白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

井山九段、勝利!

2018年02月07日 20時09分21秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
明日は有楽町囲碁センターにて指導碁を行います。
皆様のお越しをお待ちしております。

さて、本日はLG杯第2局が行われました。
いやはや、凄まじい碁でした・・・。
井山九段が序盤から苦しみ続けた碁だったと思いますが、最後まで諦めずに戦い抜き、ついに逆転半目勝ち!
歴史に残る一局と言えるでしょう。
ぜひ幽玄の間などで棋譜をご覧ください。
私の感想を先に見てしまうと勿体無いかもしれませんよ。





1図(実戦)
謝五段の黒番です。
序盤から石が軋むような競り合いになりました。
白が潰れてしまうのではないかと、不安になってしまいますね。

観戦者でさえそうなのですから、井山九段にかかるプレッシャーはとてつもなく大きいでしょう。
既に1敗している状況で、序盤で潰れてしまったら目も当てられません・・・。
しかし、そこで自分の読みを信じて踏み込んでいけることが、井山九段の精神力の強さを示しています。





2図(実戦)
結果は白が黒×を取り、先手で白△に回ることができました。
こうなって、ほっと一息というところですね。





3図(実戦)
ただ、黒△と急所に迫った手が厳しく、形勢は白が苦しそうに見えました。
何しろ中央の黒が厚いので、下手に対応すると猛攻を受けることになりそうです。





4図(実戦)
黒△と打った場面です。
下辺右側の白は生きましたが、左下隅の眼を脅かされています。
しかし、手を入れているようでは中央を大きく黒地にされてしまうでしょう。
例えば、赤のラインあたりでまとまっては白に勝ち目がありません。





5図(実戦)
そこで、実戦は白△の踏み込み!
井山九段、乾坤一擲の勝負手を放ちました。

非常に深い踏み込みであり、これで上手くいくという成算は無かったでしょう。
しかし、こう打たなければチャンスが来ないという勝負勘が働いたのだと思います。





6図(実戦)
黒1の時、白2と転じたのも井山流の勝負手です。
黒5までと白×を取られてしまいますが、代わりに黒×と黒△を分断、どちらかを取ってしまおうというのですね。

ただ、そうそう上手くいくとは思えません。
このあたりでは井山九段の負けが近いと感じ、半ば諦めていました。
口には出さずとも、多くの棋士も同じ気持ちだったのではないでしょうか?
ところが・・・。





7図(実戦)
白△まで進んだ図を見てみると・・・。
なんと、攻め合いで黒×を取れているではありませんか!
一体何が起こったのでしょうか!?
久しぶりに井山マジックというワードが浮かびました。

こうなっては逆転ムードですが、まだまだ勝負は分かりません。
しかし、井山九段は普段より短い40秒の秒読みに追われる中、寄せ切って半目を残しました!


結果的には、井山九段にとって最高の形で勝利を収めました。
第3局に向けて弾みが付きますね。
明日も井山九段を応援しましょう!

賀歳杯

2018年02月06日 23時59分59秒 | 日本棋院情報会員のススメ
皆様こんばんは。
昨日から賀歳杯が行われています。
賀歳杯は恐らく中国の正月イベントという位置付けなのでしょうが、毎年メンバーが超豪華です。
今回は日本代表は一力八段、そして中国は柯潔九段、韓国は朴延桓九段!
一力八段は井山七冠とは嫌になるほど打っていますが(笑)、世界トップとの対局経験はそれほど多くありません。
今回はまたとない機会だったでしょうね。



1図(実戦)
一力八段の黒番、白は柯潔九段です。
白△の押しは、右上黒を狙っている手ですが・・・。





2図(実戦)
黒1、3の応急処置だけで、黒3に先行!
白Aと眼を取りに来られても大丈夫なのでしょうか?
早碁ということもあり、私には怖くてとても選べない打ち方です。

しかし、一力八段には凌ぎが見えているのでしょうね。
恐らくB付近の白の薄みを衝くのでしょう。





3図(実戦)
白△と飛ばれた場面です。
黒×が風前の灯火といった印象ですね。
これはいかにも黒が苦しそう、というより取られてもおかしくないように見えます。





4図(実戦)
しかし、黒△まで巧妙に形を作ってしまいました。
黒Aの切り狙いも生じ、中央の黒は簡単には死にそうにありません。
ここでも一力八段の読みは冴えていましたね。

全てを頑張り切り、一時は黒が良くなっていたと聞きます。
ただ、小寄せでらしからぬミスが出てしまいましたね。
途中までヨセも目一杯に頑張っていたので、ちょっと不可解でした。

なお、この対局は幽玄の間で中継されました。
解説者は芝野虎丸七段です。
幽玄の間での解説は初とのことですが、堂々としたものでしたね。
読みが早く、判断も非常にはっきりしています。
対局であれほど早く打てる理由がよく分かりますね。


昨日今日と、日本勢は残念な結果でした。
しかし、まだこれで終わりではありません。
明日はLG杯決勝第2局、そして勝てば明後日は第3局です。
井山九段の連勝を期待しましょう!

LG杯第1局

2018年02月05日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は様々な棋戦が幽玄の間で中継されていました。
しかし、なんと言っても目玉の対局はLG杯決勝です。
井山裕太九段と謝爾豪五段が激戦を繰り広げました。



1図(実戦)
黒番の井山九段、序盤から仕掛けていきました。
黒1、3と白の形を崩しておいて、黒5のツケ!

私には予想外の厳しい手段でしたが、趙治勲名誉名人はこの手を予想していたそうです。
厳しい棋風同士、通じ合うものがあるのでしょうか。





2図(実戦)
井山九段が鋭い仕掛けでリードを奪ったという評判でした。
しかし、その後の打ち方はどうだったか?
白△と打たれては苦しい碁になってしまったかと思いました。
黒×を狙われています。





3図(実戦)
しかし、振り替わりの形で黒×を捨て、先手を取って黒1、3の仕掛け!
無理気味とも思えるほどの激しさです。
井山九段の必死の勝負手だったのではないでしょうか。

白はこの迫力に押されたのでしょうか?
結果的にはこの仕掛けは成功しましたね。





4図(実戦)
白×を取り込み、中央も黒△と打って生きました。
地はどう見ても黒が多く、これは勝ったと思いました。
ところが・・・。





5図(実戦)
白1、3の連続技!
謝五段の必死の勝負手です。
流石に鋭いものですね。

これで楽勝とは言えなくなりましたが、まだ黒が勝てる碁だったような気がします。
しかし、黒に秒読みによるミスが出て、急転直下の終局になってしまいました。

互角以上の戦いだっただけに、本局の結果は非常に残念でした。
ですが、まだ優勝のチャンスはあります。
残り2局も頑張って欲しいですね。

明日はLG杯

2018年02月04日 22時17分01秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
明日は待ちに待った大舞台が開幕します。
LG杯決勝第1局!

我らが井山裕太九段に、とうとう世界戦優勝のチャンスがやってきました。
対局場の日本棋院では解説会も行われますので、皆様ぜひお越しください。

さて、本日は井山九段の準決勝の戦いぶりを軽く振り返ってみましょう。



1図(実戦)
柯潔九段の白1のカケに対して、黒2、4と反撃!
迷わず最強手で戦いを挑みました。





2図(実戦)
普通、白1のツケにはAの押さえしか気が付きませんが、黒2のツケ返し!
柯九段も予想していなかったという、鋭い反撃でした。





3図(実戦)
振り替わりで黒△を取られましたが、先手を取って黒1と右辺白を攻撃!
ここから超難解な戦いに突入しました。





4図(実戦)
黒1が止めの一撃!
気が付き難い手ですが、これで右下一帯の白の死命を制しています。
これで勝負が決まりました。


最近の井山九段は、大局観に優れているだけでなく、力勝負でも世界のトップ棋士たちと張り合っています。
決勝でも力強いところを見せて欲しいですね。

AI流と運用法

2018年02月03日 23時59分59秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
本日は幽玄の間で中継された対局を題材にしてみましょう。
朴延桓九段と申真ソ八段の対局です。



1図(テーマ図)
朴九段の黒番です。
白1のカカリに対して、黒2のコスミツケを打つのがAI(AlphaGo)流です。
これはいつでも打って良い手ではありませんが、本局のような配置では有力です。
私も公式戦で何度か試しています。





2図(変化図)
白1と開けば、白△と合わせて2立3析の好形ができます。
しかし、そこで黒2のカケがぴったりです。
白9までの姿は全体的に位が低く、白は気分が良くないでしょう。
これが黒の狙いです。





3図(変化図)
そこで、実戦は1図の後、白1のコスミツケで対抗しました。
黒2、4と打たれると黒に好形を与えてしまいますが、白5までの姿は2図よりずっとすっきりしています。





4図(実戦)
そこで、黒も白1に対して変化し、黒8の挟みに回りました。
Aの穴は気になりますが、とにかく先手を取ることを重視したのですね。


AI流をただ真似しただけでは、上手くいく保証は全くありません。
正しい活用法を知らなければ役に立たないのです
自分なりに意味を探ったり、新たな工夫を加えることで自分のものになります。
本局のような展開も、対局者がそれを意識しているからこそ生まれたものでしょう。