白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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一力七段、天元挑戦!

2016年09月02日 23時15分09秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日第42期天元戦挑戦者決定戦が行われ、一力遼七段山下敬吾九段に白番4目半勝ちを収めて挑戦権を獲得しました!
それでは早速対局の模様を振り返ってみましょう。



黒1の肩ツキには白AかBが定型ですが、受けずに白2と分断しました。
白の勢力圏で主導権を握ろうという積極戦法です。





右辺の白地を割られて目先の地は損ですが、黒△への攻めを重視しています。





その後の戦いで黒△に切りには、「おや?」と思いました。
所謂「ダメを切る」手で、大半のプロが敬遠する手です。





白4の繋ぎは打たせて黒5に回るのが「普通」でしょう。
それを承知であえて切るのは山下九段らしいですね。
常識にはとらわれない碁なのです。





しかし力の入った手だけに反動もあり、白△と技が飛んで来ました。
形からすれば黒Aと出る一手ですが、白B以下ここに白石が増えると右辺の黒が危険になります。





そこで黒1と白2子を取ったのは仕方なく、白2で振り替わりになりました。
黒△を取りながら下辺の黒地を破ったのは大きく、白成功でしょうね。





局面が落ち着きかけた時、黒1のノゾキから大騒動が持ち上がりました。
ここで白Aと繋がずに白2と反撃!
黒を丸飲みにしようという強手です。





その後白△となって攻め合いは白勝ちです。
この部分に関しては白大成功となりましたが、もちろん山下九段も想定内です。
あえて攻め合い負けのコースを選んだ黒の狙いは?





黒1、3、9と隅に手をつけていきました!
腕に自信のある方はおや?と思われたかもしれません。





黒1、3には白4が妙手で黒取られ、というのが高段者の常識です。





しかし実は黒1を打っておいてから3、5でコウに持ち込める、というのがプロの常識なのです。





実戦も黒△まで粘ってコウになりました。
手段としてはよく知られているのですが、外側の黒がボロボロになる事が多く「無理筋」とされています。
実戦では滅多にお目にかかれません。
ところがこの局面は周囲が真っ黒、隅で生きてしまえば白の全滅さえ狙えるという状況です。
大変な勝負所を迎えました。





コウ争いの結果、黒は隅で生きましたが白も眼形を確保しました。
となると上辺で黒石を取った利益が大きく、白優勢が明らかになりました。





黒1とヨセながら右辺の白を狙った場面、ここで白2、4が鮮やかな決め手です!
黒△がダメ詰まりなので黒Aと遮る事が出来ません。
これで白の勝ちが決まりました。

なお、幽玄の間では富士田明彦五段が多数の図を使って詳しく解説しています。
そちらもぜひご覧ください。


一力七段は19歳、ポスト井山の一角です。
井山天元も必死で潰しに来るでしょう!
五番勝負は10月21日に三重県志摩市の「賢島 宝生苑」で開幕します。
お楽しみに!