Financial and Social System of Information Security

インターネットに代表されるIT社会の影の部分に光をあて、金融詐欺・サイバー犯罪予防等に関する海外の最新情報を提供

多様化する暗号資産を巡る米英やEUの法制整備と裁判法制の最新動向

2024-02-25 11:32:44 | 暗号資産

(Last Update :Febuary 24, 2024)

 筆者の手元に国際的ローファームCleary Gottlieb Steen & Hamilton LLP のレポートが届いた。その要旨は、以下の内容である。

 暗号資産業界では2023年中、大きな活動が見られ、2024 年以降も新たな訴訟リスクが生じ続けると予想されている。その背景には、(1)暗号通貨の価値の急激な変動性、(2)テクノロジーの複雑な性質、(3)徹底した法規制の欠如、(4)規制当局の理解の欠如等がすべてこの傾向に寄与している。

  暗号資産関連の訴訟は、個人またはクラス・アクションとして提起された申し立てには、法規制上の問題を含め、広範囲に及んでいる。

  今回のブログは、同レポートの要旨を仮訳するとともに、英国法務委員会等の取組みにつき、筆者なりに法的観点から補足説明を加えた。この問題につき、わが国の解説は金融庁の審議会資料が詳しいし、有益である。併読されたい。

  なお、解説文中の判決文原本や裁判官の写真等必要なリンクは独自に筆者が行った。

1.米国や英国の暗号資産の法規制強化への取組み

米国では暗号資産の価値の変動に対応して、規制当局、法執行機関、さらには個人が2023年に暗号資産取扱企業に対してさまざまな訴訟を起こした。包括的な法規制がないため、これらの申し立ては多くの場合、SEC等が証券法等の法律違反、投資家を誤解させたこと、詐欺、窃盗などの従来の訴訟原因に依存している。(注1)

 一方、英国の裁判所は、暗号資産ベースの訴訟に対して、管轄権や準拠法に関し、ますますオープンなアプローチを採用している。 たとえば、2022 年 10 月に、「ゲートウェイ 25」として知られる新しい管轄ゲートウェイが発効し、英国の管轄外にある潜在的な被告に関連する情報命令を求めている原告の請求を容易にした。この措置は、潜在的な暗号通貨詐欺の被害者に実行力を与えることを目的としていた。

 同月、英国の法務委員会(Law Commission)は、管轄権や準拠法など、暗号資産ベースの訴訟から生じる法の抵触問題に対処するための協議プロセスを開始した。 英国の高等法院(English High Court)(注2)2023年1月13日判決、被告への送達の代替手段として、非代替性トークン(NFTによる送達を認めた。暗号資産裁判の場合、被告の身元が請求者に知られていない可能性が高いため、クレームの内容 (注3)において被告を特定し、通知できる可能性が高い。

 英国は、暗号資産に関連する裁判請求の急増により、進化し続ける技術環境の中で新たな法的問題が生じている(注4)。 これらの裁判での主張は、(i) NFT の盗難(注5)、 (ii) 暗号資産ネットワークを監督するソフトウェア開発者の受託者義務(注6)、(iii) 暗号交換(注7)に対する責任など、さまざまな問題を扱っている。

 一方、米国では一部の州裁判所が分散型自律組織(Decentralised Autonomous Organizations :DAO」)(注8)に対する訴訟請求を認め始めている。DAOは中央のリーダーシップや階層を持たずに機能し、スマート・コントラクト(注9)または同様のソフトウェア・プロトコルを通じてメンバーに依存している。 DAO には投資目的を含むさまざまな用途がある。

 英国は、今後どのようにDAOを規制するかを決定することを目的として、関連する利害関係者とともにDAOの性質を依然として調査中である(注10)。 我々は、これらの複雑な問題と、それらに直面した裁判所がとった斬新なアプローチが、今後の暗号資産訴訟でも引き続き取り上げられると予想している。

2.英国の具体的法規制強化に向けた取組み

 2022.10.18英国法務委員会のリリース「Digital assets: which court, which law?」によると、法務委員会はデジタル資産やその他の新興テクノロジーに国際私法がどのように適用されるかにつき検討を開始した。

 英国法務委員会のデジタル資産専門サイト「Digital assets: which court, which law?」

 適用される法律と管轄区域の規制が、ますますデジタル化が進む世界に対応できるようにすることが目的である。

 2023 年 6 月、英国法務委員会は、暗号資産を含むデジタル資産の規制に関する政府に対するいくつかの勧告を発表した。(注11) 英国では、暗号資産に関連する多くの法規制の進展も見られる。 「2000年金融サービス・市場法(Financial Services and Market Act of 2000:以下、「FSMA」)という」(注12)は「デジタル決済資産」規制の基礎を築き、政府と金融行為規制機構(以下、「 FCA」という)は2024年に英国内外での法定通貨担保型ステーブル・コインの発行と保管を規制する法律と規則を制定することを目指している 。

 このような体制下で、 2023年8月17日、FCAは世界的な金融活動作業部会(FATF)と協力して「トラベル・ルール」(注13)採択した。 この規則は、国境を越えた暗号資産移転の透明性を高めることを目的としており、英国の暗号資産ビジネスは英国内外の暗号資産移転に関する情報を収集、検証、共有することが義務付けられている。 2023年10月、財務省は暗号資産に対する将来の金融サービス規制体制に関する協議回答を公表し(2024年に関連法の制定を目指すと表明)、さらにFCAは、2023年6月FSMAを改正「適格暗号資産(qualifying cryptoassets)」のマーケティング・プロモーションの制限を金融規制の対象とした。

 一方、EUでは段階的なアプローチを採用するのではなく、2023年5月16日の「暗号資産市場規則(Markets in Crypto-Assets Regulation :MiCAR)」(筆者ブログ(その1)同(その2完)の採択・制定により、暗号資産関連の金融サービスを規制するための単一の統一された新しい枠組みが導入された。この分野における規制の枠組みも規制当局の監督アプローチもまだ発展途上であるが、たとえば FCA はすでに暗号資産の金融プロモーションの特定の側面について不満を表明している。したがって、米国SECなどで見られるように、英国でも 2024 年に暗号資産分野での取締まり活動が強化される可能性がある。(注13)

**************************************************************:

 (注1) たとえば米国では、証券取引委員会サイトは、2024年2月7日の時点で、投資家を誤解させるなど多数の証券法違反容疑で「バイナンス(Binance)」のような大手暗号資産取引所に対する訴訟を含む、少なくとも317件の暗号資産およびサイバー法執行訴訟を起こしている。(裁判件数は筆者がSECサイトに基づき修正した)。

(注2) 英国の高等法院(The High Court of Justice in London)

 高等法院(High Court of Justice)は、刑事法院(Crown Court)および控訴院(Court of Appeal))とともに、イングランド・ウェールズ高等裁判所(Senior Courts of England and Wales)の一部門をなす裁判所である。High Court of England and Wales、あるいはそれを略してEWHCとも呼ぶ。(英国司法制度図参照)。

(注3) ダロイア対パーソンズ・アンノウン(D’ALOIA V PERSONS UNKNOWN)事件 [2022] EWHC 1723 (Ch) およびオズボーン対パーソンズ・アンノウン(OSBOURNE V PERSONS UNKNOWN)事件 [2023] EWHC 39 (KB)参照。 米国を含む他の法域でも同様の傾向が見られた。(例: LCX AG 対 John Doe Nos 1 ~ 25、原因証明命令および一時的接近禁止命令 (インデックス番号 154644/2022ニューヨーク州最高裁判所 2022 年 6 月 2 日)。

(注4) 「Thought Leaders 4主宰の暗号資産紛争カンファレンス」(2023 年 6 月 28 日)での講演:暗号通貨詐欺の申し立ての問題最新情報

マーク・ペリング(Mark Pelling KC(King's Counsel)判事:英国の高位判事

Mark Pelling 判事

マーク・ペリング判事は、2019年にロンドン巡回商事裁判所の担当判事に任命された。

彼は、商事裁判所および巡回商事裁判所だけでなく、Chancery Division、国王法廷部門、行政裁判所、技術および建設裁判所で判事着席する権限を与えられている。

(注5) Tulip Trading Ltd 対 van der Laan 事件他 [2023] EWCA Civ 83 (2023.2.3 控訴裁判所は、ソフトウェア開発者がネットワーク上の暗号資産の所有者に対して受託者責任を負う可能性があり、これらの義務により、例えば 所有者の秘密鍵が紛失または盗難された場合、特定の状況では所有者の資産が安全に移されるという効果をもたらすソフトウェアパッチの導入を開発者に要求する可能性があることは正当に議論の余地があると認定した。

 詳細は、 Cleary Gottlieb LLP著「英国控訴裁判所: Cryptoasset Network Software Developers May Owe Fiduciary Duties to Token Holders (2023 年 2 月 21 日)」を参照。

(注6) 2023 年 2 月 3 日、イングランドおよびウェールズ控訴院民事部は、4 ビットコイン・ネットワークに関する Tulip Trading Limited (「TTL」) とソフトウェアの中核開発会社数社との間の訴訟で判決(Tulip Trading Ltd 対 van der Laan and others [2023] EWCA Civ 83)を言い渡した。

(注7) Piroozzadeh 対 Peoples Unknown [2023] EWHC 1024 (Ch) (2023.5.4 )高等法院大法官部(High Court:Chancery Division)は、当初、Binance が請求者に対する詐欺行為で追跡可能な収益を受け取ったという根拠で認められていた、暗号資産会社 Binance に対する差し止め命令を取り消した。

(注8) DAO(Decentralized Autonomous Organization、分散型自律組織)とは、中央集権的な管理を必要とせず、ブロックチェーンを基盤にして、世界中の人々が協力しながら管理・運営をおこなう組織のことである。DAOは独自のガバナンス・トークンを発行しており、参加者はそれを保有することで、意思決定のための投票権を得られる仕組みであり、コミュニティに貢献したインセンティブも、ガバナンス・トークンを含むさまざまなトークンで支払われる。(INSIGHT
powered サイト解説
から抜粋)

(注9) 「スマート・コントラクト」とは、ブロックチェーン・システム上の概念であり、あらかじめ設定されたルールに従って、ブロックチェーン上のトランザクション(取引)、もしくはブロックチェーン外から取り込まれた情報をトリガーにして実行されるプログラムを指す。ここでの「スマート」とは「賢い」ではなく、「自動的に実行される」という意味で用いられている。(https://www.sbbit.jp/article/fj/40394から抜粋)。

(注10)英国法務委員会のDAO専門サイト

 法務委員会は、2022 年 11 月 16 日に証拠の公開募集を開始しました。証拠の募集では、ユーザーや他の専門家に、DAO をどのように特徴付けることができる (またそうすべきである) か、またイングランドとウェールズの法律が現在および将来どのように DAO に対応できるかについての情報を求めている。

 英国政府は法務委員会に対し、ブロックチェーン、スマート・コントラクト(注9)、または同様のテクノロジーをよく使用する新しいタイプの集団組織構造である DAO の説明と法的地位を調査するスコープペーパーを作成するよう依頼した。

  Evident paper Call for Evidenceを求める法務委員会の文書(全96頁)を参照されたい。

*Evident paper Call for Evidenceとは、政府のモデル分析などについて、その根拠となる仮定やデータが適当であり、利用可能な最善の根拠に基づくものあるかを検証するため、広く国民各位、専門家、事業者、NGOなどに対して、質問票の照会事項に沿った、根拠に基づく情報の提供を照会するもの。(内閣官房の解説参照)。

(注11)2023.6.27 英国法務委員会報告「Digital assets: Final report」(Law Com No 412:全304頁) (1965 年法務委員会法第 3 条(2) に従って英国議会に提出:議会下院により 2023 年 6 月 27 日に印刷するよう命令あり)

(注12)「 2000 年金融サービスおよび市場法」はその後、更新が行われており、2024 年 2 月 19 日までに発効されている。

(注13) トラベル・ルールとは、「利用者の依頼を受けて暗号資産の送付を行う暗号資産交換業者は、送付依頼人と受取人に関する一定の事項を、送付先となる受取人側の暗号資産交換業者に通知しなければならない」というルールである。このルールは、FATF(金融活動作業部会)が、マネーロンダリング及びテロ資金供与対策についての国際基準(FATF 基準)において、各国の規制当局に対して導入を求めているものである。

トラベル・ルールの目的は?

テロリストその他の犯罪者が自由に電子的な資金移転システムを利用することを防ぎ、

不正利用があった場合にその追跡を可能とすることを目的とするものである。

トラベル・ルールはどのように日本に導入されるか?

FATF 第4次対日相互審査において、我が国は、電信送金(為替取引)だけでなく暗号資産の移転についても、トラベル・ルールの対象とすべきと指摘されており、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)の改正が行われることが想定される。ただし、トラベル・ルールは世界的に見ても全く新しい規制であり、その実施に向けて技術的にも課題が多いので、協会は、金融庁からの要請を踏まえ、法改正に先立ち協会の自主規制規則においてトラベル・ルールを導入し、その課題を解決していくこととした。(日本暗号資産取引業協会サイトから抜粋)

(注13)ロシア連邦は2023年7月ロシア連邦民法典第1部第128条および第140条、第2部、ならびに第3部第1128条および第1174条の改正を採決、本連邦法第3条第1項をのぞき、2023年8月1日をもって発効した。

その内容は、以下のサイト「ロシア進出企業情報提供ポータル」2/7(72)を参照されたい。なお、一読されて気が付くと思うが、ロシアでは暗号資産(仮想通貨)はまさにこれからと言えよう。(Last Update :Febuary 24, 2024)

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わが国の確定申告上の暗号資産の扱いの明確化が重要(日米比較)

2024-02-18 10:20:43 | 暗号資産

 わが国の2024年提出分の所得税に関する確定申告と納税の期間は、2024216日(金)から2024315日(金)である。

 一方、筆者の手元に米国歳入庁の2023年の連邦所得税申告書提出の際に留意すべき「デジタル資産」の扱いに関する注意喚起通知が届いた。

 筆者は、新ためてそこにいう「デジタル資産」と具体的に何を指すのかを確認してみるとともに、わが国の国税庁の確定申告における暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)(平成 30 年 11 月(令和5年 12 月最終改訂)を比較してみた。

 そこで明らかとなったのは、わが国の暗号資産等に関する税務上の取扱いの曖昧性である。すなわち、暗号資産、暗号通貨、電子マネー等、その定義を国税庁サイトでみると、例えば「暗号資産」は、資金決済に関する法律第2条第14項に規定する暗号資産 (注1)をいい、また、「電子決済手段」とは同条第5項第1号から第3号までに規定する電子決済手段をいう(注2)等、法律上、かならずしも十分明確化されておらず巷には暗号資産交換事業者による不正確な説明に基づく情報戦略が横行している。

  税務上の扱いにとどまらず、ビットコイン(BTC)を筆頭とする暗号資産(仮想通貨)は、急速に普及したことや次々と新しい技術が生まれていることから、わが国の暗号資産を規制する法制は「資金決済法」、「金融商品取引法」「金融商品販売法」等を中心に現物暗号資産、暗号資産デリバティブ、ICO(投資型(STO(Security Token Offering))や投資型以外のICO(Initial Coin Offering)、 ステーブルコイン(安定した価格を実現するよう設計された通貨)(注3)、CBDC(中央銀行デジタル通貨)(注4)、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)(注5)の法的位置や暗号資産上の位置づけ、電子マネーとの比較等の規制法を体系的に理解するのは、消費者や事業者にかなりの負担となっている。

 また、暗号資産交換業者の倒産時の対応や暗号資産の流出リスクへの対応等消費者保護、犯罪防止マネローダリング、暗号資産交換業にかかる取引に際しての情報提供義務、利用者の保護措置、暗号資産交換業者の広告規制等法律以下の資金決済に関する法律施行令(平成22年政令第19号)、暗号資産交換業者に関する内閣府令(平成29年内閣府令第7号)、金融庁事務ガイドライン等極めて多岐にわたる。

 これまで筆者は海外の動向につき「英国の暗号資産にかかる『金融サービスおよび市場法』の改正法案を巡る最新動向」を取り上げた。

 今回のブログは、(1)暗号資産にかかる法制につき理解をすすめるうえで参考となる解説サイトの評価をまとめて紹介, (2)わが国の暗号資産関係法の体系と改正経緯、(3)  英国や米国における暗号資産の法的解釈とのわが国の法整備との基本的相違点、最後に(4)税申告上の暗号資産の扱いの比較を試みる。

1.わが国の暗号資産にかかる法制につき理解をすすめるうえで参考となる解説サイトの評価

 関係法を一覧にするサイトは以下のとおりである。簡単にコメントする。

(1)法改正経緯

「暗号資産(仮想通貨)の法律を解説!規制整備の流れを把握しよう」

2017年の法改正で暗号資産(仮想通貨)に法的根拠~2023年6月1日施行の改正資金決済法

2023-10-11 更新 関係法の改正経緯を解説が詳しい。

NRI「ステーブルコインを規制する初めての法律が成立」(2022.6.6)

(2)個別法の改正内容

 金融庁の審議会資料「金融庁「暗号資産(仮想通貨)に関連する制度整備について」から引用。ただし2016年(平成28年)から2019年(平成31年)の法改正のみ解説している。なお、個別法の内容については、筆者が補筆した。

A.暗号資産に係る法制度の整備

 平成29年(2017年)4月1日施行された「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(平成28年(2016年)3月4日提出、平成28年5月25日成立)その中に含まれている「資金決済に関する法律(以下、「資金決済法」という)」(第11条関係)において、「第三章の二 仮想通貨」という箇所が付け加えられたのが、暗号資産(仮想通貨)に関する法律の始まりである。(注6)

暗号資産の交換業者に登録制を導入

・ 口座開設時における本人確認等を義務付け

・ 利用者保護の観点から、一定の制度的枠組みを整備

(最低資本金、顧客に対する情報提供、顧客財産と業者財産の分別管理、システムの安全管理 など)

B.資金決済法一部改正法および金融商品取引法等の一部改正(令和元年(2019)67日公布、令和2(2020)5月1日施行)

「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」(令和元年法律第28,以下「改正法」という)

 利用者保護の確保やルールの明確化のための制度整備が中心である。

 国際的な動向等を踏まえ、法令上の呼称を「仮想通貨」から「暗号資産」に変更

③2019年法改正(赤字で記載)及び今般の政府令改正等(青字で記載)の概要①

ⅰ暗号資産の流出リスクへの対応 ⅱ過剰な広告・勧誘への対応、ⅲ暗号資産の管理のみを行う業者への対応

④2019年法改正(赤字で記載)及び今般の政府令改正等(青字で記載)の概要②

(暗号資産の取引の適正化等に向けた対応)

ⅰ問題がある暗号資産への対応、ⅱ暗号資産を用いた不公正な行為への対応、ⅲ暗号資産に関するその他の対応

⑤2019年法改正(赤字で記載)及び今般の政府令改正等(青字で記載)の概要③

(暗号資産を用いた証拠金取引への対応)

➅2019年法改正(赤字で記載)及び今般の政府令改正等(青字で記載)の概要④(ICO(STO)への対応①)

⑦2019年法改正(赤字で記載)及び今般の政府令改正等(青字で記載)の概要⑤(ICO(STO)への対応②)

「暗号資産」の定義に関して、金融商品取引法では、資金決済法に規定される暗号資産の定義と同様とすると規定されている(金融商品取引法第2条第24項第3号の2)。

C.2023(令和5)61日施行の改正資金決済法

 2022年(令和4年)6月3日、「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律(以下「改正資金決済法」という)が成立し、2023年6月1日に同法が施行された。

【令和4年(2022年)改正資金決済法等内容】

 改正法の範囲は、資金決済法や銀行法などの多岐にわたっているが、主要な改正内容としては、一般に、以下の三本柱があるといわれている。

①高額電子移転可能型前払式支払手段への対応

②電子決済手段等(いわゆるステーブルコイン)への対応

③銀行等による取引モニタリング等の共同化への対応

 この改正法で、注目されたのは「電子決済手段」が新設されたことであり、それまで規制としてはグレーゾーンとなっていたステーブルコインに関する規制が盛り込まれた点である。

D.消費者保護の観点から資金決済法の改正の解説例

【知っておきたい資金決済法】第6回 暗号資産(1)暗号資産(現物)取引に関する資金決済法の規律の解説

【知っておきたい資金決済法】最終回 暗号資産(2)最終回 ICOは電子的なトークン(証票)を発行して行う事業資金の調達をいう。

2.わが国の資金決済法の改正経緯とその背景(概要)

(1)金融庁の説明資料(図解で詳しい。専門家向け)

2022年3月「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案」

 「資金決済法の一度目の改正案は2017年4月1日に、二度目は2020年5月1日、三度目は2023年6月1日にそれぞれ施行されてきた。

 また、もう1つの規制法「金融商品取引法」も電子的なトークン(証票)を発行して行う事業資金の調達を ICO(投資型(STO))につき規制している。なお、投資型ICOは暗号資産の規制法である「資金決済法」により規制される。

 また、消費者保護、犯罪防止マネローダリング、暗号資産交換業にかかる取引に際しての情報提供義務、利用者保護措置、暗号資産交換業者の広告規制等法律以下の資金決済に関する法律施行令(平成22年政令第19号)、暗号資産交換業者に関する内閣府令(平成29年内閣府令第7号)(注7)、金融庁事務ガイドライン等極めて多岐にわたる。

(2)グローバルな暗号資産時価総額の見方と比較

 一例としてCoin Market Cop(日本語版)をあげる。

 

3.英国や米国における暗号資産の法的解釈とのわが国の法整備との基本的相違点

 以下の解説が詳しい。

(1)金融庁「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第12回)資料

日時:令和5年11月13日(月曜日)10時00分~12時00分「事務局説明資料2(国際的な規制動向)2023年11月13日

1.国際組織における動向

2.各法域における動向

(2) 野村資本市場クォータリー2020年春号「ステーブルコインと中央銀行デジタル通貨を巡って」

4.日米の税申告における暗号資産の扱いの比較

1)米国の暗号資産の申告の扱い

① 2024.1.22 内国歳入庁( IRS)「Taxpayers should continue to report all cryptocurrency, digital asset income」を以下、仮訳する。

 納税者は引き続きすべての暗号通貨、デジタル資産収入を報告する必要がある。

 内国歳入庁は1月22日、納税者に対し、2023年の連邦所得税申告書を提出する際には、2022年の連邦税申告書と同様に、デジタル資産の質問に答え、すべてのデジタル資産関連の収入を報告する必要があることを再度注意喚起した。

 納税者は引き続きすべての暗号通貨、デジタル資産収入を報告する必要がある。

 質問は様式上部に表示される。

(ⅰ) 個人所得税申告(U.S. Individual Income Tax Return) 様式1040;(ⅱ)高齢者への納税申告(U.S. Tax Return for Seniors) 様式 1040-SR 、(ⅲ) 非居住者外国人所得税申告(U.S. Nonresident Alien Income Tax Return) 様式1040-NR

  そして表現を更新するために今年改訂した。

 質問項目は、これらの追加の様式にも以下のとおり、追加した。

(ⅳ)不動産および信託の所得税申告(U.S. Income Tax Return for Estates and Trusts)様式 1041、; (ⅴ)パートナーシップ所得の収益(U.S. Return of Partnership Income)様式1065 ;(ⅵ)法人所得税申告(U.S. Corporation Income Tax Return U.S. Income Tax Return for an S Corporation)様式1120; そして S Corporationの所得税申告 様式1120s(U.S. Income Tax Return for an S Corporation)

 様式に応じて、以下のとおりデジタル資産に関する質問はこの基本的な質問を行う。適切なバリエーションは、企業、パートナーシップ、または不動産と信託の納税者に合わせて調整される。

 「申告において、2023年中のいつでも、次のことを行ったことが対象になる。(a)(報酬、賞、または財産またはサービスの支払いとして受け取った)。または(b)販売、交換, または、デジタル資産(またはデジタル資産の金銭的利益)を処分したことが対象となる」

デジタル資産とは何か?

 デジタル資産とは、暗号で保護された分散型台帳または類似のテクノロジーに記録される価値のデジタル表現である。一般的なデジタル資産は次のとおりである。

①コンバーチブル仮想通貨(Convertible virtual currency)(注8)(注9)と暗号通貨(cryptocurrency)。

②ステーブルコイン

③非代替性トークン(NFT)。

 申告者は誰もが書式により各質問に答えなければならない

様式1040、1040-SR、1040-NR、1041、1065、1120、1120、および1120Sを提出するすべての納税者は、デジタルアセットの質問に「はい」または「いいえ」のいずれかに答える1つのボックスをチェックする必要がある。質問は、2023年にデジタル資産を含む取引に従事した人々だけでなく、すべての納税者が回答する必要がある。

いつ“はい”をチェックするのか?

 通常、納税者は次の場合に「はい」ボックスをチェックする必要がある。

 従業員がデジタル資産で支払われた場合、賃金として受け取った資産の価値を報告する必要がある。 同様に、独立した請負業者として働いており、デジタル資産で支払われている場合は、その収入をスケジュール C (フォーム 1040) の事業損益 (個人事業主) に報告する必要がある。 スケジュール C は、取引またはビジネスに関連して顧客にデジタル資産を販売、交換、または譲渡する人にも使用される。

“いいえ”をいつチェックするのか?

 通常、2023年にデジタル資産を所有しただけの納税者は、年間を通じてデジタル資産に関連する取引に従事していない限り、「いいえ」ボックスをチェックできる。アクティビティが次の1つ以上に制限されている場合は、「いいえ」ボックスをチェックすることもできる。

財布または口座にデジタル資産を保持する場合;

所有または管理する1つのウォレットまたはアカウントから、所有または管理する別のウォレットまたはアカウントにデジタル資産を転送する。または電子プラットフォームを含む、米国またはその他の実質通貨を使用したデジタル資産の購入があたる。

(2)わが国の暗号資産の確定申告時の扱い

 わが国の解説は以下のとおり、実態に合わせた解説ガイドやFAQはない。

暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)から抜粋する。

平成 30 年 11 月 (令和5年 12 月最終改訂)国税庁

  「暗号資産」とは、資金決済に関する法律第2条第14項に規定する暗号資産をいいます。また、「電子決済手段」とは同条第5項第1号から第3号までに規定する電子決済手段をいいます。

*******************************************************************:**::

(注1) 資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)第2条第14項:

 この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法第29条の2第1項第8号に規定する権利を表示するものを除く。

1号 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨、通貨建資産並びに電子決済手段(通貨建資産に該当するものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

2号 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

(注2) 資金決済に関する法律第2条第5項 

この法律において「電子決済手段」とは、次に掲げるものをいう。

一 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されている通貨建資産に限り、有価証券、電子記録債権法(平成19年法律第102号)第二条第一項に規定する電子記録債権、第三条第一項に規定する前払式支払手段その他これらに類するものとして内閣府令で定めるもの(流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(第三号に掲げるもの(特定信託受益権)に該当するものを除く。)

金融商品取引法第29条の2第1項第8号

 第2条第2項の規定により有価証券とみなされる権利(当該権利に係る記録又は移転の方法その他の事情を勘案し、公益又は投資者保護のため特に必要なものとして内閣府令で定めるものに限る。)又は当該権利若しくは金融指標(当該権利の価格及び利率等並びにこれらに基づいて算出した数値に限る。)に係るデリバティブ取引についての次に掲げる行為を業として行う場合にあつては、その旨

イ 当該権利についての第2条第8項第1号から第10号までに掲げる行為又は当該デリバティブ取引についての同項第1号から第5号までに掲げる行為

ロ 第二条第8項第12号、第14号又は第15号に掲げる行為

金融商品取引法第2条2項

 前項第1号から第15号までに掲げる有価証券、同項第17号に掲げる有価証券(同項第16号に掲げる有価証券の性質を有するものを除く。)及び同項第18号に掲げる有価証券に表示されるべき権利(同項第14号に掲げる有価証券及び同項第17号に掲げる有価証券(同項第14号に掲げる有価証券の性質を有するものに限る。)に表示されるべき権利にあつては、資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)第2条第5項第3号又は第4号に掲げるものに該当するもので有価証券とみなさなくても公益又は投資者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定めるものを除く。)並びに前項第16号に掲げる有価証券、同項第17号に掲げる有価証券(同項第16号に掲げる有価証券の性質を有するものに限る。)及び同項第19号から第21号までに掲げる有価証券であつて内閣府令で定めるものに表示されるべき権利(以下この項及び次項において「有価証券表示権利」と総称する。)は、有価証券表示権利について当該権利を表示する当該有価証券が発行されていない場合においても、当該権利を当該有価証券とみなし、電子記録債権(電子記録債権法(平成19年法律第102号)第二条第一項に規定する電子記録債権をいう。以下この項において同じ。)のうち、流通性その他の事情を勘案し、社債券その他の前項各号に掲げる有価証券とみなすことが必要と認められるものとして政令で定めるもの(第7号及び次項において「特定電子記録債権」という。)は、当該電子記録債権を当該有価証券とみなし、次に掲げる権利は、証券又は証書に表示されるべき権利以外の権利であつても有価証券とみなして、この法律の規定を適用する。

一号 信託の受益権(前項第10号に規定する投資信託の受益証券に表示されるべきもの及び同項第12号から第14号までに掲げる有価証券に表示されるべきもの並びに資金決済に関する法律第2条第5項第3号又は第4号に掲げるものに該当するもので有価証券とみなさなくても公益又は投資者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定めるものを除く。)

二号 外国の者に対する権利で前号に掲げる権利の性質を有するもの(前項第10号に規定する外国投資信託の受益証券に表示されるべきもの並びに同項第17号及び第18号に掲げる有価証券に表示されるべきものに該当するものを除く。)

三号 合名会社若しくは合資会社の社員権(政令で定めるものに限る。)又は合同会社の社員権

四号 外国法人の社員権で前号に掲げる権利の性質を有するもの

五号 民法(明治29年法律第89号)第667条第1項に規定する組合契約、商法(明治32年法律第48号)第535条に規定する匿名組合契約、投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成10年法律第90号)第3条第1項に規定する投資事業有限責任組合契約又は有限責任事業組合契約に関する法律(平成17年法律第40号)第三条第一項に規定する有限責任事業組合契約に基づく権利、社団法人の社員権その他の権利(外国の法令に基づくものを除く。)のうち、当該権利を有する者(以下この号において「出資者」という。)が出資又は拠出をした金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む。)を充てて行う事業(以下この号において「出資対象事業」という。)から生ずる収益の配当又は当該出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利であつて、次のいずれにも該当しないもの(前項各号に掲げる有価証券に表示される権利及びこの項(この号を除く。)の規定により有価証券とみなされる権利を除く。)

イ 出資者の全員が出資対象事業に関与する場合として政令で定める場合における当該出資者の権利

ロ 出資者がその出資又は拠出の額を超えて収益の配当又は出資対象事業に係る財産の分配を受けることがないことを内容とする当該出資者の権利(イに掲げる権利を除く。)

ハ 保険業法(平成7年法律第105号)第2条第1項に規定する保険業を行う者が保険者となる保険契約、農業協同組合法(昭和22年法律第132号)第十条第一項第十号に規定する事業を行う同法第四条に規定する組合と締結した共済契約、消費生活協同組合法(昭和23年法律第200号)第十条第二項に規定する共済事業を行う同法第四条に規定する組合と締結した共済契約、水産業協同組合法(昭和23年法律第242号)第11条第1項第12号、第93条第1項第6号の二若しくは第100条の2第1項第1号に規定する事業を行う同法第2条に規定する組合と締結した共済契約、中小企業等協同組合法(昭和24年法律第181号)第9条の2第7項に規定する共済事業を行う同法第3条に規定する組合と締結した共済契約又は不動産特定共同事業法(平成6年法律第77号)第2条第3項に規定する不動産特定共同事業契約(同条第9項に規定する特例事業者と締結したものを除く。)に基づく権利(イ及びロに掲げる権利を除く。)

ニ イからハまでに掲げるもののほか、当該権利を有価証券とみなさなくても公益又は出資者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定める権利

六号 外国の法令に基づく権利であつて、前号に掲げる権利に類するもの

七号 特定電子記録債権及び前各号に掲げるもののほか、前項に規定する有価証券及び前各号に掲げる権利と同様の経済的性質を有することその他の事情を勘案し、有価証券とみなすことにより公益又は投資者の保護を確保することが必要かつ適当と認められるものとして政令で定める権利

(注3) 価格の安定性を実現するように設計された暗号資産(仮想通貨)のこと。裏付け資産がないため価格変動が激しく、決済手段としての活用が進んでいない暗号資産の普及を促し、実用性を高めるために設計された。英語表記はStablecoin。

 価格を安定させる仕組みの違いから、ステーブルコインは主に4つの種類に分けられる。米ドルなどの法定通貨を担保にコインを発行し、その法定通貨との交換比率を固定する「法定通貨担保型」、特定の暗号資産を担保にコインを発行し、価格を連動させる「暗号資産担保型(仮想通貨担保型)」、金や原油などの商品(コモディティ)価格の値動きに連動させる「コモディティ型」、アルゴリズムによってコインの流通量を調整する「無担保型」がある。(野村証券:証券用語解説集から抜粋)

(注4)ステーブルコインとは別に、中央銀行が発行するデジタル通貨のCBDC(Central Bank Digital Currency)がある。ステーブルコインとCBDCの違いは、ステーブルコインが民間により開発、発行される金融サービスであるのに対し、CBDCは政府が法定通貨としての価値を保証して発行される点にある。(NTT DATA の解説(前編), 解説(後編)から一部抜粋)

 なお、令和5年12月13日 財務省「CBDC(中央銀行デジタル通貨)に関する有識者会議 取りまとめ参照。

(注5) NFTとは「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略称で、ブロックチェーン技術を使ってデジタルデータの所有権を明確にできる技術。

 なお、解説では, ステーブルコインには法定通貨や別の仮想通貨などを担保にした「担保型」と、アルゴリズムによって価格を安定させる「無担保型」がある。

PWC 「NFTに関連する法規制と私法的な法律関係──ビジネスの発展に向けた検討」は (1)NFTに関連する法規制(2)私法的な法律関係(3)の概要解説がわが国では詳しい解説と思う。以下、一部、抜粋する。

NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)と呼ばれるものがある。NFTはデジタルデータではあるものの、複製や改ざんが事実上不可能であり、かつ、他のデジタルデータと区別される固有の特徴を有するものである。従来のデジタルデータは技術的には複製が容易であったため唯一性(オリジナルであること)の確保が非常に困難であったが、NFT自体は唯一性の確保が可能ある。

(注6) 資金決済に関する法律の一部改正(第11条関係)のうち「2.仮想通貨交換業に係る制度整備」を以下、抜粋、引用する。

 2.仮想通貨交換業に係る制度整備

(1)定義   「仮想通貨」の定義を定めることとする。 (資金決済に関する法律第2条関係)

(2)登録制の導入 ① 仮想通貨交換業(仮想通貨の売買又は他の仮想通貨との交換等を業として行うことをいう。)は、登録を受けた法人でなければ行ってはならないこととする。  (資金決済に関する法律第63条の2関係) ② 仮想通貨交換業者の登録手続、登録拒否要件等を定めることとする。(資金決済に関する法律第63条の3~第63条の7関係)

(3)業務に関する規定の整備 ①  仮想通貨交換業者は、情報の安全管理のために必要な措置を講じなければならないこととする。 (資金決済に関する法律第63条の8関係) ②  仮想通貨交換業者は、利用者への情報提供など利用者の保護を図り、業務の適正かつ確実な遂行を確保するために必要な措置を講じなければならないこととする。(資金決済に関する法律第63条の10関係) ③  仮想通貨交換業者は、利用者の財産を自己の財産と分別して管理し、その管理の状況について、定期に公認会計士又は監査法人の監査を受けなければならないこととする。 (資金決済に関する法律第63条の11関係) ④  仮想通貨交換業者に関し、金融分野における裁判外紛争解決制度(いわ ゆる金融ADR制度)を設けることとし、紛争解決機関との間で契約を締結する措置等を講じなければならないこととする。資金決済に関する法律第63条の12、第99条~第101条関係)

(4)監督規定の整備 仮想通貨交換業者に関し、帳簿書類及び報告書の作成、公認会計士又は監査法人の監査報告書等を添付した当該報告書の提出、立入検査、業務改善命令等の監督規定を設けることとする。 (資金決済に関する法律第63条の13~第63条の19関係) (5)認定資金決済事業者協会に関する規定の整備 仮想通貨交換業者が設立した一般社団法人であって、仮想通貨交換業の適切な実施の確保を目的とすること等の要件に該当すると認められるものを、法令遵守のための会員に対する指導等を行う者として認定することができることとするなど、認定資金決済事業者協会に関する規定を設けることとする。 (資金決済に関する法律第87条、第88条、第90条~第92条、第97条関係)

 (6)罰則 仮想通貨交換業者に関し、所要の罰則規定の整備を行うこととする。(資金決済に関する法律第107条~第109条、第112条~第117条関係)

(注7) 暗号資産にかかる法令等の金融庁の暗号資産交換事業者への解説サイト

(注8) コンバーチブル仮想通貨は、取引所で法定通貨と交換できる、または正当な形態の商取引と支払いに直接使用される暗号通貨である。これらの通貨は、物理的な存在がなく、政府によって発行されないという点で、ドルやユーロなどの国が支援する通貨とは主に異なる。むしろ、分散型ブロックチェーンネットワークで実行される。ビットコイン、エーテル(注9)、リップル(Ripple/XRP)は、変換可能な仮想通貨の例である。(Investopediaから抜粋、仮訳 )

(注9) エーテルは トランザクショントークン Ethereumネットワークでの運用を容易にする。Ethereumネットワークにリンクされているすべてのプログラムとサービスには、計算能力、機器、インターネット接続、およびメンテナンスが必要である。Ethereumは、ユーザーがネットワーク上で要求された操作を実行するためにネットワーク参加者に与える支払手段である。(Investopediaから抜粋、仮訳 )

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米国の金融監督機関の暗号資産市場の急速な拡大とそのリスクに対する規制強化にかかる共同声明の内容

2024-02-12 15:34:03 | 暗号資産

 筆者は暗号資産の SECやCFTCの規制強化について1月28日付け本ブログで取り上げたが、連邦準備制度理事会 (Federal Reserve)、連邦預金保険公社 (FDIC)および通貨監督庁 (OCC) (総称して各監督省庁) は、去る1月 3日、銀行組織における暗号資産のリスクについて共同声明を発表した。

 この声明は、暗号資産業界にとって1年間の紆余曲折を経て発表された。 これら監督機関は同声明で「暗号資産セクターにおける大幅な価格変動(significant volatility)と脆弱性リスクにさらされる(exposure of vulnerabilities)」を強調している。この内容を読むとステーブルコインも含め暗号資産に対する規制強化を強く訴えている、その背景には業界全体の不安定性や詐欺事件が多発していることは間違いない。

 以下、声明文(原文)を仮訳する。

  軽減または制御できない暗号資産セクターに関連するリスクが銀行システムに移行しないことが重要である。 これらの監督機関は、以下のような銀行組織を監督している。

 暗号資産セクターに起因するリスクにさらされる可能性があり、暗号資産を含む活動に従事する銀行組織からの提案を慎重に検討している。 これまでの各政府機関のケース・バイ・ケースのアプローチを通じて、各政府機関は、暗号資産が銀行組織、その顧客およびより広範な米国の金融システムにもたらす可能性のあるリスクについての知識、専門知識、理解を構築し続けており、これによって浮き彫りになった重大なリスクを考慮すると、大手暗号資産企業数社の最近の経営破綻を受けて、当局は各銀行組織における現在または計画されている暗号資産関連の活動やリスクにさらされる可能性に関して慎重かつ慎重なアプローチを続けている。

 銀行組織は、法律または規則で許可されている限り、特定の階級またはタイプの顧客に銀行サービスを提供することを禁止または抑制されていない。 政府機関は、銀行組織による現在および提案されている暗号資産関連活動が、安全性と健全性確保、消費者保護、マネーローンダリング(筆者ブログ)および違法な金融に関する法令および規則等法的許容性、および適用される法律および規制の遵守に適切に対処する方法で実施できるかどうか、またはその方法を引き続き評価している。

  これまでの政府機関の現在の理解と経験に基づき、政府機関は、オープン、パブリック、および/または分散型ネットワーク、あるいは同様のシステム上で発行、保管、転送される暗号資産を主要な暗号資産として発行または保有することは、安全で健全な銀行業務の慣行と矛盾すること可能性が非常に高いと考えている。 さらに、これらの政府機関は、暗号資産関連の活動に集中しているビジネスモデル、または暗号資産セクターへのエクスポージャーが集中しているビジネスモデルに関して、安全性と健全性について重大な懸念を抱いている。

 各政府機関は、銀行組織が提案されているおよび既存の暗号資産関連活動に関して強力な監督上の議論を行うプロセス(注1)  を開発した。

   銀行組織は、暗号資産関連の活動が安全かつ健全な方法で実行でき、法的に許容され、適用される法律や規制を遵守することを保証する必要がある。

 これには、消費者を保護するために設計されたものも含まれる(公正な融資に関する法律や規則(Fair Lending Laws and Regulations ) (注2)や、不当、欺瞞的、または虐待的な行為や慣行に対する禁止などがある。 銀行組織は、リスクを効果的に特定し管理するために、取締役会の監督、ポリシー、手順、リスク評価、制御、ゲートとガードレール、モニタリングを含む適切なリスク管理を確保する必要がある。(注3)

 これら当局は、「暗号資産」(通常、暗号技術を使用して実装されたデジタル資産を指す)および暗号資産セクターに関連する8つの主要なリスクを特定した。 銀行組織が認識すべき主なリスクには、以下が含まれるが、これらに限定されない。

 なお、今回のブログは、共同声明原文の8つの主要なリスクの仮訳に加え、2024.1.13 Morrison & Foerster LLPの解説に基づき内容を補完した。

①暗号資産セクターの参加者間での詐欺(fraud)類型詐欺(scams)のリスク。(注4)(注5)

②保管の実務慣行、償還、および所有権に関連する法的不確実性。その一部は現在、法的手続きおよび手続きの対象となっている。

③暗号資産会社による不正確または誤解を招く表現および開示(連邦預金保険布施に関する虚偽表示、およびその他の不公平、欺瞞的、または濫用の可能性のある行為を含む)は、個人投資家、機関投資家、顧客、取引相手に重大な損害を与える原因となる。

④暗号資産市場の大幅な乱高下。その影響には、暗号資産企業に関連する預金の流れへの潜在的な影響が含まれる。

⑤ステーブルコインの感染に対する脆弱性はリスクにさらされやすく、さらにステーブルコインの準備金を保有する銀行組織に潜在的な預金流出を引き起こす。

➅不透明な融資、投資、資金調達、サービス、運営上の取り決めなど、特定の暗号資産参加者間の相互接続に起因する暗号資産セクター内の連鎖倒産リスク(contagion risk)がある。 これらの相互連鎖は、暗号資産セクターにリスクに直さらされる銀行組織に集中的リスクをもたらす可能性もある。

⑦暗号資産業界セクターにおけるリスク管理とガバナンスの実践内容は、成熟度と堅牢性の欠如を示している。

⑧暗号資産システムの監視を確立するガバナンス機構の欠如を含むがこれに限定されない、オープン、パブリック、および/または分散型ネットワーク、または同様のシステムに関連するリスクの増大問題である。すなわち、 (1)役割、責任や責任を明確に確立するための契約や基準がないこと, (2) サイバー攻撃、機能停止、資産の紛失または機能の閉じ込め、違法な金融に関連する脆弱性等である。

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(注1) (1)OCC Interpretive Letter 1179“Chief Counsel’s Interpretation Clarifying: (1) Authority of a Bank to Engage in Certain Cryptocurrency Activities; and (2) Authority of the OCC to Charter a National Trust Bank,” (November 18,2021)

(2)FRB: 連邦準備制度の監督下にある銀行機関による暗号資産関連活動への関与の在り方

(3)FDIC: 連邦行政規則集パート 364 - 安全性と健全性の基準(PART 364—Standards for Safety and Soundness)

(注2) “Fair Lending Laws and Regulations” とは、具体的には以下の法律や関連規則をいう。

① Equal Credit Opportunity Act (ECOA)

② Equal Credit Opportunity Act (Regulation B)

③ Fair Housing Act (FHAct)

(注3) 安全性と健全性の基準を確立する省庁間のガイドライン 12 CFR 30 付則 A (OCC)12 CFR 208付則 D-1 (連邦準備制度)および 12 CFR 364(STANDARDS FOR SAFETY AND SOUNDNESS)付則A (FDIC)

(注4) 筆者なりに「fraud(詐欺)」と「Scam(類型詐欺)」につき関係サイトを参考に厳格な法解釈を試みる。

fraud(詐欺)

  他人の金銭、財産、または法的権利を奪うために、欺瞞、トリック、または何らかの不正な手段を意図的に使用すること。

 詐欺により物を失った当事者は、不正行為を行った当事者に対して損害賠償訴訟を起こす権利があり、その損害賠償には、詐欺の悪質性による懲罰または公判として懲罰的損害賠償が含まれる場合がある。 多くの場合、詐欺計画には複数の人物が関与しており、全員が損害総額の責任を負う可能性がある。詐欺行為には、その個人や団体に損害を与える、他人に対する不当な利益が内在している。 これには、契約書やその他の文書(証書など)における既知の間違いを指摘しないこと、または土地が当初理解されていた20エーカーではではなく 10 エーカーしかないことを示す調査など、伝達する義務がある事実を明らかにしないことも含まれる。 建設的な詐欺は、詐欺の意図を直接証明しなくても、法的義務違反(他人のために保有している信託資金を自分のビジネスへの投資に使用するなど)を示すことで証明できる。

 外部的詐欺は、証拠を隠したり訴訟の相手方を誤解させたりすることによって、誰かが公正な裁判などの権利を行使するのを妨げるために欺瞞が使用される場合にも発生する。 詐欺は、不正行為を行って他人から金銭、財産、または権利を奪うことを目的としているため、詐欺行為を行った者が告発され、裁判を受け、有罪判決を受ける可能性がある犯罪でもある。例えば、 境界線を越えた行為や、少額の他人の純朴さを利用した行為は法執行機関によって見逃されることが多く、被害者が「民事救済」(つまり、訴訟)を求めることを示唆している。 しかし、大部分の国民が(個人的には少額であっても)被害に遭う詐欺がますます増えており、地方検事局や司法長官事務所の消費者詐欺部門の的となっている。

(Law.com のLegal Dictionaryから抜粋、仮訳)

Scam(類型詐欺)

 誰かを欺いたり詐欺したりするように設計された詐欺的なスキームまたはトリックを指し、被害者にまず 策略、欺瞞、または虚偽の約束を伴う不正または違法な活動について話したうえで、時として金銭や財産や個人情報等につき人々をだましたりすることを目的として詐欺的な内容につき事業者または企業に説明すること。具体的には、以下の例が挙げられる。

 scamの類型区分についてはFBIサイト(注5)参照。

 なお、法律の規定文言でwire fraudやmail fraudなどはあるがscamはない。ただし、法律名では“Fraud and Scam Reduction Act”の例はある。なお、オーストラリアの「オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)」サイト解説では“Types of scams”で以下の詐欺類型をも解説している。(FTCサイトから抜粋, 仮訳する)

①自動車保証更新詐欺(Auto Warranty Scam)

 詐欺師から、自動車保証や保険契約の更新に関するセールストークの電話がかかって来る。 詐欺師は、オファーの信頼性を高めるために、あらかじめあなたの車とその既存の保証に関する情報を入手した可能性がある。

②慈善詐欺(Charity Scams)

 詐欺師は、大規模な災害の後に慈善寄付を求める電話をかけてくることがよくある。 彼らは偽の慈善団体をでっち上げたり、本物の慈善団体になりすましてお金を騙し取ったりする可能性がある。

③中国領事館員なりすまし詐欺(Chinese Consulate Scam)

 詐欺師たちは北京語を話し、中国領事館の職員を装う。 困っているという家族のためにお金を要求したり、宅配便の配達のために個人情報を要求したりすることもある。 場合によっては、その電話が犯罪捜査や刑事連絡部門に関連していると主張することもある。連邦取引委員会(FTC) 内の事務所で、他の法執行機関と協力してこれら刑事詐欺事件を訴追する。

④災害救助寄付金詐欺(筆者ブログ,参照)

 大災害の後、詐欺師が慈善団体を装い、災害支援のための寄付を求める電話をかけることがある。 寄付する前に、その慈善活動が正当なものであることを確認してください。

⑤無料試用製品トライアル詐欺

 電話で受け取った無料試用製品のオファーは、あまりにもお得すぎて真実ではない可能性がある。 クレジットカードによる少額の手数料が必要な場合があり、これによりその他の望ましくない不正請求が発生したり、試用期間が終了した後にキャンセルできなくなり、問題の製品の支払いを余儀なくされたりする可能性がある。

➅雇用/在宅勤務詐欺

 偽の求人情報、電話、求人メール、オンライン広告は、多くの場合、正規の会社名を違法に使用しているが、これらはすべて、詐欺師が求職者をだますために使用するツールである。 高額な給与を伴う即時オファーしたり、コーチング、トレーニング、認定資格の前払いの要求には常に疑いを持ち、求人情報が正当なものであると確信するまで個人情報を決して共有しないでください。 雇用詐欺の多くは、物品の前払いも提供している。 これらの小切手は頻繁に不渡りとなり、費用がかかる。

ギフトカード詐欺

 電話詐欺の明らかな兆候は、発信者がギフトカードでの支払いを要求する場合である。 多くの詐欺師は、この返金不可で追跡が難しい支払い方法を好む。

⑧祖父母詐欺(いわゆるオレオレ詐欺)

 詐欺師が困っている家族を装って電話をかけ、保釈金や病院代などをすぐに送金するよう圧力をかける詐欺の一種。

⑨助成金詐欺

 詐欺師は、あなたには政府の補助金や還付金を受け取る資格があると主張し、口座情報を提供するとすぐに当座預金口座にその補助金を転送すると持ちかけ、その情報を販売したり、あなたのお金を盗むために使用したりする。詐欺師は、政府助成金詐欺で、自分が代表していると主張する政府機関の番号を偽装する可能性がある。

⑩健康保険詐欺

 詐欺師は、偽の医療保険を割引料金で売りつける。 電話をかけてきた人は、政府関係者や保険会社になりすますために、なりすまし電話を使用することがある。 多くの場合、彼らが販売する商品は保険ではなく、医療提供者が受け付けていない医療割引カードである。 詐欺的な勧誘は一年中発生しているが、一般入学の時期には特に注意されたい。

 オーストラリアのSCAM WATCHサイトの詐欺類型も参照されたい。

Text or SMS scams

 メッセージ/SNS詐欺は、あなたの関心を捕捉しようとして、政府、あなたが取引している企業、さらにはあなた自身の家族や友人からのものであるかのように見せる。

 2023年中、最も報告された詐欺師からの連絡方法はテキストまたは SMS であった。その詐欺メッセージは、すぐに行動するよう緊急性を求めているように聞こえる。 また、多くの場合、詐欺 Web サイトに誘導するリンクが含まれている。 詐欺師は、これらの詐欺 Web サイトに入力された個人情報を盗み、それを使用してお金を奪ったり、あなたの名前で詐欺を働いたりする可能性がある。

 これらのメッセージを本物のように見せかけるために、詐欺師は企業や知り合いの電話番号と送信者 ID を偽装 (コピー) する。 この詐欺メッセージは、組織からの実際のメッセージと同じメッセージ文で表示されることもあるため、見分けるのがさらに困難になる。

電話による詐欺  (筆者ブログ参照)

  詐欺電話は迷惑なだけではない。2023年、オーストラリア国民は詐欺電話により 1 億 4,100 万ドル(約136億7,700万円)の損失を被つた。

 報告されている詐欺の 3 件に 1 件は電話によるものである。 詐欺師が、有名組織からの電話をかけてくる。 これには、政府機関、法執行機関、投資および法律事務所、銀行、通信プロバイダーが含まれる。

 彼らは、あなたにすぐに連絡して行動することを緊急性を感じさせる。 彼らは、あなたの個人口座や銀行口座の詳細、あるいはあなたのコンピュータへのリモート アクセス手段を提供するようあなたを説得しようとするかもしれない。 発信者は、あなたの名前や住所など、あなたに関する詳細をすでに知っている可能性もある。

電子メール詐欺

 詐欺メールは本物のように見えるが、お金や情報を盗むことを目的としたリンクや添付ファイルに注意されたい。

 オーストラリア人は2023年、電子メール詐欺により 7,700 万ドル(約74億6,900万円)を失った。 詐欺師は、政府、警察、企業からのメールを装って「緊急」メールを送信する。

 彼らは実際の組織と同じロゴと同様の電子メールアドレスを使用する。 詐欺師は、組織や企業の電子メールアドレスをコピーまたは「なりすまし」させ、詐欺メールをより本物に見せることもできる。

ソーシャルメディア詐欺

 ソーシャル メディアで突然連絡してくる人物を疑うべきである。ここでは詐欺による被害が増加している。

 オーストラリア人は2023年、ソーシャルメディア詐欺による被害額が8,020万ドル(約77億7940万円)だったと報告しており、前年比43%増となった。

 詐欺師はソーシャル メディア、メッセージング プラットフォーム、アプリに偽のプロファイルを設定する。 彼らは、政府、実在の企業、雇用主、投資会社、あるいは友人、家族、恋人の関係者のふりをする。

ウェブサイト詐欺

 詐欺師は、オンラインで誰かになりすまして、ユーザーを騙して信頼させることができる。

 オーストラリア人は2023年、オンライン詐欺により 7,400 万ドル(約71億7,800万円)を失った。

 詐欺師は、有名ブランドに見せかけた偽の Web サイトを作成する。 また有名人になりすまして、商品やサービスを推奨しているかのように見せかけ、 彼らはあなたを信頼させるために偽のレビューを使用する。

 偽の警告やエラー メッセージを含む広告バナーやポップアップ ウィンドウにより、行動を迫られる可能性もある。

訪問・対面詐欺(In-person scams)

 詐欺師はあなたの家のドアをノックしたり、公共の場であなたに近づき、何かを行うようう要求することがある。 彼らは次のようなことをするかもしれない。

(ⅰ)商品やサービスの前払いを要求する。

(ⅱ)個人情報を入手するためのアンケートへの回答を強要する。

(ⅲ)訪問販売の中には詐欺ではない場合もある。 正しい訪問販売員等からの問い合わせを行うことで、あなたの権利と保護について詳しく知ることができる。

脅迫と恐喝詐欺

  詐欺師はお金を払えと脅迫する。

 あなたを脅迫する人にお金を渡す前に、声を上げて報告してください。

 詐欺師は組織の一員であるふりをして、お金を支払う必要があると主張する。 すぐに支払うことに同意しない場合、逮捕、国外追放、さらには身体的危害を与えると脅迫される可能性がある。

 また、お金を送らない限り、あなたが送った裸の写真やビデオを共有すると脅迫することもある。

 脅しによって圧力をかけられないでください。 立ち止まってそれが本当かどうか確認してください。

予想外のお金の入手詐欺

 権利、リベート、賞金にアクセスしようとしてお金を失わないようにしてください。 無料のお金のオファーには多額の費用がかかる。

 詐欺師は、あなたが受け取ることを予期していなかったお金や賞金を受け取る義務がある、または受け取る権利があるとあなたに信じ込ませようとする。

 詐欺師は、お金や賞金を受け取るために、料金を支払うか、財務情報や身元情報を提供するよう求める。 無料のお金はなく、それを手に入れようとするとさらに多くのお金を失うことになる。

(注5)FBIのscam 類型解説を以下、引用する。

Common Scams and Crimes

Adoption Fraud
②Business and Investment Fraud

③Business Email Compromise

Charity and Disaster Fraud 

Consumer Fraud Schemes

➅Elder Fraud

⑦Election Crimes and Security

⑧Holiday Scams

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米国SECは17億ドルの暗号資産ピラミッド計画「ハイパーファンド」創設者とトッププロモーターを詐欺容疑で起訴 詐欺的な暗号資産スキームに対する厳しい警告

2024-02-06 14:53:59 | サイバー犯罪

 米国の証券取引委員会(SEC)は1月30日、世界中の投資家から17億ドル(約2,499億円)以上を調達したハイパーファンド(HyperFund)として知られる詐欺的な暗号資産ねずみ講(pyramid scheme)に関与したとして、シュエ・サムエル・リー(Xue Samuel Lee a/k/a Sam Lee )別名サム・リー)(35歳)ブレンダ・インダ・チュンガ(Brenda Indah Chunga Brenda Chunga)別名ビットコイン・ボーティ)(43歳)を起訴した。

 今回のブログはSECのリリースの解説を中心に置きつつ、法執行機関がゆえに説明内容が限定されていることから、読者をロースクールの学生レベルを確保すべく、米国のJURIST等ロースクールの解説に準じつつ、補完的説明を試みた。

 なお、筆者は2020年7月9日付けブログで、FBIの証券詐欺の詳しい解説を行うとともに、2021年9月6日ブログで今回と同様の暗号資産のねずみ講詐欺事件につき解説している。

1.SEC起訴リリースの詳細

 SECの訴状によると、リー氏とチュンガ氏は2020年6月から2022年初めにかけて、ハイパーファンド(Hyper Fund)の「会員制」パッケージを宣伝し、ハイパーファンドの想定される暗号資産マイニング事業やフォーチュン500企業との提携などから投資家に高い収益を保証すると主張した。しかし、訴状が主張しているように、リー氏とチュンガ氏は、ハイパーファンドがねずみ講(pyramid scheme)(注1)であり、投資家から受け取った資金以外に本当の収入源がないことを知っていたか、あるいは知らなかったという無謀な行為であった。結果、 2022年、ハイパーファンド計画は崩壊し、投資家は出資額の引き出しができなくなった。

 メリーランド州地区の連邦地方裁判所に提出されたSECの訴状は、リー氏とチュンガ氏を連邦証券法の詐欺防止および登録規定に違反した罪で告発している。訴状は、①被告がマルチ商法や暗号資産の提供に参加することを妨げる行為に基づく恒久的な差止めによる救済(permanent injunctive relief)、②不正に得た利益の剥奪(disgorgement of ill-gotten gains)および判決前の利益(prejudgment interest)(注2)、および③民事罰(civil penalties)を求めている。

  チュンガ氏は告訴に対し和解し、今後の告発条項違反やその他の特定の行為を永久に禁止され、将来裁判所が決定する額の不正に得た利益の剥奪(disgorgement of ill-gotten gains)および判決前の利益(prejudgment interest)および民事罰を支払うことに同意した。この和解には裁判所の承認が必要となる。なお、 リー氏に対する告訴は今後訴訟される予定である。

 これと並行して、メリーランド州連邦検事局は1月30日、リー氏とチュンガ氏に対する刑事告訴を発表した。 チュンガ氏は証券詐欺電信詐欺(注3)(注4)(注5)の共謀について有罪を認めた。

2.SEC 起訴の根拠法と条文

 SEC起訴状にもとづき以下で補完的に解説する。

1933年証券法第20(b)条, 20(d), and 22(a) of the Securities Act, 15 U.S.C. §§ 77t(b)、 77t(d), and 77v(a)

1934年証券取引所法Sections 21(d) and 27(a) of the Exchange Act, 15 U.S.C. §§ 78u(d) and 78aa(a).

3.米国の証券詐欺規定の概観

 証券詐欺:法律と罰則についてローファームEisner Gorin LLPの解説等から抜粋、仮訳する。

(1)証券詐欺とは何か?

 「セキュリティ(security)」という用語は、地方債、企業株、紙幣、投資契約など、さまざまな種類の投資を含む幅広い用語である。証券詐欺は、これらの投資の1つに関与している誰かが、金銭的な優位性を得るために嘘をついたり、騙したり、盗んだりしたときに発生する。証券詐欺はホワイトカラー犯罪と見なされ、個人だけでなく、専門の金融アナリスト、証券ブローカー、企業、さらには政府機関による活動も含まれる。

(2)証券詐欺に関する州法および連邦法

 連邦政府は、証券取引委員会(SEC)を通じて、証券詐欺の起訴を担当する主要な政府機関である。ただし、各州には、証券詐欺に関する独自の法律と独自の州証券委員会もある。証券詐欺犯罪は州または連邦法にもとづきどちらかで罰せられるかもしれないが、 彼らはしばしば 連邦犯罪として起訴される。

2つの主要な連邦法—「 1933年証券法」と「1934年証券取引法」は、証券詐欺事件が起訴される主要な連邦法である,

(3)主な証券詐欺の種類

株式と証券に関する不実表示(Misrepresentation)

 最も単純なレベルでは、証券で利益を上げることは、証券の現在の価値を知り、その価値が将来どうなるかを判断することにかかっている。証券の価値がどうなるかを知っているトレーダーは、その将来の価値から利益を得るように設計された投資を行うことができる。状況によっては、人は虚偽の記述や不実表示を行うことによってセキュリティの価値を操作しようとすることができる。たとえば、ソーシャルメディアで会社について故意に虚偽の 記述を行うブローカーは、株式への予想される影響から利益を得るために、証券詐欺を犯す。

インサイダー取引

 会社に関連付けられており、一般には公開されていない情報を知っていて、証券を売買して利益を上げようとする人は 多くの状況でインサイダー取引を行う。たとえば、企業の人物が会社の株式を売買し、その活動を証券規制当局に適切に報告する場合など一部のインサイダー取引は合法であるが、 他の形のインサイダー取引は違法である。

 たとえば、会社で働いていて、いったん明らかになると会社の株価が変わる秘密を知った場合、その情報を合法的に使用して証券を取引することはできない。その情報を使用して取引を選択した場合、あなたは証券詐欺の罪を犯したことになる。友人にその情報について話し、友人が取引を行った場合、当該友人も証券詐欺の罪を犯したことになる。

チャーニング(過剰な取引) Churning

 チャーニングは、ブローカーにより多くの手数料または手数料を生み出すことを意図して、クライアントに過度の取引に従事するよう説得する証券ブローカーの取引慣行をいう。ブローカーは受託者であり、ブローカーはクライアントの最善の利益になることを行う法的義務があり、ブローカーの利益のみに行動してはならないということである。ブローカーがチャーニングに従事するときは、彼または彼女はクライアントの最善の利益を念頭に置くことに失敗し、代わりにブローカーまたはブローカーに利益をもたらすためだけに取引を行うものである。

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(注1) 米国の証券詐欺とは何か? FBIの解説等をもとに、仮訳する。

 証券詐欺には、株や商品の売買、取引における虚偽の表示が含まれる。証券詐欺とは、株式、取引、または投資における窃盗、横領、または偽りのふりによる窃盗を含む広範な用語である。 米国の有価証券には、株式、企業の金銭的利益、手形や利息証書などが含まれる。 証券詐欺事件の種類には次のようなものがある。なお、筆者独自に補筆する。

インサイダー取引(Insider trading)

ねずみ講(Ponzi schemes) :基本的に、ポンジスキームは投資詐欺で新しい投資家から集めた資金を昔から投資をしていた投資家に支払うようになっている。このようなスキームの問題は、最後の方の投資家にはまったく支払いがなされないことである。

ポンプアンドダンプ方式(Pump-and-dump schemes):安く購入した株式をより高い価格 (ダンプ) で販売するために、虚偽の誤解を招く肯定的な記述 (ポンプ) によって所有する株式の価格を人為的につり上げる証券詐欺をいう。スキームの運営者が過大評価された株式を「処分」(売却)すると、価格が下落し、投資家は損失を被る。

前払い手数料詐欺(Advance processing fee scams):通常、少額の前払いと引き換えに被害者に多額の金銭のかなりの部分を約束し、詐欺師らはその支払いが多額の支払いに使用されると主張する。被害者がお金を支払った場合、詐欺師は被害者に支払わせるために一連の追加料金をでっち上げるか、そのまま姿を消す。

株価操作(Stock manipulation)

有価証券報告書詐欺(Financial report fraud)

証券会社による横領(Embezzlement by stockbrokers)

不正会計詐欺(Accounting fraud)

インターネット詐欺(Internet fraud)

高利回り投資詐欺(High-yield investment fraud)

ねずみ講(Pyramid schemes):そのスキームに参加するメンバーに対して報酬や支払いを約束するだけでなく、そのメンバーが新しいメンバーを誘うことに対しても報酬や支払いを約束するビジネス形態をいう。

前払い金詐欺(Advance fee schemes):貸付、契約、投資、ギフトなど、より価値の高いものを受け取ることを見越して被害者がお金を払い、その見返りはほとんどない、または、まったくないという時に発生する詐欺。

外国為替詐欺(Foreign currency fraud):外国為替市場での取引で高い利益が期待できるとトレーダーを騙すために使用される取引スキーム。外国為替市場はよく言ってもゼロサムゲームである。 言い換えれば、あるトレーダーが勝てば、別のトレーダーは負けとなる。ただし、FXはすべてのトレーダーのパフォーマンスから仲介手数料やその他の取引コストが差し引かれるため、マイナスサムゲームである。

 Late Day Trading:時間外に取引を実行し、その日の市場取引の終了前に実行されたかのように記録する方法をいう。レイトデイ・トレーディングでは、他の市場参加者がトレーディング時間中に利用できなかった可能性のある市場情報をトレーダーが使用できる。

 深夜の取引に従事することは重罪であり、そうすることは証券詐欺の民事上および刑事上の告発につながる可能性がある。

(注2) ”prejudgment interest”につき、筆者ブログ参照。

(注3) 18 U.S.C§ 1343-連邦電信詐欺法Fraud by wire, radio, or television

解説文及びDOJ解説文を抜粋、仮訳する。

 電信詐欺とは、あらゆる種類の電子通信を使用して犯罪を犯すことと定義される。通信が州の境界線または国境を越えた場合、電信詐欺は連邦犯罪として起訴される。この法律は、被告が州間通商で電信通信を送信することにより、偽装を使用して金銭または財産を詐欺または取得するスキームを考案したことで有罪判決を受けた場合、厳しい罰則を科す。

 しばしば Wire Fraud やMail Fraudは同じ事件で起訴される。(注4)特に、加害者は有罪判決を受けるために意図された犯罪を完了する必要はない。つまり、“試みられた“Wire Faud”詐欺は、完了したものと同じペナルティが科される。

1.Wire Fraud成立の要素

(1)詐欺のスキームまたは巧妙さ、 (2)被告が自発的かつ意図的に別の金銭を詐欺する計画を考案または参加したこと。 (3)被告が詐欺の意図(mens rea)(注5)で実際に行ったことたこと、 (3)州間電信通信が使用されることが合理的に予見可能であったこと。 (4)州間電信通信が実際に使用されたこと。

2.Wire Fraudの具体的手口例

Work-at-home schemes:インターネットで宣伝した在宅勤務高収入スキーム

Fraudulent online:偽の投資機会を提供する詐欺オンライン

Phishing scamsフィッシング詐欺: 不正な電子メールを送信して、パスワード、クレジットカード番号, および社会保障番号などの個人情報を開示するように人々を欺くなど、アカウントへの不正アクセス権を取得する。

Telemarketing fraudテレマーケティング詐欺: クレジットカード情報を放棄するよう説得するために隠匿している人々に電話をかけるなど,

False radio or TV ads:虚偽のラジオまたはテレビ広告:メデイアを利用して 存在しない、または著しく誇張された製品を販売する。

3.Wire Fraudの罰則

18 U.S. Code § 1343 - Fraud by wire, radio, or televisionの条文を仮訳する。

 高額な罰金や連邦刑務所での最長20年の拘禁刑が科せられる。また、被告は銀行のような金融機関に関係している場合、被告は最高30年の拘禁刑または罰金最高100万ドル(約1億4700万円)が科せられ、またはこれらの併科もある。

 特に、上記の文はWire Fraudの各訴因(カウント)に適用され、すべての個別のカウントは刑務所でかなりの時間を追加する可能性があり,たとえば、複数の被害者との10件の個別のWire Fraudで有罪判決を受けた場合、被告は最大200年の拘禁刑が科せられる。

(注4) Mail FraudとWire Fraudの明確な法的区別についてはサイトを参照されたい。

(注5)ラテン語“mens rea”とは「犯罪の意図」(故意)を指す。 ラテン語からの直訳は「罪深い心」である。 メンズレア(“mens rea”)とは、特定の犯罪で特定の被告に有罪判決を下すために法的に必要とされる精神状態をいう。 刑事裁判で有罪を証明するには、通常、犯罪行為(犯罪の身体的要素)に加えて、犯罪者の“mens rea”)領域を確立することが必要である。 検察は通常、被告が有罪の精神状態で犯罪を犯したことを合理的な疑いを超えて証明しなければならない。 かつて連邦最高裁ホームズ判事が「犬でも、つまずくことと蹴られることの違いは知っている」と意図の概念を説明したのは有名である。

 “mens rea”の要件は、人は罪の意識を持ち、自分の違法行為を認識していなければならないという考えを前提としている。ただし、被告は、犯罪を犯すために自分の行為が違法であることを知る必要はない。むしろ、被告は「自分の行為が犯罪の定義に適合する事実」を認識していなければならない。(Cornell Law Schoolの解説から抜粋、仮訳)

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AI立法 のトレンド: 米国の州法案の発展を概観

2024-02-03 06:35:40 | AI

 筆者は本ブログでAIへの取組につき以下のテーマを取り上げた。

①2023.12.16 「NISTからこのほど公開された『NIST SP 800-226 草案』および『差分プライバシー保証を評価するためのガイドライン草案』に対するパブリックコメントの背景と意義」、 ②2023.12.22 「米大統領令(EO: Executive Order 14110)の具体的内容と意義およびそれに基づく責任の履行を支援するためNIST『情報提供依頼文書』の具体的内容」、③2023.12.24 「米国国立科学財団 (NSF) 工学局 (ENG)の人工知能(AI)に関連する研究および教育提案の提出を積極的に奨励する具体的ガイダンスの発出」である。

 ところで、アトランダムであるが、本ブログにおいて今後、筆者がAI関連で取り上げたいと考えるテーマを以下で挙げる。

(1)米国連邦ベースでのAI規制法案の立法動向、(2) FTC(連邦取引委員会)のAI企業にプライバシーと機密保持の約束を守るよう警告ならびに商品先物取引委員会(CFTC)の顧客宛て勧告:人工知能詐欺に注意するよう警告、(3)EUの取組み(A European approach to excellence in AI; A European approach to trust in AI; European proposal for a legal framework on AI; Important milestonesの概観や欧州委員会独自の取組み(3)英国の取組みとして2023 年 3 月 29 日付け英国情報コミッショナー局 (ICO)のAI と個人データ保護に関する最新のガイダンスを発表、等である。

〇グローバルな法律事務所: Covington & Burling LLPの律情報プラットフォームLexblog21日付けblogを以下、仮訳する。なお、個別州法案の具体的内容についてはリンク先で直接確認されたい。

 本ブログの著者はYaron Dori、August Gweon、Jayne Ponderである。

Yaron Dori 氏

Jayne Ponder 氏

 米国の政策立案者は、特に州レベルで人工知能(AI)を規制する法案に関心を示し続けている。 連邦議会における包括的な AI 法案と枠組みは大きな注目を集めているが、州議会も AI を規制する独自の取り組みを進めている。

 このブログ投稿では、過去 1 年間に導入された州の AI 法案の主要テーマをまとめている。 新しい州議会が始まり、今後数か月間でさらに活発な活動が見られることが予想される。

(1)通知義務要件(Notice Requirements:): 州の AI 法案の多くは、個人への通知に重点を置いている。 一部の法案では、雇用におけるAIの使用など、個人の権利や機会に影響を与える意思決定のために自動化された意思決定ツールを使用する場合、対象となる事業体に個人に通知するよう義務付けることになる。

 たとえば、コロンビア特別区の「アルゴリズムによる差別停止法」(B 114) では、情報源に関する情報の提供を含め、対象事業体がアルゴリズムによる適格性の決定において個人情報をどのように使用するかについての通知が必要となり、また、「有害な行為」をもたらすアルゴリズムによる適格性の決定の影響を受ける個人に通知する等別途通知が必要となる。

 同様に、マサチューセッツ州の「陰惨な労働環境を防止法」(HB 1873) も同様に、自動意思決定システムを使用する雇用主またはベンダーに対し、システムを導入する前に労働者に通知することを義務付けており、「重大な更新または変更がある場合システムに加えられた変更」には追加の通知を必要とさせる。さらに、他の AI 法案は、AI エコシステム内の事業体間の開示要件に焦点を当てている。たとえば、ワシントン州議会は、自動意思決定ツールの開発者に対し、ツールの「既知の制限」、ツールのプログラムやトレーニングに使用されるデータの種類、およびツールの使用方法やいかにツールの導入者に対する有効性が評価されるか等に関する文書の提供を義務付ける法案 (HB 1951) を検討している。

 (2) AI ツール開発における影響評価(Impact Assessments): 州の AI 法案のもう 1 つの重要なテーマは、AI ツール開発における影響評価の要件に焦点を当てている。 これらの評価の要求規定は、潜在的な差別、プライバシー、正確性への損害を軽減することを目的としている。

 たとえば、バーモント州法案 (HB 114) では、自動化された意思決定ツールを使用する雇用主に対し、雇用関連の意思決定にツールを使用する前にアルゴリズムによる影響評価を実施することが求められている。

 さらに、ワシントン議会で審議中の前記の法案 (HB 1951) では、AI導入者に対し、アルゴリズムによる意思決定の合理的に予見可能なリスクの評価や実施される安全措置等、自動化された意思決定ツールの影響評価を完了することが求めている。

(3)個人の権利保護(Individual Rights): 州議会は、消費者が特定の個人の権利を行使するための要件を AI 法案に盛り込むことも求めている。 たとえば、いくつかの州の AI 法案では、自動化された意思決定に基づく決定を「オプトアウト」したり、そのような決定について「人間による再評価を要求」することで個人の権利を確立する予定である。

 例えば、カリフォルニア州 (AB 331)ニューヨーク州 (AB 7859) は、自動化された意思決定ツールが結果的な問題を解決するために使用されている、またはその制御要因となっている場合に、個人が「代替選択プロセス」を要求できるように AI 導入業者に義務付ける法案を検討している。

  同様に、ニューヨークの AI 権利章典 (S 8209)は、人間による代替を支持して自動システムの使用を「オプトアウトする権利」を個人に与えることにmなっている。

(4)ライセンスと登録制度(Licensing & Registration Regimes): 少数の州議会が AI のライセンスと登録の要件を提案している。 たとえば、ニューヨーク州の高度 AI ライセンス法 (A 8195) では、特定の「高リスクの高度 AI システム」のすべての開発者および運用者に対し、使用前に州にライセンスを申請することが義務付けられている。 他の法案では、AI システムの特定の用途に登録が必要である。 たとえば、イリノイ州議会で導入された修正案 (HB 1002) では、病院が使用する診断アルゴリズムの州による認証が必要になる。

(5)  生成 AI とコンテンツのラベル付け(Generative AI & Content Labeling): 州の AI 法におけるもう 1 つの顕著なテーマは、生成 AI システムによって生成されたコンテンツのラベル付けに焦点を当てていることである。

 たとえば、ロードアイランド州は、生成 AI コンテンツを認証するために「独特の透かし(distinctive watermark)」を要求する法案 (H 6286) を検討している。

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