白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

電聖戦感想その1

2017年03月26日 23時23分32秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
本日は第5回電聖戦が行われました。
人間代表の一力遼七段がDeepZenGo、絶芸(FineArt)と対局しましたが、残念ながら2連敗となりました。
トップレベルのAIは、持ち時間が短くなっても殆ど棋力が落ちないようです。
本日はDeepZenGoとの対局で印象的だった場面をご紹介しましょう。
盤面を貼るのは久しぶりですね。



1図
一力七段の黒番です。
黒△のツケは捌きの手で、白Aと受けさせて黒Bとツケる予定でしょう。
白△を取るか隅で治まるかできれば、左上白の攻めに専念する事ができます。





2図
しかし、白1、3と要石の黒2子を取ったのが好判断でした。
黒4と出られた形も酷いのですが、左辺の白が生きてしまったので、結果的に黒△が無意味な手になっています。
黒は序盤早々、大きなハンデを負ってしまった気がします。





3図
右下の変化も印象的でした。
黒1に対して白2は、下辺白の構えを盛り上げる手です。
ですから、黒3に対しては白Aと押さえるのが自然ですが・・・。





4図
白1、3にはビックリ!
プロの碁には滅多に現れない打ち方です。
というのは、黒△を取れても、白△を取られる事の方が痛く見えるからです。
ましてや、この碁は下辺に白地ができそうでしたから・・・。





5図
ご覧のように、下辺は白地ができるどころか黒地になってしまいました。
右下一帯だけ見ると、白が損したようにしか見えません。
しかし、上辺白15、17と入って行った所に注目しましょう。
ここに入れば、必然的に右下黒3子との競り合いになりますが、その時に右下の白が役立って来ると見ているのです。
部分よりも全体を重視する、AIらしい大局観でした。

もちろん、人間も全局を見て判断するように心がけてはいるのです。
しかし、使える時間が限られている以上、全ての可能性を追う事はできません。
すると、どうしても過去の経験を生かしやすい、部分的な判断を優先する事になります。
人間とAIでは、根本的に着手の決め方が異なるのです。
それがよく分かる1局でした。

ネットとの関わり

2017年03月25日 21時56分52秒 | 囲碁について(文章中心)
皆様こんばんは。
日本棋院若手棋士アカウントの担当者が、木部夏生二段から星合志保初段に交代しました。
星合初段は、「最近会うたびに綺麗になっている」との評判です。
対局の方でも、ドコモ杯女流棋聖戦ではあと一歩で決勝進出という所まで行った事は記憶に新しいですね。

現在の囲碁棋士は、日本棋院と関西棋院を合わせれば500人近くになります。
その中で、広く囲碁ファンに知られている棋士はごく一部でしょう。
これが例えば野球界なら、数百人の選手を知っているファンは珍しくありません。
囲碁の対局はメディアへの露出が少ないので当然とも言えますが、大きな課題です。

その点で、若手棋士達の試みは重要な第一歩だと思います。
これからの時代、紹介されるのを待つのではなく、自らアピールして行かなければいけません。
AIの台頭もあり、囲碁ファンは勝ち負けの結果だけではなく、一人一人の人間として応援して行く面が強まって行くでしょう。

ところで、昨今は社会の情報化が進む一方です。
何をするにも、まずネットで調べてみてからという時代になっています。
そして、囲碁とネットは非常に相性が良いものです。
対局もできれば、棋譜や解説を見る事にも全く支障がありません。
井山裕太六冠は大天才とはいえ、ネットが無ければここまでの強さにはなっていなかったでしょう。
ちなみに、私が中学生か高校生の頃にネットで井山少年と打って勝ったことがありますが、それが生涯唯一の勝利となっています。
棋譜を残しておくべきでしたね(笑)。

さて、現在囲碁界は厳しい状況にありますが、その中にあってネット関連の需要は伸び続けています。
しかし、囲碁界のネット活用は、まだまだリアルにできる事の変形に留まっているものが多いように思います。
ネットでなければできない新しい事を、どんどん見つけて行きたいものですね。

一方で、リアルの世界で楽しむ囲碁はやはり良いものです。
リアルとネットが相互に弱点を補完し合うことで、囲碁の楽しみ方はより広がるのではないでしょうか。
囲碁界はまだまだこれからです。

戦争

2017年03月24日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
人類の歴史は、戦いの歴史でした。
現在は戦後70年余りと言われます。
しかし、そんな我が国日本でも、長きに渡って戦争が続いています。
そう、それは・・・。



きのこたけのこ戦争・・・。※画像はイメージです

そして3/30(木)、新たな戦いの火蓋が切られるようです。
何故、人は争うのでしょうか・・・。
同じ人間ですから、話し合えば1つの答えに辿り着けると思うのです。




きのこが優れているという事に・・・。


さて、芸風が変わり過ぎて心配されそうなので、今日は対局中のお菓子についてのお話を少々。
棋士の対局の多くは朝から夕方、場合によっては夜遅くまで続きます。
その長い戦いを乗り切るための栄養補給、あるいは気分転換として、途中でお菓子を食べる棋士は珍しくありません。
タイトル戦などではおやつタイムが一つの見所と化していますね。

もちろん、普段の対局では自分で用意しますから、あんなに豪華なものは食べられません(笑)。
一番人気は、やはりチョコレート系でしょうか。
チョコレートと言うと将棋の某有名棋士が思い浮かびますが、糖分が欲しくなるのは囲碁棋士も同じなのでしょう。
対局中は袋に入っていないものは敬遠されがちですが、それでもきのことたけのこから選ぶなら・・・答えは言うまでもありません。

私も以前は対局中にチョコレートを食べていましたが、今はやめました。
上着のポケットの中に入れておいて、席を外した時に時々つまむのですが・・・。
対局中は体温が上がる事をうっかりして、悲劇が起こった事が何度か。
対局中の棋士の、碁以外への集中力は酷いものなのです。

ワールド碁チャンピオンシップ結果

2017年03月23日 22時31分35秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
ワールド碁チャンピオンシップは、韓国の朴廷桓九段が中国の芈昱廷九段を破り、3連勝で優勝を果たしました。
目まぐるしく景色の変わって行く、難しい碁でしたね。
朴九段の最大の持ち味と思われる、判断力が生きたのではないでしょうか。

そして井山六冠、和製AIのDeepZenGoにまさかの敗戦を喫しました。
個人的にはやや精彩を欠いた印象を受けましたが、連戦の疲れが出てしまったのでしょうか。
それにしても、DeepZenGoの打ち回しには「らしさ」を感じましたね。
中央志向や攻め重視といった特徴がよく表れていたと思います。
このまま強さを追求して行った時に果たして個性が残るのか、Masterのように無個性に近付いて行くのか・・・。
そういった所にも注目して行きたい所です。

さて、今回井山九段は残念な結果に終わりましたが、今後世界への挑戦を控える理由にはなりません。
どれだけ失敗しようとも、世界一を目指して戦って欲しいですね。
それが実現する日は必ず来ると信じています。

そのためには、周囲の協力も必要不可欠ですね。
普通なら国内戦をこなすだけでも大変ですから、上手くスケジュールを組んで、少しでも負担を減らさなければいけません。
その点でも、今回のワールド碁チャンピオンシップは素晴らしい試みでしたね。
今後もぜひ続けて頂きたいと思います。

ワールド碁チャンピオンシップ2日目感想

2017年03月22日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆さまこんばんは。
本日はワールド碁チャンピオンシップに加え、WBCでも日本代表が戦っていましたが・・・。
結果はガックリ。
勝負の世界ですからこういうこともありますが、やはり応援している者としてはつらいものがありますね。

井山九段、本日も全力投球でした。
序盤戦は苦しそうに見えましたが、いつの間にか勝負形に持ち込んだのは流石と思いました。
形勢が良くなっていたとのことでしたが、勝ち切れなくかったのは無念でしょうね。

DeepZenGoの方は、序盤で完全に人外の打ち方をしていましたね。
そんな打ち方があり得るのか?と思いましたが・・・。
しかし、結果は白も美しい姿を得て、立派に碁になっています。
AIらしさが表れた場面でしたね。
そして、明確な答えが出る筈のヨセでミスが出るのも、AIによくある特徴・・・。
本局も見た瞬間に分かるミスがありました。
ちなみに個人的には、Masterも同じ弱点を抱えていたのではないかという疑問もありますが、全く確証はありません。
何しろ、あちらは殆ど形勢が悪くなったことがありませんから・・・。

明日は井山九段を応援します。
DeepZenGoも頑張って、名局が生まれると良いですね。