こんばんは
今日は、夕方同級生の美容院にいたとき、
世界遺産の番組が始まり、ナレーションで「土楼(どろう)」と聞こえてきました。
今日ご覧になった方もいらっしゃると思いますが、
「土楼(トゥーロン)」というのは、「客家土楼」「客家民居」ともいわれる
中国の福建・広東・江西省に渡る地域に現存する伝統的民居です。
この民居研究をしていたのが、先週このブログにも書いた恩師の研究室でした。
一応番組最後のテロップをチェックしてみると、監修で先生の名前が出てきました。
そんなわけで、私も在学中に江西省の調査に同行させてもらいました。
江西省は四角い方形のものが多かったのですが、とにかく大きいものが多く、
山道を車で抜け田畑の中に見えてくるその存在感に圧倒されました。
騎馬民族の地域で、一族を守るためにみんなで集まって住む民居。
最盛期は約900人、今でも120戸600人あまりが住んでいるというものもありました。
建築面積が10,000㎡。100m×100mの城壁の中に、家畜も一緒に住んでいる。
調査で私達学生は、ひたすら実測するのですが、とにかくこのスケールです。
時間切れになりそうなときは、一部歩測なんてこともありました。
ちなみに私の一歩は88㎝。これが帰ってから図面におこしてみても結構あってるんです。
また電気が来てないところもあり、薄明かりの部屋で図っていると、
首元に鼻息を感じ、振り返ると牛がいた!なんてこともありました。
世界的に成長を続ける中国ですが、この客家民居の生活はほのぼのしたものでした。
子供は元気で、私達のことを興味深そうに見つめ、くっついてくる。
カメラを向けると何ともいえない笑顔を見せてくれる。
民居中、風通しの良い日陰で佇むおじいちゃんおばあちゃん達。
一回、近くに食堂がなく、民居の一つのお宅にお邪魔し昼食を頂いたことがありました。
調理はかまどのような台所でされて、炒め物何種類かと白いご飯を出してくれました。
茶碗にご飯をもらい、その上におかずをのせて食べるのですが、これがおいしい!
みんなが入れる部屋などないので、外部通路にいすを出してみんなで食べる。
そんな雰囲気もあってか、一番おいしかったといっても過言ではないくらいでした。
この客家民居からは、華僑や政府高官になっている人たちがいるそうですが、
その人達のルーツを肌で感じさせられた気分でした。
いろいろ話は尽きませんが、最後に一つ、
客家民居をまとめた本が昨年出版されました。(上の写真)
「客家民居の世界
孫文、小平のルーツここにあり」
興味をもたれた方は是非ともご覧ください。
またある方のお言葉を借りれば、地域や学校の図書館にもご推薦ください。
この学生時代の体験は、日本ではできない本当に良いものでした。
先生はじめ、お世話になった皆さんに感謝しております。
特に私のような建築に携わるものは、空間を作るわけですから、
やはり、実際見て肌で感じるというのは大事だと思います。
そこには、写真には現れないものを感じることができるからです。
自然にそういうものは私達の仕事に反映されるんだと思います。
でも、これは建築に関わる人だけではないのかもしれないと最近思います。
今、インターネットやメディアの発達でいろいろ情報を得ることができますが、
それは、誰かが発信した情報であり、実際どうかはわかりません。
私は、人との出会いもそうだと思います。
なかなか実際見聞きし感じることはできませんが、
それをしようとする姿勢だけは、持ち続けたいと思います。