白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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上野二段、女流棋聖獲得!

2018年01月29日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は第21期ドコモ杯女流棋聖戦挑戦手合第二局が行われました。
結果はこちらのニュースの通り、上野愛咲美二段謝依旻女流棋聖を破り、2連勝で女流棋聖を獲得しました!
16歳3か月、入段からまだ2年経っていない新星の快挙です。

実力があることは明らかであり、タイトル戦に出てきたことには全く驚きはありませんでした。
それにしても、いきなりのタイトル獲得はやはり凄いです。
内容としても、2局とも普段通りの自分を出せていたと思います。
対局内容は特設サイト幽玄の間をご覧頂くとして、ここでは上野二段の強さを分析してみましょう。

<読みが正確>
読みのスピードが速く、正確です。
30秒の秒読みの中でも、全く乱れた様子が見られませんでした。
最後の決め手なども、何十手も前から見えていたことが伺えます。

<寄せと計算が正確>
読みと関連性が高い分野なので当然と言えば当然ですが、寄せと計算が正確です。
第2局も終盤で盤面10目ぐらいの差かと思っていたら、ぐんぐん差を広げていきましたね。

強いAIの登場で広く知られるようになりましたが、プロでも19×19の広い碁盤の中で正しい答えを出すことは容易ではありません。
ですから、序盤・中盤で大きく形勢を損なってしまうこともあります。
それこそ、ある意味では運によって左右されることすらあります。
しかし、寄せや計算は答えの出やすい分野であり、実力が直接結果を左右します。
そこで強いということは、トップで活躍するために必須です。

<自信>
上野二段の碁を見ていてよく感じることは、「自信を持って打っているな」ということです。
自分の強みを理解しているので、序盤や中盤で無理をしません。
その結果、得意分野での勝負に持ち込むことができるのです。

今回も一方的に押し切ったわけではありませんが、戦いぶりが非常に安定していました。
ですから、謝女流棋聖のミスも的確に咎めることができたのでしょう。


囲碁は男女による有利不利が非常に少ないゲームですから、女流棋士が一般棋戦で活躍しても不思議ではありません。
全体的にはまだ差がありますが、その壁を打ち破れる可能性のある女流棋士もいて、上野二段はその内の1人ですね。
また楽しみな若手が出てきました。