白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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UEC杯結果

2017年03月19日 16時05分26秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
本日は第10回UEC杯コンピュータ囲碁大会の決勝トーナメントが行われました。
結果は、DeepZenGoとの決勝戦を制した絶芸(FineArt)の優勝でした。
本命視されていましたが、やはり強かったですね。
本日は準決勝の1局と決勝で、印象的だった場面をご紹介しましょう。



1図(準決勝その1)
DeepZenGo(黒番)とAQの対局です。
AQは開発期間半年とのことでしたが、とてもそうは思えないほどの強さでした。
恐ろしい時代になったものです。

さて、図は白1と逃げた場面です。
ここで黒A、白B、黒C、白Dならよくある進行で、黒△と白△を取り合う振り替わりになります。
しかし、実戦は白1に黒Bとして、黒△を助けました。





2図(準決勝その2)
そして、最終的には上辺の白を丸取りに行きました!
しかし、外側の黒が傷だらけで、とても持ちそうにありません。
それまでの形勢は黒が良かったこともあり、人間にはとても選べない進行です。
怖さを感じない、AIならではの打ち方ですね。

実際問題、ここから白が凌ぐ方法はある筈ですが・・・。
それを読み切った上で、黒が得できるという判断でしょうか?
Zenの対応を見てみたかった所ですが、結果は白が間違えて全滅となりました。





3図(決勝その1)
右下は古くからある変化です。
しかし、白1に対して隅を受けず、黒2、4の強襲とは!





4図(決勝その2)
その後、こんな分かれになりました。
要石の黒△が飲み込まれましたし、右下隅の黒もまだ生きていません。
また、左下白△は凌ぎに苦労しない石です。

これは白が良くなったと判断するのが、普通のプロの感覚ではないでしょうか。
少なくとも、私は黒を持ちたいとは思えません。
しかし、AIの判断は違ったようです。





5図(決勝その3)
白1、3と手を付けたのが決め手になりました。
ただし、黒Aと抵抗した後は非常に難解で、これは容易に読み切れるものではありません。
果たして本当に手になっていたのでしょうか?
もし絶芸が読み切れていたのなら、読みの分野でも完全に人間を追い越していますね。

決勝を争った両者は、3/26(日)に開催される第5回電聖戦にて、一力遼七段と対局します。
以前は人間側が胸を貸す立場でしたが、もはや完全に勝負ですね。
一力七段には、ぜひ人間の強さを見せて貰いたいと思います。