白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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電聖戦感想その3

2017年03月28日 22時30分20秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
明日は有楽町囲碁センターで指導碁を行います。
ご都合の合う方はぜひお越しください。

さて、本日は電聖戦の感想最終回です。
引き続き一力遼七段と絶芸(FineArt)の対局を振り返ります。



1図
一力七段、白1と右下黒に襲い掛かりました。
黒も反撃して、激戦開始です。





2図
黒1と閉じ込められて、白△がピンチです。
しかし、こうした手所は一力七段の得意分野です。





3図
何と、逆に黒△を取り込んで生還しました!
さらに白△と押さえ込み、黒✖の一団も取り込む構えです。
一力七段、やったか!?





4図
しかし、黒は中央の白を狙って来ました。
中央で白3子をポン抜いた黒の厚みが強力です。





5図
その後黒1、3となり、左辺に巨大な黒地が完成しました。
白△は黒△と攻め合いの形になっていますが、もはや白は攻め合いに勝ったとしても地が足りません。
一力七段、全力で戦いましたが及びませんでした。

ところで、この局面が事前に想定できたとして、形勢判断するにはどうすれば良いでしょうか?
まず攻め合いの勝ち負けを読み切らなければいけません。
また、右上の黒地がどれだけまとまるかも考える必要があります。
さらに、一段落した後のヨセも考えておかなければいけません。
これだけやった上で、最後にお互いの地を数えてようやく終わりです。
人間が精密に形勢判断するには、これだけの手順を踏む必要があります。
たった一つの図でも、かなりの時間を要するのです。

ところが、AIはこの図から終局までの膨大な分岐をシミュレートしてしまいます。
我々も時にはこういった形勢判断方法を行う事もあります。
対局後の検討などで、この手を打っていたらどちらが勝っていたか、という事を調べるために終局まで進めてみるのです。
時間制限が無いからこそできる事ですね。
形勢判断というより、勝敗判断に近い感じもあります。

しかし、AIはそれを対局中にやってしまいます。
それも数秒で・・・。
対AIの戦いでは持ち時間が多い方が有利なのですが、その理由は読みよりも形勢判断の分野にあります。
それを実感するような内容でした。