白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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新人王戦第1局感想

2016年09月22日 18時48分10秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日、第41期新人王戦決勝三番勝負第1局が行われました。
早速振り返っていきましょう。



黒は谷口徹二段、白は大西竜平二段です。
2人とも正面から戦う碁という印象です。

序盤から双方が工夫を凝らし、見た事の無い局面になりました。
右下黒Aと切れば白Bと取ってコウです。
しかし「初コウにコウ材無し」というように、並のコウ立てでは迷わず解消されて黒がいけません。
そこで黒△はコウ立て作り、白の対応によってはコウを仕掛けようとしています。





白1が真っ先に浮かぶ対応ですが、白5まで交換してから黒6とコウを仕掛けるつもりでしょう。
黒8が強烈なコウ材になります。





コウを解消するしかなく、勢い派手な振り替わりへと進みます。
この分かれは黒が良いでしょう。





そこで実戦は白1とコウを取って黒2の連打を許しました。
その代わり白5と挟み、こちらで主導権を握る作戦です。





黒の右辺の打ち方には、何か誤算があったのではないでしょうか?
黒△が無駄になっており、白が打ちやすい局面になったと思います。
黒も形勢に危機感を感じていたのでしょう。
次に黒Aと「三目の頭」を伸びるのが自然ですが・・・





黒1とハネて、あえて白2の急所を切らせました。
黒3子がダメ詰まりになり、白Aの「三目の真ん中」の強烈な手筋が生じています。
黒はそれは承知の上で、局面を複雑にしなければ勝機が生じないとみたのでしょう。





しかし白の対応は的確で、左辺黒2子を大きく飲み込んでははっきり優勢となりました。
黒△の切りに対しては・・・





当然白1と繋いで全体の連絡を図るだろうと思っていました。
黒2で白△を取られますが、白5の大場に回って形勢ははっきりリードしているでしょう。





ところが実戦は2子を助けて頑張りました
中央黒への攻めを狙っていますが、右辺の白も切られています。
周辺には黒石が多く、黒Aの利き筋もあります。
ほとんどのプロはこの展開を望まないはずです。
しかし善悪はともかく、正面から戦っていくのが大西二段の信条なのでしょう。
16歳の新鋭は、元気が有り余っているようです。





その後黒△と切り、またしてもコウ争いが始まりました。
しかしこの場面では白のコウ材が足りず・・・





白1と後退、黒2を許しました。
白Aのハザマを狙われていた所だけに、白2子を取り込んだのは大きな戦果です。
また白の眼形を奪ってもいます。
黒に風が吹き始めました。





黒は着実にポイントを挙げ、黒△と出た場面でははっきり地合リードです。
ここで左辺を受けず、白1と踏み込んだのが渾身の勝負手!
黒Aと進出されると左辺の白地がガタガタになるのですが、白Bで黒5子が危ないぞと言っています。
黒はその戦いを受けて立つ選択もありましたが・・・





黒1と安全策を採ったのは、自信か震えか?
真相は分かりませんが、白△を先手で打てては白大きく得をしました。
これで急激に細かくなりました。

この時点はまだ少し黒が良かったのでしょう。
しかしヨセでミスが出たのか、結果は大西二段の白番半目勝ちとなりました。


両者打ち過ぎや悪手もあったでしょうが、正面から戦っているのは新鋭らしくて良いですね。
9月30日(金)に行われる第2局も楽しみです。