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📚 知的好奇心を満たす良書が続々! ハヤカワ新書、創刊タイトル5作を徹底レビュー 202307

2023-07-26 20:58:00 | 📗 この本

知的好奇心を満たす良書が続々! ハヤカワ新書、創刊タイトル5作を徹底レビュー
  Real Sound より 230726
 創刊ラインナップは、
📗モデルの滝沢カレンが古今東西の名作小説のタイトルから発想を飛躍させて物語をつむぐ『馴染み知らずの物語』、
📗エラリイ・クイーンやアガサ・クリスティーの作品から英語を学べる越前敏弥の『名作ミステリで学ぶ英文読解』、
📗架空の旅のガイドブックを通して化石の発見が相次ぐ古生物天国・日本の魅力を読み解く土屋健の『古生物出現! 空想トラベルガイド』、
📗解剖学者や言語学者やメタバース専門家など各界の俊英が「現実とは?」との問いに応える藤井直敬の『現実とは?ーー脳と意識とテクノロジーの未来』、
📗教育の名のもとに行われる違法な虐待行為に迫った石井光太の『教育虐待ーー子供を壊す「教育熱心」な親たち』の全5タイトルだ。

 参考:「ハヤカワ新書」一ノ瀬翔太編集長インタビュー 「読む前とは世界が違って見えるレンズのような本が作れたら」

 本稿では、創刊の全5タイトルを5人の書評家がレコメンド。それぞれの魅力について掘り下げた。(編集部)


■越前敏弥『名作ミステリで学ぶ英文読解』(杉江松恋)
 過去に同様の著作もある越前敏弥が、初めてミステリのみをテキストとする英文読解指南書を書いた。取り上げられているのはエラリイ・クイーン、アガサ・クリスティー、コナン・ドイルという古典中の古典の六作だ。
 で、原文が引用された後に読者向けの設問があり、きちんと文意が取れているかがそこで判断できるようになっている。適切な訳語・訳文を考えさせるだけではなく、「3行目のコロン(:)はどんな働きをしていますか」というような問いもあり、英文をざっと読むだけだと見過ごしてしまうようなところにも注意を向けさせられる。

 おもしろいのは各章に真相を明かした上での設問、つまり「ネタバレ」の稿があることで、ここではミステリ特有のルール、ことにフェアプレイの精神に則って原文を読むためにはどのような点に注意すべきかということを学べる。
 クイーン『Yの悲劇』やクリスティー『アクロイド殺し』の、作中でも肝と呼ぶべき文章についての言及があるのが流石で、こうした箇所をどう訳すべきかを知ることができる。逆に、訳文を見ただけではわからない発見もあるのである。ミステリのエッセンスを知ることのできる好著である。


■滝沢カレン『馴染み知らずの物語』(立花もも)@
 滝沢カレンさんが初めての小説を刊行、と聞いて最初に思い浮かんだのはSFだった。言語センスだけでなく、枠にとらわれない自由な人柄をテレビを通じて感じていたから、きっと奇想天外な物語を書くに違いないと思ったのだ。だがまさか、名作小説のタイトルだけを聞いて、勝手にイメージされた短編小説を5年間も書き続けていたとは!

 『馴染み知らずの物語』は、その中から15作品をピックアップした小説集。『あしながおじさん』や『蟹工船』など誰もが聞いたことのある古典から、『妻が椎茸だったころ』や『ザリガニの鳴くところ』など、妄想のはかどりそうなタイトルの現代小説まで、古今東西の名作が新たに生み直されている。ほとんどが想像だにしない奇抜な展開を見せるのだが、ときどき「ちょっと合ってる……!」と偶然の一致を見せるのもおもしろい。

〈曲がり気のない直毛が楽しそうに階段を下るリズムで彼の頭で踊る〉などの文章表現もいい。文法の型からはズレているかもしれないけれど、情景が目に浮かぶうえに、こちらの想像力も刺激される。そうだ、読書ってこんなにも自由なものだったのだと、思い出させてくれる物語ばかりである。

 読み終えたあとは原作と比較してみたくもなるので、読書案内としても新しい境地を切り開いている。ぜひ第二弾の刊行を、お願いしたい。


■土屋健『古生物出現! 空想トラベルガイド』(藤井勉)@
 太古の昔に絶滅したはずの古生物が、時空の歪みによって現代に出現。北海道の球場ではケナガマンモスとナウマンゾウがきつねダンスに合わせてリズムを取る。大阪城にできた古生物カフェでは外堀で採れるチリメンユキガイを使った料理が提供され、多摩川では130万年程前の種と見られるトドとアシカが新たな「タマちゃんブーム」を巻き起こす。本書はそんな古生物が観光名物となった日本各地を案内する、空想旅行ガイドである。

 本書の制作にあたっては、自然史系の博物館の学芸員や研究員が協力をしている。彼らの専門分野である地質学や古生物学は、地層を解析し化石を調べることで古生物の生きていた「過去の景色」に迫ることのできる学問だが、著者はその研究手法を応用。専門家たちに「現代に古生物が出現するとしたら?」と質問を投げかけ、彼らが思い浮かべた生物や登場する場所などのイメージを膨らませていく。そこから科学的な裏付けのある空想世界が生まれ、読者は地層を解析したり化石を発掘しなくても、古生物と人間の共存する景色を楽しむことができる。

 読み終えたら実際に化石を見に行ってほしいということで、各地の博物館情報も豊富な本書。現実に使える旅行ガイドとしても実はオススメだ。


■石井光太『教育虐待 子供を壊す「教育熱心」な親たち』(中田英志郎)
 親による行き過ぎた教育が、「教育虐待」と呼ばれることが増えてきた。それは、かつてはスパルタ教育と言われたものも含む。当然として、あるいは子どもが何らかの形で成功を収めたケースでは称賛の対象ともなる。よって、教育と虐待の線引きは容易ではない。しかし、一方的に親が理想を子どもに押しつけ人権を侵害するのは、教育ではなく違法行為だ。行き過ぎにより、教育の名のもと親が子を殺害した事件、または体力差が逆転し子が親を殺害した事件などを、衝撃をもって社会は経験してきている。

 教育を巡っては、「育児放棄」「教育格差」「親ガチャ」など、時代を反映し問題を切り取ったキーワードが次々と世に放たれていく。しかし本書を読み、「教育虐待」の周囲に拡がる闇はことさら暗く感じられた。
 親も子も相手は選べない。親自身が幼少期に受けた教育を、負の側面まで子の世代に引き継ぐ。これらは教育全般が抱える問題だろう。それに加え「教育虐待」は、親が自分の指導を正しいと信じ、子もそれが当然だと感じているケースも多い。周囲も介入に躊躇し、当事者も考えを改めることに困難を伴うだろう。自立前の子どもには逃げ場はない。それでも彼らは未来を担う社会の大切な資産である。本書により、僅かでも世の認識が深まることを祈るばかりだ。


■藤井直敬『現実とは? 脳と意識とテクノロジーの未来』(杉本穂高)@
「現実とは何か?」なんてあまりにも自明すぎて、そんなことを問う人はほとんどいない。だが、本書はまさにその自明すぎる現実というものを改めて問う。現代では、神経科学や脳科学、テクノロジーの発達によって、現実とは個々人によって異なる体験なのではないか、という実感が急速に広がっている。これからの時代、今までのように皆が現実を共有して生きているとは言えなくなるかもしれない。そんな時代を迎える現代人全てにとって、本書の問いは切実なものだ。

 本書は、著者である脳科学者の藤井直敬氏が「現実科学レクチャーシリーズ」と題して2020年から実施しているオンラインイベントを書籍化したものだ。ゲストスピーカーは、解剖学者や情報科学者に言語心理学者、エンジニアから能楽師と幅広い人選で、多角的に「現実」についての議論が展開される。

 VRやAR、AIなどテクノロジーによって拡張される現実、能という伝統芸能における現実認識、脳の働きと現実の認識を検討するものなど、実に様々な観点から「現実」というひどく曖昧な、しかしだれにとっても重要なテーマを考察する。本書の読後感は、著者が書く通り、「当たり前すぎて疑うことがないが、疑い始めるとわからなくなる」(P6)といったものだが、不思議と嫌な気分にならず、霧かかった視界が開けるような爽快感がある良書だ。


⚫︎特集:ハヤカワ新書



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