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 地元の急病人が追い返された「病院は外国人観光客優先」/「京都インバウンド」最新ウラ事情② 2024/09

2024-09-25 02:09:06 | 気になる モノ・コト

地元の急病人が追い返された「病院は外国人観光客優先」/「京都インバウンド」最新ウラ事情②
  Asagei Plas より 240925 


 京都市が長年直面している深刻な課題のひとつに、オーバーツーリズムがある。
観光客の急増による公共交通機関の混雑が、特に市民の日常生活に影響を与えているのだ。

 住民がバスに乗れないなどの不便を解消するため、京都市は今年6月、観光客専用の「観光特急バス」の運行を開始した。
これにより、観光客と市民の利用路線が分離され、混雑が緩和されたという声が聞かれる。

 京都市内で飲食店を営む男性は、インバウンドによる「被害」をこう語る。
「インバウンドが増えるたびに、地元の商売の状況は悪化しています。地元の人たちが店を手放すと、外資系が買い取って観光客向けの店を開くんです。その結果、地元の飲食店にはお金が回らず、税金はインフラや公共施設の維持に使われるばかりです」

 外資系の参入が地元経済に与える悪影響のみならず、観光客とのトラブルや、観光業の恩恵が地元の人々に直接届かないことへの不満を訴える声は少なくない。

 さらに、外国人観光客が長時間にわたって飲食店に滞在し、店側とのトラブルが頻発していると、飲食店を経営するこの男性は指摘する。

「特に中国人観光客の中にはマナーが悪い人がいて、後片付けやトイレ掃除の手間を考えると、とても歓迎したいとは思えません」

 インバウンドによる悪影響は、医療機関にも及んでいる。京都市内に住む女性が明かす。

「昨年10月、母が体調を崩して救急車を呼んだのですが、病室は空いているにもかかわらず、海外からの急患対応に時間と人手が取られていて、入院できないと言われました。毎月の通院でも外国人観光客が優先され、地元の患者が長時間、待たされることが増えています」

 観光業の恩恵を受ける一方で、地元住民や商業者にとっては、観光客の急増が新たな負担を生んでいる現状が浮き彫りになった。京都市では今後、観光振興と住民生活のバランスをどう取るかが課題となっている。
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「さらばCD…」ついに、パッケージ・オーディオは終焉迎えるか… ネットオーディオの「第2段階」が幕を開けた 202409

2024-09-20 21:26:00 | 気になる モノ・コト

「さらばCD…」ついに、パッケージ・オーディオは終焉迎えるか…「衝撃的な高音質化」で、ネットオーディオの「第2段階」が幕を開けた
  現代ビジネス より 240920   山之内 正(オーディオ評論家)


【】「音質がいまひとつ」は、過去…ストリーミングサービスが劇的に変化していた
類稀なる高音質で、話題になったネットオーディオ。しかし、割高な価格とダウンロードのわずらわしさから一部のマニアにしか支持されませんでしたが、高音質定額制配信サービスの出現で、大きく変わろうとしています。

 ベテランと言われるオーディオ愛好家の中にも、CDやレコードなどの「パッケージメディア(パッケージ音源)」によるオーディオなら知識も経験もあるが、ネットワークが重要になった最近のオーディオに関しては、専門用語の意味もわかりにくいと感じている人もいるかと思います。

 はじめてネットオーディオに挑戦するオーディオファンや音楽ファンを対象に、機材の選び方、高音質ストリーミングのセッティング、煩わしいネットの設定などなど、聴き放題の“1億曲ライブラリー”を手にするノウハウをご紹介しましょう。

※この記事は、『ネットオーディオのすすめ 高音質定額制配信を楽しもう』の内容を再構成・再編集してお届けします。

⚫︎パッケージメディアからネットワークへ
 最近では、音楽を聴くのは大好きだけど、CDを1枚も持っていないという音楽ファンは珍しくありません。特に若い世代の音楽ファンの場合、それが普通かもしれません。これは、オーディオの世界にとって非常に重要な変化です。

 その「パッケージメディアからネットワークへ」という重要な変化は2010年前後から始まり、わずか15年ほどの間に決定的なものになりました。なぜそれほどの短期間で、このような本質的な変化が起きたのでしょうか?

 大きな変化をもたらした最大の要因は、インターネットの普及です。

 パッケージ中心の再生からネットワークを利用した音楽再生への移行は、いくつかの段階を経ながらも急速に進み、本書執筆の時点(2024年)でもなお進行中です。2013年刊の私の著書『ネットオーディオ入門』(ブルーバックス)では、2010年前後に始まった第1段階のネットオーディオに焦点を合わせ、音楽を取り巻く環境の変化に注目しました。あらためてその内容を簡単に振り返ってみましょう。

▶︎パッケージ中心の再生からネットワークを利用した音楽再生へ 

⚫︎CDからデータ再生への変遷
 音楽を聴く手段としてデータ再生を選ぶ音楽ファンが増え始めたのは、2000年前後のことでした。21世紀に入ると音源をインターネットで販売する音楽配信サービスが始まり、ダウンロードして再生するためのプレーヤーが発売されるようになります。
 北米で2001年に発売されたアップルのiPodはプレーヤーの象徴的な存在で、音源データ配信サービスでは2003年に北米で始まった『iTunesミュージックストア』がさきがけとなりました。

 音源をインターネットで販売するサービスは、紆余曲折を経ながら内容が進化していきます。2007年にはイギリスの『リンレコーズ』が音質劣化のないハイレゾ音源の販売に踏み切り、2012年には『アップル』がDRMと呼ばれるデジタル著作権管理を撤廃するとともに音質改善に取り組み、利便性と音質の両面で音楽配信は次の段階に進みました。

⚫︎CDが抱える長所と短所
 音楽配信の浸透にともなって起きた変化は、レコードやCDなど形のあるパッケージメディアの代わりに、デジタル化された音楽データをインターネット経由で購入し、そのデータを直接再生する方法が急速な広がりを見せたことでした。

 CDが登場した1982年当時は、デジタル化された音楽データを複製して大量に流通させるためには、音楽データを収納する物理的なディスクが必要で、それが唯一の方法でした。
 CDはデジタル音源を記録するために開発された非常に優れた媒体の一つです。

 しかしCDのようなパッケージメディアを作るためには、大規模な生産設備が必要であり、リスナーの手元に届けるために複雑な流通システムも不可欠です。店頭に在庫がなければ、注文して取り寄せる必要があります。レコード会社のストックが尽きて再プレスが難しい場合は、やむなく廃盤ということになり、聴きたくても購入できなくなってしまいます。最近は実際にそうしたケースが増えているようです。

 一方、データ音源はインターネットを介して音楽データを電子的にやり取りできるため、物理的なパッケージや物流システムが不要で、欠品や廃盤も原理的にありません。音源をダウンロードしてハードディスクに保存するだけなので、時間を節約できる上に、ディスクの置き場所を確保しなくて済むメリットもあります。

 増え続けるディスクを整理して管理することを目的に、パソコンを使ってCDの音楽データをiPodやスマートフォンに取り込み、データ再生に切り替える音楽ファンが増えました。
パソコンを使って、CDの音楽データをiPodやスマートフォンに取り込みようになった 

⚫︎ネットワークは、プレーヤーでも有利
 ディスク再生は再生機器にも一定の制約があります。デジタル信号を読み取る光学ピックアップや、ディスクの回転機構が不可欠で、どちらも高い機械精度が要求されるため、ハードウェアの開発と生産には専門化された技術と規模の大きな設備投資が求められます。

 実際に、光学ピックアップと回転機構を一体化した「メカドライブ」と呼ばれる部品は、ごく限られた企業が生産し、世界中のオーディオメーカーに供給しているのが現状です。

 一方、ネットワークプレーヤーはほぼ電気回路だけで製品を構成することができ、ハードウェアとしてのプレーヤーの構成を大幅に簡略化できます。回転機構や読み取り機構など消耗する部品もほとんどなく、故障の要因も大幅に減らすことができます。さらにCDのように、メディアの物理的サイズに制約されることがなく設計の自由度が上がるため、小型化も容易です。

⚫︎初期段階のネットオーディオはハードルが高かった
 初期段階のネットオーディオでは、音源の入手方法は主に2種類ありました。
パソコンを使ってCDのデータを読み込む(リッピング)か、または音楽配信サービスを利用してインターネット経由でダウンロードしてデータ音源を購入する方法です。リッピングやダウンロードで入手した音源は家庭内ネットワーク(LAN)に接続したハードディスク(ネットワーク接続記憶装置:NAS)に保存し、その音楽データ(音声ファイル)を「音声ファイル専用のプレーヤー」またはパソコンで再生するという方法が一般的です。
LANやWi-Fiを介して音楽データ(音声ファイル)をネットワーク経由で受信し、アナログ出力に変換して出力する専用プレーヤーをネットワークプレーヤーと呼びます。

 この方法でもディスク再生にはない長所があります。しかし、リッピングやダウンロードのためにパソコンを操作する必要があり、音楽配信サービスから購入する音源のフォーマットを複数のなかから選ぶ必要があるなど、CDにはなかった煩わしく感じる操作も必要になりました。
 さらに、「サーバー」(保存したデータをネットワーク経由で送受信する一種のコンピューター)に保存する音源が増えるに従って、膨大な音源を管理する難しさに悩まされるなど、音楽を聴くこととは直接関係のない問題に直面する機会が増えてきます。


⚫︎膨大な音源を管理する難しさという問題が生じてきた 
 早い時期からネットオーディオに取り組んできた先進的なユーザーの多くは、経験を重ねながらそうした問題をなんとか解決し、ストレスなく音楽を楽しんでいます。とはいえ、そうしたハードルの高さに嫌気がさして、再びCDに戻ってしまうという人も少なくありませんでした。そんな消極的な理由でこれからもCDを使い続けようと考えるオーディオファンが存在することからも、いまのネットオーディオが抱える課題が浮かび上がってきます。

 販売量が減り、ショップの数も限られているとはいえ、CDはまだまだ現役のパッケージメディアとして広く普及しています。プレーヤーについても、安価な製品が少なくなった面はあるものの、特に日本では良質なCDプレーヤーをいまでも購入することができます。ネットオーディオの本格的な普及が進むまで、CDは重要な音楽メディアの一つとして存続していくはずです。

⚫︎定額制音楽配信サービスの登場
 リッピングとダウンロードを中心とする「第1段階のネットオーディオ」が市民権を得た頃(2012年頃)、ストリーミング方式の音楽配信が登場します。ストリーミング方式とは、聴きたい音源をアルバム単位や曲単位で購入するダウンロード方式ではなく、ネットワークにつないだオンラインの状態で音楽をリアルタイム再生するサービスで、手軽さもあって欧米を起点にして急速に普及が進みました。

 無料または有料で音楽を好きなだけ聴けるストリーミングサービスは、ダウンロード方式の音楽配信とほぼ同時期に欧州でサービスが始まった『Spotify(スポティファイ)』がさきがけで、2010年代半ばから2020年前後にかけて北米や日本など他の地域にも普及が進みました。
 その後アップルやアマゾンが相次いで参入したことで、同様なサービスはさらに規模を拡大し、近年は多くの地域でCDなどパッケージメディアの売り上げを上回るまでの成長を遂げていますが、問題もあります。続いては、ストリーミングサービスの抱えている問題を見てみましょう。

⚫︎ネットオーディオのすすめ 高音質定額制配信を楽しもう
 CDをはるかに凌駕する音質で、話題になったネットオーディオ。初めてネットオーディオに挑戦するオーディオファン・音楽ファンを対象に機材の選び方から、煩わしいネットの設定まで具体的に分かりやすく解説します。
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 真田広之主演「SHOGUN 将軍」ヒット、かつての“日本人ハリウッド旋風”とは何が違う?〈米エミー賞で快挙〉

2024-09-17 01:14:00 | 気になる モノ・コト

 渡辺謙でも役所広司でもない…真田広之主演「SHOGUN 将軍」ヒット、かつての“日本人ハリウッド旋風”とは何が違うのか?〈米エミー賞で快挙〉
  文春Online より 240917  長谷川 朋子


 日本の戦国時代を舞台にしたドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」が、米エミー賞で快挙を成し遂げた。ハリウッド進出を果たした日本人といえば、渡辺謙や役所広司らが思い浮かぶが、真田広之主演の本作が国際的に評価された決め手は何だったのか。
 9月11日にNHK「クローズアップ現代『“SHOGUN”大ヒットのワケ JAPANコンテンツ新時代』」に出演したジャーナリストの長谷川朋子氏が解説する。


◆ ◆ ◆

⚫︎なぜハリウッドで日本人が絶賛された?
 アメリカのテレビ界最高峰の賞と言われるエミー賞。かつては遠い存在だったが、ここにきて日本でも注目度が増している。
 なかでも今年は特別だ。アメリカ時間の9月8日に発表された技術系や美術系などの部門では「SHOGUN 将軍」がほぼ独占に近い形で14の賞を獲得。9月15日夜(日本時間16日)に発表された主要部門では、真田広之が主演男優賞、アンナ・サワイが主演女優賞、このほか作品賞と監督賞も受賞し、総なめだ。

 日本人がハリウッドという舞台で、これほどの規模で絶賛されるのは過去にはない。予想以上の結果だ。だが一方で、必然の流れとも言える。真田がハリウッドデビューした『ラスト サムライ』の時代とは明らかに“変化”しているからだ。

⚫︎「何ら変わっていない」とも言えるが…
 見方によっては、何ら変わってはいないとも言える。というのも、「SHOGUN 将軍」は日本の戦国時代を舞台にしたドラマシリーズだが、ハリウッドの主導で作られたからだ。

 製作を牽引したのはハリウッドの人材であり、製作スタジオはディズニー傘下のFXという実力派のプロダクションが担った。ドラマ作りにおいて最高ポストにある製作総指揮は、映画『トップガン マーヴェリック』の原案を手掛けたジャスティン・マークスなどが務めている。原作もアメリカで出版されたもので、小説家ジェームズ・クラベルの「SHOGUN」が元になっている。

⚫︎ドラマシリーズ全体の70%を占めたのは…
 では、かつての日本を舞台にしたハリウッド作品との違いは何かというと、「日本語言語が占める割合の多さ」にある。日本語がドラマシリーズ全体の70%を占め、しかもそれが各話約1時間の全10話という長さのなかで展開される。
 そもそも「SHOGUN 将軍」はディズニーによるオリジナル配信ドラマであり、ディズニー配下の配信プラットフォームで全世界同時配信された作品なのだ。
 つまり、全世界の人口のなかで約1.5%が使う言語である日本語をドラマで扱うリスクを承知の上で、全世界向けに作られた。にもかかわらずヒットし、エミー賞という晴れ舞台で評価されたのだ。

 ここで日本語のドラマでも海外でウケると言い切りたいところだが、そう単純なものではない。ここはマーケティングを重視するハリウッド主導の製作が物を言ったのだろう。
 どんなストーリーであれば世界の視聴者に関心を持ってもらうことができ、ヒットするのかということが重視されたように思う。

⚫︎ヒットの理由1:ドラマ市場の定番トレンドを押さえている
 まず、権力闘争や人間ドラマを描くのは世界のドラマ市場で定番トレンドだ。加えて、複雑な相関図が描け、登場人物ひとりひとりのキャラクターが立ったものであれば、なおさら好まれる。
 言うなれば、主人公以外の登場人物にも共感できるようなキャラクター合戦が成立する作品が世界ヒットの法則にある。

「SHOGUN 将軍」は権力闘争に人間ドラマ、キャラクター合戦が詰まったドラマゆえに、世界で最もヒットしたドラマの1つになぞらえて「日本版ゲーム・オブ・スローンズ」とも言われている。

 実際「SHOGUN 将軍」では、真田が演じた徳川家康がモデルの主人公・吉井虎永の策略家っぷりだけでなく、サワイの細川ガラシャをモデルにした戸田鞠子には現代的なパワーウーマン的な要素もあり、浅野忠信が好演した小賢しい家臣役は中間管理職のサラリーマンにも見えた。人種や言語云々以上に興味を持てるキャラクター劇として楽しめる物語になっているのだ。

 日本人キャラクターだけでなく、英語圏の視聴者に入り口を広げる工夫もある。アメリカで活躍する演技派俳優のコズモ・ジャーヴィス演じるイギリス人航海士の按針(アンジン)は原作通りに主要キャラクターに据え、彼の視点からも異文化を体験する物語として観進めることができる。

⚫︎ヒットの理由2:日本文化を表面的に描くだけでは炎上対象に…“本物”へのこだわり
 こうした正攻法を取るだけでヒットするわけではない厳しさもある。世界のドラマ市場は超競争過多の状況だ。
 差別化を図る上で、日本が舞台であることは好都合だったのかもしれない。畳のセットに着物の衣装、刀で切腹する場面など海外の視聴者に新鮮味を与える。ただし、表面的に描くだけでは今の時代、炎上対象になり得る。製作スタジオFXのジョン・ランドグラフ会長から直接聞いた話によれば、日本の歴史や文化をまとめたマニュアル本を事前に用意し、そのボリュームは900ページにも及んだというのだ。「“本物”へのこだわり」を表すように言っていた。

 何より、主演の真田をプロデューサーとして迎え入れたことが日本の時代劇を正しく描こうとする意識の表れだ。クオリティを担保するために予算もかけている。「SHOGUN 将軍」に関して公表されている数字はないが、ハリウッドの配信ドラマは今、1話に数十億をかけるのが当たり前になっている。
 どれだけ凄いことかというと、1話だけでNHKの大河ドラマ1年分の予算に相当する規模になる。

 要するに「SHOGUN 将軍」は、エンターテインメント業界の流れに乗り、真田という存在がいたことで今回のような評価に繋がったわけだが、日本人俳優が今回だけ注目される話として終わらない可能性もある。

⚫︎渡辺謙、役所広司が苦労した時代との“最大の違い”
 かつて松田優作がハリウッドで旋風を起こし、ハリウッドに早くから進出した真田や渡辺謙、役所広司が苦労した時代を経て、「動画配信時代」を迎えた。以前は海外進出への道は映画に偏っていたが、今は全世界に配信できるビジネスモデルを築いた配信ドラマもある。

 濱口竜介監督作『ドライブ・マイ・カー』がカンヌ映画祭で評価されたことが後押しし、主演した西島秀俊は7月10日に配信されたApple TV+の英語と日本語言語で展開するオリジナルドラマ「サニー」でヒロインの夫役に抜擢されている。この「サニー」には、ハリウッドや韓国でも実績を積み上げ、海外配信作品に次々と起用されている國村隼も登場する。

 俳優の起用から資金調達の面でも国際的と言えるドラマが増えつつある欧州のドラマに進出する俳優もいる。
 木村拓哉は「THE SWARM」、山下智久は「神の雫/Drops of God」と「THE HEADシーズン1」、福士蒼汰は「THE HEADシーズン2」に出演している。年内に世界同時放送・配信予定の「コンコルディア」には元「Sexy Zone」の中島健人が英語の長ゼリフで登場する。いずれの作品も日本のHuluが資本参加し、ファン層の厚い日本人俳優が海外でも活躍する場を作っている。

 言語の障壁は前ほど高くないという向きはあるが、「SHOGUN 将軍」をきっかけに大ブレイクし、ハリウッドのメディアにも引っ張りだこのアンナ・サワイの活躍を見ていると、そうとも言い切れない。
 プロモーションを含めた活動でも実力を発揮できる俳優が強いことは確か。ニュージーランド生まれ、東京育ちであるサワイのような俳優には有利に働くのは事実だが、非英語の言語も受け入れる配信全盛の時代を活かさない手はないように思う。

 サワイが「皆のためにドアを開いてくれた真田広之さん」と受賞スピーチで語った言葉は、真田をはじめとする今回の日本人の功績を言い得ている。無駄にするのは勿体ない。

(長谷川 朋子)
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「なぜ悠仁さまは学習院を外したか」男性・男系天皇にこだわり天皇制を維持する社会制度を整えない日本の怠慢 2024/09

2024-09-06 20:10:59 | 気になる モノ・コト

「なぜ悠仁さまは学習院を外したか」男性・男系天皇にこだわり天皇制を維持する社会制度を整えない日本の怠慢
  プレジデントOnline より 240906 島田 裕巳


 悠仁親王の大学進学先に注目が高まっている。なぜ、悠仁親王はいちども学習院で学ばなかったのか。
 宗教学者の島田裕巳さんは「秋篠宮家の場合、両親はともに学習院大学の卒業である。それでも子どもを学習院に行かせなかったのは、よほどの事情があると推測される」という――。

( 玉川大農学部の昆虫を研究する施設を視察される秋篠宮さまと悠仁さま=2024年4月6日午前、東京都町田市(代表撮影) - 写真提供)

⚫︎公言されない悠仁親王の大学進学先
 悠仁親王はこの9月6日で18歳になり、成年皇族となった。筑波大学附属高等学校の3年生であり、その大学進学をめぐって議論が巻き起こっている。

 東大に推薦で入学するのではないかという予測が立てられただけではなく、それに反対する署名運動まではじまっている。それは皇族としての特権の行使にあたり、公平であるべき入試制度が歪められるというのだ。
 ただ、本人も、親である秋篠宮夫妻も、その点について公式に発言しているわけではなく、どの大学に入学しようとしているのか、それは分からない。

 一方、愛子内親王の方は、今年の3月に学習院大学文学部日本文学科を卒業し、4月からは日本赤十字社の常勤嘱託職員として働いている。
 これまでの皇族の場合、教育は学習院で受けるのが基本となってきた。現在の天皇も皇嗣である秋篠宮文仁親王も、そして愛子内親王も幼稚園から学習院である。

 悠仁親王の場合、幼稚園から学習院を選択せず、お茶の水女子大学附属幼稚園に入園した。当時、母親の紀子妃がお茶の水女子大学で研究活動を行っていて、女性研究者を支える特別入園制度によるものだった。秋篠宮妃は、その後、論文を提出し同大学から博士号(論文博士)を授与されている。

⚫︎華族学校から官立学校となった学習院
 悠仁親王は、小学校も同大学の附属で中学校まで進んでいる。ただ、高校から女子校になるため、筑波大学附属高等学校に進学することとなった。それは、お茶の水と筑波の提携校進学制度によるものだった。

 この制度は、悠仁親王のために設けられたものだとも言われるが、筑波大附属のサイトを見ると、現在でも募集が行われている形にはなっている。
 東大の推薦入試に反対する声があがるのも、悠仁親王が一般の入試を経験せずに今日に至っているからだろう。

 愛子内親王を含め、皇族が学習院に進学してきたのは、そもそも学習院が皇族や華族のための教育機関として設置されたからである。

 学習院大学のサイトによれば、江戸時代の終わり、1847年に京都御所に公家の学問所が設けられ、49年に孝明天皇から「学習院」の額が下賜されたことで、学習院という校名が定まったという。明治になった77年には、神田錦町に華族学校が開設され、そこが学習院の名を受け継ぐことになった。したがって、皇族や華族という特権階級の教育機関である学習院は、法律によって宮内省立の官立学校となった。
 しかし、戦後になると華族の制度は廃止され、それにともない、学習院も1947年に私立学校、1949年に新制の私立大学として改めて開学されることになった。それでも皇族は学習院を選んできたのである。

⚫︎愛子内親王は学習院で和歌を研究
 秋篠宮家では、長女であるかつての眞子内親王が、高校までは学習院に通ったものの、大学は国際基督教大学に進んでいる。次女の佳子内親王も、学習院大学に入学したものの中途退学し、改めて国際基督教大学に進学している。
 悠仁親王は一度も学習院に入ることなく、大学に進学しようとしている。
これが、近代の皇室において異例であることは間違いがない。

 現在の学習院大学は総合大学で、5つの学部を擁しているが、愛子内親王が卒業したのは文学部日本語日本文学科であった。父親である現在の天皇は、同学部の史学科の出身である。
 しかも、ここが相当に重要なことになるが、愛子内親王は和歌について研究し、卒業論文は「式子内親王とその和歌の研究」というものだった。式子内親王は、平安時代末期の後白河天皇の皇女で、当時の代表的な女流歌人だった。
 和歌は、漢詩と対照される日本語の詩ということになるが、和歌を詠むということは古来から天皇や公家のたしなみとされてきた。だからこそ、式子内親王も多くの歌を詠んだのであり、天皇や上皇によって撰者が指名される勅撰集に多くの歌が選ばれてきた。

⚫︎天皇について詠うことが皇后のつとめ
 宮中において、和歌がいかに重要かは、毎年正月に開かれる「歌会始」に示されている。これは鎌倉時代のはじめから続く皇室の伝統行事である。

 近年の歌会始において抜群の存在感を示してきたのが、現在の美智子上皇后である。最後の歌会始は平成31年になったが、「お題」は光で、上皇后は「今しばし生きなむと思ふ寂光に園の薔薇のみな美しく」と、皇后を退くことの感慨を詠っていた。

 特徴的なのは、その前年の歌(お題は語)で、それは、「語るなく重きを負ひし君が肩に早春の日差し静かにそそぐ」という形で、譲位する当時の天皇の心情が詠われていた。

 上皇后の歌には頻繁に「君」、つまりは明仁天皇のことが登場した。それは、天皇について詠うことが、皇后としてのつとめであるという自覚にもとづくものであろう。
 それは、皇后にしか果たし得ない特権であり、だからこそ上皇后を現代において並ぶ者のない最上の歌人としてきたのである。歌集も刊行されてきた。

⚫︎上皇后の後継者といっていい内親王の歌
 愛子内親王が和歌を研究テーマに選ぶ上で、祖母である上皇后の歌が大きく影響している可能性が考えられる。
 しかも、和歌は皇室の伝統でもあるのだ。
内親王の研究の成果は、今年の歌会始(お題は和)で詠まれた「幾年の難き時代を乗り越えて和歌のことばは我に響きぬ」に示されている。

 難き時代とは、直接には、内親王が大学に入学した年から経験したコロナ禍のことをさすであろう。対面授業は4年生になってからだった。
 だが、日本の社会がこれまで経験してきたさまざまな苦難を含むものとも解釈でき、歌としてのスケールは相当に大きい。内親王ならではの歌とも言える。

 私はこれまで、毎年上皇后の歌に着目し、いくたびも感銘を受けてきたが、その後継者が生まれたのではないかと感じている。
 そこに学習院で学んだということがどこまで影響を与えているかは分からないが、少なくとも国際基督教大学に進んでいたら、和歌を研究することはなかったであろう。

⚫︎戦前は定められていた「ご学友」の存在
 では、秋篠宮家が学習院で学ぶことを選択しなくなったのはなぜなのだろうか。

 さまざまなことが言われているが、一番大きいのは、学習院がもっぱら皇族や華族のための教育機関ではなくなり、一般の私立大学として、すでに長い歴史を重ねてきてしまったことだろう。
 戦後、華族制度は廃止され、学習院で華族が学ぶことはなくなった。愛子内親王が卒業したことで、学習院で学んでいる皇族もまったくいなくなった。今後、そうした皇族が現れる可能性は極めて低い。
 しかも、戦前においては、将来皇位を継承する皇族が学習院に入った場合、「ご学友」というものが定められた。昭和天皇の場合だと、学習院に校舎が一棟新設され、12名のクラスメートがご学友と定められ、ともに学び、ともに卒業していったのである。

 現在の上皇にも、こうしたご学友が定められた。皇太子の時代、外国訪問が長期にわたったため、単位が足りなくなり、結局、中退することになるのだが、留年も選択肢に浮上したものの、ご学友と同じ学年でなくなることが留年を選ばなかった一つの理由となった。
 現在の天皇には、戦後ということで、ご学友など定められなかった。華族がクラスメートにいないわけだから、そんなことは不可能である。

⚫︎皇族が学ぶ場としてふさわしいか
 親は、子どもの学校選びにおいて、自分と同じ学校や、性格の似た学校を選択しようとしがちである。秋篠宮家の場合、両親はともに学習院大学の卒業であり、それでも、子どもを学習院に行かせなかったのは、よほどの事情があるものと推測される。
 その事情のなかには、学習院が、昔のように皇族が学ぶ場として必ずしもふさわしくなくなっていることが含まれるであろう。学習院の側としても、私立大学として生き抜いていかなければならない状況にあり、皇族のことばかりを考えているわけにもいかない。
 戦後の日本社会では、天皇という存在が残り、しかも憲法では、日本の象徴、日本国統合の象徴と位置づけられた。

 ところが、天皇や皇族の存在を支える上で重要な役割を果たすものについては、それをほとんど残さなかった。
華族が廃止されたことは大きい。そして、学習院が宮内省立でなくなったことも相当に大きな影響を与えている。秋篠宮家における進学先の選択も、それとは無関係ではないはずだ。
 日本社会の保守派は、男性天皇、男系天皇にばかりこだわり、天皇制を存続させる社会制度については、何ら提言をしてこなかったし、言及さえしてこなかった。それは、ひどく怠慢なことなのではないだろうか。

 私個人としては、悠仁親王が将来天皇になる可能性が高いという理由だけで、推薦で東大に入学してもよいのではと思っている。
 そこには、知性を養える環境が整えられており、しかも教育はかなり厳しい。中退率は0.5%だが、全体の4分の1が留年を経験している。日本の象徴として世界で認められるには、知性の高さは有力な武器になるはずである。東大で学ぶことが、かつて学習院が果たしていた役割を代替してくれるのではないだろうか。



島田 裕巳(しまだ・ひろみ) 宗教学者、作家
 放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員、同客員研究員を歴任。『 葬式は、要らない』(幻冬舎新書)、『 教養としての世界宗教史』(宝島社)、『 宗教別おもてなしマニュアル』(中公新書ラクレ)、『 新宗教 戦後政争史』(朝日新書)など著書多数。
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【日本は地熱大国になれるか?】世界が羨むポテンシャル 純国産エネルギーで「地熱革命」を起こせ 202408

2024-08-30 01:14:00 | 気になる モノ・コト

【日本は地熱大国になれるか?】世界が羨むポテンシャル 純国産エネルギーで「地熱革命」を起こせ
 Wedge より 240830  鈴木賢太郎


 JR盛岡駅から車を走らせること約80分。山道を縫うように進んだ先に、雄大な自然と調和したウグイス色の発電所棟と茶色の配管網が姿を現した。標高1130メートルに位置する安比地熱発電所(岩手県八幡平市)に到着すると、7月下旬にもかかわらず、半袖のシャツでは肌寒さが感じられた。
 東北有数のスキー場があることで知られる岩手県八幡平市の安比高原に、安比地熱発電所は建設された(APPI GEOTHERMAL ENERGY CORPORATION)

 出力1万4900キロワット(kW)を誇る同発電所は、今年3月に営業運転を開始した。しかし、地質の調査開始から運転開始に至るまでに四半世紀の年月を要した。
 安比地熱(同前)の菅野雄幸社長は「既存の地熱開発の難点は、最低10年以上というリードタイムです。地熱資源の調査や環境評価、井戸の掘削、発電所の建設など、越えるべきハードルは多い」と話す。

 また、地熱発電の特有の仕組みが開発リスクを高めている。その仕組みはこうだ。
地下1000~3000メートルまで浸透した雨水がマグマで加熱され熱水となり、岩盤の下やそのすき間に蓄えられることで「地熱貯留層」を構成する。
 ここに向けて井戸(生産井)を掘り、熱水や蒸気をくみ上げタービンを回している(次ページ図)。しかし、地熱貯留層を掘り当てることは容易ではない。
 安比地熱の兼子高志技術部長は「生産井を1本掘削するのに数億円のコストがかかります。事前に調査していても実際に掘削すると、貯留層に当たらない場合もある」と話す。

 自治体や地元住民との合意形成も一筋縄にはいかないことが多い。八幡平市は1960年代から地熱発電で得られた蒸気を地元のホテルや民宿などに供給し、産業が発展したという経緯があるため、問題は生じなかった。
 しかし、多くの場合は、自治体や地元住民から建設に難色を示されたり、温泉事業者が地下資源の枯渇や温度低下を懸念し開発が難航したりするケースが少なくない。

 安比地熱発電所の事業化を進めた三菱マテリアルには現在、国内4カ所で地熱発電所の開発計画がある。同社の山岸喜之再生可能エネルギー事業部長は「FIT(固定価格買い取り制度)やFIP(フィードインプレミアム制度)により、安定した収益が見込め、『出口』が保証されているため、事業性の絵は描きやすい。
 一方、開発リスクが大きく、投資に対するリターンが得られるまでに10年以上を要するなど、地熱開発の『入り口』には大きな課題があります。事業者のリスクを低減させるために、国主導の技術開発や地熱調査の拡充を期待したい」と話す。

 火山活動が活発な日本は世界第3位の2347万kWの地熱資源量を有する「地熱大国」だ。地熱発電は太陽光・風力発電と比較し、24時間安定的に発電ができるベースロード電源でもある。しかし、その設備容量は約60万kWで、日本の電力消費量の約0.3%にすぎない。

 2021年に閣議決定された第6次エネルギー基本計画では、30年の地熱導入量を148万kWと見込み、開発リスクの低減や技術開発のための予算確保などの支援策を実施した。しかし、発電所の新設は少なく、目標の達成に青息吐息の状況だ。

 この要因について、国際エネルギー機関(IEA)地熱部門の議長で、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の安川香澄特命参与は「日本の政策支援は諸外国と比べ、決して低いというわけではありません。
 しかし、森林法や自然公園法、土地所有法など、数多くの法律が地熱開発を妨げています。そのため、たとえ地熱開発を促進する新法を制定しても既存のしがらみを取り払うことは難しそうです。
 例えば、山地の道路や橋梁などの強度が資機材の重量に耐えられず、分解して運搬するためにコストがかさむなど、新法の制定や規制緩和だけでは解決できない日本固有の課題も乗り越えていく必要があります」と指摘する。

 また、地熱発電に詳しい九州大学工学研究院の藤光康宏教授は「地熱資源の約8割がある国立・国定公園の地下の掘削に関する規制緩和はされたものの、事業者側が地表への影響を懸念し、強引な開発を避けていることも一因と考えます」と話す。

 さらに、掘削技術者の養成機関として22年4月に開校したジオパワー学園掘削技術専門学校(北海道白糠町)の島田邦明理事は「地熱に特化した掘削技術者は日本国内に250~300人しかいません。30年目標の達成を難しくしている背景には、技術者不足の影響もあるでしょう。中長期的に地熱産業を発展させるためには、地熱に精通した掘削技術者の養成が不可欠です」と話す。

 一方、ロシア・ウクライナ戦争後のエネルギー情勢の混乱の中、各国はしたたかに資源の獲得にまい進している。火山帯がなく地熱資源が限られる英国では、約40年にわたる調査研究が実り、南西部のコーンウォールで出力3000kWの地熱発電所が今年中に稼働する予定だ。
 前出の安川氏は「日本と同じ島国である英国は、地下5キロメートルを超す井戸を掘り地熱発電所を建設するほど、エネルギーの確保に必死です。日本は英国が羨むほどの地熱資源を有しており、そのポテンシャルをもっと生かせるはずです」と話す。

⚫︎米国が本気で取り組む次世代地熱のポテンシャル
 在来型の地熱発電の普及には乗り越えるべき課題が数多くある。しかし、元経済産業審議官の片瀬裕文氏は「地熱発電は技術のイノベーションにより、飛躍的に成長する時期に差し掛かっている」と話す。

 実際、米国は地熱発電を大幅に拡大させようとしている。米国エネルギー省(DOE)は今年3月、「Pathways to Commercial Liftoff:Next-Generation Geothermal Power(次世代地熱発電:商業化への道)」というレポートを発表した。これは、現在世界各地で実証実験が行われている地熱増産システム(EGS)やクローズドループという次世代地熱発電の方式(下記図)が30年頃に商用化できることを示しており、30年には全米で10~15ギガワット(GW)、50年までに90~300GW(原発90~300基分)の発電所が建設される見通しであるとしている。現在の米国の地熱発電量が3.4GWであることを踏まえると、革新的な内容といえる。


※1 地熱増産システム(EGS):地上から高い水圧をかけ地中に割れ目を作り地熱貯留層を人工的に造成および水を圧入し、蒸気を生産する方法
※2クローズドループ:地上と地下数千メートルをつなぐ網目状のループを掘削し、その中で水を循環させ、水を介して地下の熱を取り出す方法 写真を拡大
 このレポートには二つのポイントがある。一つは、地熱の資源量が圧倒的に拡大するということだ。在来型の地熱発電は、地下に「熱」「透水性(水)」「地熱貯留層(器)」という3つの条件が揃わなければ開発は困難だ。しかし、次世代地熱発電は、人工的に器を作り出し、地上から水を注入するため、原理的には熱源さえあればどこでも発電が可能になる。DOEは米国の地熱資源量は、在来型の地熱発電を前提とした場合の40GWから、次世代地熱により5500GWに拡大するとしている。

 もう一つは、個々の開発プロジェクトに銀行が融資しやすくなるということだ。在来地熱は十分な熱水が地下にあるとされていても、長期間にわたり減衰せずに利用できることの評価が難しく、米国では銀行が地熱発電に融資しにくいという状況があった。しかし、次世代地熱は地下のリスクが極めて小さくなるので、銀行が融資しやすくなり開発スピードも速くなることを示している。

⚫︎国家の存亡をかけて地熱技術大国を目指せ
 前出の片瀬氏は「次世代地熱の採算性を確立するためには掘削コストの大幅な低減などの技術課題がありましたが、米国は、これらの技術課題はほぼ解決の見通しが立ちつつあるとし、24年から50年まで、2年ごとの発電量の具体的な導入見通しを掲げ、本気で次世代地熱を推進しようとしています。日本も覚悟次第で、『地熱革命』のリーダーになることは可能ですが、そのためには、政府が将来のビジョンを明確に示して本気で取り組まなければいけません。

 次世代地熱が実現すれば日本の地熱資源量が増加することは間違いない。第7次エネルギー基本計画で次世代地熱を前提として地熱発電の電源比率に関する野心的な目標を掲げ、官民が全力で地熱開発を進めていかなければ日本の国益を損ないます」と話し、こう強調する。

 「今、米中が開発競争を行っている汎用人工知能(AGI)のトレーニングには、AGI一つで10GWの電力が必要だといわれています。日本が先進国であり続けることはもとより、国家の安全を確保するためにも日本発のAIの開発も不可欠であり、大量の低炭素の電力を何としてでも確保しなければいけません。これは既設の原発再稼働や運転延長だけでは不十分です。新増設には15年から20年以上かかるため、その間に世界のAI開発競争から取り残されてしまいます。

 『電力は国家なり』ともいうべき状況下で、日本の将来の戦略的な位置付けを決定的に左右するのは、地熱技術大国になれるか否かです。単なるエネルギー安全保障という視点だけではなく、国家の存亡をかけて、地熱発電を推進すべきです」

 純国産エネルギーである「地熱」のポテンシャルを活用しないという選択肢はあり得ない。従来の延長線上の議論や発想ばかりでなく、今こそ日本の将来を見据え、英知を結集し、〝覚悟の火〟を灯すべきだ。
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