珍しい名字「通円」。日本で最も古い商家ともいわれる、宇治茶の老舗です
家庭画報com より 250112
珍しい名字:通円(つうえん)
お茶で有名な京都府宇治市。昨年の大河ドラマ「光る君へ」では、紫式部が晩年を過ごした舞台としても有名になりました。
この宇治市を流れる宇治川にかかっているのが宇治橋で、そのたもとに1軒の旧家があります。
これが現存する日本で最も古い商家ともいわれる、宇治茶の老舗「通圓」家です。「圓」は「円」の旧字体です。
通円家の歴史は古く、初代は平安時代後期の公卿源頼政の家臣だった古川右内という人物です。右内は隠居をした際に、主君頼政の政の一字を賜って、太敬庵通円政久と名乗り、宇治橋の東のたもとに庵を結んだのです。
平安時代には常設の橋は珍しいものでした。大きな川は渡し船で渡るのが普通で、もしくは小舟をつなげた「舟橋」で渡ったのです。
右内の子孫は代々「通円」を名乗って宇治橋の橋守をつとめ、往来する人々に茶を差し上げて橋の長久祈願と旅人の無病息災を願ってきたと伝えています。
明治維新で橋守がなくなった後は茶商に転じ、現在まで続いています。
▶︎森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
墨アート製作 書家・越智まみ( https://esprit-de-mami.com/)