Financial and Social System of Information Security

インターネットに代表されるIT社会の影の部分に光をあて、金融詐欺・サイバー犯罪予防等に関する海外の最新情報を提供

CFPBは暗号資産運用を隠ぺいし偽の高利回り銀行口座を提供したとしてローン・ドクター社およびエドガー・ラジャブリに対して1900万ドルの被害者への返金ほか罰金措置を講じる同意命令を発出

2022-12-03 12:14:26 | 違法なマーケテイング規制

 12月2日、筆者の手元に米連邦金融規制監督機関である消費者金融保護局(CFPB)からの標記の緊急リリースが届いた。

その要旨は以下のとおりである。

 元CEOエドガー・M.ラジャブリ(Edgar M. Radjabli)は、顧客から集めた資金を現在は倒産した“Celsius Network”(注1)を含むリスクの高い投資手段と暗号資産に投入した。

Edgar M. Radjabli 氏

 12月1日、「消費者金融保護局(CFPB)」は、ローン・ドクター(Loan Doctor LLC(有限責任会社) (注2)とその創設者であるエドガー・ラジャブリが消費者をだまして商業銀行内の保証されたリターン貯蓄商品に資金を預けていると誤解させることによって関係法律を破ったというCFPBの主張を解決するために、ローン・ドクターLLCに対して告訴をニューヨーク州南地区連邦地方裁判所に起こした。

 ローン・ドクター社とラジャブリは、各種メディアや著名人を利用し預け入れた資金は医療従事者向けのローンを開始するために使用され、保険口座に保管されるか、現金の代替手段によって裏付けられ、年率5%から6.25%の間の金利が利回りになると誤解を招く誤った広告、宣伝等を行った。

 連邦裁判所によって承認された場合、提案された和解案は、被告が消費者に支払うべきすべての利息を含む、行われたすべての預金を返金することを要求する。また被告は、民事上の罰金を支払い、預金受取活動に他人を関与または支援することを永久に禁止される。

 なお、ラジャブリは証券取引委員会(SEC)から別途起訴されている。

 今回のブログは最近、米国やその他の国々が多発する暗号資産からにも詐欺犯罪の例としてわが国でもすでに被害が発生しているこの問題の実態、手口などを解明すべくCFPBのリリース文を仮訳するとともに解説を試み、併せてフロリダ州ボカラトンのエドガーM.ラジャブリと彼が管理する2つの事業体を、規模が拡大する3つの別々の証券詐欺に関与したとして起訴した事件のSECリリースを引用、仮訳する。

1.CFPBのリリース内容

 CFPB局長のロヒット・チョプラ(Rohit Chopra)は、「ローン・ドクターとその創設者は、高利回りの貯蓄商品を求める人々のために口座を開設するために伝統的な銀行を装った。実際には、この組織とその首謀者は、リスクの高い投資に顧客の資金を使用していた」と述べた。

 ローン・ドクターとして事業を行う“My Loan Doctor LLC”は、フロリダ州ウェストパームビーチとニューヨーク市で事業を展開しているデラウェア州の金融サービス会社である。ローン・ドクターは、同社によれば、「米国の貯蓄商品の中で最高のリターン」をもたらすヘルスケア・ファイナンス貯蓄CDアカウント(Healthcare Finance Savings CD account)を顧客に提供すると宣伝した。創設者であることに加えて、エドガー・ラジャブリはローン・ドクターのCEO役員であり、その管理を担当していた。

 CFPBは、ローン・ドクター社とラジャブリがローン・ドクターのヘルスケアファイナンス貯蓄CDアカウントの広告で、いくつかの虚偽(false)の、誤解を招く(misleading)、不正確(inaccurate)なマーケティング表現を行ったと主張した。2019年8月から、ローン・ドクターは、ローン・ドクターの欺瞞的に宣伝されている貯蓄商品を開いて入金した少なくとも400人の個人から数百万ドルを受け取った。具体的には、ローン・ドクター社とラジャブリはPRニュースワイヤー(PR Newswire)等を利用し、権威を悪用しながら次のように誤解を招く表現を行った。(この青字部分は筆者が独自に調べた)

2019.11.14 PRニュースワイヤー(PR Newswire)(注3)記事を仮訳

ヘルスケア業界の融資に焦点を当てたフィンテック企業であるローン・ドクターは、2人の業界ベテランをチームに加えることを発表した。トッド・マーシャル(Todd Marshall )博士(DDS、MBA、FACD)

Todd Marshall氏

https://www.carequest.org/who-we-are/boardから引用

Independent Advisor and Consultant

 は、以前は中西部の大規模な歯科グループであるパークデンタル(Park Dental)(注4)のリーダーであり、デンタクエスト(DentaQuest)とメットライフ(MetLife)の取締役であり、大規模な医療行為のためのローン・ドクターの資金調達活動に焦点を当てて、大規模なグループ関係部門の責任者として参加している。

 ローン・ドクターがローンを転売する機関投資家との関係を拡大するために、同社はまた、WL Ross       (注5)マネージング・ディレクターであり、3億ドルの新興市場および金融サービスファンドを監督したランジート・ナバ(Ranjeet Nabha)氏を追加した。

 エドガー・ラジャブリ最高経営責任者(CEO)は「マーシャル博士とナバ氏が加わったことで、医療融資スペースを混乱させ続ける中で、ローン・ドクターの継続的な成長と拡大に向けて位置付けられる」と述べた。

この業界におけるローン・ドクターの革新内容は、独自の消費者貯蓄商品であるHCFハイイールドCD(Healthcare Finance Savings CD account)にまで及び、1か月の更新可能な期間で業界をリードする6%のAPYを支払う。この商品は、特に景気後退への懸念の高まりに照らして、安全で予測可能な投資オプションを探している貯蓄者に人気があることが証明されている。

ローン・ドクター社について

 ヘルスケアおよび金融サービス業界のリーダーによって設立されたLoan Doctor社の主な焦点は、診療所の取得、商業用不動産の購入、学生ローンの借り換えなどの資金調達ニーズを備えた医療専門家を支援することであり、ローンドクターチームはこれまでに3500人以上の医師を支援し、650MM(650百万ドル:約133億円)を超えるローンを組んで、米国50州すべてのクライアントにサービスを提供してきた。

メディア連絡先:

エドガー・ラジャブリ

(305)859-4563

228953@email4pr.com

【ローン・ドクター社とラジャブリの偽の表示内容と違法行為内容】

①顧客の預金は医療従事者のためのローンを起点とする:ローン・ドクターとラジャブリは、ローンを開始するとき、それを購入するために投資家が並んでいるだろうと預金者に語った。実際、ローン・ドクターは、医療専門家向けのローンを開始するために預金を使用したことはなく、ローンを購入するために買い手または投資家と契約を締結したことはなかった。

②顧客の預金は安全である:ローン・ドクターは、ローンの開始に使用されない場合、預け入れられた資金は連邦預金保険公社(FDIC)が保証する口座またはロイズ・オブ・ロンドン(Lloyd's of London)が保険をかけた口座に保持されるか、「現金代替」または「現金同等物」によって裏付けられることを表明した。またローン・ドクターは、顧客が預けた金額に相当する金額の現金準備を維持していると記載した。

しかし、CFPBの調査によると、ラジャブリはこれらの代わりに、彼が管理するヘッジファンドとセルシウス・ネットワーク(Celsius Network)などの暗号資産に資金を投入した。預託された資金は、活発に取引されている有価証券に投資されたり、第三者を通じて個々の株式ポートフォリオを担保として投資家に貸し出されたりした。

③ローン・ドクターは商業銀行である:ローン・ドクターは、返品が保証された従来の普通預金口座のような口座に資金を預けていると顧客に誤解させた。実際、ローン・ドクターは商業銀行ではなく、預金者の資金は不安定な証券または証券担保投資に投資されていた。

 ヘルスケアファイナンスのハイイールドCDアカウントには、高金利を支払った記録があった。ローン・ドクターは、5年より前の年に口座が6.25%から2019%の利息を支払ったと述べた。しかし、実際、ローン・ドクターは2019年8月まで消費者預金の受け取りを開始しなかった。

法的強制措置

 消費者金融保護法に基づき、CFPBは、不公正、欺瞞的、または虐待的な行為や慣行に従事するなど、消費者金融保護法に違反する機関に対して措置を講じる権限を持つ。今回、提案された和解案は、裁判所によって承認された場合、ローン・ドクターとラジャブリに次のことを要求する。

① 約400人の預金者に約1900万ドル(約24億8900万円)を返金する。:被告は、影響を受けた各人がローン・ドクター・ヘルスケアファイナンスハイイールドCDアカウントに預けたお金を、製品の宣伝条件と一致する方法で、つまり元本と平均年利約6%で返還する必要がある。

② 預金受入活動に従事することの永久禁止:被告は、預金受取活動に他人を関与または支援することを永久に禁止される。

③ 391,530ドル(約5207万円)の民事罰金を支払う:この命令は、被告がCFPBに391,530ドルの民事罰金を支払うことを要求する。そのペナルティの一部である241,530ドル(約3212万円)は、被告がその金額をSECにペナルティとして支払ったため、その機関によって提起された同様の訴訟のために送金される。残りのペナルティ額(約1995万円)は、CFPBの被害者救済基金に預けられる。

 今日の提案されたCFPBの裁判所への告訴文(原文)「定められた最終判断と命令([Proposed] Stipulated Final Judgment and Order)(注6)を参照されたい。

 消費者は、CFPBのウェブサイトにアクセスするか、(855)411-CFPB(2372)に電話することで、金融商品またはサービスに関する苦情を提出できる。

 なお、CFPBは自分の会社が連邦消費者金融法に違反していると思われる企業の従業員は、自分が知っていることに関する情報をwhistleblower@cfpb.gov に送信することを勧奨する。

2.証券取引委員会(SE)Cは、歯科医から投資顧問に転向した3つの別々の詐欺で起訴

 SEC訴訟リリース第25115号 (2021年6月11日)証券取引委員会対エドガー・M・ラジャブリ他、第2:21-cv-01761-MBS(2021年6月11日提出)を仮訳する。(法令リンクは筆者の責任で行った)

 SECは、フロリダ州ボカラトン住のエドガーM.ラジャブリ(以下、ラジャブリ)と彼が管理する2つの事業体を、規模が拡大する3つの別々の証券詐欺に関与したとして起訴した。

 SECの訴状(Complaint)は、元開業歯科医のラジャブリと、ラジャブリが所有および管理している未登録の投資顧問会社であるアピス・キャピタル・マネジメント(Apis Capital Management LLC (以下、「アピスキャピタル」という)が、アピスキャピタルの主要投資ファンドのトークン化された利益を表すデジタル資産であるアピス・トークンの不正な提供を行ったと主張している。ラジャブリとアピスキャピタルは2018年6月のプレスリリースを発行し、Apis Tokenオファリングが実際には資金を調達していないのにかかわらず170万ドル(約2億2600万円)を調達したと誤った宣伝を行った。

 訴状はさらに、ラジャブリとアピスキャピタルが、2018年12月にVeritoneを2億ドルで買収する一方的な現金公開買付けを発表することにより、上場人工知能企業であるラジャブリとアピスキャピタルはVeritone, Inc.の証券市場を操作したと主張しているが、実際には、ラジャブリとアピスキャピタルは、取引を完了するために必要な資金調達、または資金調達の合理的な見通しを欠いていた。ラジャブリは、アピスキャピタルと関連ファンドに代わってVeritone証券を取引することにより、Veritoneの株価の上昇により162,800ドルの違法な利益を生み出したとされている。

 最後に、訴状は、ラジャブリがMy Loan Doctor LLC(ローン・ドクター)を通じて2019年8月に開始された未登録の不正な証券募集で、450人以上の投資家から約2,000万ドル(約26億6000万円)を調達したと主張している。ラジャブリは、ローン・ドクターによって調達された投資家資金が医療専門家へのローンを開始するために使用され、その後証券化されて大規模な機関投資家に売却されると誤解を招く表明を行った。代わりに、ラジャブリは投資家資金の大部分をデジタル資産貸付会社への無担保および無保険のローンに投資し、投資家の収益のほぼ180万ドルをアピスキャピタルに貸し付けた。

 SECの訴状は、1933年証券法(SECURITIES ACT OF 1933)第5条(a)および(c)の登録規定、ならびに証券法第17条(a)、1934年証券取引所法(Securities Exchange Act of 1934)第10条(b)および第14条(e)、ならびにその下の規則(Final Rule:Selective Disclosure and Insider Trading)10b-5および規則(Final Rule:Regulation of Takeovers and Security Holder Communications)14e-8を含む連邦証券法のいくつかの不正防止規定ならびに1940年投資顧問法第(Investment Advisers Act of 1940)206条(4)およびその下の規則206(4)-8に違反したとして、ラジャブリ、アピスキャピタル、およびローン・ドクター社を起訴した。

 被告は、訴状の主張を認めたり否定したりすることなく、彼らに対する告発を解決することに同意した。裁判所の承認を条件とする和解案では、ラジャブリは合計60万ドル(約780万円)の金銭的救済(monetary relief)を支払う必要があり、そのうち16万2,800ドル(約2165万2400円)の不利益、17,870ドル(約237万8000円)の最終判決前利息(prejudgment interest)の(注2)、および419,330ドルの民事罰で構成され、ラジャブリ、アピスキャピタル、およびローン・ドクター社は、3つの詐欺におけるアピスキャピタルとローン・ドクターのそれぞれの役割に基づいて連帯して責任を負う。

 また和解は、ラジャブリ、アピスキャピタル、およびローン・ドクター社が連邦証券法の有責条項に違反することを永久に禁止し、ラジャブリに違法行為に基づく差し止め命令とペニー・ストック・バー(penny stock bar) (注6)を課し、同時にラジャブリを証券業界から締め出すことを明記した。

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(注1) セルシウス・ ネットワーク LLC(Celsius Network LLC)は、2022年に倒産し​​た仮想通貨の貸付専門会社である。ニュージャージー州ホーボーケンに本社を置くセルシウスは、4 か国にオフィスを構え、世界的に事業を展開していた。ユーザーは、ビットコインやイーサリアムを含むさまざまな仮想通貨デジタル資産をセルシウスのウォレットに預け入れて一定の利回りを得ることができ、仮想通貨を担保として差し入れてローンを組むことができた。2022 年 5 月の時点で、同社は顧客に 80 億ドル(約1兆640億円)を貸し出し、運用資産は約 120 億ドル(1兆5960億円)に達していた。2022 年 6 月、同社は「極端な市況」のためにすべての送金と引き出しを無期限に一時停止したことで悪名を馳せ、その結果、ビットコインやその他の仮想通貨の価格が急落した。 2022 年 7 月 13 日、セルシウスは連邦倒産法第 11 章(Chapter 11)に破産を申請した。(Wikipediaから抜粋、仮訳 )

 なお、2022.10.5 セルシウスの創業者兼元CEOアレックス・マシンスキー(Alex Mashinsky)氏、資金引き出し停止の前に1000万ドル(約13億3000万円)を移動したという報道がある。

Alex Mashinsky 氏(CNBCから引用)

ちなみに、現在のCelsius Network LLCの画面を見ておく。

(注2) LLC(Limited Liability Company)

1977年ワイオミング州において初めて制定された、比較的新しい会社形態である。現在では全ての州において設立することができるようになった。

LLCの特徴を一言でいうと、会社としての永続性・有限責任を維持しながら連邦法人税を回避することができる法人ということになる。(markresearch.com の解説 から一部抜粋)

「LLCとは? 日本の合同会社とは何がちがう? 日米LLCの違い」

 会社法人の中でも、最近人気を集めつつある合同会社。「LLC」とか「日本版LLC」と表現されることもありますが、いったいこれはどういう意味なのでしょうか?今回は「LLC」という言葉(制度)について解説します。

LLCと合同会社

 LLCというのは英語の「Limited Liability Company」の頭文字を取ったもので、アメリカで設立される会社形態のひとつです。Limitedは日本語で「有限」、Liabilityは「責任」、Companyは「会社」ですから、直訳すると「有限責任会社」となります。LLCは日本の株式会社などと同じく、出資者の責任を出資額の範囲に限定しているのが特徴です。しかし「所有と経営が分離」されている株式会社とは違い、出資者と社員が同一という特徴があります。

 このLLCに近い会社制度が日本にもあります。それが「合同会社」です。LLCと合同会社が似ているのは偶然ではありません。合同会社は、実はアメリカのLLC(以下、米LCC)をモデルに作られた制度なのです。このため合同会社は「日本版LLC」とか、単に「LLC」と呼ばれることもあります(合同会社が社名を英語表記する場合、名前の最後に「LLC」を付けても良いことになっています)。

 しかし、米LLCと日本の合同会社は「似て異なる」制度です。よく似た部分もある一方で、米LLCの持つ大きな特徴が合同会社にはありません。その点について、次の項目で見てみましょう。

米LLCの特徴

 まず米LLCのおおまかな特徴について箇条書きで説明します。

(A)出資者は自分が出資した範囲のみで責任を負う(有限責任)

(B)株式の発行はできず、メンバーが直接出資する(持分会社)

(C)メンバー自ら経営に参加するか、外部のマネージャーを任命して経営を任せることができる

(D)金銭・動産・不動産のほか役務(サービス)による出資も可能

(E)法人課税かメンバー個人の所得への課税(パススルー課税=二重課税の回避)を選べる

(Legal Searchから一部抜粋、引用)。

(注3) Cision Companyの1企業であるPRニュースワイヤーは、ニュース配信、アーンドメディア・ソフトウエアおよびサービスの世界的大手プロバイダーである。Cisionのクラウドコミュニケーション商品スイートと連動し、PRニュースワイヤーのサービスはマーケッター、コーポレートコミュニケーター、インベスターリレーションズ担当者が重要なインフルエンサーを見いだし、ターゲットオーディエンスに関与し、戦略的コンテンツを制作・配信し、意味のある影響を測定することを可能にする。世界最大のマルチチャンネルかつ多文化のコンテンツ伝送ネットワークを包括的なワークフローツールおよびプラットフォームと組み合わせることで、PRニュースワイヤーは世界中の組織のストーリーに力を与える。PRニュースワイヤーは米州、欧州、中東、アフリカ、アジア太平洋地域に展開するオフィスから何万もの顧客にサービスを提供している。(Kyodo News PR Wireから一部引用)

(注4) 1972 年以来、Twin Cities 全体の大人と子供たちは、彼らの笑顔を健康で明るいものにするために Park Dental を信頼してきた。私たちは、質の高い患者中心のケアを通じて生涯の歯の健康を提供する医師によって所有および運営されている、便利な場所を多数持つ地元のグループである。(Dental ParkのHPから引用、仮訳)

(注5) WL Ross & Co は、2000 年 4 月に Wilbur Ross によってニューヨークに設立され、本拠地を置いているプラ​​イベート エクイティ会社である。同社は、通常、米国、韓国、アイルランド、日本、フランス、中国等で、1 億ドルから 2 億ドルの範囲の過小評価された株式を保有する、財政難に陥った企業への投資に焦点を当てている。WL Ross & Co. LLC は、購入および/またはバイアウトを通じて投資の過半数の株式を取得することにより、リストラ、ターンアラウンド、合併、再編成、および業界統合の選択肢を得ることができる。 2002 年から、WL Ross は LTV Steel Corp、Bethlehem Steel、Weirton Steel、Acme Steel、Georgetown Steel、Youngstown Sheet and Tube、Republican Steel などの倒産した鉄鋼会社の資産を取得し始めた。 2003 年までにロスは全米鉄鋼労働者との関係を築き、雇用を救うことを約束した。 WL Ross は倒産した LTV Corp.、Acme Steel、Bethlehem Steel を組み合わせて International Steel Group (ISG) を設立した。ISG はすぐに米国最大の統合鉄鋼会社となり、2005 年にはフォーチュン 500 企業になった。(Wikipediaから抜粋し、仮訳)

なお、Wilbur Ross氏の略歴をあげる。(Ballotpediaから抜粋 )

February 28, 2017-January 20, 2021: U.S. Secretary of Commerceトランプ政権での商務長官

1997-2017: Chairman and Chief Strategy Officer of WL Ross & Co. LLC.

1976-1997: Corporate bankruptcy and restructuring specialist, Rothschild Inc.

(注6)CFPBの連邦裁判所ヘの告訴状の主文部を仮訳する。

【同意提案に基づき定められた終局判決と命令について】

 消費者金融保護局 ( Bureau of Consumer Financial Protection:以下、Bureauという) は、2020 年 7 月 6 日に Loan Doctor, LLC および Edgar Radjabli (被告) に対して、差止命令およびその他の救済を得るために、この民事訴訟を開始した。 本訴状は、「2010 年消費者金融保護法 (CFPA) 」の § 1036(a)(1)(B)、12 U.S.C. § 5536(a)(1)(B) の被告の預託活動に関連する。

 CFPBと被告は、事実または法律の問題の裁定なしに、この規定された最終判決と命令 (以下、「命令」という) の登録に同意し、訴状で主張された行為から生じるすべての論争事項を和解(settle )および解決(resolve)する。

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中国が米国との貿易交渉に先立つ企業秘密保護法「中华人民共和国反不正当竞争法」を改正強化

2019-05-08 17:46:44 | 違法なマーケテイング規制

 2019年4月23日、第13期中国全国人民 代表大会常務委員会は、不正競争防止法の改正案を採択し、中国の企業秘密保護法にあたる「1993年反不正当竞争法」を大幅に強化した。 中国における知的財産保護の強化は、中国と米国を含む国際社会との間の重要な貿易交渉に先立って行われた。

 なお、国際化という同様の趣旨で中国は商標法の改正法案の改正案も同日、常務委員会で採択している。 

 今回のブログは、2019.5.7 Crowell & Moring LLP「China Strengthens Trade Secret Protections Ahead of Trade Negotiations」に基づき、そのポイントを仮訳、解説する。また、参考までに常務委員会が採決した一連の関連法の改正法うちの7番目の「反不正当竞争法(不正競争防止法)」の改正箇所を筆者なりに仮訳し、2.附則として載せる。 

 なお、同法は2017年11月4日に一部改正を行っている。反不正当竞争法 (2017年改正)は、2017年11月4日、第12期全国人民代表大会常務委員会第30回会議にて可決、公布された。2018年1月1日施行されている。(注1)

 同時に行われた、商標法改正については、別途本ブログで取り上げる。

1.1993年反不正当竞争法の一部改正内容

 不正競争防止法の主な改正項目は、次の点である。 

① 「商業情報」の定義:以前は商業秘密の定義は「技術的または運用上の」情報に限定されていましたが、改訂された定義には現在「商業情報」が含まれ、保護可能な商業秘密の範囲が大幅に広がった。 

② 「侵害者」の定義:改正案は、侵害者の定義を以前のような「事業者(business opreators)」だけでなく、「その他の自然人、法人または法人組織以外の組織」も含むように広げた。新しい定義は、その範囲内に個々のハッカーまたは悪人(bad actor)を明示することによって旧法の定義を明確化した。

③ 「侵害行為」の定義: 改正法の下では、「ハッキング」は他者が秘密の義務を破るように促したり、誘導したり、助力したりする行為を明示的に商業秘密の侵害を構成するとした。

④ 「立証責任」: 改正された規定では、権利保持者が(1)秘密保持のために合理的な措置を講じたこと、(2)その商業秘密は不正使用されたことのみの立証で良いという点で立証責任の移転シフトの仕組みを作り出すことによって、外国の商業秘密保持者が中国における商業秘密の不正流用の法執行行動を起こすことをより容易にする。 もし権利保持者がこの一応の立証(prima facie )表示を可能にするならば、それが合法的な手段を通して商業秘密を取得したことを証明するために、立証責任は被告たる侵害者に移る。 侵害の推定(presumption of infringement)は、権利保持者の権利が大きく有利に変化したことを表す。 

 「損害額」:新法では、権利侵害の繰り返しに対する懲罰的損害賠償額が増加され、1〜3倍ではなく1〜5倍の損害賠償(または権利者の実際の損失)が見込まれる。法定損害賠償額は、法律に違反した場合の300万人民元(約442,875米ドル:約48,738万円)から、500万人民元(約738,125米ドル:約81,266万円)に引き上げられた。

これらの法改正は、2019年4月23日の採択時に即効力を生じた。 

2.2019年4月23日可決、即施行された該当改正法の部分訳(附則)

 以下で仮訳する。なお、筆者は中国法の専門家でないのであくまで原文にあたられたい。

7.「中華人民共和国の不正取引防止法」を改正する。

1項 第9条を次のとおり改正する。「事業者は、次の商業秘密の侵害行為を行ってはならない。

 ① 窃盗、贈収賄、詐欺、強制、電子的不法侵入その他の不適切な手段により権利者の商業秘密を取得すること。

 ② 前号の手段により取得した商業秘密を他人に開示、使用または使用させること。

 ③ 秘密保持義務を開示する、または権利保有者が有する商業秘密を他者に開示、使用または使用させることをもって、保護すべき商業秘密に対する権利保有者の要求に違反すること。

 ④ 他の権利保有者の商業秘密を取得、開示、使用または使用することを促すことをもって、他人の機密保有義務に違反すること、または保護すべき商業秘密に対する権利保有者の要求に違反すること。

    前項の違法行為をした事業者以外のその他の自然人、法人および法人以外の団体は、商業秘密を侵害したものとみなす。

第三者は、商業秘密権の所有者の従業員、元従業員または他の単位または個人が本項の最初のパラグラフにリストされる違法な活動を実行して、まだ、商業秘密を使う他を得て、明らかにして、使うかまたは許すということを知っているかを知る義務がある。

    この法律で引用する商業秘密とは、一般に知られておらず、商業的価値を有し、権利者による適切な商業秘密保持措置の対象となる技術情報や事業情報などの商業的情報を指す。

2)項 第17条を次のように改正する:「事業者がこの法律の規定に違反し、他人に損害を与えた場合は、当該事業者はこの法律に従って民事責任を負う。

    事業者の正当な権利と利益が不当な競争によって損害を受けた場合、人民法院に訴訟を起こすことができる。

不当競争によって損害を受けた事業者に対する補償額は、侵害によって被った実際の損失に応じて決定される。実際の損失を計算することが困難な場合、侵害について侵害者によって得られた利益に従って決定される。重大な行為の場合、状況が深刻であれば、補償の金額は上記の方法で決定された金額の2倍以上かつ5倍の範囲内で決定される。

     「事業者がこの法律の第6条および第9条の規定に違反した場合、侵害により権利者が被った実際の損失および侵害により侵害者が得た利益を決定することが困難である場合、人民法院は侵害の程度に従って権利者を裁定する。その補償額は 500万元未満とする。

 (3)項 第21条の規定をつぎのとおり改正する。

 事業者その他の自然人、法人及び法人組織が本法第9条の規定に違反したときは、監督・検査部(注2)は、違法行為の停止及び違法所得の押収を命ずるものとする。罰金額は 10万元以上100万元以下とするが、違反が深刻な場合は、50万元以上500万元以下の罰金を科す。

(4)項 第32条として以下の1条を追加する。

 商業秘密を侵害するための民事審理手続において、商業秘密権者は、主張された企業秘密に対して秘密の措置を講じ、合理的に企業秘密を示しているという簡単な証拠を提供する。侵害されたと主張する侵害者は、権利者によって主張された商業秘密が本法に規定する企業秘密に属していないことを証明するものとする。

 商業秘密の権利者は、その商業秘密が侵害されているという基本的な証拠を提供し、次のいずれかの証拠を提供する。また、侵害者は、企業秘密の侵害がないことを証明しなければならない。

①侵害者が、商業秘密にアクセスまたはアクセスできること、および使用された情報が商業秘密と実質的に同じであるという証拠があること。

②商業秘密が侵害者によって侵害されていることが開示、使用、または疑われる証拠があること。

③ 商業秘密が侵害者によって侵害されているという他の証拠があること。

********************************************************

(注1) 2017年の反不正当竞争法の改正につき、わが国での解説を参照。

(注2) 反不正当竞争法の第3章監督と検査において監督検査部門の権限等の規定がある。

 第16条 郡レベル以上の監督検査部門は、不正競争行為の監督および検査を行うことができる。

 第17条  督検査部門は、不正競争を監督および検査する際に、以下の権限を行使する権利を有す。

 以下は略す。

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CNILは”Vectaury”にGDPRに基づく明確な「同意」を課すべきとの警告(その1)

2019-02-04 08:37:55 | 違法なマーケテイング規制

  筆者は、自身のブログの(筆者注10)で簡単に言及したが、2018年11月9日、フランスのデータ保護監督機関である「情報処理及び自由に関する国家委員会(以下、CNIL)は、正式な警告仏語で入手可能)を公表し、オンライン広告スペース購入業者”Vectaury”の顧客に対する「同意」の方法を変更し、アプリのインストール以前に取得した「無効な同意」を基礎とすべきでない旨の警告を行い、併せて適切な法的根拠なしに広告目的で地理位置情報データの処理を中止するよう同社に命じた。

 今回のブログは、(1)さる2018年11月16日付け”Inside Privacy”Blog仮訳するとともに、(2)このCNILの命令措置に対する欧州インタラクティブ広告協会(IAB Europe)のTransparency&Consent Framework(TCF)の独自のコメント内容を紹介し、最後に(3)CNIL命令のリリースの要旨を仮訳、引用するものである。

 本文を読んで気が付くと思われるが、CNILをはじめEU加盟国のDPAの「EU一般情報保護規則(以下、DGPR)」の解釈はきわめて厳格である。これをわが国の企業に当てはめるとどうなるであろうか。また、わが国の個人情報保護委員が同様の技術的査定が可能であるか。これらを検証する意味で今回のブログをまとめた。

 今回のブログは、2回に分けて掲載する。 

1.2018年11月16日付け”Inside Privacy”Blogの概要

  以下で、概要を仮訳する。

 ”Vectaury”は、顧客(広告主)に代わってオンライン広告スペースを購入する広告ネットワーク業者である。同社はまた、広告主が自分のアプリに統合して、ユーザーのデバイスやブラウザに関する位置情報データや情報を収集できるソフトウェアツールも提供している。同社はこのデータを分析し、それを特定の地理的な関心のあるポイント(実店舗など)と比較し、ユーザーの習慣のプロファイルを作成する。これらのプロファイルに基づいて、同社は広告主に代わってターゲットを絞った広告キャンペーンを実施する。 広告キャンペーンの効果を評価するために、広告主の実際の店舗にいる間にユーザーを追跡する。

 広告主のアプリが提供する「同意」メカニズムは、アプリケーションがターゲットマーケティングの目的でユーザーのブラウザ履歴と地理的位置を収集することを説明する短い通知を提供した。それはユーザーに3つの選択肢を提供しました。すなわち、「受け入れる」、「拒否する」、または「彼らの好みでカスタマイズする」である。CNILによると、ツールを通じて収集された同意は、「同意」に関するGDPRの要件につき、次の3つの点で準拠していない。 

(1) 第一に、CNILは、提供された情報が不明確で、複雑な用語を使用し、そして容易にアクセスできないという理由で「同意」が通知されていないことを明らかにした(特に個人データを受信するサードパーティ・エンティティのリストがない)。

(2) 第二に、アプリケーションのインストール時に得られた「同意」は、ユーザーに同意または拒否の選択肢を与えただけなので、十分に具体的なものではない。 ユーザーは、ターゲットを絞ったマーケティング目的で、地理位置情報データの処理に特に「同意」することを求められていなかった。 

(3) 第三に、CNILは、ツールを通して得られた「同意」は肯定的な行動に基づいていないと指摘した。「自分の設定をカスタマイズする」を選択したユーザーは、事前にチェックされたオプションを含む別のポップアップに誘導された。 

 CNILの調査中に、”Vectaury”はInteractive Advertising Bureauが開発した「CONSENT MANAGEMENT PROVIDERS (CMPs)」ツールを実装した。しかし、CNILは、このツールによって提供された情報と「同意」がGDPRによって提示された同意の要件を満たしていないことを明らかにした。

 これはCNILがオンラインマーケティング会社に対して実施しているもう1つの法的措置であり、CNILが適用する高い基準は考慮されるべきものである。 ”Vectaury”には同意の経験があり、ユーザーが同意を与えることを拒否することを許可し、さらにはユーザーにきめ細かい設定を提供することさえできたが、それでもまだ十分ではなかった。 興味深いことに、これまでの機会と同様に、CNILはこれらのツールをアプリに組み込んだ広告主を調査していないようである。

2.欧州インタラクティブ広告協会(IAB Europe)のTransparency&Consent Framework(TCF)の観点から見た”VECTAURY”の運用の課題

  20181121IAB Europeは、CNILの査定決定とIAB Europeが策定した「透明性」と「同意」の枠組み(The CNILs VECTAURY Decision and the IAB Europe Transparency & Consent Framework) (注1)に関する客観的に評価した。以下で、その概要を仮訳する。CNILの命令等の内容は3で詳しく述べる。

(1) IAB Europeの Transparency&Consent Framework(TCF)実装との関係

 一部のコメンテーターは、IAB Europeの Transparency&Consent Framework(TCF)を実装したConsent Management Provider(以下、CMPという) (注2)を構築したため、”VECTAURY”はCNILの照準になったと示唆している。”VECTAURY” は2018年5月にTCF CMPとしての地位を確立した。

 しかし、そのコメンテーターの提案は間違っている。CNILの調査は、”VECTAURY”がTCF CMPとして登録される前に開始された。さらに、CNILが”VECTAURY”の行動がEUの一般データ保護規則(GDPR)に違反していると考える多くの点で、それはTCFのポリシーにも違反している。

(2) CNILがなぜVECTAURYの行動がGDPRに違反したと認めたのか

 CNILは、その通知の中で、2つのシナリオで”VECTAURY”がGDPRの下で個人データを処理するための法的根拠を持っていなかったことを発見した。 1つ目は、”VECTAURY”がモバイルアプリのモバイルアプリユーザーからその「SDK」(注3)を介して地理位置情報データを収集して処理し、もう1つはモバイルアプリの目録作成(inventory)に対してリアルタイム入札で受け取った個人データを収集して処理したことである。

 ””VECTAURYが主張する法的根拠は、データが処理されたユーザーの「同意」である。 CNILの警告通知は、両方のシナリオにおいて、”VECTAURY”とそのパートナーは有効な「同意」の条件を満たしていないことを宣言している。その結果、それは処理の法的根拠として役立つことができなかった。

(3) GDPRの要件を満たしていない具体的な行為

 最初のシナリオでは、”VECTAURY”が自社のSDKを介してモバイルアプリのモバイルアプリ・ユーザーから位置情報を収集して処理したため、CNILは、デフォルトのAndroid OSまたはiOS通知ウィンドウで地理位置情報の収集の許可を求めることができなかったと指摘した。有効な「同意」を得てください。それから”VECTAURY”はそれがCNILに提出したそれからの推薦された方法としてTCFに基づいて造られたCMPを開発した。CNILは、”VECTAURY”のCMPは次の点でユーザーの透明性を向上させる一方で、有効な「同意」に関するCNILの基準をまだ満たしていないと述べた。(a)ユーザーがデータを処理したい企業の身元について適切に知らされたことを保証できなかった、(b)同意が明確で肯定的な行動によって表明されたことを保証できなかった。

 この通知には、状況によっては、ユーザーがVECTAURY(または他の会社)が自分のデータを処理することに同意を求めているという事実を知らされず、”VECTAURY”が開発した同意要求UIでは合意を伝えるために設定を切り替えるか、または他のアクションを実行しなければならない。

 どちらの場合も、”VECTAURY”のCMPもTCFの方針に基づく義務を果たすことができなかった。

 GDPRの下で有効であるためには、ユーザーの同意は「通知され」かつ「具体的」でなければならない。ユーザーは、どの会社がデータを処理したいのか、またどの目的のために使用したいのかを知る必要がある。他の情報開示は、誰が同意を要求しているか、そしてその理由についての透明性を伴う必要がある。”VECTAURY”のパートナーが自分の個人データを処理することへの同意を求めている企業の1つであるという事実を”VECTAURY”のパートナーがユーザーに明らかにしなかった場合、パートナーと”VECTAURY”の両方の行動は明らかに不適合である。 TCFのポリシーでは、同意要求がユーザーに、ユーザーの個人データを処理しようとする会社の身元と、ユーザーがその目的を理解できるように処理の目的を伝えることを要求している。この2つの会社は明確に区別されており、互いに別の会社である。

「肯定的な行動」の項目では、その立場も明白である。”VECTAURY”は、同意を伝えるためにいかなる種類の肯定的な行動も取らないにもかかわらず、ユーザがデータ処理に同意したと見なされるであろう同意するユーザーインターフェイス(UI)を実装したように思われる。これはGDPRとTCFのポリシーの明らかな違反であり、どちらもユーザーが肯定的、積極的にに「同意」することを要求する。

(4) データ保護当局の意見を反映しなかった行為

 CNILがGDPRに違反していると解釈した行為の中には、”VECTAURY”が提携しているアプリのUIに情報がどのように提示されたかに関連しているものがあった。ここでCNILは、違法性の認定に到達するために、EU加盟国のデータ保護当局(DPA)からなるEU指令第29条専門家会議の意見、そして場合によってはそのガイダンスの独自の解釈に依拠した。

 たとえば、CNILは、アプリケーションのユーザーインターフェイス(UI)が、すべてのコントローラのユーザーに同意の要求として正確な瞬間に、または正確なUIレイヤでデータ処理の同意を求めてる通知を行っていないことを発見した。同様に、「同意」が要求されているデータ処理に関する詳細な情報も同時に提供されていなかった。また、CNILは、理解しにくいデータを処理する必要がある理由を消費者に説明するために使用される言語を発見した。

 これらは、合理的な人々が反対することができるより主観的な項目である。

「同意」の要求自体と同時に「同意」を求めるコントローラの詳細をユーザに提示する場合、CMPは、ユーザが単一の画面でどれだけの情報を吸収できるかについて判断する必要がある。”VECTAURY” がそのアプリケーションパートナーに推奨したCMPで実装したUIは、データを処理したい会社のリスト(VECTAURYを含む)にナビゲートするためにいくつかのリンクをクリックすることをユーザーに要求したようである。おそらく、より良い実装では必要なクリック数が減ったであろう。実際、TCFのポリシーでは、会社のリストへのリンクを提供し、処理目的を「同意」通知の最初の層(レイヤー)に開示することを要求している。

(5) TCFを改善するための継続的な作業に役立つ情報

 ユーザーの「同意」が求められていたデータ処理目的の定義の場合、ここでCNILは明らかにポイントを持っている。しかし、一方では特異性と細分性、そして他方では単純さと理解しやすさの間で正しいバランスをとることは容易ではない。違法性の発見を促したと思われる定義には、現在TCFに含まれている5つの定義のうちのいくつかが含まれている。それらは、CNILを含むDPAとの最初の会合に続く夏の間に始まったプロセスで、フレームワークを提示するために修正されている。改訂の目的の1つは、定義をユーザーが理解しやすいようにすることである。

 おそらくもっと重要なのは、GDPR自体が沈黙しているか不明瞭な点で、フレームワークとユーザーにとって最善の方法を検討する必要があるということであり、一方で、「同意」要求の文脈におけるユーザーへの情報開示に関しては、タイムリーで完全な情報が必要となる。

 CNILが入札要求を通じて受け取ったデータを”VECTAURY”が取得して処理するという2番目のシナリオについての議論も、フレームワークとGDPRのルールのCMPによる適切な実装をサポートするためにもっとやらなければならないことを明らかにした。 TCFのシグナルが信頼できる企業によって信頼され、ユーザーに適切な透明性が提供され、有効な「同意」が得られたことを意味する場合、これは不可欠である。 CNILは、信頼できる同意がその出所で有効であることを会社が保証し証明することができるとCNILが確認していることを確認しているため、フレームワークのシグナルは信頼できるものである必要がある。有効です。何百万ものWebサイトやアプリを何千ものテクノロジパートナーが個別に検証することは完全に不可能であるため、適切な実装によってGDPRに沿って「透明性」と「同意」が確立されていることを保証できることになる。 

3.モバイルアプリケーション:広告のターゲティングを目的とした位置情報データ処理への同意の得ていない点にかかる正式な警告通知

  前述の内容と一部重複するが、あえて2018119日のCNILのリリース文を以下、仮訳する。

(1) CNILの”VECTAURY”に対する警告

 CNILのイザベル・ファルケ・ピエロタン(Isabelle Falque-Pierrotin)委員長(写真)は、モバイル・アプリケーションを介した広告ターゲティングの目的で、地理位置情報データを処理することについて、本人の「同意」を求めることを”VECTAURY”に忠実であるよう促した。

 CNILは、多機能モバイルを介して個人データを収集し、モバイルでの広告キャンペーンを実施するための技術を使用している会社”VECTAURY”によって実行されるデータ処理を管理している。

 同社は、パートナーのモバイルアプリケーションコードに埋め込まれた「SDK」と呼ばれるテクニカル・ツールを使用している。 彼らはそれがこれらのアプリケーションが動作しないときでさえそれが多機能モバイルのユーザーからデータを集めることを可能にする。この「SDK」は、多機能移動体の広告識別子および個人の地理的位置データを収集することを可能にする。さらに、これらのデータは、パートナーが決定した関心点(店の看板)と相互参照され、訪問した場所から人々の端末にターゲット広告を表示する。

 ”VECTAURY”は、またプロファイリング目的および広告ターゲティングのために、会社が広告スペースを購入できるようにするために最初に送信されたリアルタイム入札オファーを介して受信する地理位置データも処理する。

(2) VECTUARYのSDKデータに関する「同意」の収集に失敗

 ”VECTAURY”は、関係者の同意を得てこれらのデータを処理することを示しているが、しかしながら、CNILの検証によると「同意」が正当に集められなかったことが明らかとなった。

 まず第一に、モバイルアプリケーションをダウンロードするとき、人々は体系的に「SDK」が彼らの位置データを収集することを知らされていない。 インストール時に、ユーザーは広告ターゲティングの目的についても、この治療の責任者の身元についても知らされない。 アプリケーションの一般的な使用条件で提供される情報はデータの処理後に得られるが、必要となる「同意」は事前の情報提供を前提としている。

 ユーザーが「SDK」をアクティブにせずにモバイルアプリケーションをダウンロードすることは、常に可能とは限らない。 両者が切り離せない場合は、アプリケーションを使用すると自動的にデータが”VECTAURY”に送信される。

  同社は最近、情報を強化するために同意の管理プロバイダ(CONSENT MANAGEMENT PROVIDERS (CMPs)」ツールの実装を提案した。 それにもかかわらず、CNILはこのCMPが体系的にアプリケーションに実装されていないことを認めた。それはまた、特にユーザに与えられる情報が不十分であるという点で、依然として不十分であり、かつ位置情報データ収集はデフォルトで有効になっている。また、広告スペースのリアルタイムオークション入札(注4)からデータ主体の同意を得られなかった

 また、コントロール(管理)では、ユーザーの「同意」が、個人データが広告プロファイリングに使用されるまで収集されなかったことを発見した。 ユーザーに提供される情報は、彼のデータがこのリアルタイム入札システムに使用されることを説明するものでも、ビジネスプロファイルを定義する目的で保持されるものでもない。「SDK」と同様に、データ収集はデフォルトで有効になっていた。

 広告スペース入札システムにより、同社は32,000以上のアプリから4200万以上の広告IDと位置情報を収集することができた。

 「SDK」とリアルタイム入札に起因するこれらの処理は、プライバシーに対する特別なリスクをもたらす。彼らは確かに人々の動きと彼らのライフスタイルを明らかにしている。 さらに、これらの行為は、関係者に気付かれることなく、またEU一般保護規定(GDPR)が規定する権利を行使することもできずに行われる。

 したがって、CNILは”VECTAURY”は、関係するすべてのユーザーの有効な「同意」を集めるよう正式な命令通知を行うとともに 過度に収集したデータを削除することも通知する。

 すなわち、指摘された問題点を考慮して、CNIL委員長は、 3ヶ月以内に法律および「自由」を遵守することを ”VECTAURY”に 通知することを決定した。同社が法令遵守に入っても、この手順のフォローアップは行われません。また 手続きの終了は公表される。そうでないと、委員長はCNILによる制限的措置を行うまたは罰金を科すかもしれない。

 問題の性質、これらの影響を受ける人々の数、およびこの種の技術の使用に関連する問題についての業界の専門家の意識を高める必要性を考えと、CNILはこの通知を公表することとした。 それが以前に発表したように、CNILは「SDK」の使用が介入する一連の事業者の様々な行為に特に注意を払う。

〇CNIL公式文書

(1) 2018年10月30日のCNIL決定官報

Décision n°MED-2018-042 du 30 octobre 2018

Décision n° MED 2018-042 du 30 octobre 2018 mettant en demeure la société VECTAURY

(2) 2018年11月8.日の CNIL審決 Délibération n°2018-343 du 8 novembre 2018

Délibération du bureau de la Commission nationale de l’informatique et des libertés n° 2018-343 du 8 novembre 2018 décidant de rendre publique la mise en demeure n°MED-2018-042 du 30 octobre 2018 prise à l’encontre de la société VECTAURY

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(注1) IAB EuropeとIAB Tech Labは、「GDPR Transparency&Consent Frameworkの技術仕様」をリリースした。 この仕様は、IAB Europeのポリシーおよび法的専門知識とIAB Tech Labの技術的専門知識を活用した、IAB EuropeとIAB Tech Labの間のコラボレーションにより、今後のIAB Tech Labのワーキンググループによって維持される。(IAB Europeサイトから引用)

https://iabtechlab.com/standards/gdpr-transparency-and-consent-framework/

(注2) GoogleAdsenseヘルプ画面を見ておく。

 EU ユーザーの同意ポリシー:サイト運営者様が EU ユーザーの同意を得る方法の3つ目で以下の解説がある。

3. IAB のフレームワークを使用する

Google は IAB Transparency & Consent Framework(TCF:透明性と同意に関するフレームワーク)との統合がまだ完了していません。この数か月間にわたり Google は IAB Europe と協力して、サービスとポリシーが TCF に適合したものとなるよう作業を進め、技術的統合の完成を目指しています。

Google の IAB 統合が完了するまでは、サイト運営者様が ATP 設定画面で選択した広告技術プロバイダのパーソナライズド広告が表示されます。サイト運営者様は引き続き AdSense の管理画面で、広告リクエストにパーソナライズされていない広告シグナルを含めるか、欧州経済領域のすべてのユーザーにパーソナライズされていない広告のみを配信するかを選択できます。なお、IAB の TCF 技術仕様サポート ウェブでは、モバイル アプリの仕様はまだ確定していません。

(筆者注3) SDK(「Software Development Kit(ソフトウェア開発キット)」)とは、あるシステムに対応したソフトウェアを開発するために必要なプログラムや文書などをひとまとめにしたパッケージのこと。システムの開発元や販売元が希望する開発者に配布あるいは販売する。近年ではインターネットを通じてダウンロードできるようWebサイトで公開されることが多い(IT用語辞典から抜粋)

(筆者注4) REAL-Time Auction Offer の意味はReal-Time Bidding?と同義と思う。

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カナダのラジオ・テレビ・通信委員会は電話名簿業者と迷惑電話規制規則に基づき約2,444万円の罰金刑の和解

2015-02-09 18:32:03 | 違法なマーケテイング規制

Last Updated:June 14 ,2020


 1月20日付けのカナダのラジオ・テレビ・通信委員会(Canadian Radio-Television and Telecommunications Commission:CRTC)は、カナダの電話情報業者(telelisting co.)(telephone directory services)である”Hamel System d’Information2000 Inc.” (注1)に対し、カナダの「受信者が希望しない迷惑電話(一方的電話勧誘拒否登録)制度の規制に関する連邦規則(Unsolicited Telecommunications Rules)(以下「規則」という)」に違反したことを理由に和解の一部となる26万カナダドル(約2,444万円)の罰金刑の支払いに同意した旨を通知した。さらに、CRTCは不動産仲介業者やブローカーに対し、法令遵守の警告通達を行っている。(注1-2)

 ここで取り上げた”Telelisting business”すなわち”Online Lead Generation ”についてわが国では定まった訳語さえないが、米国等海外ではかなり以前から
(注2)ビジネスとして定着している。簡単にいうと「見込み客獲得のためのマーケテイング手法」をいい、アフィリエイト広告との違いは、自社サイト以外から見込み客情報を取得することが出来るという点である。
 Internet業界で大きな影響力をもつTechCrunchの創業者 Michael Arringtonが2009年10月末に、Facebook、Zyngaおよび一部の広告会社等のソーシャルゲームに関係する会社を、悪質な詐欺広告(Lead-Generation Scam)で消費者に多大な被害を与えているとして告発するなど問題が起きている。

 カナダにおいてもニュービジネスであることは間違いない。一方、筆者が従来から問題視している迷惑電話の規制に関するわが国における具体的な検討はまったく進んでいない。
 同規則の適用の前提となる米国
(注3)カナダ、オーストラリアなど主要国の迷惑電話規制制度である“Don’t Call Registry”については、2010年10月24日付け筆者ブログ「オーストラリアの連邦ブロードバンド・通信・デジタル経済省(DBCDE)サイトに見る詐欺電話被害の急増」本文中で主要国の“Don’t Call Registry”の実施状況について簡単にまとめておいた。また、カナダは2014年6月25日、プライバシー保護強化の観点からそれまで登録希望者は一定期間ごとに再登録義務があった制度を見直し、恒久的登録制度に改正した。

 他方、最近の電話セールスは単に強引な売込みではない、いわゆる個人情報収集型の電話が増えている。最後にそれへの対策のヒントを筆者の経験をもとに紹介する。


1.CRTCの消費者からの苦情に基づく調査と違反事由の特定 
 CRTCの1月30日のリリースによるとカナダ国民からの苦情に基づき、CRTCが調査した結果、Telelisting会社である”Hamel System D7Information 2000 Inc.が自社の顧客のために「規則」に違反し、”National Do Not Call List”(DNCL)の違法に内容を明かした事実が明らかとなった。
 すなわち、2012年7月10日から2014年7月10日の間、Telelistingは自社内ではない外部の者(彼らはDNCLのオペレーターに年額加入料の支払い義務を実行していないか加入自体行っていない)とDNCLの登録内容を共有した。
 今回のCRTCの告発によりTelelistingは上記罰金に加え、今後自発的に包括的な法令遵守プログラムを実行するとともに不動産業界における規則の理解向上に貢献することを公約した。

 第三者の電話情報業者の利用はDNCL加入の代替ではない、すなわち、不動産業者や不動産ブローカーを含むすべてマーケテイングを行う者はDNCLに加入しなければならない。規則に従わないマーケテイングを行わない限り、マーケテイングを行う者は電話を希望しない消費者のリストと更新情報を得るため、DNCLに加入しなければならない。

 日頃からCRTCはマーケテイングに従事する個人、会社や団体に対しその内容の修正を指摘すべく議論を重ね、また行政罰金やその他の業務改善措置を含む和解などを行っている。
 さらにCRTCは法令違反警告、出頭命令、査察や違反通知を発布する。

 これまでCRTCの法執行行為において計570万豪ドル(約5億3,500万円)の罰金刑を得た(2013年から2014年間だけ見ても罰金刑の総額は約100万ドル(約9,400万円))。なお、同リスト登録者数は1,270万人以上である。

2.カナダにおける恒久的一方的電話勧誘拒否登録制度への改正 
 2014年6月25日、CRTCは”DNCL”の恒久的登録制度の実施:Compliance and Enforcement Regulatory Policy CRTC  2014-341」を公表した。1,200万人以上のDNCL登録者があり、平均して毎日1,200人が新規に登録している。
 2008年の全カナダベースでの違反行為に対する行政罰金の調査では約1,200件の調査を行い、行政罰金額合計は約400万ドル)(約3億7,600万円)である。
 それまで、登録希望者は一定の登録期間の後に再度登録しなおす義務があった。また、登録希望者はいつでもDNCLの登録先を削除することができる。

 同委員会における恒久的登録制の実施のほか関係業界に対し、その運用の透明性を強化するため、業者が行っている電話番号の遮断やDNCLからの登録番号の削除システムにつき、定期的に再検査すべく委員会内の「相互運用検査員会(CRTC Interconnection Steering)」において継続的に働き続けることを明確化した。
 今回の改正の背景、関係業者・消費者団体等との検討経緯等については同委員会サイト「法遵守および法執行における監督規制にかかる政策-2014-341」を参照されたい。

3.最近の電話セールスは単に強引な売込みではない、いわゆる個人情報収集型の電話が増えている。最後にそれへの対策のヒント
 わが国におけるDNCLの導入時期はまったく未定である。従って、消費者としてはワン切電話は別としても、次のような対応が有効かと思う。
①かかってきた電話に一切答えないこと、②録音すること、③すぐに電話を切らないで無言のままでいること、そのうち相手は電話代が無駄になるので自ら切る。

********************************************************************************************************************:*****

(注1)北米のtelisting会社(telelisting.net)の利用企業(マーケッター)向けのPR文言仮訳する。
「北米で展開する企業Telelisting社の任務は、北アメリカ中で人々と企業が最高のオンライン売上を提供することによる彼らの完全な売上と収益可能性が生成ソフトウェアを導くと理解するのを可能にすることにつながる。 また遠隔リストは、あなたがより多くの収益をかせぐのに役立つ総合的リードする世代と管理ツールを提供する。
毎日、当社は不動産仲介業者とブローカーや保険会社、投資ブローカー、金融サービス・アドバイザー、コールセンター等企業やプロは活動のすべてのセクター収益機会を増やす。当社の製品は、カナダとアメリカ合衆国で20,000人以上の満足するマーケテイングを業務とする顧客に利用されている。」

 なお、同社は米国やカナダのマーケッターに対し、①Do not Call Registryのリストとの統合済の電話帳を提供すること、②通話記録のサポート、③迅速な検索機能、④Google地図に基づく近隣検索機能等をうたっている。

(注1-2) CRTCの警告内容は年度ごとに「Notices of Violation」で確認できる。ちなみに2015年の場合のURLは”https://crtc.gc.ca/eng/DNCL/dnclc_2015.htm”である。

(注2) Lead-Generation Advertisementから派生した詐欺広告である。Lead-Generation Advertisementとは
•Lead(見込み客)を獲得(generation)するための広告
•アフィリエイト広告との違いは、自社サイト以外から見込み客情報を取得することが出来るという点である。具体的には以下の通り
インターネット上で(1)見積依頼や(2)セールスの連絡を受けることに同意している人の連絡先情報などを、その取得した実数に応じて、広告主から広告会社に支払われる広告費用で、(自社サイト経由だけではなく)、クレジットカード等の申込フォーム記入時や、アンケートサイトや、懸賞サイト、会員登録サイト等、(自社のサイト以外の場所から)取得する場合もある (2008年「CNET 米国で急成長する「Lead Generation 広告」とは」から一部抜粋)

(注3)米国の電話勧誘拒否登録制度である”Do Not Call”に関して最近ニュージャージー州はモバイル電話(Cell Phones)によるテレマーケテイングにおける規制緩和を即時施行する一部法改正を行った。米国のローファーム”Jackson Lewis P.C”の解説ブログ記事「ニュージャジー州はモバイル電話によるテレマーケテイングの一部法改正」、Davis Wright Tremaine LLPの記事内容を統合して仮訳する。

○ニュージャージー州のクリス・クリステイ知事(共和党)は顧客の携帯電話に対し、既取引のある顧客に対する場合、および顧客から書面による求めに応じる場合に限り、テレマーケテイングのモバイルあてに電話(telemarketing sales call)をかけることを認めるとする法案(S.1382)に署名した。
 改正前の”Do Not Call”に関する規制州法(N.J.Stat.§56:8-130)では、携帯電話会社による顧客向けのセールス電話で自社のモバイルサービスに関するものでかつ顧客に電話代が発生しない場合以外のセールス電話は禁止されていた。このように従来の”telemarketing sales call”の定義は広く、特定のセールス電話(例えば、アカウントの収集または契約上の責務のフォローアップ等の目的のみ)以外の例外は認められていなかった。 ,
○なお、同州の法改正後においても、テレマーケテイング会社は連邦電話消費者保護法(Telephone Consumer Protection Act of 1991)に準拠する義務があり、すなわち、自働ダイヤルシステムや事前にメッセージを録音したような携帯電話に対するセールスコールには事前の明白な本人の同意ルールやオプトアウトルールは適用されるのである。

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米国退役軍人省が支援した「第20,000,000件目のホームローンを獲得」に涙する未亡人母と無邪気な息子の報道

2012-10-28 16:48:45 | 違法なマーケテイング規制
 
 
(執筆途上)
 
 筆者は毎日300以上の海外情報を読んでいるが、この記事は極めて個人的に関心を持たざるを得なかった。というのも、彼女の3歳の息子(Joey Carpenter)が家の前の道路で細かに割れた落ち葉を踏んで三輪車に乗ってにこやかに笑う写真がトップに写されていたからである。誰でも涙を誘うであろう(個人的なことであるが、筆者の孫も現在3歳である)。
 
 3歳の息子が堅牢な家に住み大人になる日を夢見る上で、若くして「がん」で死亡した退役軍人の未亡人たる配偶者(Elizabeth Carpenter)は自宅をホームローンで建てるという極めて困難な問題に取り組んだ。また、この問題に退役軍人省(Department of Veterans Affairs: VA ) の「給付・援助局(Veterans Benefits Administration:VBA)」が全面的に支援したという物語が背景にある。
 
 すなわち、毎日DODから送られてくる情報の多くは、米国の軍隊の最前線の情報以上に戦時遂行にかかわるストレスに基づく①トラウマ(心的外傷)、②PTSD(心的外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder)、さらに③同性愛問題、④自殺等あげればきりがない。
 また、その次に多く取り上げられるのが退役軍自身や未亡人や遺族の生活補償問題である。今回のテーマはまさにこれに該当すると思える。
 
 今回のブログは、今回のリリースの概要および極めて予算規模や組織が大きいにもかかわらず、わが国で詳しい説明が少ない「VA」やオーストラリアのVAの概要について両者を比較しながら説明する。
 
1.リリースの概要
 10月26日、ヴァージニア州ウッドブリッジ発でDODが報じた記事の概要は次の通りである。仮訳する。
○3歳の男の子ジョーイ・カーペンター(Joey Carpenter)が家の前の道路で細かに割れた落ち葉を踏んで三輪車に乗ってにこやかに笑うのを若い母親は涙して微笑んだ。彼女は、ジョーイが成長するに必要と思える堅牢な家を得たことがその背景にある。近所の人々は、VA幹部がエリザベスに対しホームローンの第2000万件目の家のドアの住所表示を送る式典を見守った。
 
 
 VAの給付・援助担当次官であるアリソン・H・ヒッキー(Allison H.Hickey)はジョーイとエリザベスに記念の額を贈ったが、ウェストポイント陸軍士官学校を卒業しイラクに派遣していた夫マシュー・カーペンター(Mathew Carpenter)は、2010年12月に癌で死亡した。VAのホームローン・プログラムの担当である次官は、周りの環境がどうであれ軍人の家族が新しい家を欲するのは良い考えであり、「そのような策を用いること自体良いことである。すなわち、軍人は家族に対する責任や扶養に中心的価値を置き、それに取り組み、ローンによる家の購入を申込み、そして戦場に向かう」と語った。
 
○エリザベスは、夫が生前にもし自分が死んだら彼女は家族とともにヴァージニア州に住みたいと考えていたと語った。彼女は「私と息子にとって安定した家を持つことを希望しています。これが私たちの『小さな家族』です。彼が16歳になったときに3歳のときの思い出として、どんなに年を取っても戻りたくなる安定して住める家を持ちたいと考えた。」と述べた。
 
 彼女は自分の父親、陸軍の兵士仲間の助言によりVAが運営するホームローン・プログラムに熟知しており、その後、夫自身がコネチカットの彼らが住んでいた家につきVAの給付・援助サービスが購入することを考えていたことも知っていた。しかし、彼女はVAの給付・援助は現役の軍人の家族だけでなく残された遺族や配偶者に広げられていることを知った。
 
 
 
 
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