白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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幽玄の間

2016年09月01日 20時07分45秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
木曜日は棋士の手合日です。
いつものように幽玄の間中継棋譜のご紹介をしましょう。
山田規三生九段(黒)と中野寛也九段の対局です。



白△は自分から頭をぶつけに行く凄い手。
しかしプロが形の悪い手を打つ時は理由があります。





白1ならすっきりした形ですが、黒2、4を利かされて黒6と滑られると根拠が出来てしまい、もう攻められません。
逆に下辺の白が心配になります。




そこで実戦は白1から黒の眼形を奪って行きました。
白9まで、下辺の白も自然に強くなります。
力戦家で知られる中野九段らしい力強い打ち方でした。





右下の戦いが一段落した所で左下隅を動き出しました。
これは地を稼ごうという訳ではなく、実は下辺の白を意識した打ち方です。





結果このような分かれになりました。
隅の黒地が大きく見える方が多いでしょう。
しかし下辺の白全体がしっかり根拠を持った事に意味があります。
また白4子もAなどの狙いがあって死に切っておらず、まだ活用の余地があります。





逆に黒1と詰められると全体の白が心配になる所です。





白△と開いた場面です。
局面が落ち着いて地の争いになるかと思いきや・・・





黒1と踏み込んでいきました!
山田九段もかつてブンブン丸と呼ばれたほどの剛腕です。
しかしこんな狭い所に手があるのでしょうか?





黒は強引にこじ空けに行きました。
黒5に白Aと抜かれて何もないようですが、白の弱点を睨んでいます。
その弱点とは・・・





白1と抜くと黒2を利かされて渡る手が無くなり、黒4で隅が取られてしまいます。
隅が生きていないのを睨んだ黒の仕掛けでした。





実戦は下方を意識した白1、3でしたが、それでも黒4と追及していきました。
やはり隅の白を狙っています。





その後ややこしい手順を経て、コウ争いになりました。
黒がコウに勝った上で黒△を助けると、右下の白全体が死ぬ大変なコウです。





結果黒1のコウ立てに白2とコウを解消、黒3と連打する分かれになりました。
右辺の白地は増えましたが、下辺の白全体が弱くなりました。
黒成功でしょう。

コウが苦手な方が多いですが、碁を打つ上では避けて通れません。
コウに負けてもコウ替わりで連打する事に喜びを感じられると良いですね。