Financial and Social System of Information Security

インターネットに代表されるIT社会の影の部分に光をあて、金融詐欺・サイバー犯罪予防等に関する海外の最新情報を提供

米国退役軍人省が支援した「第20,000,000件目のホームローンを獲得」に涙する未亡人母と無邪気な息子の報道

2012-10-28 16:48:45 | 違法なマーケテイング規制
 
 
(執筆途上)
 
 筆者は毎日300以上の海外情報を読んでいるが、この記事は極めて個人的に関心を持たざるを得なかった。というのも、彼女の3歳の息子(Joey Carpenter)が家の前の道路で細かに割れた落ち葉を踏んで三輪車に乗ってにこやかに笑う写真がトップに写されていたからである。誰でも涙を誘うであろう(個人的なことであるが、筆者の孫も現在3歳である)。
 
 3歳の息子が堅牢な家に住み大人になる日を夢見る上で、若くして「がん」で死亡した退役軍人の未亡人たる配偶者(Elizabeth Carpenter)は自宅をホームローンで建てるという極めて困難な問題に取り組んだ。また、この問題に退役軍人省(Department of Veterans Affairs: VA ) の「給付・援助局(Veterans Benefits Administration:VBA)」が全面的に支援したという物語が背景にある。
 
 すなわち、毎日DODから送られてくる情報の多くは、米国の軍隊の最前線の情報以上に戦時遂行にかかわるストレスに基づく①トラウマ(心的外傷)、②PTSD(心的外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder)、さらに③同性愛問題、④自殺等あげればきりがない。
 また、その次に多く取り上げられるのが退役軍自身や未亡人や遺族の生活補償問題である。今回のテーマはまさにこれに該当すると思える。
 
 今回のブログは、今回のリリースの概要および極めて予算規模や組織が大きいにもかかわらず、わが国で詳しい説明が少ない「VA」やオーストラリアのVAの概要について両者を比較しながら説明する。
 
1.リリースの概要
 10月26日、ヴァージニア州ウッドブリッジ発でDODが報じた記事の概要は次の通りである。仮訳する。
○3歳の男の子ジョーイ・カーペンター(Joey Carpenter)が家の前の道路で細かに割れた落ち葉を踏んで三輪車に乗ってにこやかに笑うのを若い母親は涙して微笑んだ。彼女は、ジョーイが成長するに必要と思える堅牢な家を得たことがその背景にある。近所の人々は、VA幹部がエリザベスに対しホームローンの第2000万件目の家のドアの住所表示を送る式典を見守った。
 
 
 VAの給付・援助担当次官であるアリソン・H・ヒッキー(Allison H.Hickey)はジョーイとエリザベスに記念の額を贈ったが、ウェストポイント陸軍士官学校を卒業しイラクに派遣していた夫マシュー・カーペンター(Mathew Carpenter)は、2010年12月に癌で死亡した。VAのホームローン・プログラムの担当である次官は、周りの環境がどうであれ軍人の家族が新しい家を欲するのは良い考えであり、「そのような策を用いること自体良いことである。すなわち、軍人は家族に対する責任や扶養に中心的価値を置き、それに取り組み、ローンによる家の購入を申込み、そして戦場に向かう」と語った。
 
○エリザベスは、夫が生前にもし自分が死んだら彼女は家族とともにヴァージニア州に住みたいと考えていたと語った。彼女は「私と息子にとって安定した家を持つことを希望しています。これが私たちの『小さな家族』です。彼が16歳になったときに3歳のときの思い出として、どんなに年を取っても戻りたくなる安定して住める家を持ちたいと考えた。」と述べた。
 
 彼女は自分の父親、陸軍の兵士仲間の助言によりVAが運営するホームローン・プログラムに熟知しており、その後、夫自身がコネチカットの彼らが住んでいた家につきVAの給付・援助サービスが購入することを考えていたことも知っていた。しかし、彼女はVAの給付・援助は現役の軍人の家族だけでなく残された遺族や配偶者に広げられていることを知った。
 
 
 
 
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英国メディアやメンタルヘルス擁護財団等のレポートに見る精神の病による汚名と社会的差別問題

2012-10-21 10:52:29 | 人権問題



 筆者の手元に、英国の代表的メディアである「インディペンデント紙」の10月18日付け記事が届いた。また、従来から読者登録している英国のメンタルヘルス問題に詳しいNPO財団「メンタルヘルス・ファンデーション(Mental Health Foundation)」のこの問題に関する解説を読んだ。

 わが国でも、やっとこの問題の社会的影響の大きさや企業、学校や家庭における問題の根の深さ、さらには医療機関における取組みの遅れ等がメディアや行政機関等で取り上げ始められてきた。

 筆者はこの精神医療分野の専門家ではないが、同記事の内容を概観するとともに、英国社会の取り組みの現状、さらにこの問題の根の深さを改めて考えるきっかけといたしたくまとめてみた(記事の原文にない注書やリンクは本ブログの内容の正確さを向上させるため、筆者の責任で行った。また、誤訳や解釈等に問題があれば関係者からのコメントを期待する)。

 なお、インディペンデント紙の同記事に対する読者の反応(コメントやTweet数)は極めて多いことを付言しておく。


1.インディペンデント紙の記事概要(仮訳)

○この問題について、研究者は西洋社会の唯一かつ最大の身体障害の原因であり、多くの苦しむ人々が、それに付随してうける汚名(stigma)は病気そのものより悪いと語る。

 自身の精神疾患につき、はっきりと明言する有名人は英雄として歓迎されるが、他方で一般市民の場合は遠ざけられ、ののしられかつ虐待される。
 35カ国の1,000人以上を対象とする国際的な研究において、4分の3の人が職場や友人関係において村八分になるなどの迫害にあっていることが明らかとなった。このような「いわれなき差別(discrimination)」は、彼らの状態をますます悪化させる措置の遅れの原因となっている。

 鬱病等の精神疾患は、薬や心理療法精神療法により60~80%が助けられうる。しかし、実際はその半分のみが治療措置を受け、また、たった10%の人が正しい薬の投与、十分長期かつ正しい効果的な心理療法を受けている。英国外科学会が発刊する著名な医学雑誌「ランセット(The Lancet)」がまとめた国際的な調査結果では、差別化(discrimination)のレベルは3年前に行われた同様の調査で明らかになった統合失調症(psychotherapy) (注1)に対するものと変わらないレベルであることが明らかになった。

 また、欧州で最大規模の英国「精神医学研究所(Institute of Psychiatry King's College)」(注2)の「公共医療および人口調査部」の責任者であるグラハム・ソーニクロフト(Graham Thornicroft)教授 (注3)は、「我々は、ここに重大な問題―非公開とする問題は疾患者にとって必要以上なバリアーとなる。すなわち人々が医療措置を求めず、その結果、専門家の手助けを受けられないことを意味する」と述べた。

 他方、テニス・チャンピオンのセレナ・ウィリアムズ(Serena Williams)、米国女優のキルスティン・ダンスト(Kirsten Dunst) (注4)、トークショーの司会者スチーブン・フライ(Stephen Fry) (注5)等が広く大衆の面前で自身の精神疾患の告発を行う有名人が増える一方で、この病でひどく苦しむ人々も広がった。

○前ノルウェイの首相であるクェル・マニェ・ボンデヴィック(Kjell Magne Bondevik) (注6)は、1998年に鬱(うつ)のエピソードから回復する段階で、3週間公務責任を放棄したとき、世界中から承認や支持を得て、次の選挙では再任された。

 これと対照的な問題として、ソーニクロフト教授は次のような事例を紹介している。「隣人がある女性を避けるため犬の糞をドアから投げ込んだリ、ある男性がかつて精神病院に入院していたことを知った警察が、泥棒に入られたときに元気がないことからその面談を中止してしまった」という例を挙げている。我々の調査結果では、いわれなき差別が広範囲であり、その差別がほぼ確実に活動的な社会生活や仕事を得たり維持する上で障害となっていることを示す。
 
 2008年に英国政府が精神的な病がある人々にとって差別の減少を目的とし立ち上げ、現在も続いている“Time to Change”キャンペーン (注7)は控え目ではあるが重要な意義を持つことは明らかである」と述べている。

 別々の研究では、研究者は2008年の経済崩壊は女性ではなく、男性のメンタルヘルスの劣化(deterioration)を招いた。この崩壊後、3年間は不安神経症(anxiety)や鬱病の男性は明らかに増加したが、女性は無傷であった。

○研究者は失業率の増加と収入の減少はそのせいではなく、仕事の不安定さが原因であると分析している。

○英国のオンライン専門医学雑誌“BMJ Open”が発表した内容によると、メンタルヘルスの疾患は男性の場合2008年の13.7%から2010年に15.5%に定価したものの2009年には16.4%に増えている。男性は彼らの仕事から社会的地位の多くを得ており、またほとんどの家族では大黒柱である。そのことは、不況時に彼らが仕事を失うことへの恐怖感のせいで精神的に不安定になっている。

○グラスゴー大学にある「社会・公衆衛生科学ユニット(Social and Public Health Science Unit)」の著者は、女性のメンタルヘルスにつき同期間でほとんど変化がないように見えたが公的部門での人員削減で悪化していると述べている。

2. メンタルヘルス・ファンデーション(Mental Health Foundation)」の汚名と差別問題サイトの概要

 このサイトの解説内容も、前述したインディペンデント紙の内容とかなり共通する。より具体的な内容であるので、概要部分を仮訳する。

,○精神的な病は極めて一般的である。英国の人々にとって友人、家族、仕事仲間や社会全般にわたり数千人の人々に影響する。
・4人に1人は彼らの生活の中で何らかの点でメンタルヘルスの問題を経験する。
・子供の約10人に1人はメンタルヘルス問題を経験する。
・鬱は全人口の12分の1の割合で影響を与えている。
・英国の自傷の割合は人口10万人あたり400人で、欧州で最も高い。(注8)
・世界中の4億5,000万人にメンタルヘルス問題がある。

○メンタルヘルス問題をかかえる人々の約10人に1人は、汚名と差別は彼らの人生でマイナスの影響を受けていると述べる。

○我々は、メンタルヘルスの問題を抱えるグループの人々が長期の健康問題や障害により最も起こりうる問題を以下のようにまとめた。
・仕事を見つける。
・安定かつ長期の関係を維持する。
・きちんとした住宅に住む。
・社会的に見た主流社会に含まれる。

○これは一般的に見て、社会が精神疾患ならびにそれが人々にどのような影響を与えるかにつき枠にはめることによる。多くの人々は精神的な病を持つ人は乱暴で勝つ危険であると信じている。実際は彼らは危害を加える以上に、他の人々から危害を加えられたり攻撃されるリスクが高い。

○汚名と差別は社会的隔離、粗末な住宅、失業および貧困は精神的な病とリンクする。したがって、汚名や差別は病気のサイクルの中に人々を陥れることが出来る。

○このような状況はメディアによりさらに悪化させられる。しばしばメディアはメンタルヘルス問題について暴力や貧しさ、危険性、犯罪、悪事(evil)、正常な満足のある生活が出来ない人々と結びつけた報告をする。
 しかし、これらは真実からほど遠い(far from the fact)。多くの研究成果は、これらの固定概念(stereotype)に挑戦する最善の方法はメンタルヘルス問題の経験のある人々とじかに接触することにある。

○多くの国家的や地方主導のキャンペーンがメンタルな病に対する姿勢を変えようとしている。この中には英国の国家的キャンペーン“Time to Change”が含まれる。
 
○英国の「2010年平等法(Equality Act 2010)」(注9)は公共サービスにおけるメンタルヘルス問題、その機能、前提となる根拠へのアクセス、仕事、教育、つきあい(association)および輸送等に関し直接、間接の差別を違法とする。

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(注1) 日本精神神経学会が2002年6月30日に、schizophreniaの訳語を差別や偏見を招きやすい「精神分裂病」という訳語から「統合失調症」に改めた。

(注2) ロンドン大学キングス・カレッジの精神医学研究所(Institute of Psychiatry: IoP)である。わが国のこの分野の研究者の多くが留学している。

(注3) IoPのグラハム・ソーニクロフト(Graham Thornicroft)教授は、精神障害者差別問題等に関する多くの著書を著しており、わが国でも多くの訳本が出版されている。「精神障害者差別とは何か:原書名:Discrimination Against People With Mental Illness」、「精神保健サービス実践ガイド:原書名:Better Mental Health Care」があげられる。
 なお、同研究所の各部毎の詳細な研究体制や内容についても詳しく確認できる。たとえば、依存症(Addictions)、生物統計学(Biostatistics)、児童青年精神医学(Child and Adolescent Psychiatry)、臨床神経科学(Clinical Neuroscience)、フォレンジックと神経発達科学(Forensic and Neurodevelopmental Science)、公共医療および人口調査(Health Service and Population Research)、神経画像検査(Neuroimaging)、神経科学(Neuroscience)、老年神経学(Old Age Psychiatry)、精神神経学(Psychological Medicine)、心理学(Psychology)、精神病研究(Psychosis Studies)、社会・遺伝・発達神経センター(MRC Social, Genetic & Developmental Psychiatry Centre)別に一覧できる。

(注4) キルスティン・ダンストは、2008年前半にうつ病でウタ州の Cirque Lodge treatment center に入院した。この件に関する米国メディアの記事例は2008年2月7日のPeopleで読むことが出来る。

(注5) “Cyclothymia”は気分循環症、循環気質のことであり、軽度のうつと躁が交互に現れる慢性の病気。躁鬱病とは区別されている。

(注6)フライは、自身の精神病の体験から2006年テレビドキュメンタリー番組「双極性障害(bipolar disorder)と秘密の生活( The Secret Life of the Manic Depressive)」等いくつかのテレビ番組や著書を著し、同番組は2007年にエミー賞を得ている。(Wikipedia から一部引用)
 なお、双極性障害とは、複数の躁病エピソード(manic episode)と、通例いくつかの大鬱病エピソード(major depressive episode)を伴う双極性I型障害(bipolar I disorder)と、通例、軽そうエピソード(hypomanic episode)と、少なくとも1回の大鬱病エピソードを伴う双極性II型障害(bipolar II disorder)に分類される。かつて躁鬱病(manic depression)と呼ばれていた。(SPACE ALCの説明から引用)

(注7) 英国“Time to Change”キャンペーンのサイトのAbout us部分を引用する。
―“Time to Change”は、メンタル・ヘルス問題を抱える人々に「社会的な汚名」や「いわれなき差別」を終わらせる目的の過去例にないイングランド最大の試みである。それは、人々の態度およびふるまいを変えるキャンペーンである。ある年でみたとき、我々の4人に1人はメンタル・ヘルス問題に直面した経験を持つであろう。まさにそのとき、我々は他人からの汚名と差別問題に直面するのである―

(注8) 「自傷問題」に関し、筆者は国内の参考文献や海外の情報も引用しているブログ「自傷行為と理解」等を参照した。

(注9) 「2010年平等法(Equality Act 2010)」の詳しい解説は次のレポートが参考になる。
川島 聡「英国平等法における障害差別禁止と日本への示唆」

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Copyright © 2006-2012 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.You may reproduce materials available at this site for your own personal use and for non-commercial distribution.


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米国の大手地方銀行「リージョンズ・バンク」の超高利ペイディ・ローン「Ready Advance」をめぐる最新論議

2012-10-10 11:29:16 | 消費者保護法制



(執筆途上)

 9月下旬に米国の消費者擁護団体“Center for Responsible Lending:CRL”、ノースカロライナ州司法センター(注1)、米国商事改善協会(BBB)等やノースカロライナ州の司法長官ロイ・クーパー(Roy Cooper)等は、2006年3月に一旦中断したペイディ・ローンが州内の銀行の支店で再浮上したことに対する多くの苦情問題へ対抗策を持ち出した。

 すなわち、これら団体等は同州内に6支店を有するアラバマ州を本拠とする「リージョンズ・バンク( Regions Financial Corporation)」
(注2)が、ノースカロライナ州が全米で最初の州としてこの10年間ペイディ・ローンを禁止してきたにもかかわらず、2012年6月に、高利貸し禁止法や規制を潜り抜けたローン商品(Regions Ready Advance)を提供し始めたことが大きな社会・経済問題となっている。さらに問題なことは、同州の他の地方銀行が同種の高金利ペイディ・ローンを提供し始めることへの懸念である。

 この問題に関し、司法長官は消費者ニーズの弱みを逆手に取るこれらの金融活動を「負債の踏み車( debt treadmil)」として重大な関心を寄せている。

 今回のブログは、(1)ノースカロライナ州や他州におけるペイディ・ローン問題に法規制や議会のこれまでの対応、(2)連邦ベースにおける消費者金融保護局(CFPB)等規制機関の対応と限界、(3) リージョンズ・バンクがすすめる“Regions Ready Advance”の正確な商品内容や法解釈問題、(4)消費者保護面から見た具体的な問題点等につき概観するものである。
(注3)

1.本問題点の概要の理解
 初めに2012年9月20日号のアメリカ銀行協会の機関紙「アメリカン・バンカー」が「Regions to Lower Cost of Payday Loans」(筆者はケイト・ベリー)と題する小レポートを掲載している。本ブログの冒頭に概要を理解すべく仮訳しておく(やや冗長な文章であるが、基本となる関係者はほとんど登場するので参考にされたい)。

○ペイディ・ローン手数料に関し、消費者団体からの厳しい批判に直面して、リージョンズ・フィナンシャル(Regions Financial:RF)は、ローンを消費者により安価に提供すべく手を打ったと説明した。

○リージョンズ銀行のスポークス・ウーマンのイヴリン・ミッチェル(Evelyn Mitchell)は、9月19日にアラバマ州のバーミンガムで同銀行は顧客のためのペイディ・ローンにつき使用し続けてきた手数料引き下げ、また、2011年にサービスを開始した“Ready Advance”ローンの返済期間を伸ばすことを計画していると述べた。この際、ミッチェルは、計画された変化は消費者団体からの批評に対応したものではなく、顧客へのフィードバックに対処したものであると説明した。
「我々は、その顧客について調査するとともに顧客の意見を聞いている。そして、いくつかの策を増進する途上にある」と、ミッチェルは言った。しかし、具体的な手数料の引き下げ額、返済期間の調整方法、さらにこれらの変更がいつ行われる等の詳細内容の説明はなかった。

○1,210億ドル(約9兆4,380億円)の総資産を有するリージョンズ銀行は、ノースカロライナ(本質的にペイディ・ローンを禁止する州)を含む16の州で同ローンを提供する。

○同州のシャーロットのメディア“Charlotte Observer”は、ノースカロライナ司法長官ロイ・クーパーは、まだ何等の具体的行動も取っていないが、今週、同行が州内で新規高金利ローンを販売するのを止めさせる方法を模索していると報じた。

○同州の銀行業コミッショナー(N.C. Office of the Commissioner of Banks (NCCOB))が、主に銀行とペイディ・ローンの貸し手との間のパートナーシップで発売される融資が、ノースカロライナ州の高利貸禁止法に違反したと裁決した後に、急進的ペイディ・ローンの貸し手は、2006年にノースカロライナでの営業を停止した。
「問題は、現在はリージョンズがレートキャップ規制を迂回するのに州認可の回避を使用しているかどうかということである」とクーパーはシャーロット紙に語った。
「我々は、ノースカロライナ州の消費者をペイディ・ローンの主体になって欲しいと思わない。ペイディ・ローンは金敷に投げられる救命具を必要とする消費者に似ている。しばしば負債踏み車にそれらを乗せる」と、クーパーは述べた。

ノエル・タリー(Noelle Talley:ノースカロライナ州司法省のスポークス・ウーマン)は、「政府機関には同金融商品に関する重大な懸念があり、具体的問題が消費者の権利擁護団体および州の銀行委員会コミッショナーによって州司法省に提起された。そして、本省は同銀行からの詳しい情報を求めるつもりである」と述べた。

○リージョンズは、2011年5月“Ready Advance”ローンを提供し始めた。

○消費者は、オンライン・アプリケーションによってのみ、消費者は50ドルから500ドルの信用限度額でアクセスできる。少額の与信限度が小さいドル融資の消費者は、少なくとも9カ月間当座預金口座を持っていたリージョンズの顧客だけが利用可能である。

○融資額100ドルにつき10ドルの手数料を課すリージョンズの手数料について、CRLは、ノンバンクによって融資される100ドルあたり16ドルの料金を平均的に課すペイディ・ローンと比較して、これを「銀行ペイディ・ローン」の標準であると呼ぶ。通常、融資実行後10日以内に全額返済しなければならないので、年率換算すると120%から365%のきわめて高金利のローンであると考える」とCRLの上級代表であるクリス・ククラ(Chris Kukla)は指摘する。
○さらに、消費者には月賦返済方式(monthly installment plan)を通して21%の追加年利率の手数が加算される場合がある。
○これは、債務を有する消費者を埋葬する破壊的な製品であると、ククラは補足した。

○ジョン・オーエン(John Owen:リージョンズの上級役員 (注4))は、2012年6月に銀行業界の会議で“Ready Advance”ローンの製品性に関する問題指摘を防御し、「リージョンズは、それらがクレジットカードを含む他のタイプのノンバンクのペイディ貸し手を利用する例が多いので、ペイディ・ローンを実行するに当たりクレジットへの資格を得るかどうかを確認するために“Ready Advance”ローンで顧客を審査している」と述べた。また、同行のミッチェルは「同行の信用情報機関に対する返済履歴報告により、顧客の半数以上は彼らの信用度スコアを徐々に引き上げ、改良した」と述べている。

 さらに、ミッチェルは「リージョンズは、それらがクレジット・カードを含む他のタイプのクレジット与信への資格を得られるかどうかを見るため、“Ready Advance”ローンで顧客を検査しているとも述べた。

○また「リージョンズは、このローン商品は信用を構築するのを潜在的に支援する機能を持ち、他の様式のクレジットサービスを卒業する機会なしに単に1つの製品やサービスを提供するものではない」であると付言している。

2.ノースカロライナ州や他州におけるペイディ・ローン問題にかかる法規制や議会のこれまでの対応
(1)ノースカロライナ州は1997年から2001年の4年間、ペイディ・ローン販売を一時許可したが、議会は小売店頭併設銀行支店(store-front shop)が消費者擁護団体、規制機関や軍からのプレッシャーに基づき期限切れるとする法律を認めた。手数料はきわめて少額であったが、その年利は州の高利貸し禁止法を超えていた。しばしば、すみやかに(まとめて全額)を返済しなければならなかったので、彼らはユーザーが第一にやむを得ず短期貸付けを求めた問題を再現するかも知れない。

「これらローンは非常に議論を呼んだ与信形式である。借り手はすばやい金融支援策として見出すが、期間が数週間の間のローン債務にもかかわらず、消費者はしばしば数ヶ月間返済と取り組むことになる」とフィラデルフィアのNPO団体「ピュー・チャリティ・トラスト(Pew Charitable Trusts)」(注5)のレポート「Payday Lending in America: Who Borrows, Where They Borrow, and Why」は説明している。

 いくつかの小売店頭併設銀行支店の中にはノーススカロライナ司法省が停止を訴えた2001年以降も銀行と協調して開設したままのものもあった。そのとき以来、銀行は少なくともノースカロライナ州法とは部分的に異なるペイディ・ローン類似商品の販売を回避していた。

 リージョンズ・バンクのスポークスマンであるキャンベル(Mel Cambell)は18ヶ月前に“Ready Advance”商品の提供開始すると述べてた。
 これに関し、CLRのククラは同行が慣習で従来禁止されていた規制を撤廃した初めてのケースでこれが最後ではないと述べている。また、同州のローリー(Raleigh)だけでも7支店を持つより大きな銀行である「サン・トラスト(Sun Trust)」が同様の商品を提供するため消費者擁護団体にアプローチをかけていると述べた。
 一方、サン・トラストのスポークスマンであるヒュー・ズール(Hugh Suhr)はこの指摘に対し「我々はこのような商品を発表していないし、ただ考えているまたは考えていないことに関してコメントできない」と述べている。

 キャンベルは、さらに“payday storefront”と“Ready Advance”の間には重大な相違がある。すなわち、前述したとおり後者は既存の顧客のみが利用できるサービスであり、顧客は少なくとも9ヶ月間当座取引の実績が求められる。また、銀行は連続して6ヶ月間同貸付を求める顧客に対して義務的に課される冷却期間を有する」と指摘した。

(以下、略す)


(2)2010年9月21日、米国内での最大規模(1,875万ドル:約14億6,250万円:原告14万人以上)のペイディ・ローン業者に対するクラスアクションの和解が成立した。被告は米国最大のペイディ融資業者「Advance America」に対する違法な手数料や金利の返還を求め、2004年に訴えを起こしたものである。なお、同社はノースカロライナ司法長官府(長官はロイ・クーパー)および同州銀行コミッショナーの調査の開始を受けて同州内でのペイディ・ローンの取扱いをすでに停止した。同社は本和解に署名した州内の118支店を傘下においていた。(注6)

2.連邦ベースにおける消費者金融保護局(CFPB)等規制機関の対応とその限界
(1)米国全体で見てCFPB等に規制・監督機関はこれらの銀行の取り組み傾向に注意を払った。新しい規制機関であるCFPBは2012年1月にアラバマ州バーミンガムで公聴会を開催した。また、これら監視機関はよりいたいところに取り組み始めた。

(2)CFPBは連邦準備制度理事会の元で州際問題を規制する機関であり、アラバマ州の銀行法で規制されるリージョンズ・バンクに対する直接的な監督権が及ばない点をノースカロライナ州銀行監督委員会委員長代理レイ・グレイス(Ray Grace, Acting North Carolina Commissioner of Banks)は指摘している。

(3)NPOメディア「Center for Public Integrity」のレポートに見るCFPBの規制権限問題
2011年7月16日付けのレポート「New Consumer Financial Protection Bureau has authority to regulate payday industry」の関係箇所を以下、抜粋する。

○連邦消費者金融保護局(CFPB)は2011年7月21日に規制機能を開始するが、小口金融などにつき金利キャップをかぶせることは出来なかったが、ペイディ・ローンに関する検査権限を与えた。
 金融専門家は、CFPBが米国の部族内のペイディ・ローンの貸し手に対する規則策定権威を持つという。しかしながら、他方で、CFPBは政府機関による法執行活動を取ることが連邦法や州法から部族を保護する部族居住区の特別法である免疫法(tribal immunity law)の解釈、詳細を調べるような裁判闘争をかきたてるだろうとも述べている。
 小売店頭併設銀行支店におけるペイディ・ローンの貸し手の業界代表であるCFSA(Consumer Financial Services Association of America )は一般的なオンライン貸し手と特別な正確を持つ部族内の小口融資とを峻別すべく積極的な活動を始めている。(注7)

3.リージョンズ・バンクが進める“Regions Ready Advance”の正確な商品内容や法解釈問題 略す。


4.消費者保護面から見た具体的な問題点等
(1)消費者保護法との関係
略す。



(2)銀行監督に関する連邦法と州法の切り分け問題や規制の限界(裁判例)
 略す。

2001年4月30日 オクラホマ民事控訴裁判所判決: C & L ENTERPRISES, INC. v. CITIZEN BAND POTAWATOMI INDIAN TRIBE OF OKLAHOMA :certiorari to the court of civil appeals of oklahoma
No. 00-292. Argued March 19, 2001--Decided April 30, 2001

****************************************************************************************************************

(注1) 「ノースカロライナ司法センター(North Carolina)は、ノースカロライナ州民の繁栄をすべての機会に変換するのに捧げられる州の主な研究と支持を担うNPO組織である。州のあらゆる家庭が経済的安全保障を持つために必要とする、資源、サービスおよび公正な処理に近づく手段を確実にすることにより、本センターの任務はノースカロライナ州の貧困を根絶することである。
http://scholarlycommons.law.wlu.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=4279&context=wlulr

(注2)「リージョンズ・バンク」はアラバマ州に本拠を置く全米大手地方銀行持株会社「リージョンズ・ファイナンシャル・コープ(Regions Financial Corp)」の銀行部門である。
 主要業務は、「mortgage banking(不動産担保ローン銀行業務)」、「credit life insurance(信用生命保険:貸し金の借り手が完済前に死亡した場合に、残高を返済するように設計された生命保険をいう。この保険には就業不能を対象範囲に含めることができ、またクレジット・カードや自動車ローンとの関連でオプションとして提供することもできる。(損保ジャパン総研「米国保険用語の解説」から抜粋))、「リース」、「売掛け債権ファクタリング(commercial accounts receivable factoring)」、特定不動産担保ファイナンス(specialty mortgage financing)、証券ブローカー・サービス(securities brokerage services.)」である。同会社は米国南部、中西部および東部で営業展開している。

 なお、Regions Financial Corpは2008年11月14日「不良資産救済プログラム( Troubled Asset Relief Program:TARP)に基づき35億ドル(約2,730億円)の連邦政府から公的資本注入(21金融機関が対象)を受け、2012年4月4日に全額返済している。

(注3) 米国の消費者や世帯等から見た「ペイディ・ローン」のニーズはいかなるものか、ノースカロライナ大学チャペルヒル校コミュニティ資本研究センター(Center for Community capital):「2007年11月 ノースカロライナ州の消費者から見たペイディ・ローン後に対するニーズ調査(世帯などから見たクレジット選択肢への取組み姿勢と経験)」(全26頁)が簡潔にまとめている。特に“Executive Summary”は参考になる内容である。

(注4) ジョン・オーエンは2012年6月5日、RFの業務ラインの最高責任者に任命されている(BUSINESS WIRE記事)。記事の原文は次の通り。
2012-06-05: BIRMINGHAM, Ala.---Regions Financial Corporation (NYSE:RF) today announced that John Owen has been named the company’s new head of Business Lines, responsible for Consumer Services, Consumer Lending, Wealth Management and Business Services.

(注5) Pew Charitable Trusts(以下、PCT)については、2011年2月12日付け本ブログの(筆者注10)参照。なお、その際に説明したとおり、このNPOの活動時範囲は広い。柱は次の3領域であるが、その中身について補足するとともに、また各取り組みテーマを紹介しておく。わが国の同種のNPOのあり方を考える上で参考となろう。

(1)公共政策の改善(アメリカ市民およびグローバル社会に影響を与える緊急かつ出現する問題につき無党派的立場に立った政策問題解決の研究と推進を行う)

(2)広く国民一般への情報提供(ワシントンに本部を置く子団体である「ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)」において本団体の情報の優先課題の大部分を行う)

(3)市民生活の促進(市民参加プログラムの促進に関する全米規模の活動を支援する。とりわけ本拠地であるフィラデルフィアの町において、地域の貧困者(neediest)が満足するのを強化すべく繁栄する芸術や文化的コミュニティの創造する団体を目指す。
 取り組むテーマ例は以下のとおり。
①芸術と文化
②子供や若者
③都市
④コンピュータとインターネット
⑤経済政策
⑥環境・エネルギー問題
⑦家族にとっての金融面の保護策(family financial Security:安全な小口ローンの調査プロジェクト(safe small dollar loans research project:エレクトロニクス時代の安全な小切手決済システム)
⑧健康
⑨アメリカにおけるヒスパニック
⑩メディアとジャーナリズム
⑪全米規模の市民参加プログラム
⑫フィラデルフィアの地域研究
⑬世論
⑭宗教と公共生活
⑮科学
⑯国策とその実施
⑰記録保存(archive)
 なお、前記⑦に関して本ブログに関係が深いので補足する。PCTは2012年7月16日「Payday Lending in America: Who Borrows, Where They Borrow, and Why」と題する簡単なレポートを公表している。詳しい内容は省略するが、1,200万人の米国民が毎年ペイディ・ローンを利用し、その平均融資額は年間平均375ドルのローンを8つ組んで、また520ドルを金利返済に充てている。また、ペイディ・ローンを利用する理由は予期しない緊急の支出ではなく、数ヶ月間(年間5ヶ月間が平均)通常の生活費に当てるべく利用している。このように見ると米国は国家レベルでも借金大国であるだけでなく、個人レベルでも借金を好む性向が十分伺える。

 さらに、ピュー・リサーチ・センターが最近時公表した前記テーマに関するレポートが2つあるので紹介しておく。いずれも米国市民の平均的な意識を理解する上で具体的で参考になる内容である。
(1) 2012年10月9日 Pew Research Center: Pew Forum on Religion & Public Life 公表「 “Nones” on the Rise: One-in-Five Adults Have No Religious Affiliation」(全80頁) (前記⑭に関連)
(2) Pew Research Center’s Internet & American Life Project 公表
「The State of the 2012 Election — Mobile Politics 」Registered voters on both sides of the political spectrum are using their cell phones to get campaign news, share their views about the candidates and interact with others about political issues」(全8頁) (前記④、⑯に関連)

(注6) 本クラスアクションの和解についての詳しい内容は、ノースカロライナ司法センター(North Carolina)のメディア・リリースを参照されたい。なお、この和解合意に署名するに当たり「Advance America」はノースカロライナ州法に違反したことは認めず、ニューハノーバー郡上級裁判所(New Hanover County Superior court)のジャック・フックスJr.判事は和解を承認するよう求めたと記載されている。

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米国連邦金監督機関CFPBが違法なクレジットカード取引慣行の被害につき最高8,500万ドルの全額返還命令

2012-10-06 19:51:32 | 消費者保護法制

Last Updated:November 17,2016

 米国連邦議会が制定した金融監督制度改革法「ドッド・フランク・ウォールストリート金融街改革および消費者保護法(the Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act:Dodd-Frank Act) (注1)に基づき設置された連邦準備制度理事会(FRB)内の独立機関である消費者金融保護局(Consumer Financial Protection Bureau:CFBP)は、連邦準備制度内部の独立した法人であり、消費者金融商品・サービスの提供等に関する規制・監督による透明性と消費者の選択を促進し、かつ濫用的で詐欺的な取引慣行を防ぐという任務を負っている。

 CFPBの局長は大統領が指名し、上院が承認する(任期5年)。CFPBには予算の独立性、規則制定権の独立性を付与する。

 預金取扱金融機関については、総資産100億ドル超の銀行及び信用組合に対しては、CFPBが消費者金融保護法(Consumer Financial Protection Act of 2010
)(注2)に関する第一次的な執行権限を有する。総資産100億ドル以下の銀行及び信用組合に対しては当該機関の監督当局が執行権限を持つこととする。ただし、CFPBはこれらの監督当局に対して適切な行動をとるよう勧告することができる。

 自動車の売買やリースに主として従事している自動車ディーラーについては、CFPBの規則制定権、監督・執行権限の対象から除外する。

 州法が連邦法よりも消費者保護をより広く定めている場合には州法が優先する。
(注3)(注4)

 以上が、CFPBの概要であるが、連邦の他の金融監督機関と同様の固有の任務や権限を持つものであるが、その設置の経緯、根拠法や既存の関連機関との連携等その期待度はまさにこれからという点も多い。

 今回のブログは、CFPBがFDIC等と連携した大規模な金融不正犯罪を告訴した最近時の複数の事案をCFPB等の公式情報等を元に紹介する。
 特にCFPBの活動に関しユニークさを感じたのは、連邦金監督機関との法執行の連携活動のみならず民間法律事務所(“Ballard Spahr LLP”)のCFPB専門サイト内容との連携にも配意している点等である。

 なお、今回のCFPB等の告訴も含め、CFPBに関する法執行にかかるわが国のメディアの記事は皆無と思われる。


1.アメリカン・エキスプレスおよびその子会社に対する法執行と同意命令
CFPBの発表要旨は次のとおりである。


(1)10月1日、CFPBはアメリカン・エキスプレスの子会社3社に対する違法なカードのマーケティング販売行為や債権回収等において消費者保護法に違反したとして、その全額(8,500万ドル(約66億3,000万円)~約25万ドル(約1,950万円))に関し、約25万人の顧客への通知や返金ならびに商慣習の特別な見直しを行うよう命じた。

○調査の経緯
 この違反行為は、もともとはFDICがウタ州金融監督規制局(Utah Department of Financial Institutions)と合同して行ったアメリカン・エキスプレスの子会社「American Express Centurion Bank(以下、AECB)」通常検査の間に発見された。FDICはCFPBが2011年稼動を開始したときに、調査機能の一部をCFPBに移管し、この2つの連邦機関は合同して訴追活動を進めた。その後、CFPBは.American Express Centurion Bankが行っていたのと同様の違法行為の多くが子会社である「America Express Travel Related Services Company,Inc(以下、AETRSC)」および「American Express Bank(以下、FSB;AEBFSB)」が行っていたとの結論に至った。

 これらの一連の調査により違法行為は2003年から2012年春までの間に消費者によるカードの申込みやカードでの買物、さらに債務返済等取引の各段階で行われた。

 調査の結果からみて、具体的な違法行為および該当する法律の内容は次のとおりである。なお、子会社3社に対する命令および同意約定の概要は「Factsheets」を参照されたい。

①アメリカン・エキスプレスのサービス「Blue Sky」クレジットカード・プログラムに申込み署名した消費者が欺かれた。
 消費者は、しばしばAmerican Express Centurion Bankで同プログラムを申し込むとボーナス・ポイントに加え300ドル(約23,000円)を受け取ると信じるよう誘導された。しかし、実際はこの資格を満たす消費者は300ドルを受け取ることはなかった。これは、詐欺的商法に関する連邦法に違反する行為に当たる。

②年齢に応じたアカウント応募者に対する違法な差別
 American Express Centurion Bankは、年齢に応じたクレジットカードの応募者に対し、異なるスコアリングを使用した。一定期間、同銀行は35歳以上の応募者のシステムを完全に導入しなかった。適切に設計し実行される年齢を考慮するクレジット・スコアリング・システムを要求することは、「信用機会均等法(Equal Credit Opportunity Act)」に違反する。

③消費者信用報告機関に対する消費者との紛議に関する報告の欠落
 American Express Centurion BankとAmerican Express Bankは、信用報告機関に関する紛議の存在を報告しなかった。これは、「公正信用報告法(Fair Credit Reporting Act)」違反である。

④債務返済に関する消費者の判断を誤らせた
 古い債務を返済することで確実な利益があると信じさせ、子会社3社は消費者を騙した。消費者は古い債務を返済するとその支払いが報告されて消費者の信用度が改善されるとの誤った説明を受けた。実際、アメリカン・エキスプレスは支払いにつき報告されず、また債務は報告しようにも古すぎたので多くの支払いは消費者の報告に現れず、あるいはクレジットスコアに影響しなかった。
 また、アメリカン・エキスプレスは消費者が和解案を受け入れるなら負債が一部放棄されるか、または免除されると消費者に説明した。しかし、新たにアメリカン・エキスプレスのカードを申し込んだ顧客に対し、同社は本当に負債を放棄や免除を行わなかった。

(2)法執行行為(Enforcement Actions)
 本日出された同意命令によると、アメリカン・エキスプレスの子会社は違法な商慣行により被害を加えられたその慣行の修正と消費者への返金につき次の通り同意した。
 なお、同意命令は被告等に会計監査人を雇い消費者保護法に対する法令遵守にかかる「年次監査」を行うことを命じた。

①違法な商慣行の終了
 American Express Centurion Bankは、今後“Blue Sky credit card”やその他のカードにつき詐欺的な説明に基づき、割戻しや今後得るであろうポイントを約して消費者を騙すことはなくなろう。
 また、これら銀行子会社は違法な延滞金を請求することはなくなろう。これら子会社は適切に紛争を信用報告機関に報告しカード保有者がそのような紛争にかかる彼らの権利につき説明を受けるよう確実にするであろう。

 また、CFPBサイトの10月1日付けの説明および10月4日付け“CFPB Monitor”によると、本命令に基づき被告は次の行為の実施が義務付けられる。

○10月1日の命令の結果、アメリカン・エキスプレ等は、概算で8500万~約25万ドルを消費者に賠償金として返還しなければならない。アメリカン・エキスプレスは直接被害を蒙った消費者の口座に資金を返還することとし、 消費者がすでにアメリカン・エキスプレス・カードを持っていないときは、アメリカン・エキスプレス等は小切手または「未払い残高通知(credit any outstanding balance)クレジット」を郵送する。

○“Blue Sky Credit Card”の申し込みを行い、300ドルの受け取りが約束された消費者は、その300ドルを受け取る。
○不法な延滞料を支払った顧客は、利息付で全額を還付される。
○支払いを信用調査所に対し報告するという偽の約束に対応して古い債務を返済した消費者には、利息を支払った金額プラス金利が還付される。
○被害者は彼らの負債が免除されると約束したが、負債が本当に免除されなかったとして、新しいアメリカン・エキスプレスカードの交付が拒否された消費者については、CFPBとFDICによって受け入れられる条件で、100ドルと新しいカードのためのあらかじめ承認された申し出を受け取ることになる。 消費者が新しいカードを手に入れるために既に放棄されたか免除された額を支払っていたなら、その当該金額および利息が還付される。

○消費者は、彼らのクレジットカードや小切手を受けるためにどんな行動も取る必要はない。あなたが本命令で影響を受ける消費者の1人であれば、アメリカン・エキスプレスは直接あなたに通知する。

2.FFPB等連邦監督機関による民事罰則金処分

CFPB等は前記3行に加え、親会社たるアメリカン・エキスプレス本体、持ち株会社に対する総額2,750万ドルの民事罰則金(civil monetary penalties)」を課すことを求めた
 CFPBの積極的な法執行の対象は、さらに親会社たるアメリカン・エキスプレスやその持株会社に対し、本来の監督機関であるOCC(連邦通貨監督局)、FRB(連邦準備制度理事会)およびFDIC(連邦預金保険公社)に対し、合計2,750万ドル(約21億4,500万円)の民事罰則金(civil monetary penalties)」を課すことを求めた。

 

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(注1) 筆者ブログ2011年2月11日「米国FRBがドッド・フランク法のボルカー・ルール遵守期間に関する「レギュレーションY」の最終規則を公布」参照。

(注2) 2010年消費者金融保護法はDodd-Frank Actの第Ⅹ編である。

(注3) 大和総研 吉川 満「適用が開始されたドッド・ フランク法」大和総研調査季報 2011 年 新春号 Vol.1 および財団法人 国際金融情報センターのトピックスレポート「金融規制改革法(ドッド・フランク法)の成立(2010年8月25日号)」から一部抜粋した。

(注4) CFPBの法的根拠、主要任務、組織概要については、コーネル大学ロースクールの解説、CFPBのHPのAbout Bureau および現局長リチャード・コードレイ(Richard Cordray )のプロファイルを参照されたい。

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欧州委員会はクラウド・コンピューテイング・サービスのモデル契約約款と新標準策定を2013年末までに予定

2012-10-01 13:19:03 | クラウド・コンピューティング

 

 欧州委員会は2011年5月、クラウド・コンピューテイング・サービスに使用するモデル契約約款を策定すべきことを提案した(このような動きの背景の1つには、2011年10月11日、欧州委員会は新たに「欧州共通販売法に係る欧州議会及び理事会規則(案)(Proposal for a REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL on a Common European Sales Law:CESL)」を提案したことがあげられる)。(注1)(注2)

 このCESLは、EU加盟国27の次に位置する「第28番目の管理体制」として加盟国27カ国の契約法と並行して存在し、売買取引において業者と消費者の双方がその利用を選択した場合にも適用される。CESLが定義しているように、この新法は少なくともトレーダー(商人)の1つが中小企業(SME:small or medium-sized enterprise)であれば、企業と消費者間または2つの異なるトレーダー間の越境的物品売買の契約に適用される。また、EU域外で活動しているトレーダーであってもビジネス拠点がEU内に中心がおかれている場合は新契約体制で運用することになる。

 銀行やその他の金融機関はオンラインバンキング等金融サービス取引においては新契約法の適用は行われないが、音楽ファイルのオンライン販売等無形デジタル商品販売は新契約規則の下でカバーされる。

 今回、欧州委員会は2011年5月に諮問を行った「コンピューテイング・サービス利用に関するモデル契約約款案(model contract terms)」
および新標準(new standards)を本格的に確立すべく提案を行ったものである。

 本ブログは、2011年5月に諮問にかかる情報および今回提案された背景や公式なリリース文の内容を概観する。

  また、本文で述べるとおり、欧州委員会は2012年9月27日にモデル契約約款および新標準策定を2013年末までに行う趣旨の「(EUにおけるクラウドコンピューテイングの発生にかかる相互対話(Communication on ”Unleashing the potential of cloud computing in Europe)」を公表した。なお、本文でとりあげた要旨部分(第2章)は英国“Out Law”のブログを抜粋したものであり、初めに欧州委員会の提案の原文要旨部分についても併せ紹介する。


1.欧州委員会が2011年5月EU機関等に諮問を行ったコンピューテイング・サービス使用に関するモデル契約約款にかかる提案
 ”Out Law”の5月解説記事があるが、委員会の公式コンサルテイング・サイトは現在、閉鎖されている。

 そこで、(1)EU加盟国の共通情報保護問題の検討機関である「EU指令第29条専門調査委員会(Art.29 Data Protection Working Party)」(注3)が2011年6月1日付けで採択した「意見書(全27頁)」の要旨部分に基づきポイントとなる点を概観し、(2)その各意見項目については目次をあげる。(EUにおける個人情報保護問題の原点が明確に指摘されていることが、あえて取り上げる背景にある)。

(1) Art.29 Data Protection Working Partyの意見書の要旨(executive summaryの仮訳:EUの原資料へのリンクは筆者の責任で行った)
○本専門委員会は、本意見書において欧州経済地域(EEA)で作動するクラウド・コンピューティング・サービス・プロバイダーに関連するEUの 「Data Protection Directive(95/46/EC)」および「電子通信プライバシーDirective2002/58/EC(2009/136/ECによって改正された)」から導き出されるすべての適用可能な問題ならびにプロバイダーの顧客が指定するすべての該当する原則にかかる問題を分析した。

○経済・社会の両方の条件から見たクラウド・コンピューティングに認められる便益にもかかわらず、本意見書では「処理される」か「サブ(下請け)処理される」段階にかかる個人情報が誰によって、どのように、またどこに関するか等の情報が不十分な点と同様に、クラウド・コンピューティング・サービスの広範囲の展開が個人的なデータの上でいかに多くの個人情報保護リスク、とりわけ個人情報の管理面の欠如問題の引き金となることができるかを概説するものである。

○これらのリスクは、クラウド・コンピューティング・プロバイダーをサービスに従事させることを考えたとき、公共団体や私企業によって慎重に評価される必要がある。本意見書では、(1)反対当事者と共にリソースの共有に関連している問題、(2)複数の処理業者(processors)や下請契約者(subcontractors)からなるアウトソーシング・チェーンの透明性の欠如、(3)EEAの外で確立されたクラウド・プロバイダーによる個人情報の転送の許容性に関して一般的なグローバルなデータ携帯性の枠組みの使い勝手の悪さや不確実性の問題を取り上げた。同様に、個人情報のコントローラーがそれらの個人的なデータがどう処理されるかに関しデータ主体に供給できる情報に関する透明性の不足は重大な関心事として意見が強調される。データ主体は、だれがどんな目的でなされるかにつき情報が提供されるべきであり、またこの点に関し提供を求める権利を行使できるようになされるべきである。

○本意見書の主要な結論は、クラウド・コンピューティングを使用したがっている事業者と監督機関は、第一歩として包括的で徹底的なリスク分析を行うべきであることである。EEA内でサービスを提供するすべてのクラウド・コンピューティング・プロバイダーは、正しくそのようなサービスを採用するか否かの賛否両論(pros and cons)を評価するためにすべての必要な情報をクラウド・コンピューティングのクライアントに提供するべきである。クライアントのためのセキュリティ、透明性、および法的な確実性はクラウド・コンピューティング・サービスの提供の裏でその推進させるために重要な要素であるべきである。

○本意見に含まれる勧奨の条件に含まれる点であるが、コントローラーとしてクラウド・コンピューティングのクライアントコントが負う責任が強調されている、したがってクライアントはEUの情報保護法制への遵守を保証するクラウド・コンピューティング・プロバイダーを選ぶべきである。
 適切な契約上の安全装置はクラウドのクライアントとクラウド・プロバイダーとのいかなる契約も技術的で組織的な手段に関して十分な保証を提供すべきであるという要件で意見書は記述されている。また意味書において、クラウド・コンピューティングのクライアントは、クラウド・プロバイダーが越境にかかる国際的な個人情報の移送の合法的を保証できるかどうか証明を求めるべきであるという重要な推薦が含まれる。

○どのような進化論の過程の中にも、グローバルな技術的枠組み(technological paradigm)としてのクラウド・コンピューティングの利用の増加は新たな挑戦を意味する。本意見書は、その基本スタンスにあるとおり、これから来る数年の間にデータ保護共同体(data protection community)によってこの点で引き受けられるタスクを定義する重要なステップであると考えることができる。

(2)提案の骨子:委員会の提案の目次から抜粋し、仮訳する。

次の内容である。
・要旨
1.初めに
2.クラウド・コンピューティングにおける個人情報保護リスク
3.法的枠組み
3-1 個人情報保護の枠組み
3-2 適用法
3-3 クライアントやプロバイダー等クラウドにおける異なるプレイヤーごとの
義務と責任
3-3-1 クラウド・クライアントとクラウド・プロバイダー
3-3-2 下請け契約者(subcontractors)
3-4 クライアントとプロバイダー間の関係から見た情報保護の要求条件
3-4-1 基本原則に即した法令遵守
3-4-1-1 透明性
3-4-1-2 目的の特定とその制約
3-4-2 コントローラーと処理者間の関係からみた契約上の安全措置
3-4-3 個人情報保護にかかる技術的・組織的手段
3-4-3-1 利用可能性(availability)
3-4-3-2 完全性(integrity)
3-4-3-3 機密性(confidentiality)
3-4-3-4 透明性
3-4-3-5 目的の制約から見た隔離性(isolation)
3-4-3-5 介在性(intervenability)
3-4-3-6 携帯性
3-4-4-7 説明責任
3-5 国際的な情報移送
3-5-1 セーフハーバーとその該当国
3-5-2 例外
3-5-3 標準的契約条項
3-5-4 国際的なアプローチに向けたBCR(注4)
4 結論と勧奨事項
4-1 クラウド・コンピューティング・サービスの顧客とプロバイダー向けのガ
イドライン
4-2 第三者情報保護認証(Third Party Data Protection Certifications)
4-3 勧奨事項(今後の進展事項)(Recommendations: Future Developments)

2.欧州委員会が2012年9月に行ったモデル契約約款および新標準策定案を2013年末までに予定の公表
 欧州委員会は提案作業に関し、事務局専門家によるスタッフ作業の取りまとめ原案を採択し、次のステップとしてクラウドコンピューテング・サービスプロバイダーと消費者や中小企業間の契約内容の改善を支援すべくてクラウドコンピューテング契約に関する安全かつ公正な条件内容や実務慣行等を検討すべ専門家グループを立ち上げた。
 この「(EUにおけるクラウドコンピューテイングの発生にかかる相互対話」戦略は次の3つの主なる具体的行動を包含する。すなわち、(1)現在、トレーダーと個人消費者は不明確さ、複雑さ、法的な不確実性などからクラウドの利用を思いとどまらざるを得ない、(2)加盟国において国家が定める既存の規制環境はクラウドをベースとするサービスには適さない点が多い、たとえば、現行契約法があるにもかかららず、契約に伴うリスクがユーザーである一方当事者に過度のリスクを割り当てるなど、不公平でアンバランスな契約内容となっているなどである。

(1)欧州委員会が提案・公表した内容要旨(“Out Law”のブログ内容を抜粋したもの)
 そのような提案の背景に関し、今回、欧州委員会の欧州議会、欧州連合理事会、「経済社会委員会」および「地域委員会」に対する公的措置に関する意見書:EUにおける潜在的なクラウド・コンピューティングの解放のあり方」において、(1)クラウドサービス・プロバイダーにかかる法的枠組みの複雑性や不確実性は、しばしば大規模な免責事項(extensive disclaimers)を伴う複雑な契約やサービスレベル合意(service level agreements)の必然化を意味すること、(2)クラウド・コンピューティングの利用を取るか現状のままでおくか、という標準契約の使用はプロバイダーにとってコスト削減であるかも知れないが、最終消費者を含むユーザーにとっては好ましくない。(3)そのような契約は準拠法の選択を課すかデータの回復を抑制することになる。(4)さらに大きな会社において交渉権がほとんどなく、契約はデータ保全、機密性保持、サービスの継続性に関する規定を持たない、(5)専門的なユーザーに関し、「サービスレベル合意」におけるクラウド・コンピューティングに関する契約約款問題は委員会が諮問した際、最も重要な問題の1つであった。(6)この「サービスレベル合意」は、クラウド・コンピューティングのプロバイダーと専門的なユーザー間の関係を決するものであり、またその結果、本質的にユーザーがサービスを提供するクラウド・コンピューティング・プロバイダーの能力につきクラウド・コンピューティング・ユーザーが持つべき信頼の基礎を提供するものである。」と指摘している。

 さらに、同委員会は、「2013年末までに利害関係者の支援に基づき策定されるモデル契約約款を策定するが、その中で特に中小企業と消費者に関する問題は、「欧州共通販売法に係る欧州議会及び理事会規則(案)の中に盛り込まれる。すなわち、このモデル契約約款の策定目的は、主要な契約条件を標準化することでデジタル・コンテンツの供給に関連付けられる局面で、最もよき実務慣行をクラウド・コンピューティング・サービスの場で提供することである。」と述べている。

 同委員会は、CESLにおいてカバーされていない中小企業と消費者間取引に関する追加的手段の新規作成につき、新たな安全かつ公正な取引条件が作成されたかどうかを検証するため新たな専門家グループを設置する旨明らかにした。
 また、委員会はクラウド・コンピューティング内における著作権で保護されたデジタル・コンテンツのいかなる私的複製にかかる権利の保有者のための報酬問題も扱う旨暗示した。
 元欧州委員会の委員は、利害関係者間で行われている私的複製にかかる未来の規則化をあり方の議論を実現させている。
 同委員会は「私的複製の例外、課税の適用性特にクラウド・コンピューティング・サービスにおいて複製権者(right holder)に対する直接的な報酬支払い問題を私的複製にかかる課税体制問題から排除すべきか、その範囲について調査する前にそれらの議論の「結果(outcome)」を見たい」と指摘している。(注5)

 さらに、委員会は以前にモデル契約条項としてまとめた草案につき必要に応じてクラウド・コンピューティングの場合に適合するよう見直すべき点を指摘した。すなわち、事業者は個人情報につきEU加盟国以外の第三国に移送を管理する上で委員会が策定したモデル契約条項の使用は可能である。
 同時に、個人情報保護規則の一定の適用を支援する新たな行動規範を制定すべくクラウド・コンピューティング・プロバイダーとともに機能することを指摘した。この問題を精査するため、EUの個人情報保護の“Watchdog”機関であるEU指令第29条調査専門委員会(Art.29 Data Protection Working Party)に諮ることを指摘した。すなわち、同専門委員会の支持(endorsement)は行動規範とEU法の間の法的確実性と一貫性を確実なものとする。

 加えて、EUの欧州電気通信標準化機構(ETSI : European Telecommunications Standards Institute) (注6)は、クラウド・コンピューティング・サービスが期待されるとおりに機能するために必要な新基準を定めるために支援すべきことが求められている。
これら新基準は、その規格が個人情報保護、相互運用性(interoperability)およびデータの運搬性に関するものに関連するといえる。すなわち、個人情報保護のための情報通信技術分野の新たな技術仕様書は標準化に関しEU規則に合致しなければならないことを意味する。

 また委員会は、クラウド・コンピューティング分野のEU全体にかかわる任意の認証仕様(voluntary certification schemes)を開発すべきであると指摘した。この中には事業者がクラウド・コンピューティング・プロバイダーのデータ保護の法令遵守を見直しにかかる認証仕様を含み、2014年までにその仕様のリストを公表することになろうとしている。

 優先すべき点は相互運用、多様な申し出と同様に比較可能なサービス・スタック (注7)を通じてクラウド・コンピューティングの信頼を発生させるよう既存の規格を展開させることである。これに加えて、関係する標準化内容の遵守認証が必要となる。つまり、多くかつ確実にすべてのより大きな組織が、法的、監査要件適用やシステムの相互運用性に関する彼らのITシステムの遵守を必要としている。

 委員会は潜在的にEU内で250万の新たな雇用を創出し、かつEUの国民総生産を2020年までに1年ごとに1,600億ユーロ(約15兆8,400億円)増強すると述べた。

(2)提案の骨子:委員会の提案の目次から抜粋し、仮訳する。

次の内容である。
1.初めに
2.クラウド・コンピューティングの正確およびその効能
3.取るべきステップ
3-1 クラウド・コンピューティングとデジタル化に向けた議題(デジタル分野の単一市場)
3-2 クラウド・コンピューティングに関する特定のキーとなる活動
3-3 クラウド・コンピューティングに関するキー活動(その1)標準化の無法地帯を通じた削減
3-4 キーとなる活動(その2) 安全かつ公正な契約条件
3-5 キーとなる活動(その3) 欧州クラウド・コンピューティング・パートナー
 シップを通じた共通の公的部門のリーダーシップ
4.追加的政策ステップ
4-1 奨励的な手段
4-2 国際的な対話
5.結論

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(注1) 和久井理子氏が英文「欧州共通販売法に係る欧州議会及び理事会規則(案)(Proposal for a REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL on a Common European Sales Law)」を和訳している
 同規則案に関しては2011年10月12日付けの英国法律事務所“Pinsent Masons LLP”の解説「EU Commission outlines full '28th regime' contract law plans」を参照するとともに、その詳細については、EUの公式サイトで確認されたい。

(注2) 2012年4月2日、2012年4月2日、欧州ネットワーク・情報セキュリティ機構(ENISA)」は公的IT調達チームの新しくかつ実用的なガイドを策定・公表した。(原本・全64頁:PDF)ENISAサイトからリンク可。

(注3) 「EU指令第29条専門調査委員会」は、1995年EU個人情報保護指令第29条に基づき設置した委員会であり、個人情報保護およびプライバシーに関する独立諮問機関である。その任務の内容は同指令第30条および2002年「個人情報の処理および電子通信部門におけるプライバシー保護に関する指令(Directive 2002/58/EC)」の第15条に規定されている。なお、現委員長はジェイコブ・コンスタム(Jacob Kohnstamm)(オランダ個人情報保護監督委員会・委員長)である。

(注4) 拘束的企業準則(Biding Corporate Rule, BCR)とは:
・主に多国籍企業を対象として、1995年EU個人データ保護指令第26条第2項に基づくデータの国際移転を効果的に行うためのルール。データ保護機関等により法的に執行可能であることなどに留意した「国際データ流通に対する拘束的企業準則」等を策定し、欧州域内のデータ保護機関が当該ルールを承認した場合には、多国籍企業間でのデータ流通が認められる。(消費者委員会個人情報保護専門調査会(第2回平成22年9月29日)資料③から一部抜粋)

(注5)英国の「知的財産庁(Intellectual Property Office:IPO)」は、2012年6月、複製権保有者グループは個人が私的な使用目的でクラウドのストレージサービスにデジタル・コンテンツを複製することを阻止すべきことを求めた旨の報告書「Consultation on Copyright:Summary of Responses June 2012」(全40頁)を公表している。なお、この報告書に関する“Out Law”の解説記事もあわせ参照されたい。

(注6) 欧州電気通信標準化機構(ETSI : European Telecommunications Standards Institute)は、欧州郵便電気通信主官庁会議(CEPT)の諸国が中心となり 1988年設立された機関で、欧州の各国政府機関や民間企業など幅広い団体が会員として参加している。
 ETSI は、欧州における電気通信技術について市場統一に必要な標準化の維持を図ることや、会員が要求するその他の関連審議も行うことを目的とし、国際レベルにおける電気通信分野の標準化活動にも参加する事を目的としている。
 ETSIが定めた「TS 101 733」は、電子署名の長期保存を考慮したプロファイルとポリシーを定めた現時点(2002年 2月)での唯一の標準で、広く一般に公開されている。日本においては、ECOM(電子商取引推進協議会)の認証・公証 WG において、この標準に関する調査・研究がなされている。(独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)サイトの解説から一部抜粋)

(注7) クラウド・コンピューティングの「サービス・スタック」とは、クラウド・コンピューティングのサービス・モデルであるCloud Software as a Service (SaaS). Cloud Platform as a Service (PaaS). Cloud Infrastructure as a Service (IaaS) Cloud Management as a Service (MaaS) Cloud Business as a Service (BaaS).等をさす。これらのモデルに関する簡易な解説例がある。


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