母かずえが、昨年10月5日よりお世話になっております老人保健施設。所謂「老健」と呼ばれている施設ですね。今季はインフルエンザやノロウィルスが大流行した為、昨年暮れには施設始まって以来、初めて入所者さんにもインフルエンザ罹患者が出たそうです。
あの時は大変な騒ぎになりました。これ以上罹患者を増やさないためにと、1月28日から3月15日まで、施設の判断で面会中止期間が設けられました。
そんな中止期間が切れるまであと二週間、というところで、施設から電話が掛かってきました。
「かずえさんが、娘に会いたいと言い出されまして、泣かれるんです。いくら話を逸らそうとしても、娘のことが心配だ、会いたいの一点張りで、泣き止まれないんです」
「いや~、そうですか、すみません。今が面会中止期間だということを、本人は理解しておりますでしょうか?」
「はい、それは何度も申し上げました。それでも、そんなこと言っても心配だから会いたいんだと繰り返されまして・・・」
「大変申し訳ありません。母は温室育ちなので我慢をすることに慣れていないんです。だから、すごくご迷惑をお掛けしていますよね。本当にすみません」
「いえいえ、迷惑という訳ではないんですよ。ただ、もし娘さんの都合がつくようでしたら、中止期間が明ける前に一度会いに来て頂くことは出来ませんか?」
「え?伺って大丈夫なんですか?」
「えぇ、かずえさんがいらっしゃる2階には上がって頂けませんが、1階受付の横にあるテーブルで、10分程になりますが、それでよろしければ少しお話をして頂ければと。来週娘さんが来てくれると言えば、落ち着かれるでしょうし」
先週の水曜日、ハンドメイドサイトの準備がしたくて有給休暇を取っていたのですが、急遽母の所に行くことになりました。面会時間は10分程と言われましたが、一応母の好きな桜餅と柏餅、それに同じマンションに住む母の友人Nさんに頂いたブンタンを剥いて持って行きました。甘いものと果物に飢えているでしょうから。
「あぁ、来たんね。」
「来たんねじゃないよ。どうしてそうやって我儘言って、周りに迷惑を掛けるの?みんな面会中止期間が終わるのを、じっと我慢して待ってるんでしょ。」
「迷惑なんて掛けとらんよ」
「泣いたりしたら迷惑でしょ。いくら言われても泣き止まなかったって、主任さん仰ってたよ」
「泣いたりしとらんよ」
「どうしてそんな嘘つくの?泣き止まなかったから、まだ面会中止なのに、私がここにいるんでしょ?」
「みんなね、家族に会いたいの。だけど、今回インフルエンザの患者さんが出ちゃったでしょ。これ以上患者さんが増えちゃいけないからって、施設の人が一生懸命考えて、今のこの措置があるんだよ。お母さんだけが特別扱いって、可笑しくない?」
なんだかね、母はいつもこうだってことが、急に堪らなく嫌になりました。どうしてこの人は自分のことしか考えないんだろう。どうしてそれくらいの辛抱が出来ないんだろう。しかも私のことが心配だなんていうのは、口実。ただ自分が寂しくて会いたいだけなのに、そういうこと言うんだろうって。
しょんぼりしながら上目遣いで私を見る母。しばらく二人とも無言になりました。
その時ね、母の顔を見ながら急に思ったんです。これって母の気持ちに寄り添ってあげようっていう気が全く無かった私のせい・・・?
いきなり怒っちゃったから、ウソつかなきゃ逃げられないって思っちゃったの?って。母はとても弱い人ですからね。
「こら!人の話ちゃんと聞いてんの?寂しかったんだね。会えない期間がちょっと長いもんね。だけど泣いたりしちゃダメだよ」と言いながら、おでこをペチンと叩きました。
「うん、もう泣かんよ、へへへ・・・。今度来る時、鶏のから揚げとポテトサラダ持って来てね」
持って行った柏餅を口の中でもぐもぐさせながら、そんなことを頼む母。お母さん、忘れてるでしょ。あなたの誕生日のお祝い、準備万端整ってますからね。プレゼントを抱えてやってくるから。今度はうれし涙、流させてあげるー。
あの時は大変な騒ぎになりました。これ以上罹患者を増やさないためにと、1月28日から3月15日まで、施設の判断で面会中止期間が設けられました。
そんな中止期間が切れるまであと二週間、というところで、施設から電話が掛かってきました。
「かずえさんが、娘に会いたいと言い出されまして、泣かれるんです。いくら話を逸らそうとしても、娘のことが心配だ、会いたいの一点張りで、泣き止まれないんです」
「いや~、そうですか、すみません。今が面会中止期間だということを、本人は理解しておりますでしょうか?」
「はい、それは何度も申し上げました。それでも、そんなこと言っても心配だから会いたいんだと繰り返されまして・・・」
「大変申し訳ありません。母は温室育ちなので我慢をすることに慣れていないんです。だから、すごくご迷惑をお掛けしていますよね。本当にすみません」
「いえいえ、迷惑という訳ではないんですよ。ただ、もし娘さんの都合がつくようでしたら、中止期間が明ける前に一度会いに来て頂くことは出来ませんか?」
「え?伺って大丈夫なんですか?」
「えぇ、かずえさんがいらっしゃる2階には上がって頂けませんが、1階受付の横にあるテーブルで、10分程になりますが、それでよろしければ少しお話をして頂ければと。来週娘さんが来てくれると言えば、落ち着かれるでしょうし」
先週の水曜日、ハンドメイドサイトの準備がしたくて有給休暇を取っていたのですが、急遽母の所に行くことになりました。面会時間は10分程と言われましたが、一応母の好きな桜餅と柏餅、それに同じマンションに住む母の友人Nさんに頂いたブンタンを剥いて持って行きました。甘いものと果物に飢えているでしょうから。
「あぁ、来たんね。」
「来たんねじゃないよ。どうしてそうやって我儘言って、周りに迷惑を掛けるの?みんな面会中止期間が終わるのを、じっと我慢して待ってるんでしょ。」
「迷惑なんて掛けとらんよ」
「泣いたりしたら迷惑でしょ。いくら言われても泣き止まなかったって、主任さん仰ってたよ」
「泣いたりしとらんよ」
「どうしてそんな嘘つくの?泣き止まなかったから、まだ面会中止なのに、私がここにいるんでしょ?」
「みんなね、家族に会いたいの。だけど、今回インフルエンザの患者さんが出ちゃったでしょ。これ以上患者さんが増えちゃいけないからって、施設の人が一生懸命考えて、今のこの措置があるんだよ。お母さんだけが特別扱いって、可笑しくない?」
なんだかね、母はいつもこうだってことが、急に堪らなく嫌になりました。どうしてこの人は自分のことしか考えないんだろう。どうしてそれくらいの辛抱が出来ないんだろう。しかも私のことが心配だなんていうのは、口実。ただ自分が寂しくて会いたいだけなのに、そういうこと言うんだろうって。
しょんぼりしながら上目遣いで私を見る母。しばらく二人とも無言になりました。
その時ね、母の顔を見ながら急に思ったんです。これって母の気持ちに寄り添ってあげようっていう気が全く無かった私のせい・・・?
いきなり怒っちゃったから、ウソつかなきゃ逃げられないって思っちゃったの?って。母はとても弱い人ですからね。
「こら!人の話ちゃんと聞いてんの?寂しかったんだね。会えない期間がちょっと長いもんね。だけど泣いたりしちゃダメだよ」と言いながら、おでこをペチンと叩きました。
「うん、もう泣かんよ、へへへ・・・。今度来る時、鶏のから揚げとポテトサラダ持って来てね」
持って行った柏餅を口の中でもぐもぐさせながら、そんなことを頼む母。お母さん、忘れてるでしょ。あなたの誕生日のお祝い、準備万端整ってますからね。プレゼントを抱えてやってくるから。今度はうれし涙、流させてあげるー。
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