白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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棋戦ニュース&UEC杯

2017年03月18日 21時50分13秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
本日はグランドチャンピオン戦の準決勝、決勝が行われました。
見事優勝を果たしたのは、一力遼七段
得意の読みを存分に生かして快勝しました。
もはや読みの早さ、正確さでは一番かもしれませんね。
準決勝の2局と共に派手で面白い対局でしたので、ぜひ幽玄の間囲碁・将棋チャンネルでご覧ください。

そして明日は、NHK杯決勝戦、井山裕太六冠と一力遼七段の対局が放映されます!
両者共に勝てば初優勝、一力七段は史上最年少優勝もかかっています。
注目の対決を、ぜひご覧ください!
なお、明日の放映時間は13時30分~15時です。
お間違えのないよう、お気を付けください。

また、本日は第10回UEC杯コンピュータ囲碁大会の予選も行われました。
最終局では国内最強と言われる「DeepZenGo」と中国の「絶芸(FineArt)」が対決!
大変注目された一局でした。
この1局の序盤をご紹介しましょう。
なお、対局の模様は幽玄の間で中継されました。



1図(変化図)
DeepZenGoの黒番です。
黒△まではプロの碁でよく打たれている布石です。
次に下辺黒模様の大きさを制限したい所ですが、白1なら無理が無く自然に見えます。
プロの碁ではこれが一番人気でしょう。





2図(実戦)
ところが、実戦は深々と踏み込んで行きました。
狭い所に入った感もありますが、右下黒もさほど強くないと見ているのでしょう。





3図(実戦)
その後黒1と襲い掛かりましたが、白2と曲がられて形が崩れています。
黒AやBと打ちたい所ですが、白Cの切りが厳しそうです。





4図(実戦)
それにしても、黒1の転戦とは驚きです。
俗に困った時は手を抜けなどと言います。
続けて打つより、他に手を回す方が得策と見たのでしょう。

白2、4となると黒△が完全に空振りになります。
例え無理だとしても、前図黒AやBと打って黒△の顔を立てたくなるのが「人情」というものです。
しかし、AIに人情はありません(笑)。
ここはAIらしさが出た場面だったと思います。

本局は終始リードを保った絶芸の完勝だったと思います。
明日は恐らく両者の再戦があるでしょうが、どうなるでしょうか。
人間は一日では強くなれませんが、AIは分かりません。