白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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才気煥発

2017年03月02日 23時59分59秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
第41期棋聖戦(主催:読売新聞社)第5局は、井山裕太棋聖が勝って3勝2敗となりました。
ここまで河野臨挑戦者の強さに苦しんでいる感もありましたが、流石の勝負強さですね。

ところで、封じ手予想は見事に外れましたね。
実戦の手は無いと思っていたのですが、井山棋聖の深い読みに支えられた好手だったような気がします。


さて、本日は幽玄の間で中継された対局の中から、目を引いた1手をご紹介しましょう。
利民杯予選、大西竜平二段(黒)と謝爾豪四段(中国)の対局です。



1図(テーマ図)
白△と飛んだ場面です。
隅の黒に脅しをかけた手で、受けさせれば白にとって大きなプラスになります。





2図(変化図1)
白の形は薄いのですが、黒1と出て行っても上手く行きません。
1子を取れるだけで、かえって白を固めてしまいます。





3図(変化図2)
という訳で、何も考えず黒1と受けてしまいそうです。
しかし、これは黒としては大きな利かされです。
元々は黒AやBと打てば右辺に進出できる所でしたが、白△によってそれらの手が打ち難くなっています。





4図(変化図3)
また、黒1に対しては白2がぴったりになります。
白△は取れますが、右辺への進出を止められては面白くありません。
しかし、こんなつらい図を受け入れる大西二段ではありませんでした。





5図(実戦)
大西二段の放った手は、なんと黒1のツケ!
白△と利かしに来た所を、利かし返そうというのです。
黒Aと受ける前なので、白としても△を捨てる訳にはいきません。

後から理屈は付けられるのですが、実際には理屈で考えてもなかなか思い浮かばない手です。
最初からここに目が行くのでしょう。
大西二段、才気煥発の一手です。





6図(変化図)
白1と繋がせれば黒2と受けておきます。
黒AやBの厳しい狙いを残し、白が守ってくれれば先手を奪い返す事ができます。





7図(実戦)
実戦は白1でしたが、同様に黒2と受けておきます。
白3に先行されましたが、黒4と広い右辺に進出する事ができました。
4図とは雲泥の差ですね。

結果は残念でしたが、随所で大西二段らしい鋭い手が見られた1局でした。