缶詰が好きです

以前のプロバイダーが閉鎖になるので、Gooブログに引っ越してきた、缶詰が好きな、ダメ料理人のブログです。

レバ刺しは食べてはいけない

2022年07月25日 | 無ジャンル
「レバ刺し禁止について思うこと」  
今回のブログは食中毒の話で、柄にも無く真面目で退屈ですので、止めておいたほうが良いかもしれませんよ~

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いきなりですが・・・・O-157の写真であります。

レバ刺しが禁止になりました。レバ刺しが大好きな方には申し訳有りませんが、私としてはその方が良いと思っております。

レバ刺し禁止をニュースで取上げるときに、行政対営業者&消費者と言う形で取上げられており「行政が個人の嗜好を制限するのは、仕方が無い部分もあるが、食文化と言う面からも決して賛成できることではない」みたいな切り口で報道されております。

ですが、食に携わってきた者として言って置きたいことがあります。
先ず、行政は今まではあまり制限するのは好ましくないとのことで、口出しをしませんでした。どちらかと言えば黙認だと思います。

当時は漠然と大腸菌という括りでO-1系の病原菌が居ることは知られてましたし、ほかにカンピロバクターのような細菌やサナダ虫のような寄生虫が居る場合も多いことも知られていました。カンピロバクターはギランバレー症候群の原因になるとも云われてる結構怖い細菌ですが、カンピロバクターは潜伏期間が長いので、発症まで時間が掛かり、食中毒の原因と特定されることが少なかったということも黙認の理由であったかもしれませんね。

東京で言えば、管轄の保健所が独自の判断で認めたり認めなかったりしておりまして、私の住んでいた新宿区・四谷管内では禁止、隣の新宿区・淀橋管内では許可。
このように分かれていて、四谷の焼肉屋さんは提供できませんが、新宿繁華街の焼肉屋さんはOKという、判りにくいのだか判りやすいのだか判断は出来ませんが、兎に角そういうようなものでした。

昔は戦後の名残なのか、所謂ゲテモノ屋(この名前のお陰で、子供は怖ろしくて店内に入ることは無かったですね)と言って、牛の内蔵各種を扱う飲食店があり、今でも当時からやっている有名な店もあります。
このお店は私の家から歩いて3分の保健所の管轄の境界線辺りで営業をしていましたし、今でも場所を移して営業しています。

こういうお店はかなり年季の入ったオヤジさんが調理をしていたし、客の方もそれなりの知識や体力のある方達が利用していたと思います。
つまり、体調が悪いときは食べないし、それで食あたりが起こっても、ショウガナイと笑って諦められる人が前提でありました。
確か、私の小学生か中学生くらいのときにも、新宿の他のこの手の店で食中毒事故が起こり、かなり重篤な患者さんをだしちゃったことがありましたが、それでも淀橋管内ではレバ刺し等の規制はしませんでした。

ところが去年の焼肉屋事故を見ても判るように、近頃は誰でも生を安く食べることができるようになりました。これは別に調理の技術の向上や衛生観念の高まりのお陰でそうなったわけでなく、むしろその低下で誰でもゲキヤスで食べることが出来るようになったからであります。
ゲキヤス店では何を真っ先に削るか・・・・人件費です。もし全員がアルバイトなら、こんなに嬉しいことはない・・・くらいの気持ちで運営されているお店が多いのは事実です。

子供に生肉や生レバーなんかを、増してやこのようなお店で食べさせて良いわけはありませんが、テレビ等で、それも報道番組で、莫迦面したアナウンサーが「安い!美味しい!」なんぞと言って、生食している姿を流していれば、危険だと言うことを知らずに子供に食べさせる親も出てきてしまうのは当然です。

お子さんがお亡くなりになった事件では、子供に生肉を食べさせる親も良くないのではないかと謂った意見を吐いているキャスターだかコメンテーターだかも居ましたが、私は「アンタ達がそれを謂うのか?」と感じたことを憶えております。
どう考えても親御さんは被害者ですよ!どんな落ち度があったのかな?何故酷いことを言うのかな?・・・あんまりじゃないかな?

さて先に書いたように、レバ刺し禁止の報道も「行政Vs営業者&消費者」と言う形で取上げられておりまして、私が知らないだけかもしれませんが、医師や飲食業従事者の意見はまるで報道されていないように思えます。
当事者ではない者の意見無しに、つまり行政や食品提供者や消費者と言う、当事者の意見だけで番組を作ることは誤解を招きやすく、見た人間の目を曇らせる恐れがあると思います。
せめて医者の意見を入れて欲しかったし、食中毒の症状も報道すべきだったと思います。

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去年死者を出した腸管出血性大腸菌・O-111の写真であります。

もうひとつ私が禁止したほうが良いと考える根拠でありますが、このO-157等の食中毒を起こす菌は、100個位の非常に少ない数で食中毒を引き起こすという特性を持っている菌だということであり、したがって感染者の便等から容易に二次感染を引き起こす恐れがあるということであります。
二次感染は家庭、職場、公共施設等の、どんな場所でも起こりえるのであります。

菌に感染しているのですが、発症はしないという人たちを健康保菌者と言いますが、この人たちが気づかないうちに菌をばら撒いてしまうということも多くなっていて、給食での食中毒事故はこのような人たちによる調理が原因の場合が多いですし、食事場所の消毒が出来ていなかったりする場合も結構あります。

私たち調理人、なかでも給食関係の調理人はレバ刺しや肉刺し、生牡蠣等を食べることは殆どの職場で禁止されています。
ちょっとでも危険がある食べ物は二次感染の危険性があるので食べないと言うのは当然のことなのであります。

しかし、人件費を削り、殆どがアルバイトで運営されているような店ではそのような観念が養われているでしょうか?
成る程、マニアルはあるかもしれませんし、それに従えば事故は起きない筈・・・なのでしょうが、何故、マニアルに従はなければならないのかを教えないで、守れ守れと言っても、事故を防ぐのは難しいのです。
結局のところ、経営者自身が食中毒事故について知識も考えも対策もない場合が多すぎるのです。
現実に、色々な業態のゲキヤスチェーンの飲食店では、小さな食中毒事故はしょっちゅう起こっているのですが、そういう店では客層が若くて症状も軽い場合が多く、あまり問題になっていません。
又、客のほうにも食中毒の知識が無いので、「ちょっと具合が良くないな~」くらいで落ち着くことが多いのです。

さて行政について言えば、保健所が縮小されていて、目も届かないし、検査や指導をするのも難しくなっています。
このような状況で、去年のような事故が起こった場合に「何故、行政は規制をしていなかったのか?」ということを問題にしましたら、行政の方も「そんなら禁止しかないじゃないか」と言うのは当然といえば当然なのだと思います。
いつも政治や行政の悪口ばかり言っている私も、この件については行政の方に理があると思います。

去年の事件で、業界のやり方はもっと行政が見張ってくれれば良かった、行政が良い店と悪い店を峻別してくれるべきだ、自分たちも行政に協力して良くしていこうと思う・・なんてことを言っていましたが、良い店なぞとお墨付きを与えて食中毒が起きたら、誰が責任をとりますか?
飲食店もそんなことを行政がする訳がないことを百も承知で、報道陣向けに、業界を守る為に言っていたのだと思います。
ですが、業界の言い訳の為に、マスコミを利用して一方的に行政が責任を問われても、行政は責任を負いたくありませんから、規制の方向に動くのが行政のルーティーンです・・・・業界はそこに思い寄らなかったのかな?・・・ま、そこは我々には関係の無い話ですが・・。

さて、食文化を守るという見地から、規制に反対だ!との意見もあります。
規制すべきであると外国から言われているのに、食べることが禁止にならないものにクジラがあります。

クジラを例に挙げますと、クジラ漁の歴史・伝統、クジラの郷土料理としての確立や、家庭の惣菜としての料理の発展、クジラを使った洋食等の創造や料理の進化、クジラの保存法の伝統や進化、クジラを囲むコミュニティーの存在、ヒゲや骨等の食材以外の利用等々、食文化と呼ぶに充分な理由があり、外国になんと謂われようと守らなければならない食文化だということは明白であります。

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私の知る限りではレバ刺しについてのこういう画は無いよね。でも、もし在ったら・・・バイオハザード?

翻ってレバ刺しを見た場合、元来日本にあった料理ではないのは明白ですし、その歴史も戦後・・・という漠然としたもので、家庭の食事には適しません。
ちゃぶ台を囲んで、サザエさん一家が楽しそうにレバ刺しで御飯を食べている図は、怖ろしすぎて創造できません'_';

あくまでもレバ刺しとか肉刺しのようなものは傍流文化なのだと思います。
傍流の文化として存在していたから保健所も見て見ぬふりだったのでしょうが、これが何の準備期間もなしに、いきなり主流の文化に躍り出た場合には事故や事件が起こるのは仕方が無いと思います。そうすれば禁止になるのは当然のことであります。

先に書いた内臓専門のお店は今でもやっています。
いろいろなノウハウもあるでしょうし、入手のルートとか、衛生の管理とか、培われた技術がある店が営業を続けていくのはとても良いと思います。
しかし、なんの技術も志も無い、安いだけの飲食店で提供するようになったら、これは禁止されるべきだと思います。

もし、なんとか復活したいのなら、河豚のような資格を作ってはいかがでしょうか?
レバ刺しは、調理師でもないフリーターに扱わせるのは危険すぎます。


追記

今日、一日中このことを考えていまして、フっと思いついたのですが、レバ刺しを食べることが食の文化ではなく、レバーは生で食べてはいけないと昔から云われていたことこそが、食文化なのではないか?・・・と。違うカナ?
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