家の犠牲者に金銭で彼を信頼させるよう仕向けた。

 法廷文書によると、ブラウンはOODLESに数千ドルから数百万ドルを投資した家族、友人、隣人および仲間の教会員を騙した。ブラウンは被害者に自分のお金を投資させるために、OODLESが数億ドルの知的財産、つまり家族向けのエンターテインメントショーや宗教をテーマにした映画を所有していると意図的に誤って表明した。ポンジ・スキームの一環として、ブラウンは被害者に対し、これらの知的財産をさまざまな有名メディア企業への差し迫った売却について繰り返し嘘をついた。不正行為を永続させるために、ブラウンはOODLESへの投資または融資を勧誘するマーケティング資料を開発した。

 ブラウンが以前の法廷で認めたように、被害者を説得するためのスキームは合法的であり、支払いの遅延についての説明を求めた投資家をなだめるために、ブラウンは偽の銀行取引明細(bank statements)や偽造された会社の合意を含む、詐欺的で誤解を招く声明や架空の情報を被害者に提供した。とりわけ、ブラウンはまた、有名なメディア企業の従業員と少なくとも1つの法律事務所になりすまして、彼のポンジ計画に正当性を持った外観を追加させた。

2.1月21日判決後のブラウン被告の罪状の見直し内容と7月10日判決への反映

 法廷文書と7月9日の裁判所の量刑聴聞によると、ブラウンは裕福なライフスタイルを送り、OODLES取引とは無関係の個人経費に被害者のお金のかなりの部分を使った。また、ブラウンは一般に「ポンジ支払」(Ponzi payments)と呼ばれる、既存の投資家への支払いを行うために、新しい投資家から提供された資金を回して使用した。

 量刑聴聞で、裁判所はブラウンの詐欺的な計画によって引き起こされた甚大な被害について、ブラウンの犠牲者の一部からの声明を含む証拠を聞いた。これには、被害者の巣の卵の一部を教育および退職のために取っておいたなけなしの資金を用用いた投資を強いたこと、および被害者の一部を退職から職場復帰すことを含む被害者の一部に深刻な経済的および心理的被害を与えたことであった。

 2020年1月21日、ブラウンは「証券詐欺」と「取引マネーロンダリング」に対する有罪を認めた。ブラウンに対する増刑判決(enhanced sentence)(注6)について7月10日に伝えたとき、裁判所はブラウンの反省や説明責任の欠如、およびブラウンによるさらなる犯罪から国民を保護する必要性を検討した。

 すなわち、被告が何十年も前にボランティア組織で彼の良い性格のためのサポートの手紙を求めるために働いていた多くの個人に送った被告の無実を訴えるビデオの存在、ブラウンがそのビデオで提示した誤った情報に基づいて、電子メールの受信者の一部はブラウンを支援する手紙を書き、裁判所に提出したなどの事実が明らかとなった。

 また、判所所はブラウンに代わって送信された最近の電子メールの証拠も受け取り、ブラウンの無実とブラウンが費用を支払うのを助けるためにローンを勧誘することについてのブラウンが嘘を繰り返し、ブラウンは近い将来に利益を持って返済すると繰り返している事実をも確認した。

 長期の刑期判決を科す際に、ベル裁判官(Judge Bell)はほとんどのポンジー計画は恐ろしいものであり、ブラウンの行為は最悪の方法で犯され、最も脆弱な犠牲者の一部に害を及ぼす最悪の詐欺の一部であると指摘した。ブラウン被告は判決の聴聞会の終わりに拘留され、直ちに刑の執行が開始された。

3.高齢者詐欺を阻止するためのノースカロライナ州西部地区の連邦検事局のイニシアティブの概要と連邦司法省の取り組み

(1) 7月10日リリースの最後に、連邦司法省やノースカロライナ州西部地区の連邦検事局の取り組みの概要を引用している。わが国でも国民生活センター等での警告(注2)にもかかわらず被害が減らない原因や具体的対処策を考える上で参考となると主あるのでやや詳しく引用、仮訳する。 

 2019年3月、ノースカロライナ州西部地区の連邦検事Andrew Murrayは、同州において高齢者を狙った金融詐欺の調査と訴追の取り組みを拡大することにより、高齢者の金融搾取と闘うことを目的とした「高齢者司法支援イニシティブ部(Office’s Elder Justice Initiative)」(注7)を立ち上げる旨発表した。その目的は、詐欺を特定し、金融詐欺の被害者にならないようにする方法について高齢者を教育するとともに法執行パートナーとの連携を強化するものである。

(2) ノースカロライナ州「高齢者司法支援イニシアティブ(NCW Elder Justice Initiative)」等の概要

 米国ノースカロライナ州西部地区検事局は、高齢者ヘの保護者の放棄(neglect)、虐待、金銭的搾取と闘うことに力を注いでいる。このイニシアティブの一環として、事務局は以下の活動に積極的に取り組んでいる。

 つまり、高齢者を標的とする、または不釣り合いに影響を与える金融詐欺犯罪を調査して起訴する。

【NCWエルダー・ジャスティス・イニシアティブの詳細】

①高齢者への虐待を特定して対応するために、法執行機関にトレーニングとリソースを提供する。

②高齢者の搾取と金融詐欺を特定して対応する方法について、米国の高齢者とヘルパ―等のための実践的なトレーニングセミナーを開催する。

③高齢者に著しく低水準のケアを提供する老人ホームやその他の施設を責任などを追求する。

④高齢者への虐待と戦うために、州や地方のパートナーとの調整を促進する。

 我々の地区の公共サービスのお知らせは、https://youtu.be/qBGGAA7Mxboにある。

 連邦司法省の高齢者司法支援構想の詳細については、elderjustice.govを参照されたい。そこには、検察官向けトレーニング・リソース(PROSECUTOR TRAINING & RESOURCES)学際的チーム・ツールキット(MDT Guide and Toolkit)、およびアウトリーチ・リソース も確認できる。

【添付資料】

パンフレット:https://www.justice.gov/usao-edky/page/file/1038056/download  (各2頁)

4.わが国におけるネズミ講とマルチ商法の相違点と行政処分および処罰規定

 弁護士サイトで寺垣俊介氏が比較的わかりやすく解説している。抜粋して引用する。なお、リンク、補足は筆者の責任で行った。

(1) ネズミ講の特徴

ねずみ講は昭和五十三年法律第百一号「無限連鎖講の防止に関する法律」で禁止されている。  

    第二条  この法律において「無限連鎖講」とは、金品(財産権を表彰する証券又は証書を含む。以下この条において同じ。)を出えんする加入者が無限に増加するものであるとして、先に加入した者が先順位者、以下これに連鎖して段階的に二以上の倍率をもつて増加する後続の加入者がそれぞれの段階に応じた後順位者となり、順次先順位者が後順位者の出えんする金品から自己の出えんした金品の価額又は数量を上回る価額又は数量の金品を受領することを内容とする金品の配当組織をいう。

 ねずみ講では、「儲かるビジネスがありますよ」と勧誘して高額の会員費を請求します。他人を勧誘すると、会員費の半分が自分に、もう半分が上のメンバーに分配されていきます。(取り分は組織によって異なります)

 マルチ商法と違って特定の商品を扱っておらず、勧誘による会員の登録料でまわしているので、勧誘ができなくなると収入が途絶えビジネス自体が破綻する。勧誘するだけで金品が得られ手軽なため蔓延しやすいが、投資家人口は有限で最終的に必ず崩壊するシステムのため、ねずみ講の上にいる人は得をし、下にいる人は会員費を回収できず損をする。

(2) マルチ商法の特徴

 マルチ商法は昭和五十一年法律第五十七号 「特定商取引に関する法律」(特定商取引法)の中で連鎖販売取引と定義されており、一応合法とされています。

    (1) 特定商取引法の規制対象となる「連鎖販売取引」 (法第33条)

    特定商取引法は、「連鎖販売業」を次のように規定しています。

    1.物品の販売(または役務の提供など)の事業であって

    2.再販売、受託販売もしくは販売のあっせん(または役務の提供もしくはそのあっせん)をする者を

    3.特定利益が得られると誘引し

    4.特定負担を伴う取引(取引条件の変更を含む。)をするもの

ただし、以下述べるとおり厳格な要件をクリアーしないと違法となる。消費者庁の特定商取引法ガイドから以下、一部抜粋する。

連鎖販売取引に対する規制としては以下述べるとおり 、(1)行政規制、(2)民亊ルールに大別される。

(1) 行政規則

1.氏名などの明示(法第33条の2)

2.禁止行為(法第34条)

3.広告の表示(法第35条)

4.誇大広告などの禁止(法第36条)

5.未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止(法第36条の3)

6.書面の交付(法第37条)

7.行政処分・罰則(業務改善指示(法第38条)や業務停止命令(法第39条)、業務禁止命令(法第39条の2)などの行政処分のほか、罰則(三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する; 六月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科)の対象となる)

(2)民亊ルール

8.契約の解除(クーリング・オフ制度)(法第40条)

9.中途解約・返品ルール(法第40条の2)

10.契約の申込みまたはその承諾の意思表示の取消し(法第40条の3)

11.事業者の行為の差止請求(法第58条の21)

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(注1)マネー・ミュール(不正資金の運び屋:Money Mules)として行動することの結果について連邦司法省・FBIのマネ―・ミュールに関する小冊子の一部を概観、仮訳する。

 マネー・ミュールとして行動する個人は、個人情報の盗難・なりすまし、個人での責任債務、信用スコアへの悪影響、将来的に銀行口座を開くことができないというリスクにさらされる。また、彼らとその家族は、暴力で犯罪者に脅かされたり、マネー・ミュールとして活動し続けなければ、身体的に攻撃される可能性がある。さらに、これらの個人は拘禁刑、罰金または罰となる社会奉仕サービスを負うことなどに直面する。

 特に米国では、連邦法に基づく潜在的な責任を負うものとしては、1)郵便(Mail Fraud :18USC §1341 )、2)通信詐欺(Wire Fraud:18USC 1343 )、3) 銀行等金融機関向け詐欺(Bank Fraud:18USC 1344 ):筆者ブログ (筆者注5-3)参照、マネー・ロンダリング(Money Laundering:18 USC 1956 )、トランザクション・マネー・ロンダリング(Transactional Money Laundering:18 USC1957 )、無許可の金銭送信ビジネスの禁止(Prohibition of Unlicensed Money Transmitting:18USC 1960 )、および悪質なID盗用(Aggravated Identity Teft:18 USC 1028A )が含まれる。 これらの犯罪の有罪者には、最大100万ドルの罰金、最長30年の拘禁刑が科せられる(両者の併科もある)。

(注2) 最近時の国民生活センターからの警告ニュースでも、以下のように違法投資詐欺手口等の関連する警告が引用されている。

(注3) 証券詐欺罪(securities fraud)」といってもその構成要件の内容は複雑である。

株式や商品取引市場に関わる詐欺的または詐欺的な活動は、一般に証券詐欺として知られている。「証券」という用語には、投資家の収入に対する権利、議決権、その他の利益を表す幅広い金融商品が含まれる。株式、自己株式、債券、および債務証券(notes)は、膨大な数の有価証券のごく一部である。現金や有形資産とは異なり、証券には本質的な価値はない。それらの価値は、市況、発行者による表明、およびその他の外的要因に基づいている。

 他の詐欺行為と同様に、証券詐欺は通常、1つまたは複数のスキームを介して実行され、他の人に金銭などの価値のあるものを喜んで拠出する。ただし、一部の種類の証券詐欺には横領が含まれる場合があり、これは盗難犯罪である。連邦および州レベルの法令は、証券詐欺を禁止しているが、証券取引委員会(SEC)などの連邦政府機関は、申し立てられた犯罪の調査および起訴において重要な役割を果たしている。オンライン取引などの比較的新しい開発により、サイバー犯罪スキームが増加し、犯人容疑者を起訴するための振り込め詐欺法の使用が増加した。

【証券詐欺に係る連邦および州法】

アメリカ合衆国法典には、証券業界を規制する一連の複雑な法律がある。連邦法で定義されている証券詐欺行為には、以下の法令違反が含まれる。

    1933年証券法(The Securities Act of 1933)

    1934年証券取引法(The Securities Exchange Act of 1934)

    1939年信託証書法(The Trust Indenture Act of 1939)

    1940年投資会社法(The Investment Company Act of 1940)

   1940年投資顧問法(The Investment Advisers Act of 1940)

 連邦政府による証券および商品詐欺の犯罪は、商品、商品オプション、または証券に関連して、「スキームまたは策略(artifice)」を用いて個人を詐欺したり、不正にお金を取得したりすることを禁じている。

①法人証券詐欺(Corporate Securities Fraud): 場合によっては、企業全体が証券詐欺に従事している。例としては、2000年代初頭のエンロンスキャンダルや2007-08年のサブプライム住宅ローン危機などがある。上級幹部役員は、企業の構造を使用して詐欺的な計画を実行したり、株価を操作するために公的書類に企業に関する情報を偽ったり、差し控えたりする場合がある。また、企業はポンジ・スキームのような行動を通じて投資家を欺くこともある。

②個人証券詐欺:証券ブローカー、投資銀行家、アナリスト、トレーダーは、証券業界のいくつかの専門職を挙げれば、彼らの仕事を通じて得たアクセスとリソースで証券詐欺を犯す可能性がある。株価に影響を与えるためにインターネット上で虚偽または誤解を招く情報を広めることは、証券詐欺の一般的な形式である。証券詐欺のもう1つのよく知られた形式は、「インサイダー取引」である。これは、一般には入手できない情報を利用して株式市場で取引することを含む。

(注3-2) 2019-07-06 「FBIが紹介する Common Fraud Schemes 23の詐欺」は詐欺全般につき平易に解説している。

(注4)  プライム・バンク詐欺のしくみ:SECの” prime bank work”仮訳する。(Prime Bank Instrument Fraud 参照。

 プライム・バンク・プログラムは、投資家が共有する莫大な利益を生み出すために、投資家の資金が秘密の海外市場で「プライムバンク(prime bank)」の金融商品を購入および取引するために使用されると説明されることがよくある。ただし、実際はこれらの商品も、それら金融商品が取引されているとされる市場も存在しない。スキームに正当性を与えるために、詐欺師たるプロモーターは複雑で専門化した公的な文書を配布する。売り手は頻繁に潜在的な投資家に、そうでなければウォールストリート、またはロンドン、ジュネーブ、または他の世界の金融センターでトップレベルの投資家のために予約されるプログラムへの特別なアクセス権があることを伝える。また、投資家はリスクがほとんどなくても100%以上の利益が可能であると説明される。

 この見込み投資家たる被害者は、市町村、慈善団体、その他の非営利組織を含む個人および団体が対象となる。これらのスキームの推進者は、“USA Today”や“Wall Street Journal”などの全国紙に広告を掲載して、驚くべき大胆さを示した。これらのスキームの一部のプロモーターは、「プライム・バンクノート」という用語の使用を避け、彼らのプログラムが不正ではないことを実証するためにプライム・バンク商品を含まないことを見込み投資家に伝える。用語に関係なく、基本的な提案–プログラムには国際金融商品の取引が含まれる–点は同じであり、投資家はこのような詐欺に引き続き警戒する必要がある。

 国際的な詐欺師たちは、比較的短期間で非常に高い利回りをもたらすと思われる投資計画を発明する。このスキームでは、割引で購入し、プレミアムで販売できる「銀行保証」を利用できると主張する。「銀行保証」を数回再販することにより、彼らは投資に対して卓越した利益を生み出すことができると主張する。たとえば、1000万ドル相当の「銀行保証」を2回の利益で10回に分けて販売する場合、または「トランチ(tranches)」(注8)の場合、売り手は20%の利益を受け取れる。このようなスキームは、しばしば「ロール・プログラム(roll program)」と呼ばれる。

 スキームをより魅力的にするために、詐欺師はしばしば「保証」を世界の「プライム・バンク」によって発行されたものと呼び、したがって「プライム・バンク保証」という用語を使用する。 「プライム・バンク・ノート」や「プライム・バンク・ベンチャー」など、他の公的な用語も使用される。そのようなスキームに関連する法的文書では、被害者が機密保持および迂回回避契約を締結し、「1年1日」で投資収益を提供し、国際商工会議所(ICC)が必要とするフォームを使用することを要求することがよくある。実際、ICCはすべての潜在的な投資家に対して、そのような投資が存在しないという警告を発している。

(注5) Sarbanes-Oxley Act of 2002の概要を引用、仮訳する。

 「2002年サーバンズ・オクスリー法」は、企業による不正な財務報告から投資家を保護するために、その年の7月30日に米国議会が可決した法律である。また、「2002年SOX法」または「2002年企業責任法」とも呼ばれ、既存の証券規制に対する厳格な改革を義務付け、法律違反者に厳しい新たな罰則を科した。(同法の名称は法案上程者である上院Sen. Paul S. Sarbanes (D-Md.) と下院Rep. Michael G. Oxley (R-Ohio)をとったもの)

 2002年サーバンズ・オクスリー法は、エンロン・コーポレーション、タイコ・インターナショナルplc、WorldComなどの上場企業が関与した2000年代初頭の金融スキャンダルに対応して行われた。知名度の高いこれら詐欺は、企業の財務諸表の信頼性に対する投資家の信頼を揺るがし、多くの人が数十年前の規制基準の見直しを要求した。

 2002年のサーバンズ・オクスリー法に概説されている規則および執行方針は、1934年の証券取引法および証券取引委員会(SEC)によって施行されたその他の法律を含む、セキュリティ規制を扱う既存の法律を改正または補足した。この新しい法律は、4つの主要な分野で改革と追加を設定した。

① 企業責任の明確化

② 刑事処罰の強化

 ③ 会計規制の明確化

 ④ 新しい保護規定

 同法の規定で重要なものは、Section 302, Section 404, and Section 802である。(以下は略す)。

(注6) Enhanced Sentence Law and Legal Definition仮訳する。

 増強された量刑判決(enhanced sentence)は、通常、前の有罪判決または犯罪のある分類から別のより高いレベルの犯罪の分類に関わる状況の重大な性質によって増加した判決文を意味する。増強された量刑は州により異なる連邦法および州法に準拠する。

 この場合の"増強事実(enhanced facts)"とは、犯罪の有罪判決に科される可能性のある判決文を強化するために陪審員によって明らかとなる憲法上必要となる事実である。量刑ガイドラインは、特定の有罪判決に対するガイドラインに規定されている推定文を超える判決を裁判所が科すために頼る可能性のある事実を記述するために、「加重要因(aggravating factors)」という言葉を使用することができる。

(注7) ノースカロライナ州「高齢者司法支援イニシアティブ(NCW Elder Justice Initiative)」等の概要を仮訳する。

 米国ノースカロライナ州西部地区検事局は、高齢者ヘの保護者の放棄(neglect)、虐待、金銭的搾取と闘うことに力を注いでいる。このイニシアティブの一環として、事務局は以下の活動に積極的に取り組んでいる。

 つまり、高齢者を標的とする、または不釣り合いに影響を与える金融詐欺犯罪を調査して起訴する。

【NCWエルダー・ジャスティス・イニシアチブ(ノースカロライナ州 Elder Justice Initiative)の詳細】

①高齢者の虐待を特定して対応するために、法執行機関にトレーニングとリソースを提供する。

②高齢者の搾取と金融詐欺を特定して対応する方法について、米国の高齢者とヘルパー(caretakers)のための実践的なトレーニングセミナーを開催する。

③高齢者に著しく低水準のケアを提供する老人ホームやその他の施設を責任などを追求する。

④高齢者への虐待と戦うために、州や地方のパートナーとの調整を促進する。

我々の地区の公共サービスのお知らせは、https://youtu.be/qBGGAA7Mxboにある。

連邦司法省の高齢者司法支援構想の詳細については、elderjustice.govを参照されたい。そこには、検察官向けトレーニング・リソース(PROSECUTOR TRAINING & RESOURCES)学際的チーム・ツールキット(MDT Guide and Toolkit)、およびアウトリーチ・リソースの解説がある。

(注8) traunches:証券化商品を、リスクレベルや利回りなどの条件で区分したもの。特定の条件により区分することをトランチング(tranching)といい、区分された各部分をトランシェ(tranches)という。社債の場合であれば、優先出資証券、劣後債あるいは中間のメザニン債といったものに分割され、それぞれ投資家に販売される。

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【DONATE(ご寄付)のお願い】

本ブログの継続維持のため読者各位のご協力をお願いいたします。特に寄付いただいた方で希望される方があれば、今後公開する筆者のメールアドレス宛にご連絡いただければ個別に対応することも検討中でございます。 

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【本ブログのブログとしての特性】

1.100%源データに基づく翻訳と内容に即した権威にこだわらない正確な訳語づくり

2.本ブログで取り下げてきたテーマ、内容はすべて電子書籍も含め公表時から即内容の陳腐化が始まるものである。筆者は本ブログの閲覧されるテーマを毎日フォローしているが、10年以上前のブログの閲覧も毎日発生している。

このため、その内容のチェックを含め完全なリンクのチェック、確保に努めてきた。

3.上記2.のメンテナンス作業につき従来から約4人態勢で当たってきた。すなわち、海外の主要メディア、主要大学(ロースクールを含む)および関係機関、シンクタンク、主要国の国家機関(連邦、州など)、EU機関や加盟国の国家機関、情報保護監督機関、消費者保護機関、大手ローファーム、サイバーセキュリテイ機関、人権擁護団体等を毎日仕分け後、翻訳分担などを行い、最終的にアップ時に責任者が最終チェックする作業過程を毎日行ってきた。

 このような経験を踏まえデータの入手日から最短で1~2日以内にアップすることが可能となった。

 なお、海外のメディアを読まれている読者は気がつかれていると思うが、特に米国メディアは大多数が有料読者以外に情報を出さず、それに依存するわが国メデイアの情報の内容の薄さが気になる。

 本ブログは、上記のように公的機関等から直接受信による取材解析・補足作業リンク・翻訳作業ブログの公開(著作権問題もクリアー)が行える「わが国の唯一の海外情報専門ブログ」を目指す。

4.他にない本ブログの特性:すべて直接、登録先機関などからデータを受信し、その解析を踏まえ掲載の採否などを行ってきた。また法令などの引用にあたっては必ずリンクを張るなど精度の高い正確な内容の確保に努めた。

その結果として、閲覧者は海外に勤務したり居住する日本人からも期待されており、一方、これらのブログの内容につき著作権等の観点から注文が付いたことは約15年間の経験から見て皆無であった。この点は今後とも継続させたい。

他方、源データの文法ミス、ミススペリングなどを指摘して感謝されることも多々あった。

5.内外の読者数、閲覧画面数の急増に伴うブログ数の拡大を図りたい。特に寄付いただいた方で希望される方があれば今後公開する筆者のメールアドレス宛にご連絡いただければ個別に対応することも検討中である。

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関係者のアドバイスも受け会員制の比較検討を行っている。移行後はこれまでの全データを移管する予定であるが、まとまるまでは読者の支援に期待したい。

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警察庁「サイバーセキュリティ対策会議」が警察によるISPに対する“Tor”利用行為の通信遮断要請の具体化を勧奨する報告書(改訂・補追版)

2020-07-05 16:15:32 | 情報セキュリティの新課題

 

 筆者は2013年4月21日付けのブログで、このテーマに関する警察庁の動向や“Tor project .org”の活動内容等について簡単に紹介した。その時点で詳細な材料が不足しており、きわめて不本意なまま載せた。

 しかし、現時点で改めて読み直すとどうしても言及せざるを得ない点、警察庁の有識者会議である「サイバーセキュリティ対策会議」の報告書(注1)の内容やわが国の関係法執行機関や業界団体の具体的取組みにおいていまだにある実効性、脆弱性対策問題や、とりわけ“Tor Project” の活動内容の解析は具体的に言及せざるを得ない重要な点と考え、この補追原稿を書くことにした。()の箇所が今回追加した箇所である。

 オーストラリアの人権擁護NPO団体“Electronic Frontiers Australia Inc.(EFA)” から手元に届いたニュースに、毎日新聞英字版日経新聞の記事(注2)に基づく警察庁の有識者会議の提言内容が紹介されていた(注3)。有識者会議の報告書の内容は非公開(注4)なため、不本意ながらその内容はメデイア記事のみに頼らざるを得ない。

 今回のブログは、この問題に関するEFAのプライバシーに対する懸念・問題指摘をまず紹介するとともに、Torの実施・運用NPO団体である“Tor project .org”(注5)が欧米主要国の法執行機関・警察や関係機関との相互認識強化に関する情報を改めて提供するものである。特に後者の問題は有識者が“Tor system”につき、いかほど正確に把握しているか不透明であり、その意味でも各報告書の内容、専門性等の検証が急務である。

1.Tor(トーア)とは

 日本語版のWikipedia から関係個所を中心に抜粋する。なお、このブログの執筆者は例えばいまだに警察庁に「有識者会議」を使う等必ずしも各情報につき原データにあたるという基本原則は守っていない点が気がかりであるが、参考までに引用する。

Tor(トーア)とは、TCP/IPにおける接続経路の匿名化を実現するための規格、及びそのリファレンス実装であるソフトウェアの名称である。通常、ユーザーはローカルにSOCKSプロキシ(オニオン・プロキシ)を立て、そのプロキシ経由で通信を行うことになる。Torという名称はオリジナルのソフトウェア開発プロジェクトの名称である「The Onion Router」の頭文字を取ったものである。

 当初はオニオンルーティングの開発元でもあるアメリカ海軍調査研究所 によって支援されていたが、2004年以降は米国サンフランシスコに本拠を置く言論の自由等を擁護する非営利団体「電子フロンティア財団 (Electronic Frontier Foundation) 」により支援されるプロジェクトとなった。2005年11月以降はEFFによる金銭の支援は終了したが、ウェブホスティングは継続されている。(筆者の追記;匿名でブラウジングできる Tor 内臓のウェブブラウザー: フリーソフトのダウンロード画面 もともとの提供先は Tor Project Inc.であり、最新バージョンは9.5.1)

*Torの応用

 政府機関や軍隊が安全な通信を行うため、あるいは通信の秘密やプライバシーを重視する個人や活動家などがネット検閲回避のため使用する。使用例については、ダークネット#使用の項が詳しい。公式サイトから入手する必要あり。ただし、国際的監視網の形成やPRISMの導入が行われ、情報機関や治安当局に把握される可能性があり、公式サイトの閲覧やブラウザ等の入手・使用は自己責任かつ工夫の上行うこと。また、個人サイトやアップローダーなど第三者によって公開されているものは、改竄やマルウェアなどの混入の可能性がある。 

*サイト管理者へのTor規制要請

 日本で2012年にパソコン遠隔操作事件が発生してTorの存在がマスコミにより連日報道された。近年はTorを悪用した犯罪行為が発生しており、殺人予告やオンラインバンキング等への不正アクセス、2010年の警視庁国際テロ捜査情報流出事件でも使用が確認されている。

 警察庁の有識者会議は、2013年4月18日の報告書で「国内外で犯罪に使われている状況に鑑みると対策が必要」として、末端となるTorノードのIPアドレスからアクセスがあった場合は通信を遮断するよう、国内のウェブサイト管理者に自主的な取り組みを要請する構えを見せている。

 2014年7月に「Tor」を管理する非営利団体は、Torのネットワーク上で5か月間にわたり密かにトラフィックに変更を加え、「秘匿サービス」と呼ばれるサイトにアクセスしているTorユーザーの身元を探ろうとしていたコンピュータの存在が確認されたとして、秘匿サイトを利用しているTorユーザーの多くが政府が支援する研究者によって身元を特定された可能性があると発表した。

 国際ハッカー集団「アノニマス」は、Torの検閲への動きを撤廃することを望む動画を、YouTubeにアップロードした

以下略す。


2.EFAの課題指摘の内容
 同レポートを仮訳しておく。

・日本の警察庁(National Police Agency:NPA)は、自国のISPに「自発的に」Tor(インターネットを匿名でサーフィンするため広く利用されている有名なシステム)の使用を妨害するよう、明らかに依頼している。

 NPA(それはTorシステムを悪用している犯罪を防止するための措置を調べていた)に向けた専門家による議論は、4月18日のレポートでサイト管理者の裁量のブロッキング・パソコン通信がそのような犯罪を防止することに効果的であるとしていると編集した。同会議の推奨に基づいて、NPAはインターネット・プロバイダー産業界や他の団体にその旨を自発的な努力をするよう求める。

 これは、極端に危険な過剰反応といえる。確かに、一部の人々は、違法な行為の目的で、Torの匿名性を悪用する。まさに一部の人々が悪いことをするために「現金の匿名性」を悪用するのと同じである。

 しかし、そうであるからといって、我々はこのため「現金」を非合法化しない。人々には彼らの個人識別(アイデンティティ)を保護するためのTorのような匿名化(anonymizing)しているツールを捜す多くの正当な理由がある。彼らが警察で組織犯罪または汚職に関して警告を鳴らすホイッスルブロアーであるならば、どうであろうか?。それが犯罪行為のために使われているという恐れに関しては、それは、警察が他の手段によって彼らを特定することができないことを意味しない。我々は、彼らが犯罪を犯しているとき、再三再四、人々がデジタル・トラック情報を他の方向に向け混乱させる事例を見た。事実、それは生命を警察にとってより難しくする。そして、それは彼らが実際の捜査活動をしなければならないことを意味するが、まさに、それが彼らの仕事なのである。

3.Torの国際的は法執行機関等との深まる協議の内容
(1)ここからが、本ブログで筆者が言いたいポイントである。有識者会議がこれらの各国の法執行機関との協議内容を十分に検証した上での今回の勧奨報告であればまだしも、いかに「拙速のそしり」という非難を指摘されることはいうまでもない。

 他方、筆者はこの問題に対する極めて多くの「2チャンネル」での非難を支持するものではない。まさに冷静な対応が必要な問題であると思うのである。したがって、ここでは、Tor systemにつき詳しく論じることは行わないが、少なくとも彼らが行う欧米主要国の警察や法執行機関、関係機関等の会議、研究会への積極的な参加や意見交換の概要につき紹介する。
 少なくとも、わが国でもこれらに準じた手続きを経たうえでの勧奨行為が当然と考える。

(2) Tor systemの運営幹部であるロジャー・デングルディン(Roger Dingledine)のブログ解説がやや冗長かつ専門家向けのため、説明不足の感はあるが、具体的な内容なので概要を仮訳する。

Roger Dingledine氏

 2013年 1月、ジェイク(Jacob Appelbaum, Advocate, Security Researcher, and Developer)と私(Roger Dingledine, Project Leader, Director, Researcher) (注6)は、オランダの地方警察や国家警察、およびベルギーの国家警察と間でTor system につき説明や協議を行った。また「Bits of Freedom」に対する短いが感動的な対話だけでなく、オランダの国家サイバーセキュリティ・センター(National Cyber Security Centre :NCSC)の2013年次会議の閉会の基調講演を行った。

 あなたは私の側の得意な点の一つとして、最近のTorに関する法律の施行方法を教えてきたことを思い出すかもしれない。我々は、2012年10月にはTorについてFBIの会議で説明するとともに、過去では2008年3月にドイツでのデータ保持について議論されたときにドイツ・シュトゥットガルト警察の訪問については、私の以前のエントリーしたブログを参照してほしい。

 この「Torブログ」を始める前、Torにつき私は米国司法省と数回にわたり、またノルウェー警察の特別犯罪捜査局(Kripos)との協議を行った。

 今、オランダ警察は第一に2011年に起きた「DigiNotar被害」(注7)でぴりぴりしているので、オランダ警察に対しTorの話を進める良いタイミングである。しかし、彼らはどの国かわからない外国のコンピュータに侵入し合法化する彼らの2012年の法規制強化の野望があった(私は、彼らはすでにそれをやったので、合法的であると言う!)

 以下に、私に印象を与えたそこでのいくつかの論点がある。

•私は、オランダの地域警察署から約80人に対話を開始した。どうやら各地域の警察グループは、基本的に1人以上のサイバー犯罪者を抱えており、ほとんどすべてのそのためTorを学ぶようになった。これらには、Torのケースを処理する方法についての彼らは警察グループの助言人なので、正確にExoneraTorのようなサービスについて知っておく必要があるのである (それは彼らの仕事が簡単になったため、その後、国家警察の一つはTorについて地域警察を教えたことに心から我々に感謝した)。

・オランダ警察との対話中に繰り返し登場した1つの問題は、次のような内容である。
:悪い男が、誰かが彼のドアのところに現れたときにもっともらしい否認を行うため、Torの「出口ノード(Exit relays)」(注8)を実行したらどうなるか?

 私が最初に考えたのは警察の注目を減らすためTorの出口ノードを実行することは狂気の沙汰である。
 あなたは無視したい場合、あなたは悪いことをするボットネットか何かを利用する必要があり、誰もそれを学びませんし、それは、あなたにとってすべての終わりです。
 我々はTorにつきおよそ地球上のすべての法執行者を教育するまでは、常にこれまでのTorが何であるかを知らなくても、容疑者リスト上のすべてのIPアドレスを襲撃する人々が存在する。彼らについての興味深い発見の第二点は、Torのリレーがディスクにすべてのトラフィックを書き込むことはないということであった。もし容疑者は彼のハードドライブ上の悪いものを持っており、それがためにTorリレーのせいであるというのはうそである。もちろん、ディスクの暗号化は、状況を複雑にする(我々は、出口に関しディスクの暗号化の使用は勧めない)。

・私は、ベルギーの警察との間で彼らのインターネットのフィルタリング行為は "検閲"ではないという問題に関し議論に入った。私の経験では、それが起動する方法は、幾人の議員は、インターネット上でフィルタリングを正当化する非常に恐ろしい何かを決めることである。その次に、彼らは禁止事項のURLのリスト(一部完全に非透過的な方法で)を用意すべく準政府組織に委譲する。必然的に、このリストにはフィルタリングを設定するための元々の理由よりも、コンテンツのより多くの種類が含まれている。そして必然的に、あなたがそれにあってはならない場合は、リストから降りるメカニズムの救済システムは全くない。ベルギーの警察はURLのみの小さなセットをフィルタリングすること、これらの問題の各々は、議論され、透過的に民主的な方法で決定されていること、さらに、警察は準政府機関にリストについて何を教えていないだろう私に保証した。

4.“Tor”に関するわが国のある程度専門的視点からの解説例

一般的なものとしては次の2つのレポートがあげられよう。なお、冒頭で引用した平成24年度総合セキュリティ対策会議報告書「官民が連携した違法・有害情報対策の更なる推進について」では、Torに関する具体的記載はない。平成27年度報告書「サイバー犯罪捜査及び被害防止対策における官民連携の更なる推進」3頁「通信匿名化技術」で初めて出てくる。本文、資料編(はっきり言って関係団体による説明会資料の域をでたものではない)について読んだが、技術的な解説、具体的な問題指摘はない。

(1)2020年1月JETRO ニューヨークだより:中沢潔氏「ダークウェブに関する現状」

 その中でダークウェブの発生とともに生まれた匿名化通信ツールの1つである「Tor」について、匿名通信を実現させる基本的な仕組み(6頁以下で図解入りで説明)、これまでの連邦法執行関係機関や人権擁護団体等との関係、さらには資金源等につき詳細な解説を行っている。

 なお、このレポートの中でNATOのNATO認定のサイバー防御ハブ機関である「Cooperative Cyber Defence Centre of Excellence(CCDCOE)」の報告書「Technical and Legal Overview of the Tor Anonymity Network (全32頁)」から基本的な図などを引用、翻訳等を行っている。

 

 そもそも、わが国ではCCDCOE自体の説明がないので、ここで併せて解説しておく。

 CCDCOEの中心は、加盟国25か国(オーストリア、ベルギー、ブルガリア、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、ラトビア、リトアニア、オランダ、ノルウェー、 ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スペイン、スウェーデン、トルコ、イギリス、アメリカ)の多様な専門家グループからなり、我々は軍、政府、学界、産業界からの研究者、アナリスト、教育者を結集し、①テクノロジー、②戦略、③実践運用、④法律の4つのコア領域で研究、トレーニング、演習を行っている。

その組織図を以下引用しておく。

(2)2019.6.5「Tor ネットワークでも IP アドレスを特定される可能性」

短いレポートであるが、ワシントに本部を置くネットワーク・セキュリティ装置の開発・販売会社のアナリストであるEMIL HOZAN氏がTorプロジェクトの内容を詳しく論じている。

*************************************************************************************:****

(注1) 2013年(平成25年)4月の時点では、警察庁の有識者会議である「サイバーセキュリティ対策会議」の名前さえ公表されていなかった。しかし、この対策会議の委員名、審議内容、配布資料、報告書は警察庁サイトで公表されている。当時のメデイアの情報収集不足のせいか。

 ただし、2013年4月の筆者ブログの(注2)で指摘したとおり、委員の顔ぶれを見るとサイバー問題の専門家とは言い難い。筆者がこの点につき断定的な発言をすると理由は、かつてK大学の教授会でやり取りしたり、JSSM学会で席を並べて議論した経緯を知っているからである。

 ところで、わが国のサイバーセキュリティ問題の官による検討に係る問題につき、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)は2014年(平成26年)11月、サイバーセキュリティ基本法が成立した。同法に基づき、2015年1月、内閣に「サイバーセキュリティ戦略本部」が設置され、同時に、内閣官房に「内閣サイバーセキュリティセンター(NISC※)」が設置された。

 サイバーセキュリティ対策推進会議(CISO等連絡会議)は平成27年4月サイバーセキュリティ戦略本部令(平成26年政令第400号)4/21(62)第4条の規定に基づき、関係行政機関の最高情報セキュリティ責任者(CISO)等相互の緊密な連携の下、政府機関におけるサイバーセキュリティ対策の推進を図るため、サイバーセキュリティ戦略本部(以下「本部」という。)に、サイバーセキュリティ対策推進会議(以下「推進会議」という。)を置いた。この会議の内容は都度メデイアにも公開している。しかし、果たしてわが国のサイバー問題の中心的機能を果たしているかどうかについては、改めて関係者の意見を求めたい。

(注2)Tort Projectに関するネットワーク・セキュリテイの専門家の解説例としては、ワシントに本部を置くネットワーク・セキュリティ装置の開発・販売会社(日本法人もある)である“WatchGuard Technologies, Inc.”のアナリストEMIL HOGAN氏の2019.6.5「Tor ネットワークでも IP アドレスを特定される可能性ものがある」があげられる。

(注3) このようサイバー犯罪からみの問題をいつも真っ先に取り上げる夏井教授主催グループのブログ(Cyberlaw)は、4月22日付けでこの問題を取り上げ、有識者会議の姿勢を批判している。
 なお、英国のIT専門メディア”Wired co.uk”が4月9日の記事、やフランスのIT専門メディア“ZDNet.fr”が4月22日の記事でこの問題を取り上げているが、いずれも毎日新聞の記事を引用しているのみである。

(注4)筆者は、なぜがゆえに警察庁が有識者会議の報告内容をあえて 非公開とするのかが不明である。この程度の内容が非公開とすべきであるとも思えないし、そもそも有識者会議の目的や意図は何かさらには専門委員構成等、大いに疑問である。

 弁護士(元検事)の落合洋司氏の「日々是好日」の4月18日付けのブログが「警察庁がISPに対し“Tor”の通信遮断を要請」と題してこの問題を取り上げている。落合氏が指摘しているとおり、「どこの『有識』者が、こういうことを提言しているのか知りませんが、警察の提灯持ちや露払いに堕するのもいい加減にしておかないと、せっかくの『有識』(何の有識か知りませんが)が世界的な物笑いの種になりかねません(こんなもの(報告書)を出してくるようでは、そうなったほうが良いような気もしますが)」は、納得のいく的確な指摘であると思う。

(注5) 毎日新聞は“Tor”記事の中で、次のとおり簡単な用語解説を行っている。
「◇の略で、タマネギ(onion)の皮のように何重にも暗号がかけられていることから名付けられた。90年代に米海軍の研究機関が秘密裏に情報交換するために開発。このシステムを使う世界中のパソコンの中から無作為に選ばれた3台が経由地になる。通信記録が残らないように設計されているため発信元の追跡は不可能とされる。」

(注6) Roger Dingledine氏は、TorのProject Leader, Director, Researcherである。外部に向けたアグレッシブな活動内容は興味を引くものである。例えば、YouTube:29C3: The Tor software ecosystem (EN)(2013年1月19日録画)を見てほしい。プログラム参照。なお、“29C3”は、2012年12月27日から30日にかけてドイツ・ハンブルグで開催されたカンファレンスである「29th Chaos Communication Congress(29C3)をさす。

(注7) オランダの認証局DigiNotarが不正アクセスを受け、偽のSSL証明書を発行していた問題は、さまざまなところに影響を及ぼしている。

 この被害は2011年8月29日に明らかになった。米Googleのメールサービス「Gmail」のユーザーに対する中間者攻撃の動きがあったことを機に、DigiNotarが不正なSSL証明書を発行していたことが発覚。詳しく調査した結果、DigiNotarの認証局インフラが7月19日に不正アクセスを受け、管理者権限でアクセスされて500以上の偽証明書を発行していたことが明らかになってきた。その中には、google.comのほか、skype.com、twitter.com、www.facebook.comや*.windowsupdate.com、*.wordpress.comなど、広く利用されるドメインが含まれている。またDigiNotarの証明書は、オランダ政府でも利用されていた。
 SSL証明書は、自分がアクセスしている先が確かに「本物である」ことを確認するために利用される。もし証明書そのものが不正に発行されれば、本物のサイトと不正なサイト、フィッシングサイトなどを見分けることができない。通信を暗号化していても、それが第三者に筒抜けになってしまう可能性があるし、アクセス先を信用して、ユーザーIDやパスワード情報を入力してしまったり、マルウェアをインストールしてしまう恐れがある。
 この事態を受け、ブラウザベンダは即座に対策した。DigiNotarの証明書を信頼リストから外し、無効化した新バージョンを相次いでリリースしている。」 @IT記事から一部抜粋。
 
(注8)Torの「出口ノード(Exit Relay)」に関しては「ネットワーク経路を複雑化・追跡困難にするTorってどんなもの?」(netbuffalo)が図解入りで説明している。また、Tor自身がLegal FAQ で詳しく説明している。

 同FAQの主要部分のみ仮訳する。
「出口ノード」とは、それらからの出口でノードのIPアドレスにまで遡ることができるトラフィックから 脱出できるという特殊な問題を引き起こす。(出口ノードは目的のWebサイトからすると、アクセス元のIPアドレスとして見えるが、もちろん本来のトラフィック送信元アドレスではない)

 我々は出口を実行することは合法であると信じるが、それは出口ノードがいくつかの点で民事訴訟や法執行機関の注目を集めることが違法な目的に使用されることを統計的には認めねばならぬ可能性がある。
 出口ノードは非合法とみなされ、トラフィックが中継のオペレータに起因する可能性があるためトラフィックを転送してもよい。あなたはそのリスクに対処することを望まない場合、ブリッジまたは中間リレーはあなたのためのより良い方法といえるかもしれない。これらのノードは、インターネット上で直接トラフィックを転送しないし、そう簡単に伝えられるところでは違法コンテンツの起源元と誤解されることはない。

 Torのプロジェクト・ブログでは、できるだけ少ないリスクと終了を実行するためのいくつかの優れた提言をしている。我々は、あなたが出口ノードを設定する前に、これらのアドバイスを確認することを示唆する。

*私は私の家からの出口ノードを実行する必要があるか?

いいえ。もし法執行機関等は、出口ノードのトラフィックに興味がなくなった場合、官吏あなたが使用するコンピュータを押収することが可能である。そのため、それはあなたの家またはご自宅のインターネット接続を使用して、出口ノードを実行するのは最善ではない。その代わりに、Torを支持している商業施設で、出口ノードを実行することを検討してほしい。あなたの出口ノードのために別々のIPアドレスを持っているし、それを通るルート独自のトラフィックのため、別々のIPアドレスを持つべきである。もちろん、あなたの出口ノードをホストしているコンピュータ上に機密情報や個人情報を保持することは避けるべきであり、またあなたは違法目的のためにそのマシンを使うべきでない。

*私は、出口ノードを実行していることを私のISPに伝えるべきか?

はい。あなたは、出口ノードを実行していることを知っていて、その目標に関しあなたをサポートしてTorに理解があるISPがあることを確認してください。これは、あなたのインターネット・アクセスが原因で虐待の苦情にカットオフされていないことを確認するのに役立つ。 Torの支持グループ特にTorに精通しているISPは、同様ではないものとともに仲間のリストを保有している。
(以下、略す)

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