長寿遺伝子「サーチュイン」を活性化させるには?疾患予防でも注目【医師が解説】
幻冬社ゴールドオンライン より 220602 小西 康弘,藤井 祐介
近年、「老化」とは、遺伝子を取り巻く環境要因(エピゲノム)が劣化して起こる現象であることが分かってきました。
つまり、エピゲノムがどのような影響を受けているのかを明らかにし、劣化しないようにコントロールできれば、老化はある程度コントロールできるということです。
老化のコントロールは慢性疾患の発症リスクを低減するカギでもあります。
今回は、エピゲノムがどのように調節・維持されているのか、劣化を防ぐためにはどうすればいいのかを見ていきましょう。
※本稿は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師並びに株式会社イームス代表取締役社長・藤井祐介氏との共同執筆によるものです。
⚫︎老化の原因、「エピゲノムの劣化」を防ぐには?
最近、老化を決めているのは遺伝子の障害ではなく、遺伝子の周囲を取り囲んでいる環境要因(エピゲノム)の劣化であることが分かってきました。
遺伝子はデジタル情報ですので容易には変わりませんが、エピゲノムはアナログ情報なので環境に応じて変わることができます。
⚫︎老化の原因、「エピゲノムの劣化」を防ぐには?
最近、老化を決めているのは遺伝子の障害ではなく、遺伝子の周囲を取り囲んでいる環境要因(エピゲノム)の劣化であることが分かってきました。
遺伝子はデジタル情報ですので容易には変わりませんが、エピゲノムはアナログ情報なので環境に応じて変わることができます。
融通が利くとも言えますが、逆に環境の乱れによりエピゲノムが劣化するとも言えます。これが老化の原因であると最近になって分かってきたのです。
今回は、このエピゲノムがどのように調節・維持されているのか、劣化を防ぐためにはどうすればいいのかということについてお話ししていきましょう。
■NHKの特集でも取り上げられた「サーチュイン遺伝子」
サーチュイン遺伝子というのがあります。別名「長寿遺伝子」とも言われ、こちらのほうが聞かれたことがあるかもしれません。
今回は、このエピゲノムがどのように調節・維持されているのか、劣化を防ぐためにはどうすればいいのかということについてお話ししていきましょう。
■NHKの特集でも取り上げられた「サーチュイン遺伝子」
サーチュイン遺伝子というのがあります。別名「長寿遺伝子」とも言われ、こちらのほうが聞かれたことがあるかもしれません。
正確に言えば、サーチュイン遺伝子は長寿遺伝子の中の一つです。では、サーチュイン遺伝子とは一体どういう働きをするのでしょうか?
遺伝子(ゲノム)というのは、タンパク質の構造を記録した設計図のようなものです。サーチュイン遺伝子には、「サーチュイン酵素」というタンパク質の設計図が記録されています。
遺伝子(ゲノム)というのは、タンパク質の構造を記録した設計図のようなものです。サーチュイン遺伝子には、「サーチュイン酵素」というタンパク質の設計図が記録されています。
このサーチュイン酵素も他の酵素と同じように身体の中の化学反応を助ける働きがあります。そして、エピゲノムが劣化するのを防ぐ働きがあるのです。
エピゲノムというのは、遺伝子を取り巻く環境のことを言います。どのタイミングで遺伝子のスイッチがオンになったり、オフになったりをするかを決めているのがエピゲノムです。エピゲノムが劣化すると、正しいタイミングでスイッチがオン、オフされなくなってくるわけです。
分かりやすく例を挙げましょう。一個の受精卵が分化してカエルになる場合を考えてください。どのタイミングで尻尾が生えるか、手足が生えるか、尻尾が退化するか、はすべてエピゲノムによって決められています。尻尾や手足になるのに必要なタンパク質の設計図は遺伝子に書かれていますが、設計図が読み取られるタイミングを決めているのはその周りの環境のエピゲノムということです。
そして、この設計図が読み取られるタイミングが、何らかの原因でずれた場合、尻尾が生える前に手足が生えてくるということが起こるかもしれません。これは極端な場合ですが、もっと小さな読み取りエラーが積み重なることで、老化は進みやすくなるのです。
■単なる「寿命を延ばすための遺伝子」ではない
サーチュイン遺伝子からできるサーチュイン酵素というタンパク質は、エピゲノムが劣化しないように見回っています。サーチュイン酵素にはエピゲノムの劣化を防ぐ以外にも、障害を受けた遺伝子を修復したり、身体の慢性炎症を抑えたりする働きもあります。まるで、総合防災センターのような役割を果たしています。
もしここで、外的な影響で遺伝子の障害が多く起こったり、身体に慢性炎症が起こったりするとどうなるでしょうか?
サーチュイン酵素は障害を受けた遺伝子の現場や炎症が起こっている現場に駆けつけます。このこと自体は、身体のバランス(ホメオスターシス)を維持する上で非常に重要なことです。
エピゲノムというのは、遺伝子を取り巻く環境のことを言います。どのタイミングで遺伝子のスイッチがオンになったり、オフになったりをするかを決めているのがエピゲノムです。エピゲノムが劣化すると、正しいタイミングでスイッチがオン、オフされなくなってくるわけです。
分かりやすく例を挙げましょう。一個の受精卵が分化してカエルになる場合を考えてください。どのタイミングで尻尾が生えるか、手足が生えるか、尻尾が退化するか、はすべてエピゲノムによって決められています。尻尾や手足になるのに必要なタンパク質の設計図は遺伝子に書かれていますが、設計図が読み取られるタイミングを決めているのはその周りの環境のエピゲノムということです。
そして、この設計図が読み取られるタイミングが、何らかの原因でずれた場合、尻尾が生える前に手足が生えてくるということが起こるかもしれません。これは極端な場合ですが、もっと小さな読み取りエラーが積み重なることで、老化は進みやすくなるのです。
■単なる「寿命を延ばすための遺伝子」ではない
サーチュイン遺伝子からできるサーチュイン酵素というタンパク質は、エピゲノムが劣化しないように見回っています。サーチュイン酵素にはエピゲノムの劣化を防ぐ以外にも、障害を受けた遺伝子を修復したり、身体の慢性炎症を抑えたりする働きもあります。まるで、総合防災センターのような役割を果たしています。
もしここで、外的な影響で遺伝子の障害が多く起こったり、身体に慢性炎症が起こったりするとどうなるでしょうか?
サーチュイン酵素は障害を受けた遺伝子の現場や炎症が起こっている現場に駆けつけます。このこと自体は、身体のバランス(ホメオスターシス)を維持する上で非常に重要なことです。
しかしそうすると、これまでエピゲノムが劣化しないように見張りをしていたサーチュイン酵素が「人手不足」に陥ることになります。
サーチュイン酵素が、DNA損傷の修復や慢性炎症を抑えるために持ち場である遺伝子の周囲から離れると、その位置にあった遺伝子のスイッチが、オンになるべきなのにオフになったり、オフになるべきなのにオンになったりするように、遺伝子が読み取られるタイミングがずれ始めるのです。
これを学校の教室に例えると、周囲のクラスがうるさくて、それを注意しに行って先生が不在になってしまうと、そのクラスまでうるさくなるということです。
⚫︎長寿遺伝子の活性化には「適度なストレス」が必要
サーチュイン遺伝子は、単に寿命を延ばすための遺伝子ではなく、身体の中のバランスを整えるために非常に重要な、そして多彩な役割を果たしているということが分かっていただけたと思います。
サーチュイン遺伝子からできたサーチュイン酵素が、エビゲノムを維持するという本来の役割を果たすためには、身体に慢性炎症を起こさないようにし、遺伝子の傷害の原因になる環境毒素や放射線などを避けることが重要であることは言うまでもありません。
それ以外に、サーチュイン遺伝子のスイッチをオンにするために有効な方法があるのかについて見ていくことにしましょう。
そのためには、身体に適度なストレスをかけることが必要です。なぜなら、長寿遺伝子はストレスのかかった環境を生き残るために保持されてきた遺伝子だからです。
身体の健康な機能を高めるために適度なストレスを与えることを「ホルミシス」と言います。
具体的には適度な運動や時々絶食をすること、高温や低温に身をさらす(サウナ)ことなどがあります。このような適度な刺激を与えることで、身体はそのストレスに打ち勝とうとし、悪化した環境を生き抜こうとしてサーチュイン遺伝子をオンにするのです。
サーチュイン酵素が、DNA損傷の修復や慢性炎症を抑えるために持ち場である遺伝子の周囲から離れると、その位置にあった遺伝子のスイッチが、オンになるべきなのにオフになったり、オフになるべきなのにオンになったりするように、遺伝子が読み取られるタイミングがずれ始めるのです。
これを学校の教室に例えると、周囲のクラスがうるさくて、それを注意しに行って先生が不在になってしまうと、そのクラスまでうるさくなるということです。
⚫︎長寿遺伝子の活性化には「適度なストレス」が必要
サーチュイン遺伝子は、単に寿命を延ばすための遺伝子ではなく、身体の中のバランスを整えるために非常に重要な、そして多彩な役割を果たしているということが分かっていただけたと思います。
サーチュイン遺伝子からできたサーチュイン酵素が、エビゲノムを維持するという本来の役割を果たすためには、身体に慢性炎症を起こさないようにし、遺伝子の傷害の原因になる環境毒素や放射線などを避けることが重要であることは言うまでもありません。
それ以外に、サーチュイン遺伝子のスイッチをオンにするために有効な方法があるのかについて見ていくことにしましょう。
そのためには、身体に適度なストレスをかけることが必要です。なぜなら、長寿遺伝子はストレスのかかった環境を生き残るために保持されてきた遺伝子だからです。
身体の健康な機能を高めるために適度なストレスを与えることを「ホルミシス」と言います。
具体的には適度な運動や時々絶食をすること、高温や低温に身をさらす(サウナ)ことなどがあります。このような適度な刺激を与えることで、身体はそのストレスに打ち勝とうとし、悪化した環境を生き抜こうとしてサーチュイン遺伝子をオンにするのです。
ちょうど、高地マラソンでマラソンランナーが低酸素状態で走り込むのに似ていますね。
■ワクチンやポリフェノールの作用も「ホルミシス」の一種
大量に摂れば身体に有害な毒も、少量であれば身体にとって益になることがあるというのがホルミシスの基本的な考え方です。
■ワクチンやポリフェノールの作用も「ホルミシス」の一種
大量に摂れば身体に有害な毒も、少量であれば身体にとって益になることがあるというのがホルミシスの基本的な考え方です。
適度なストレスを与えることによって、ストレスに対しての対抗力、抵抗力が備わるのです。
ワクチンは、毒性を弱めた抗原物質を注射することで、免疫系を刺激して抗体を作ろうという方法なので、ホルミシスの一種であるということができます。適度な抗原刺激は免疫力を高めることが分かっています。
また、抗酸化物質と言われるフィトケミカルは、身体の中の活性酸素を消去するということで知られていますが、実際に摂れるフィトケミカルの量は抗酸化作用を発揮するには少ないということが分かってきました。
たとえばフィトケミカルの代表としては、ワインに含まれるポリフェノールが有名です。ポリフェノールは抗酸化物質の代表的な物質であると思っておられる方も多いのではないでしょうか。
ワクチンは、毒性を弱めた抗原物質を注射することで、免疫系を刺激して抗体を作ろうという方法なので、ホルミシスの一種であるということができます。適度な抗原刺激は免疫力を高めることが分かっています。
また、抗酸化物質と言われるフィトケミカルは、身体の中の活性酸素を消去するということで知られていますが、実際に摂れるフィトケミカルの量は抗酸化作用を発揮するには少ないということが分かってきました。
たとえばフィトケミカルの代表としては、ワインに含まれるポリフェノールが有名です。ポリフェノールは抗酸化物質の代表的な物質であると思っておられる方も多いのではないでしょうか。
しかし、通常飲む程度の量のワインに含まれているポリフェノールだけでは、身体の酸化した状態を改善するのに十分な抗酸化力はないのです。ポリフェノールの作用も、実はホルミシスの一つであるというと驚かれる方も多いのではないでしょうか?
フィトケミカルは、本来は私たちの身体にとっては「毒」の作用を有している化学物質です。それを少量摂ることで、ホルミシスの作用が働き、身体の抵抗力を上げるということなのです。
腸内の悪玉菌も、実は少量だけ腸内にあることで免疫力を刺激し、次に大量の悪玉菌が侵入してきたときに備えて腸管免疫を調節しています。これも広い意味でのホルミシスであると言えるでしょう。
このようにホルミシスは私たちの健康を維持する上で色々な面で作用しています。そして、ホルミシス的な刺激を適度に加えることが、長寿遺伝子のスイッチを入れることになるのです。
⚫︎サーチュイン遺伝子のスイッチをオンにする方法
では、具体的に長寿遺伝子のスイッチをオンにするのに有用であると言われている方法を見ていくことにしましょう。
【1. カロリー制限をする】
現代は飽食の時代と言われ、肥満人口が年々増加の一途をたどっています。動物実験のレベルですが、ある程度の飢餓状態を作ってやることによって、サーチュイン遺伝子がオンになると言われています。
アカゲザルでの実験ですが、自由に食事を摂らせた場合と25〜30%のカロリー制限をした場合とでは、カロリー制限をしたグループで長寿遺伝子がスイッチオンになり、平均寿命が伸びたという実験報告があります。
ヒトでの実験でこのような比較試験はありませんが、1日1~2食にしたり、1日に食べる量を減らしたりなど、ある程度のカロリー制限をすることによって、体重、血圧、コレステロールの値が下がるということは分かっています。
フィトケミカルは、本来は私たちの身体にとっては「毒」の作用を有している化学物質です。それを少量摂ることで、ホルミシスの作用が働き、身体の抵抗力を上げるということなのです。
腸内の悪玉菌も、実は少量だけ腸内にあることで免疫力を刺激し、次に大量の悪玉菌が侵入してきたときに備えて腸管免疫を調節しています。これも広い意味でのホルミシスであると言えるでしょう。
このようにホルミシスは私たちの健康を維持する上で色々な面で作用しています。そして、ホルミシス的な刺激を適度に加えることが、長寿遺伝子のスイッチを入れることになるのです。
⚫︎サーチュイン遺伝子のスイッチをオンにする方法
では、具体的に長寿遺伝子のスイッチをオンにするのに有用であると言われている方法を見ていくことにしましょう。
【1. カロリー制限をする】
現代は飽食の時代と言われ、肥満人口が年々増加の一途をたどっています。動物実験のレベルですが、ある程度の飢餓状態を作ってやることによって、サーチュイン遺伝子がオンになると言われています。
アカゲザルでの実験ですが、自由に食事を摂らせた場合と25〜30%のカロリー制限をした場合とでは、カロリー制限をしたグループで長寿遺伝子がスイッチオンになり、平均寿命が伸びたという実験報告があります。
ヒトでの実験でこのような比較試験はありませんが、1日1~2食にしたり、1日に食べる量を減らしたりなど、ある程度のカロリー制限をすることによって、体重、血圧、コレステロールの値が下がるということは分かっています。
糖尿病、高血圧などの動脈硬化性疾患のリスク因子がある人は20〜25%程度のカロリー制限をしたほうがいいことには科学的な根拠があります。
ただし、非肥満者で動脈硬化のリスクがない人がカロリー制限をしたら寿命が伸びるのかどうかについての結果は出ていません。ヒトではまだきっちりとしたデータは出ていないのです。
ちなみに、ここでお話ししているのはカロリー制限をすることで、長寿遺伝子のスイッチがオンになり、寿命が伸びるかどうかということについてです。
ただし、非肥満者で動脈硬化のリスクがない人がカロリー制限をしたら寿命が伸びるのかどうかについての結果は出ていません。ヒトではまだきっちりとしたデータは出ていないのです。
ちなみに、ここでお話ししているのはカロリー制限をすることで、長寿遺伝子のスイッチがオンになり、寿命が伸びるかどうかということについてです。
ダイエットの話ではありません。欧米での大規模研究では、カロリー制限するだけでは体重は減らないことが分かっています。普通に摂取カロリーを減らしただけでは、基礎代謝が下がるだけで、体重減少にまで繋がらないのです。
肥満率は食物繊維の摂取量に反比例することが分かっています。ダイエットをするためには、食物繊維の摂取量を増やすことが大きなポイントになります。
実は、長寿遺伝子のスイッチをオンにするためには、カロリー制限をするよりもずっと効果的な方法があることが分かってきました。それは、間欠的に断食(ファスティング)をすることです。
たとえば、最近の流行りのファスティング法として16時間絶食法というのを聞かれた方もおられると思います。
実は、長寿遺伝子のスイッチをオンにするためには、カロリー制限をするよりもずっと効果的な方法があることが分かってきました。それは、間欠的に断食(ファスティング)をすることです。
たとえば、最近の流行りのファスティング法として16時間絶食法というのを聞かれた方もおられると思います。
夕食を20時までに食べて、それ以後は翌日の昼まで何も食べないという方法です。
昼食から夕食まで(12時から20時まで)の間は何を食べてもいいということになっています。
このようにプチ飢餓状態を作ってやることで、長寿遺伝子のスイッチがオンになるという報告があります。
さらに16時間ファスティングでは、その間タンパク質を摂らないので、自分自身の身体の老朽化したタンパク質を分解して、新しく作るための材料にしようという機序が働きます。
さらに16時間ファスティングでは、その間タンパク質を摂らないので、自分自身の身体の老朽化したタンパク質を分解して、新しく作るための材料にしようという機序が働きます。
これはオートファジーと言われ、身体の中のタンパク質代謝を促進し、細胞の老化を防ぐ作用があると言われています。
確かに論理的には非常に魅力的なのですが、ヒトにおけるこれらのエビデンスはまだありません。
確かに論理的には非常に魅力的なのですが、ヒトにおけるこれらのエビデンスはまだありません。
ヒトにおいても同様であるとは言い切れないので、試す際には自己責任で行ってください。
【2. 運動して汗をかく】
適度な運動は、ホルミシスの代表と言ってもいいかもしれません。
適度の運動が健康に良いということは誰も異論はないと思いますが、どうして健康に良いのかと尋ねられると、答えに窮するのではないでしょうか。
【2. 運動して汗をかく】
適度な運動は、ホルミシスの代表と言ってもいいかもしれません。
適度の運動が健康に良いということは誰も異論はないと思いますが、どうして健康に良いのかと尋ねられると、答えに窮するのではないでしょうか。
実は、運動は身体に活性酸素を発生させます。そして、その活性酸素を身体から除去しようとして、身体の防御システムが働くことが分かっています。この適度なストレスが、長寿遺伝子の働きを正しい方向に働かせるようになるのです。
毎日15分足らずのランニングで週に6~8キロ走るだけでも、心臓発作で命を落とすリスクが45%減り、全死因死亡率が30%下がることが示されています。
このことからも、いくら運動が身体に良いからといって、過度にやると、発生した活性酸素が処理しきれずに、身体を酸化させてしまいます。
毎日15分足らずのランニングで週に6~8キロ走るだけでも、心臓発作で命を落とすリスクが45%減り、全死因死亡率が30%下がることが示されています。
このことからも、いくら運動が身体に良いからといって、過度にやると、発生した活性酸素が処理しきれずに、身体を酸化させてしまいます。
どんなにいいことでもやり過ぎは禁物ということです。
【3. 快適ではない温度に身体をさらす(低温環境やサウナなど)】
長寿遺伝子を働かせるには、快適とはいえない温度に身をさらすのも一つの有効な手段であることが分かっています。
【3. 快適ではない温度に身体をさらす(低温環境やサウナなど)】
長寿遺伝子を働かせるには、快適とはいえない温度に身をさらすのも一つの有効な手段であることが分かっています。
特に低温に身体をさらすことで、ミトコンドリアのエネルギー産性能が活性化されます。
だからといって、寒い地方に住む人の寿命が、暖かいところに住む人よりも長いということを示すデータはありません。
だからといって、寒い地方に住む人の寿命が、暖かいところに住む人よりも長いということを示すデータはありません。
重要なのは、限られた時間、低温環境に身をさらすということです。
フィンランド東部に住む中年男性2300人余りを約20年にわたって追跡調査した研究があります。
フィンランド東部に住む中年男性2300人余りを約20年にわたって追跡調査した研究があります。
ご存じの通り、フィンランドの人はサウナに入った後に、冷たい外気に身体をさらします。身体を温めた後に急激に寒冷刺激を与えることが、身体にとって適度な刺激になると考えられます。被験者のうち、極めて頻繁にサウナを利用する人(最高で週に7回)は週1回の人より、心疾患の発症率や、心臓発作で命を落とす件数、さらには全死因死亡率がおよそ2分の1になるという結果でした。
どうやらサウナは、慢性疾患の発症には予防的効果があるようです。
ただ、この研究は病気の発症リスクは抑えられたということを示すもので、「老化を予防する」ということにはならないことに注意する必要はあります。
一方では、高温での刺激がサーチュイン遺伝子にプラスの影響を与えるかどうかについては、低温刺激ほどはっきりはしていません。
サウナファンには少し残念な結果かもしれませんが、現在のところ、高温がサーチュイン遺伝子を活性化するかもしれないというレベルで、まだエビデンスが不足しています。
■「適度な刺激」と「適切なタイミングでのオン・オフ」が重要
以上見てきたように、適度な刺激を適切に与えることは、身体の回復力(ホメオスタシス)を刺激し、長寿遺伝子のスイッチをオンにする可能性があると言われています。
ただ、この研究は病気の発症リスクは抑えられたということを示すもので、「老化を予防する」ということにはならないことに注意する必要はあります。
一方では、高温での刺激がサーチュイン遺伝子にプラスの影響を与えるかどうかについては、低温刺激ほどはっきりはしていません。
サウナファンには少し残念な結果かもしれませんが、現在のところ、高温がサーチュイン遺伝子を活性化するかもしれないというレベルで、まだエビデンスが不足しています。
■「適度な刺激」と「適切なタイミングでのオン・オフ」が重要
以上見てきたように、適度な刺激を適切に与えることは、身体の回復力(ホメオスタシス)を刺激し、長寿遺伝子のスイッチをオンにする可能性があると言われています。
このときに重要なポイントは、①適度な刺激を与えるということと、②適切なタイミングでオン、オフにするということです。
①については「過ぎたるは及ばざるがごとし」ということです。
①については「過ぎたるは及ばざるがごとし」ということです。
②については、たとえカロリー制限がいいからと、ずっと飢餓状態にしていてもスイッチは入りません。制限するタイミングと、制限を解除するタイミングをうまく組み合わせることが重要です。
運動や低温刺激も、身体にいいからといってやり過ぎはかえって身体を痛めるという結果になります。
ただし「ヒトに有効かどうか」は研究中のものも多い
以上、サーチュイン遺伝子の働きと、その働きを高めるために有用であると考えられることについて説明してきました。
ただし「ヒトに有効かどうか」は研究中のものも多い
以上、サーチュイン遺伝子の働きと、その働きを高めるために有用であると考えられることについて説明してきました。
そのためには、ホルミシスの作用が重要であることも分かっていただけたと思います。
ただこれらの研究結果は動物実験レベルでのことも多く、本当にヒトが長生きするためにはどういう条件を満たすことが一番重要なのかについては、まだ分かっていないことも多いということは知っておく必要があります。
ただこれらの研究結果は動物実験レベルでのことも多く、本当にヒトが長生きするためにはどういう条件を満たすことが一番重要なのかについては、まだ分かっていないことも多いということは知っておく必要があります。
実験動物などと比べるとヒトの寿命自体が長いので、その寿命が伸びたかどうかを確かめることが非常に困難なためです。
では、視点を変えて、長寿な人はどのような条件を満たしているのかを知ることは、有力な参考になるかもしれません。
では、視点を変えて、長寿な人はどのような条件を満たしているのかを知ることは、有力な参考になるかもしれません。
次回は、センテナリアンと呼ばれる100歳長寿者の研究について見ていくことにしましょう。
⚫︎小西 康弘
医療法人全人会 小西統合医療内科 院長
総合内科専門医、医学博士
⚫︎藤井 祐介
株式会社イームス 代表取締役社長
メタジェニックス株式会社 取締役
株式会社MSS 製品開発最高責任者
医療法人全人会 小西統合医療内科 院長
総合内科専門医、医学博士
⚫︎藤井 祐介
株式会社イームス 代表取締役社長
メタジェニックス株式会社 取締役
株式会社MSS 製品開発最高責任者