白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

一力七段、連勝ならず

2016年09月28日 18時40分45秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は第18回農心辛ラーメン杯囲碁最強戦の第2戦が行われました。
相手は中国の范廷鈺九段、またしても世界のトップ棋士です。
第1戦で李世ドル九段を破った一力遼七段、連勝を期待されていましたが残念ながら及びませんでした。
それでは振り返っていきましょう。
なおこの対局は幽玄の間にて、首藤瞬七段の解説付きで中継されました。



序盤、黒番の一力七段が意欲的な打ち方を見せてくれました。
右辺の白石は全体的に位が低く、黒リードの布石でしょう。





しかし黒2と押さえて右下白への攻めを狙った瞬間、白3の切り!
なんとも早い仕掛けです。
早くも戦いが始まりました。





上辺の戦いは黒△で一段落、続いて白1と戦場は右下に移りました。
黒2、4は厳しい切断で、白△を孤立させては黒うまくやったかと思われました。





(変化図)白1、3で隅に生きる事はできます。
しかしますます位が低くなり、黒4と大場に先行して黒が良いでしょう。
白△の2子も自然消滅となりそうです。





(実戦)ところが白1、3と反撃!
黒の勢力を破壊しに行きました。
これが鋭い好手でした。





後は一本道で進みます。
白8の後白Aと這われると隅の黒との攻め合いになるので・・・





黒1と押さえ、白8までの大きな振り替わりになりました。
黒は白7子を取りましたが、白は下辺に大きな勢力を築いています。
元々黒が有利な場所だったので、白としては上々の結果でしょう。
さすがの変わり身作戦でした。





黒1のカカリには、白2以下単純明快に下辺を地にする作戦を採り・・・





白△となって下辺に45目ほどの確定地を確保しました。
どうやら白僅かにリードしたようです。
黒1は非勢を意識した頑張りでしょう。
この手の狙いは・・・





(黒の狙い)白5までと受けさせ、さらに黒6と打って左辺も上辺も打とうという手です。
そこで白は・・・





(実戦)白1から5と我慢し、先手を取って白7に回りました。
スピードを重視した作戦です。
次に黒Aなら、さらに先手を取って白Bに回る予定でしょう。
そこで黒8と打ったのは・・・





(黒の狙い)白1、3と受けさせておいて黒4に先行する狙いです。
黒模様が大きく広がり、同時に白模様を制限する絶好点です。
そこで白は・・・





(実戦)白1と反発して行きました。
黒2と打たれて隅の白地は減りますが・・・





結果先手を取り、白△に回る事ができました。
これで白は優勢を維持しています。
手数が進んだ分、黒の逆転のチャンスが少なくなったと言えるでしょう。
平凡に打っては勝ち目がないとみた黒は・・・





黒1、3とあえて小さいヨセを打ちました。
そして黒5、7がセットの勝負手!
分が悪いのは承知で、生きるか死ぬかの勝負に全てを賭けました。

しかし白は落ち着いていました。
しっかりと読み切って黒を仕留め、勝負を決めました。

本局、一力七段は持ち前のパワーを発揮するチャンスがありませんでした。
恐らく序盤のどこかに問題点があったのですが、そこを的確に衝かれてしまったようです。
以降は隙の無い打ち方で、逆転の糸口を与えてくれませんでした。
流石世界トップクラスの碁だったと思います。

残念でしたが、李世ドル九段を破った一力七段は立派に仕事を果たしました。
残りの日本選手の奮起に期待しましょう。
第3戦は范廷鈺九段と韓国の李東勳八段が対戦します。
その勝者と日本選手(未定)が第1ラウンドの最終戦となる第4戦を戦います。
お楽しみに!