臨時国会は金曜日で閉会となりましたが、もちろん、これで国会の活動がお休みになるわけではありません。特に政府・与党は、年末までに来年度予算案を確定しなければなりません。今年の場合は、それに併せて社会保障と税の一体改革案の取りまとめもあります。つまり、これからの2週間がとっても大事な政策論議の時期になるのです。
すでにこのブログでも紹介したとおり、社会保障改革論議は、年金、医療、介護、子ども・子育て、障がい者、そして雇用など、国民生活に直結する大変重要な分野を含む議論です。中でも、年金制度の役割と機能をどう確保するかがカギになることもお話ししました。
だからこそ、私も先日の参議院厚生労働委員会での年金問題に関する質問の中で、国民の皆さんに出来るだけ分かりやすいように、いくつかの重要ポイントを政府に確認したわけです。年金財政は今のところ健全であること、しかし、無年金や低年金の問題への対応が必要であること、などですね。
私が各地で講演させていただく際にも、年金問題についてよく聞かれます。その時に一番多い質問は「年金は大丈夫なのか?破綻するんじゃないのか?」という点なんです。
その時、私は「年金財政は当面大丈夫です。少なくとも、私たちが生きている間は年金が貰えなくなるようなことはありません。ただ、退職者・高齢者の生活を世代間の支え合いによって保障するという年金の本来機能を確保していくためには、改善が必要です」と答えるようにしています。実際、2004年に行われた年金改革、そして2009年に行われた財政検証の結果、現時点で年金財政は健全な状態を保っています。
しかし問題は、賃金労働者であるにもかかわらず正社員でないために厚生年金に入ることが出来ず、本来は自営業者や農業従事者等のために創設された国民年金に加入をしている方々が増えてしまっていることや、毎月の保険料が払えずに将来年金を受け取ることが出来ない人も多くなってきていることなんです。未納の拡大で年金財政が破綻することは当面ありませんが、将来、低年金・無年金者が拡大すれば生活保護の激増によって国の財政がおかしくなってしまう可能性があります。
だからこそ、年金制度の改善は必要なんです。
さらに、若い世代の皆さんからは「どうせ将来年金が貰えないなら、保険料を払っても仕方ないのでは?その分、民間の保険に行った方がいいのでは?」という質問が飛んできます。これは、年金が破綻するのではないかという(間違った)仮説に基づいているので、そもそも杞憂なわけですが、もう一つ言うと、公的年金の方が民間保険よりもお得なのは間違いありません。何せ、基礎年金の部分には国庫(税金)から2分の1が投入されていますし、厚生年金の保険料は事業主が半分負担するわけですから、それだけでも明らかにお得です。特に厚生年金は、所得の高い人から低い人へと年金を回すように設計されているので、所得の低い人はさらにお得になります。
寿命が延びて自分が何歳まで生きるのか分からなくなっているこの時代、一生保障し続けてくれる公的年金に加入しておくことの重要性を若い人ほど理解して欲しいですね。
しかしそうは言っても、大きな課題もあります。2004年の年金改革の柱は、「保険料の引き上げ(2017年まで)」「国庫負担の引き上げ(2分の1へ)」「給付水準の抑制」だったわけですが、そのうちの「給付水準の抑制」メカニズムがまだきちんと実行されていません。これは、先日も解説した特例水準の解消問題や、物価スライド、そしてマクロ経済スライドの発動問題などに関わる話で、給付水準を引き下げる話ですから、慎重な議論が必要です。
年金財政の維持と年金機能・役割の維持をどう両立するか、という問題で、これをしっかり議論し、最適な形を作ることが今回の年金制度改善策の中心的な課題になると思っています。
さて、こういった年金のお話を、もっと国民の皆さんに理解してもらう必要がありますね。毎度のように週刊誌の見出しを飾る「年金破綻!」「あなたの年金は大丈夫?」などという扇動的かつ無責任な見出しに惑わされないようにしていただかないといけません。そう思っていたら、日頃からいろいろとご指導をいただいている峰崎直樹(元・財務副大臣)さんからある本を紹介して貰いました。太田啓之さんが書いた『いま、知らないと絶対損する年金50問50答(文春新書)」という本。とっても分かりやすく書かれていて、年金に対する根拠のない不安を払拭してくれるばかりか、年金制度に対する理解を深めてくれること請け合いです。
年金問題に興味のある方、ぜひ読んでみて下さい!