白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

囲碁と将棋、子供にやらせるならどっち?

2018年02月17日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は凄い日でしたね。
羽生選手、宇野選手のワンツー!
藤井五段、羽生竜王を破って優勝!
どちらも大変な話題になっていますね。

将棋がこれだけ注目されているだけに、囲碁界の情報発信力も問われるところですが・・・。
ただ、将棋が話題になること自体は囲碁界にとってもプラスになるでしょう。
囲碁と将棋は内容的には違うゲームですが、文化的には双方の行き来は比較的容易です。

ところで、皆様はこの記事をご覧になりましたか?



今週木曜日に発売された週刊新潮です。
囲碁と将棋それぞれ魅力や効能を、著名人や専門家らが6ページに渡って語っています。
そして、何故か私もコメントしています(笑)。

内容について補足しておきますと、「実力がこれから~」と表現されているところは、実力が一番下のクラスとご理解ください。
つまり対局にほとんど勝てないケースですね。
最近の新初段は強いので、最初から平均より上の実力があることも多いです。

いずれにしても、プロになってからが大変な世界であることだけは間違いないですね。
才能があっても努力しなければ勝ち抜けませんし、レッスンなどにも競争があります。
努力嫌いの人には向きません。

ちなみに、私自身の「囲碁と将棋どちら」の答えですが、両方やってみた方が良いと思います。
全く違うゲームですから、どちらが好きになるかはやってみなければ分かりません。
私は最初に将棋を覚えましたが、夢中になるところまではいきませんでした。

将棋はゲームが成立するところまではすぐに覚えましたが、その後が難しく感じました。
今その理由を考えてみると、将棋はマイナスになる手が多いからかもしれません。
囲碁であれば自殺手のようなものはともかく、全体的にはどこに打っても大抵はプラスになります。
そういったところに自由度を感じたような気がします。

また、本質的には将棋は敵陣を壊すゲーム、囲碁は自陣を育てるゲームと言えると思います。
昨今の囲碁のトップレベルの戦いは破壊的な要素も多いですが、それでも本質が変わるほどのものでもないでしょう。
必要とされる能力、技術においては共通している部分も多いでしょうが、ゲームとしては全く別物ですね。
スポーツの世界であれば、何を選んでもトップクラスになれる人もいると聞きますが、囲碁・将棋においては難しいでしょう。

そして、中原誠十六世名人のコメントは囲碁と将棋の愛好家層の違いを端的に示していますね。
囲碁と将棋のどちらを好むかで、その人の性格すら浮かび上がってくる可能性があります。
子供の性格を理解することにもつながるかもしれませんね。


ちなみに、週刊新潮では「気になる一手」という連載があり、囲碁は吉原由香里六段、将棋は渡辺明棋王が担当しています。
そちらもぜひご覧ください。

棋聖戦第4局結果

2018年02月16日 19時18分13秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は棋聖戦第4局の2日目が行われました。
棋譜は特設サイトや幽玄の間でご覧ください。
さて、注目の封じ手は・・・。





1図(封じ手)
封じ手は黒△のハネでした!
相変わらず当たりません・・・。
この手を予想していた棋士も何人かいたようですね。
まだ生きていない左辺白を攻める手です。





2図(実戦)
黒△まで進んだ場面です。
白×が取り込まれる形になり、明らかに黒成功ですね。
しかし、一力挑戦者も黙ってはいませんでした。
ここから中央の黒に厳しく迫り・・・。





3図(実戦)
結果、白△までと右上白が復活!
凄い頑張りを見せました。





4図(実戦)
さらに、黒の勢力圏である左下でも目一杯の形で治まりました。
ここでも白が頑張って、なんとか後半戦に望みをつなげました。

しかし、井山棋聖の大局観は確かでした。
形が決まっていくにつれ、黒のリードの大きさがはっきりと見えてきます。
結局は一力挑戦者が無理な勝負手に賭けるしかなくなり、そこを咎めて綺麗に決めました。


終わって見れば、井山棋聖の強さが際立つシリーズでした。
早い段階で井山棋聖の形勢が良くなることが多く、一力挑戦者は苦しい状況での戦いを強いられた印象です。
結果的には、一力挑戦者の思い切った仕掛けが裏目となってしまったかもしれませんね。

これで一力挑戦者は井山棋聖に13連敗とのことです。
井山棋聖、恐ろしい強さですね・・・。
ですが、もちろんそれが一力挑戦者の実力というわけではありません。

過去にも超一流同士で極端に星が偏ったことはあり、近年では高尾紳路九段と井山棋聖の組み合わせが有名ですね。
確か、一時期は高尾九段の1勝14敗ぐらいになっていた気がします。
しかし、そこから持ち直して対戦成績を押し戻し、名人位も奪取しました。
一力挑戦者もいつか苦手を克服するでしょうから、その時を待ちましょう。


省エネのはずが、この2日間の日記はしっかりと書いてしまいましたね。
観戦自体を後回しにしようと思っていたぐらいなのですが・・・。
まあ、それは無理でしたね。
内容の濃い戦いに、つい張り付いて観戦してしまいました。

封じ手予想

2018年02月15日 20時44分52秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は棋聖戦第4局の1日目が行われました。
序盤から見たことのない戦いが始まって驚きましたね。
途中でおとなしく分かれる可能性もありましたが、両者とも拒否して激戦へ・・・。



1図(実戦)
本局で特に印象的だった場面をご紹介しましょう。
黒△の「ケイマ」に対して、白△と「ツケ越し」ていきました。
「ケイマにツケ越し」の格言通りですね。





2図(実戦)
それに対して、「ツケ越し切るべからず」で黒1とハネました。
これも格言通りですね。
そして、白2に対しては凡人には黒Aしか思い浮かびません。

ところが、井山棋聖は黒3!
なんという美しい一手でしょうか。
流石です。





3図(参考図)
この後、白1、3と打って右上の白とつながろうとすることが考えられます。
この時に黒△が素晴らしい位置にありますね。
黒AやBとは比べ物にならないぐらい、のびのびとした手になっています。





4図(打ち掛け局面)
しかし、井山棋聖の手は美しいですが際どい手でもあります。
一力挑戦者は力で叩き潰しにいきました。
白△まで進んだところで打ち掛けとなっています。
元々は黒×と白×の競り合いが戦いの本線でしたが、上辺の問題も大きくなってきて訳の分からない状況ですね。





5図(封じ手予想)
封じ手予想は黒△の下がりです。
全く読んでいませんが、とりあえず下がっておけという発想ですね。
ダメの数を増やしておけば、たとえ取られるにしても時間が稼げそうです。


現在の形勢も明日の展開も、私には全く分かりません。
どんな戦いが繰り広げられるのでしょうか?
明日もぜひご覧ください。

明日から棋聖戦第4局

2018年02月14日 23時25分51秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
まずはお知らせがあります。
今月の私は非常に忙しく、ブログに時間を割くことができません。
当分は省エネ進行で進めていきますので、よろしくお願いします。

さて、明日は棋聖戦第4局ですね。
そこで、少し前に行われた、一力八段の対局をご紹介しましょう。



1図(テーマ図)
賀歳杯での柯潔九段との対局(黒番)です。
白△とツケられた場面では、黒2子を動く黒A~Cあたりが自然な応手に見えますが・・・。





2図(実戦)
実戦は黒1と抜き、絶好の白2ハネを許しました。
こうなれば黒3と切るしかなく、白4の当てには黒5と当て返し・・・。





3図(実戦)
このような分かれになりました。
白にポン抜きを許した代わりに白×を取り込む分かれです。
ポン抜き30目という有名な格言がありますが、本図でもポン抜いた白は素晴らしい厚みです。
どちらが気分が良いかと言われたら、白と言う棋士が多いのではないでしょうか?
形勢は別として、あくまで気分の問題ですが・・・。

一力八段も、元来は白を持ちたいタイプだったと思います。
私には入段後数年の一力八段の棋風は手厚い本格派に見えていました。
別の言い方をするなら、いわゆる日本的な碁ですね。
ところが、勝負に勝つために様々な考え方を取り入れ、現在のようなシビアな打ち方をするようになったとみられます。
この変遷は井山棋聖とそっくりだと感じます。
そっくりだからこそ、一歩先を行く井山棋聖に苦戦しているのかもしれません・・・。

しかし、一力八段にも独自の能力があります。
それが生きる展開になれば十分チャンスはあるでしょう。
明日からの戦いに注目しましょう。

国民栄誉賞!

2018年02月13日 23時06分00秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日、将棋の羽生善治永世七冠と囲碁の井山裕太七冠が国民栄誉賞を受賞しました。
おめでとうございます!
江戸幕府の保護により、囲碁棋士・将棋棋士という職業が確立されてから約400年・・・。
感慨深いものがありますね。

井山さんは主に七冠独占を2回も達成したことを評価されました。
今回はその難易度を説明してみようと思います。

七大棋戦・・・棋聖・名人・本因坊・王座・天元・碁聖・十段は、基本的に全棋士が参加する棋戦です。
先程数えてみたところ、日本棋院の現役棋士は338人。
関西棋院の棋士は157人ということで、500人近くが参加していることになります。
この人数の中で競争に勝ち抜くということは、尋常な難易度ではありません。

例えば、名人戦挑戦者決定リーグは9人で争われますが、この9人は500人の中から選ばれた真の強者です。
その強者の中の争いで、他の8人を押さえて優勝する事でようやく挑戦者になれます。
そして、七番勝負で名人に勝つことでようやくタイトル獲得が成るわけですね。
熾烈な争いを勝ち抜き、七大タイトルを1回でも取ったことのある現役棋士は、私が数えた限りでは25人しかいません。

井山さんはそのような厳しい道のりを乗り越え、タイトルに挑戦・獲得してきました。
そして、王者としては挑戦者を悉く蹴散らしてきました。
挑戦者になることはとてつもなく大変であり、単に実力があるだけではなく、その時に最も調子の良い棋士が出てきます。
そんな相手が次から次へと現れるのですから、休む暇が全くありません。

過去にも、その時代に圧倒的な強さで頂点に立っていた棋士は沢山います。
しかし、全冠独占に近付いた棋士はほとんどいませんでした。
何故なら、彼らはいつも圧倒的に強いわけではなかったからです。
体調不良、精神の不安定などをはじめとして、様々な要因で人間の打つ碁は乱れます。
時の第一人者であっても、1割か2割は不本意な碁を打ってしまうものではないでしょうか。

しかし、井山さんは圧倒的な強さを年間通して維持しました。
時には苦しい碁を打つこともありますが、そんな時も凄まじい追い込みで逆転してしまうのです。
集中力が常に研ぎ澄まされているのですね。

何故そんなことができるのか考えてみると、やはり世界戦の存在でしょうか。
何年も前から井山さんは日本の第一人者ですが、守りの姿勢に入ったことをほとんど見たことがありません。
世界チャンピオンを目指し、常に自分の限界に挑戦し続けてきたのでしょう。
その貪欲な向上心が、井山さんの強さを支えているのだと思います。

井山さんはまだまだ世界に挑戦する機会がありますし、希望もあると思います。
ぜひとも世界チャンピオンになるという悲願を達成して欲しいですね。

また、当然ながら井山さんにタイトルを独占されて悔しい思いをしている棋士は数多いです。
口には出さずとも、独占を崩すのは自分だと思っているでしょうね。
人は明確な目標があると努力しやすいものです。
今後は打倒井山で棋士の世界が盛り上がっていって欲しいですね。