白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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置き石を生かす(9子局)

2017年03月12日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんばんは。
ツイッターの日本棋院若手棋士アカウントの担当者が、横塚力二段から小池芳弘二段に交代しました。
小池二段が入段した年に対局する機会があり、あっさり負かされた苦い記憶が蘇ります。

一昔前なら、新初段は読みの力と勢いはあるけれど、実力はまだまだ・・・といったイメージでした。
しかし、最近は大局観も持ち合わせているので手に負えません。
これは情報化社会の恩恵による所が大きいですね。
最近はAIというものも出て来ましたが、これもいずれは新初段のレベルに影響を与える事になるのでしょうか。

さて、本日はグリーン碁石交流会(会場:秀芳囲碁さろん)にて指導碁を行いました。
今回はその中の1局を題材にしましょう。
9子局です。



1図(テーマ図)
白△と打った場面です。
黒はどんな態度で臨みますか?

置き碁の黒番では、置き石を生かす打ち方を心がけなければいけません。
当たり前のようですが、これができていない方が多いのです。
具体的には、置き石=地と考えてしまう方が多いですね。

しかし、それはあくまで副産物です。
置き石はと考えるのが正解です。
砦としての機能を生かして有利に戦ってこそ、置石は輝きます。
地を意識するのは後半になってからでも十分間に合います。

さて、そう考えると今何をするべきなのか、見えて来ましたね。





2図(実戦)
実戦は黒1と攻撃に出ました。
ここでの正解は1つではありませんが、重要な事は白3子が物凄く弱いので攻める隅の黒が苦しまない、の2つです。
その点、この黒1は非常にシンプルです。





3図(実戦)
ところが実戦は、ここで突如黒1と方向転換してしまいました。
考えているうちに、右上の黒模様に入られたくないという意識になってしまったようです。
しかし、白2と守られてはチャンスを逃しています。
白は大体繋がったような形ですし、隅の黒が閉じ込められたので白Aなども気になります。
また、白が強くなると黒△が攻められる可能性も出て来ます。

まだ開始十数手ですが、置き碁の序盤は非常に重要です。
この時点で、少なくとも白が大敗する未来は無くなったと感じました。





4図(実戦)
シンプルに黒5までと、左右を分断して良いのです。
これで白△は風前の灯です。





5図(実戦)
上手の技で、例えば白11までと生きるかもしれません。
しかしその間に周囲の黒が固まり、今度は黒12の攻めに回ります。
これは一方的な攻めで、白はどうしようも無くなります。
仮に生きたとしてもせいぜい眼二つで、その間に黒には自然と大きな地や模様ができている事でしょう。

うわ手の石を攻めるためには、勇気がいると思っている方が多いですが、そんな事はありません。
圧倒的な数の味方がいるのですから、簡単な手を打っているだけで十分攻めになるのです。

ただし、取りに行こうとすると無理な手が出やすいので、その時は慎重に考えましょう。
取ろう取ろうは取られの元です。