Financial and Social System of Information Security

インターネットに代表されるIT社会の影の部分に光をあて、金融詐欺・サイバー犯罪予防等に関する海外の最新情報を提供

フランスの電子政府の2006年の機能拡大予定が公表される

2010-10-23 11:20:22 | EU等のeGovernment


Last Updated:March 28,2021

1.フランスの2006年電子政府拡大計画
 フランスの行政改革担当相兼報道官であるジャン・フランソワ・コペ(Jean-Fraonçois Copé)は2006年中に新たに4つの電子政府のサービス拡大を再考した仏情報省(Hexagone)の進展について歓迎するとのコメントを述べている。

Jean-Fraonçois Copé 氏

 仏首相の公式声明によると、2006年末までに3分の2の行政手続きのオンライン化が実現し、2008年には完全に施行されるとされている。同年5月には最も一般的な行政手続きの10個がオンライン化される予定である。

(1)同年6月以降はフランスで生まれたすべての市民(海外で生まれたフランス人の場合は別途の手続きが必要)は市民向けオンライン・サイト「www.acte-naissance.fr」(注1)を利用して出生証明やその写しの請求が可能となる。

(2)婚姻履歴に関しては年間1千400万件の請求があると首相が述べている。このような多くの件数は行政サービスへの明らかな支障がある。海外で生まれたフランス人は直接外務省に婚姻暦をオンラインで照会できる。

(3)個人に特定されかつ安全なゲートである「Mon service-public.fr」 (注2)は2006年年初に一般化の試験を行う予定である。これは行政もしくは個人分野での電子的な手続きを可能とする。

(4)最後に、2006年に実現する40の関税サービスを統一化する「ProDouane」は、すべての企業に対してオンラインの手続きを可能とする。

 フランスの大手調査機関である「Service Central d’Analyse」の調査結果によると、フランス人の89%は少なくともオンライン行政サービスを受け、今後12か月以内に42%がオンラインサービスの次の段階に入ると述べている。

2.デジタル経済発展計画「デジタルフランス計画2012(France Numérique 2012)」
 2008年10月20日、フランスのエリック・ベッソン(Éric Besson)インターネット担当大臣は「デジタルフランス計画2012(France Numérique 2012:Plan de développement de l’économie numérique 2012)」を発表した。
 その内容につき、わが国での解説はほとんどないので概要部分のみ紹介する。

Éric Besson 氏

(1)全フランス国民に対し高速ブロードバンドへのアクセスを保証
・2009年中に汎用ブロードバンド・インターネットへの設定規定に基づき、すべてのアプリケーションを立上げ、2010年1月1日から実施する。
・ブロードバンドサービス提供者は、全フランス国民が現住居地で512kbitのブロードバンドインターネットを月額35ユーロ(約3,885円)という手ごろな利用料でサービス提供するようにする。
・各フランス人は住居地において特定のブロードバンドサービス提供者が行うブロードバンド・インターネット・サービスを受ける権利を有する。

(2)2011年11月30日までに全フランスのデジタル・ブロードバンドへの移行完了を保証
・2007年3月5日公布法(2007年オーデォビジュアルの近代化および未来のテレビジョン放送に関する法律 (Loi n°2007-309 du 5 mars 2007 relative à la modernisation de la diffusion audiovisuelle et à la télévision du futur )にしたがい、2011年11月30日までのデジタルテレビ放送への移行に伴い、全フランスの公的機関はその期限を遵守する。2009年から100万人以上の2つのパイロット中核都市で運用を開始する。

アナログテレビ放送の終了に伴う周波数エリアの解放により、狭帯域(790-862MHz)はブロードバンド・インターネットのアクセス領域として割り当てられる。この低周波帯域は民間の電信には絶対に割り当てられない。
・フランスは、この帯域の利用については20年前からEUの通信大手産業界 との再調整を行ってきている。

(3)デジタル・デバイドの削減施策
・フランス公益法人「デジタルテレビフランス(GIP France Télé Numérique)」は、フランスのデジタルテレビのアンテナ設置において、消費者や電気製品の設置業者に対し、デジタル対応を義務付けた。
・これらの実施にあたり、高齢者や身体に障害がある人々に対しては地域デジタルテレビ(Télévision Numérique Terrestre :TNT)が対応することとした。
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(注1)オンライン請求といってもすべての場合がオンラインでない。2005年12月時点では「En savoir」で電子出生証明を見るとすべての場合、証明書の送付は郵便である。ただし24時間受付体制であり、発行手数料は無料である。
(注2)https://www.service-public.fr/

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(今回のブログは2005年12月18日登録分の改訂版である)

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英国の電子政府の弱点がオンライン成りすまし詐欺師により指摘される

2010-10-13 20:26:45 | EU等のeGovernment



 英国政府の英国雇用年金省(Department for Work and Pensions:DWP) (注1)の担当公務員IDを偽ったオンライン詐欺により、3千万ポンド(約61億8千万円)の違法な税額控除請求が行われていた問題で電子政府自体の信頼をなくし、担当大臣等は火の車である。

 英国歳入関税庁(HM Revenue and Customs:HMRC)は6カ月前から1,500人の納税担当官のIDが詐欺的に使用されているという英国の税額控除(正確には勤労者世帯税控除Working Families’ Tax Credit:WFTC)システムの脆弱性問題が指摘していたにもかかわらず、先週に電子政府(Directgov)のオンラインポータル (注5)を閉鎖しただけであった。詐欺師は納税者の姓名、生年月日、国民保険番号を違法に把握し、納税オンライサイトから1年間に約50万件の詐欺請求を行い、銀行の詐欺専用口座に入金していたのである。
 HMRCの法令遵守状況調査に基づく最近の詐欺被害の指摘があるまでそれに気がつかなかった無知なDWPの役人大臣等国会議員は、詐欺師に見事にやられていたのである。警察は現在呼ばれており、HMRCのスポークスマンは刑事事件の捜査中のため、コメントできないとしている。さらに税控除システムは安全性に関する調査が終了するまでの間、閉鎖したままである。

 英国の第3党である自由民主党(Liberal Democrats)の「陰の内閣の労働・年金大臣」であるデビッド・ロー(David Laws)は「この複雑かつ混沌とした税控除システムは詐欺師に開け放たれており、担当大臣達はインターネットを使って詐欺師が詐欺行為を行うことについて相当期間知っていたといえる。」と述べている。

 この納税システムの総崩れの問題は、2003年に稼働して以来しばしば問題(国会議員から「悪夢」と呼ばれている。)を起こしてきた政府の最重要税控除プログラムにとって新たな不安材料となっている。このため、受託会社である米国の開発会社Electronic Data System Inc.は、11月25日にHMRCに対し7,125万ポンド(約146億7,775万円)の和解契約で決着を図っている。

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(注1) DWPは、英国の福祉政策とりわけ子供、年金受給者、債務者の過払い計算・管理の支援、身体障害者・病人、職場の安全対策、テナントと所有者間のテナント料の公正な査定等8つの目的をもった省である。根拠法は1995年障害者支援法(Disability Discrimination Act:DDA、なお、「2005年改正DDA」の施行に向けた準備が目下進められている。)である。担当大臣は、労働・年金大臣(閣内大臣)(Rt (注2) ジョンハットン(John Hutton, Baron Hutton of Furness)

雇用・福祉改革担当大臣(閣外大臣)ホン・マーガレット・ホッジMBE (Margaret Hodge))(注3)

、年金改正担当大臣(閣外外大臣)ステーブ・ティムズ、政務次官フィリップ・ハント卿 ( Philip Hunt, Baron Hunt of Kings HeathWikipedia  site:nipponkaigi.net)(注4)、政務次官アン・マグァイア(Dame Anne McGuire))である。

(注2) Rt:Right Honorableは伯爵以下の貴族などへの敬称。
(注3) MBEとは、名誉大英勲章第五位のこと。
(注4) OBEとは、名誉大英勲章第四位のこと。

(注5) 筆者は、2021年3 月の更新にあたり以下のURL(http://www.direct.gov.uk/Diol1/DoItOnline/DoItOnlineArticles/fs/en?CONTENT_ID=4017838&chk=ajbP2/)にリンクを試みた。

16年もたっているのでどうなることかを思ったら、以下のDirect govのARCHIEVESサイト([ARCHIVED CONTENT] Apply for Child Tax Credit and Working Tax Credit : Directgov - Do it online (nationalarchives.gov.uk))に飛んだ。

このことが意味することは英国の政府オンライン政府サイトでなるべく関係するサイトにリンクさせようと思いやりがあるのかとも思う。機会をみてこの関連を検証してみたい。

 

〔参考URL〕
http://news.zdnet.co.uk/internet/security/0,39020375,39240332,00.htm
http://www.direct.gov.uk/Diol1/DoItOnline/DoItOnlineArticles/fs/en?CONTENT_ID=4017838&chk=ajbP2/
http://www.tmcnet.com/usubmit/2005/nov/1214193.htm (この記事はWSJ記事を引用している)

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(今回のブログは2005年12月8日登録分の改訂版である)
                                       
Copyright © 2005-2010 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.No reduction or republication without permission.

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ドイツの国家情報セキュリティ計画と情報社会の脆弱性対策の概要

2010-10-08 12:27:48 | EU等のeGovernment


 
 Last Updated: March 16,2021

なお、本ブログをgooで読みも込もうとすると一部URLはドイツ連邦情報機関等からアクセス(リンク)拒否になる。原因は不明であるが、筆者は同じ原稿をWordpressも投稿しているので、そちらで閲覧してほしい。

 ドイツ政府(内務省)は、2005年7月に「ITインフラストラクチャー保護に関する国家計画(Nationaler Plan zum Schutz der Informationsinfrastrukturen:NPSI)」 を採択・公表した。またコンピュータウィルスなど増加するIT脅威に対処するため、英米に倣い緊急コンピュータ緊急対応センターを設置することを決定した(米国では「連邦コンピュータ緊急準備チーム」の週間速報や国土安全保障省のオープンソース基盤報告(日刊)、英国ではITsafe(随時発刊)がある。これらの内容については機会を改めて詳しく説明する)。

 オットー・ゲオルグ・シリー(Otto Georg Schily)内相は「同国のITセキュリティ計画の一部をなすもので、他の先進国と同様、公的・民間部門へのIT攻撃への取組みといえる。世界全体で7,300といわれた新たなウイルスやワーム数が2004年後半では前年同期比で4倍となっており、フィッシング攻撃による損害は世界全体で25億ユーロ(約3,350億円)と見積もられている」と述べている。

Otto Georg Schily氏

 ドイツの同計画は、EU加盟国における初めてのものとされ、① 予防的(注)な観点(Prävention)からの情報ネットワーク被害の防止、②ITの安全性にかかる事件への有効な対応(Reaktion)、③国内の専門家育成と国際的な標準化への対応を通じた持続性(Nachhaltigkeit)確保を柱とするものである。同計画書は全25頁というもので内容的には基本計画書に近いものといえよう。しかし、8月28日(2010年10月8日改訂版)のブログで説明したとおり、BSIを中核とした具体的な取組みは今後急速に展開することも予想され、またEU加盟国は情報システムの抱える複雑性、事故、事件、錯誤、物理的な基盤への攻撃、さらに昨今問題視されている機密保護違反などについて「欧州ネットワーク・情報セキュリティ委員会 :European Information Security Agency:ENISA」を2004年3月に設置しており、それとの協調なども視野に入れている。

(注)EUは共通して情報セキュリティに関し「予防原則」に基づくリスクマネジメントを重要視している。この点については、藤岡典夫「EUの予防原則-GMO規制等に見る現状」(全11頁)が詳しい。EUの考えすなわちITなど科学の進歩と反面の社会的なリスク回避について配慮するという考え方はわが国の国家政策を考えるうえでも極めて参考になろう。

今回は、計画書の主たる部分を占めるドイツの情報セキュリティ戦略目標を紹介する。

1.情報基盤に対する適切な予防的対応について
目標1:ITの利用におけるリスク意識の鋭敏化
目標2:IT製品やサービスの安全な使用
目標3:機密性(個人情報なども含む)の保持
目標4:国家全体としての保護対策の保障
目標5:ITシステムの枠組みおよび方針に関する基準の策定
目標6:国家安全保障会議(Sichrheitsstrategien)との調整
目標7:国内および国際機関(ENISA,NATO,OECD.UNなど)を通じた政治的意見の形成

2.ITの安全性を脅かす事件への対応について
目標8:各種事件の識別、理解、評価
目標9:IT事件に関する警告の発信
目標10:ITの安全性に関する事件の登録

3.継続性:ドイツにおけるIT安全性要素の強化―国際的な標準化の重視について
目標11:信頼性の高い情報技術への支援
目標12:国家ITの各種構成要素の強化
目標13:IT 要素の保護と教育
目標14:研究・開発に対する助成
目標15:国際的な協調の拡大と標準化

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(今回のブログは2005年8月30日登録分の改訂版である)
                            
Copyright © 2005-2010 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.No reduction or republication without permission.







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