先週金曜日(12月24日)の夜、平成23年度予算案が閣議決定されました。来年1月に始まる通常国会で、まずはこの予算案の審議が最優先の課題になります。今後、予算案のポイントについて折に触れて解説していきたいと思いますが、今日はまず、厚生労働省関連予算案にある『最低賃金の引上げに向けた中小企業への支援事業』についてです。
実は、今日、あるサイトを見ていて「アレッ?」と思いました。このサイトには、平成23年度予算案に関してこういうフレーズがあったのです:
「最低賃金を下回る賃金しか払えない中小企業を支援する予算なども入っているが、
税金で最低賃金を補てんしていたら、いつまでたっても競争力のある企業は出てこない
だろう。」
これを書いておられる方は、要は「最低賃金すら支払えないような企業は、市場から退出すべし」という意味で仰っているのだと思いますし、そのこと自体は全くその通りだと思います。欧州で主流である産業別団体協約も、「労使が合意した当該産業における最低基準を満たせないような企業は、そもそも事業を営む資格なし」という基本理念に基づいているわけです。
しかし、今回の予算案に含まれている『最低賃金の引上げに向けた中小企業への支援事業』は、「最低賃金を下回る賃金しか払えない中小企業に、その差額を補填する」事業ではありません。各地域ごとに定められた最低賃金を支払うのは、これはまさに全ての事業者の義務なので、そこは当然、企業が絶対に守らなければならない線であることは言うまでもないことです。今回の施策は、この最低賃金を、まず第一段階の目標である時給800円以上の水準に早期に近づけていくことを目標に、中小企業を支援するための施策なのです。
厚生労働省の説明資料には、この事業についてこう記述されています:
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
【最低賃金の引上げに向けた中小企業への支援事業】【特別枠】
○最低賃金800円の実現に向けたワン・ストップ相談窓口の設置・助成金制度の創設【50億円】
支給要件:1年当たり40円以上の賃金引上げなど
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
ご記憶の方も多いと思いますが、今年6月に開催された、政府、労働界、経済界の代表等でつくる「雇用戦略対話」で、地域別最低賃金については「中小企業支援策や非正規労働者等の職業能力育成」を念頭に置きつつ、「できる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、全国平均1,000円を目指す」ことが目標として設定されました。
この決定を受けた今年の最低賃金改正では、全国加重平均が730円となり、昨年度より17円の増額になりました。これは、厚労省の審議会が示した引き上げ目安の15円を上回って、「比較できる2002年度以降で最大の上げ幅」になっています。
しかしそれでもまだ、最低レベルの鳥取、島根、高知、佐賀、長崎、宮崎、鹿児島、沖縄県の8県では、最低賃金水準が642円に止まっています(ちなみに最高は東京の821円)。また、最低賃金が生活保護水準を下回る「逆転現象」が解消されていない都道県が、北海道、宮城、東京、神奈川、広島の5つ残っています。ワーキングプア問題や男女の賃金格差問題、さらには国内需要不足によるデフレ問題などを解消するための一つのステップとして、最低賃金の底上げは喫緊の課題です。
そこで最大の課題は、体力の弱い地方の中小企業で、いかに最低賃金の引き上げを図っていくか、ということなのです。中小企業は、全国の421万企業のうち99.7%、従業者数でも約7割を占めています。とりわけ、小規模企業は、企業数の9割弱、雇用数の約4分の1を占めています。雇用戦略対話の決定で、「中小企業支援策」について特に言及されたのもそのためで、今回の施策はまさにその要請に応えるものなのです。対象は限定されますが、まずはもっとも賃上げによる底上げ効果の高いところを優先的に支援しようという狙いです。
もちろん、事業の実効性は経営者の皆さんの意志と意欲にかかってくるわけですが、いずれ、全ての地域で法定の最低賃金が800円以上に上がっていくことに鑑みて、多くの対象中小企業に今回の支援策を利用して引き上げを先取りし、従業員の生活向上を図りながら国内需要の増加、地域経済の成長に貢献して欲しいと思います。そして、そんな地域の中小企業をみんなで応援して欲しいと願っています。
実は、今日、あるサイトを見ていて「アレッ?」と思いました。このサイトには、平成23年度予算案に関してこういうフレーズがあったのです:
「最低賃金を下回る賃金しか払えない中小企業を支援する予算なども入っているが、
税金で最低賃金を補てんしていたら、いつまでたっても競争力のある企業は出てこない
だろう。」
これを書いておられる方は、要は「最低賃金すら支払えないような企業は、市場から退出すべし」という意味で仰っているのだと思いますし、そのこと自体は全くその通りだと思います。欧州で主流である産業別団体協約も、「労使が合意した当該産業における最低基準を満たせないような企業は、そもそも事業を営む資格なし」という基本理念に基づいているわけです。
しかし、今回の予算案に含まれている『最低賃金の引上げに向けた中小企業への支援事業』は、「最低賃金を下回る賃金しか払えない中小企業に、その差額を補填する」事業ではありません。各地域ごとに定められた最低賃金を支払うのは、これはまさに全ての事業者の義務なので、そこは当然、企業が絶対に守らなければならない線であることは言うまでもないことです。今回の施策は、この最低賃金を、まず第一段階の目標である時給800円以上の水準に早期に近づけていくことを目標に、中小企業を支援するための施策なのです。
厚生労働省の説明資料には、この事業についてこう記述されています:
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
【最低賃金の引上げに向けた中小企業への支援事業】【特別枠】
○最低賃金800円の実現に向けたワン・ストップ相談窓口の設置・助成金制度の創設【50億円】
・賃金引上げに取り組む中小企業の経営面と労働面の相談等にワン・ストップで対応する相談窓口を全国(167箇所)に設置する。
・最低賃金引上げの影響が大きい13業界の全国規模の業界団体が、賃金底上げを図るための取組を行う場合に助成(上限2,000万円、15団体)を行う。
・最低賃金700円以下の地域の中小企業が、賃金を計画的に800円以上に引き上げ、労働能率の増進に資する設備導入等を行う場合に助成(助成率1/2)を行う(※)。
※対象:地域別最低賃金700円以下の34道県、約7,500企業・最低賃金引上げの影響が大きい13業界の全国規模の業界団体が、賃金底上げを図るための取組を行う場合に助成(上限2,000万円、15団体)を行う。
・最低賃金700円以下の地域の中小企業が、賃金を計画的に800円以上に引き上げ、労働能率の増進に資する設備導入等を行う場合に助成(助成率1/2)を行う(※)。
支給要件:1年当たり40円以上の賃金引上げなど
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ご記憶の方も多いと思いますが、今年6月に開催された、政府、労働界、経済界の代表等でつくる「雇用戦略対話」で、地域別最低賃金については「中小企業支援策や非正規労働者等の職業能力育成」を念頭に置きつつ、「できる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、全国平均1,000円を目指す」ことが目標として設定されました。
この決定を受けた今年の最低賃金改正では、全国加重平均が730円となり、昨年度より17円の増額になりました。これは、厚労省の審議会が示した引き上げ目安の15円を上回って、「比較できる2002年度以降で最大の上げ幅」になっています。
しかしそれでもまだ、最低レベルの鳥取、島根、高知、佐賀、長崎、宮崎、鹿児島、沖縄県の8県では、最低賃金水準が642円に止まっています(ちなみに最高は東京の821円)。また、最低賃金が生活保護水準を下回る「逆転現象」が解消されていない都道県が、北海道、宮城、東京、神奈川、広島の5つ残っています。ワーキングプア問題や男女の賃金格差問題、さらには国内需要不足によるデフレ問題などを解消するための一つのステップとして、最低賃金の底上げは喫緊の課題です。
そこで最大の課題は、体力の弱い地方の中小企業で、いかに最低賃金の引き上げを図っていくか、ということなのです。中小企業は、全国の421万企業のうち99.7%、従業者数でも約7割を占めています。とりわけ、小規模企業は、企業数の9割弱、雇用数の約4分の1を占めています。雇用戦略対話の決定で、「中小企業支援策」について特に言及されたのもそのためで、今回の施策はまさにその要請に応えるものなのです。対象は限定されますが、まずはもっとも賃上げによる底上げ効果の高いところを優先的に支援しようという狙いです。
もちろん、事業の実効性は経営者の皆さんの意志と意欲にかかってくるわけですが、いずれ、全ての地域で法定の最低賃金が800円以上に上がっていくことに鑑みて、多くの対象中小企業に今回の支援策を利用して引き上げを先取りし、従業員の生活向上を図りながら国内需要の増加、地域経済の成長に貢献して欲しいと思います。そして、そんな地域の中小企業をみんなで応援して欲しいと願っています。